【統計的品質管理】pn管理図


二項分布に従う計数値で,統計的品質管理(SQC)統計的工程管理(SPC)をするためのpn管理図の作成方法を紹介します.

pn管理図の作り方

毎ロット同じ数だけ生産する場合に使います.
pはロットの不良率,nは検査台数です.
従ってpnは不良の個数です.
不良の個数(pn)は二項分布に従います.
不良台数は,pn管理図

P:工程の不良発生率の実力値.

つまり毎ロット発生する不良個数は,μを平均とし標準偏差σでばらつくということになります.
小文字pで表記する場合は,不良率がPの実力を持つ工程で生産した場合の,毎ロットの不良率の観測値ということになります.
ここで
nP≧5と(1-nP)≧5が成り立つ場合は,二項分布を正規分布に近似しても実用上問題ありません.
例えば,検査工程で0.5%の不良が発生する場合1ロットの大きさが1000個であればnP=5,n(1-P)=995となり両者とも5以上なので,正規分布に近似出来ます.
つまり不良個数が平均±3σの中に入る確率は99.7%であり,正常と判断する.
不良個数が平均値±3σを外れた場合は,工程に何か異常があったと判断する.
という計量値の統計的品質管理と同じ考え方です.

【手順1】
ロットのサイズnが同じ検査データを20組以上取り,不良個数pnを調べる.
検査データは実力(不良発生率)が同じと判断できるデータでなければなりません.
また実力が同じと判断できても,違うラインの不良個数を一つの管理図で管理するのは,管理の趣旨から外れます.

【手順2】
平均不良個数,平均不良率を求める.
不良率

pn:ロットの不良数
k:ロットの数
n:ロットの大きさ

【手順3】
pn管理図の上側管理限界(UCL*1),下側管理限界(LCL*2)を求める.

*1UCL:Upper Control Limit 上側管理限界
*2LCL:Lower Control Limit 下側管理限界

上限・下限管理線

【手順4】
pn管理図を作り,エックスバーチャートと同じように毎ロットデータを記入する.
photo_5

【手順5】
pn管理図の変動をモニターして,問題があれば原因を究明して処置・対策をする.
判定方法はエックスバー・アール管理図の判定方法を参照下さい.

ところでpn管理図に下側管理限界(LCL)があるのに違和感をもたれる方があるかも知れません.不良が少なければ少ない方が良いわけだから,下側管理限界に意味があるのかという質問を受けることがあります.
統計確率理論の考え方では,毎ロットの不良率は一定の幅の中にばらついている,という考え方をします.従って工程改善などにより,実力値(不良率P)が変わっていなければ,下側管理限界(LCL)を割ることは無い.もし下側管理限界(LCL)を割った場合は,検査に不備があり不良品を良品として判定してしまったと,考えるのが合理的です.