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停車駅誤通過

JR彦根駅を800m行き過ぎ 運転士「通過駅かと」

 17日午後1時50分ごろ、滋賀県彦根市のJR琵琶湖線彦根駅で、姫路発近江塩津行きの新快速電車(12両)が停車位置を約800メートル行き過ぎて止まった。

 JR西日本によると、車掌が停車予定駅の通過に気づき、非常ブレーキをかけた。乗客約300人にけがはなかった。電車が停車したのは踏切上で、後退すると故障の恐れがあったため、次の米原駅まで進んで、彦根駅で降車予定だった約90人には乗り換えて折り返してもらったという。通過した彦根駅では20人ほどが乗車できなかったという。30代の男性運転士は「通過駅と思い込んだ。眠気がなかったとは言い切れない」と社内の聞き取り調査に話しているという。

 JR西日本京都支社は「お客様に大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。指導を徹底することで再発防止に努めてまいります」としている。

(朝日新聞デジタルより)

 定番の「人為ミス」による事故だ。JR西日本は再発防止対策として「指導を徹底する」と発表している。人為ミスに対する「鉄板対策」であるが、毎回指導を徹底し再発している。再発し続ける原因は、事故発生原因の調査を人為ミスで終わりにしてしまうからだ。人為ミスは事故発生原因ではない。事故の現象と考えた方が良い。人為ミスが発生する原因を突き止めなければならない。

JR西日本では停車駅通過防止装置が導入されている。ICカードのデータをATS-P車上装置に読み込ませ、その情報を元に、停車駅であれば「停車です・停車です」の音声を一回流し、それでもブレーキを掛けない場合は「停車・停車」と連続発音する仕組みになっている。

それでも事故は起きている。
■停車駅通過防止装置が機能しなかった。
 ・停車駅通過防止装置が故障していた。
 ・オンにするのを忘れていた
 ・人為的にオフにしてあった。
 ・警報音が聞こえなかった。
■ブレーキが機能しなかった。
 ・ブレーキが壊れていた。
 ・ブレーキ操作ができなかった。

というように可能性のある原因→その原因→その原因……と深掘りする。
そうすれば「指導を徹底して再発防止」などという効果の感じられない対策にはならないだろう。

元々停車駅通過防止装置は、停車駅と認識していなかった、ついウッカリ通過、注意散漫などの人為ミスを防ぐために導入したはずだ。それでも再発している。「指導を徹底」などと言っている暇があったらもっと考えろ、と言いたい。


このコラムは、2019年4月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第814号に掲載した記事を改題・修正・加筆しました。

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続々・ナゼナゼ5回

 前回予告どおり「ナゼナゼ5回」に関する読者様からのご投稿を紹介したい.

前回の記事メルマガ第80号「ナゼナゼ5回」

80号の感想ですが、ちょっと「ものづくり」からは、外れてしまいますがお付き合いください。
「なぜ、なぜ・・・・」と考えることは、どんな場合でも大切です。

「北の国から」と言うテレビドラマはご存知でしょうか?その中で、こんなシーンがありました。
故郷を離れ東京で自動車修理工場に勤める少年が、ふとしたことから、元々反感を抱いていた先輩を、バールで傷つけてしまう。
 
警察の身元引受人となった堅いサラリーマンの叔父は、「人を傷つけることは、どんな理由があっても許されない。」と少年を叱責する。少年は東京で行き場を失い帰郷する。罪を犯し帰郷した息子に父は、「人を傷つけるほどの怒りは、何だったのか?」とだけ尋ねる。少年は泣きながら、自分の大切な1万円札を盗まれ、使われてしまったこと、それは上京するときに同乗を頼んだ父がトラック運転手に謝礼として渡した1万円札で、その運転手はトラックを降りる少年に父親の手垢のついた1万円札を、父親の愛情だと言ってそのまま少年に差し出した、まさにその1万円札だったことを話すと言うものでした。

結果を見るのでなくその先にあるものを見ようとしなくては、道は拓けないと言うことですね。

Z様のメッセージ

Z様ありがとうございます.

「北の国から」は私も好きな番組で良く見ていた.ご紹介いただいたエピソードはこんな風に感じた.
結果(成果)だけで人を評価するのではなく,そのプロセスをちゃんと評価してやらねばならない.
ひところ流行った「成果主義」があまりに成果に偏りすぎたために現場のモチベーションが下がってしまうと言う逆効果があったと考えている.長期的に見ればちゃんとプロセスも見て,成長を評価してやったほうがより現場が活性化すると考えている.

もう一件読者様からのご投稿を紹介したい.

今回紹介していただいた読者様からの内容も興味深く拝見しました。なぜなぜを5回しなさいというよりも、いわゆるQCの7つ道具の特性要因図を教えた方が、最終的には作業員の身にもつくし、いいのではないかと思います(私の経験上)。

H様のメッセージ

H様,いつもありがとうございます.

特性要因図は視覚的に問題を整理するのに優れたツールだと思っている.
特性要因図を見ながら考えると,次々と要因が思い浮かぶ効果がある.
特にチームで要因分析をする時に効果が高い.「ナゼナゼ5回」をやる時に都度特性要因図を描くのが良いだろう.つまり次のナゼが出るたびにそれを魚の頭にして特性要因図を描くのだ.

これはいかにもめんどくさそうに見えるが,チームで解析をする時にメンバーの力量を上げるのに役に立つ.


このコラムは、2009年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第82号に掲載した記事に加筆したものです。

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続・ナゼナゼ5回

 メールマガジン第80号で「ナゼナゼ5回」を取り上げた。

読者様からこんなメールをいただいた.

なぜ5は、日本の部品ベンダで問題が起こった場合、考えて提出してもらっています。
しかし、先に真因が頭の中にあり、それに結びつける為に、なぜなぜをしている部分があります。
ツールとして使いこなしているところは、少ないと感じています。

海外ベンダは、8Dレポートという形の回答がよくきています。
この場合も真因に達していない回答が多く、都度、問い合わせとしています。
中国ベンダなどでも、工場や品質管理責任者の対応で違いが多いでしょうか?

S様のメッセージ

S様ありがとうございます.

当時、お付き合いがあったのは台湾企業の中国工場が殆どだったが,不良解析&再発防止レポートでまともなモノを受け取った記憶がない.

独立してそういう工場の指導をして初めて分かったが,CE(カスタマーサポートエンジニア)と呼ばれる苦情処理係がいて彼らが顧客に対するレポートを書いてる.
驚くことに彼らは自社製品の技術的なことは全く理解してない.ただ少しだけ英語ができるので,別にいる解析エンジニアのレポートを英文に直しているだけなのだ.

しかも現物も現場も見ずに解析から再発防止対策まで一人で作文しているだけ.だから再発防止は,作業者に注意した,作業者を教育した,作業者を罰した,という役に立たない報告しかできない.

当然まともな顧客からはクレームが来て,レポートを再提出することになる.
こういう事を何度か繰り返していると,経営者にクレームが入り現場に雷が落ちることになる.

まともなリソースをきちんと割り当てていない経営者自身の責任なのだが,現場に対して何とかしろとしか言わない.

そんなこともあり,レポートの定型化が良く進む(笑)
フォーマット化すれば,能力が低い者でもレポートが書けると思っている.8Dレポートというのもそういう背景があり,あっという間に広まった感がある.

今まで中華系の工場から出てきて,合格点をあげられた報告書は一つしかない.

電解コンデンサメーカの不良解析レポートだった.
実はこのレポートは工場監査に来たお客様が,置き忘れて帰ったものだ(笑)

以前指導していた工場では,まずレポートの構成から教育した.

解析の仕方とか,再発防止の考え方などを教え,デスクに座っている連中の尻を叩いて現場に追い出していた(笑)

彼らが書いてきたレポーはも何度もダメ出しをして書き直させる.
営業からはレポート提出期限の督促がしつこく来る.自分で書いて提出することも何度かあった.

それでもCEたちは嫌がらず夜遅くまで,時に休日でも出てきてレポートの書き直しをする姿勢には感心する.

中には殆ど指導をしなくても書ける様になった者もいた.
彼らはやり方をきちんと指導をされていないだけなのだ.
辛抱強く指導してやればすこしずつでも良くなるものだ.

もう一通「ナゼナゼ5回」にご感想をいただいている.
長くなってしまったので次回紹介したい.


このコラムは、2009年2月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第81号に掲載した記事に加筆したものです。

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ナゼナゼ5回

 メルマガ読者様から「ナゼナゼ5回」を取り上げてみたら?とアドバイスをいただいた.本日のテーマとして考えて見たい.

「ナゼナゼ5回」は表層的な原因ではなく,それを誘発する真の原因まで突き止めるために「ナゼ」を何度も繰り返そうという考えかただ.

「風が吹けば桶屋が儲かる」という例で「ナゼナゼ5回」にチャレンジしてみよう.

・ナゼ桶屋が儲かる?
 →鼠が増えて桶をかじるから.
・ナゼ鼠が増えた?
 →猫が減ったから.
・ナゼ猫が減った?
 →三味線がたくさん売れたから.
・ナゼ三味線がたくさん売れた?
 →盲人が増えたから.
・ナゼ盲人が増えた?
 →風が吹いて目に土ぼこりが入るから.

もちろんこれは笑い話なので,実際にこんな「ナゼナゼ」をしても役には立たない.
因果関係の蓋然性(発生確率)が低いので,5回も繰り返せば確率的に殆ど発生しない原因に突き当たってしまう.

単純に「ナゼナゼ」とただ質問を繰り返すのではなくFTA(故障の木解析)のようなツールを使いナゼナゼを繰り返す方が良いだろう.

以前,新規工場で始めて生産した製品から顧客の工程で不良が見つかった.このときの「ナゼナゼ」の例を紹介してみよう.

1.ナゼ顧客で不良が見つかった?
 →部品が過大電流により破壊していた.
2.ナゼ部品が過大電流で破壊した?
 →高電圧の回路パターンと部品のリードが接触した.
3.ナゼ高電圧の回路パターンと部品のリードが接触した?
 →作業台の縁にある金属が触ったから.
4.ナゼ作業台の縁にある金属が高電圧パターンと部品をショートする?
 →検査用のフィクスチャを使わなかったから.
5.ナゼ検査用のフィクスチャを使わなかった?
 →検査合格品を出荷前に再度機能検査だけしたから.
6.ナゼ検査合格品の機能検査をした?
 →初出荷だったので念を入れた.

これらのナゼと答えの一つ一つにFTAで可能性のある原因を並べ,現物で確認をしている.
更に検査で合格しているのに客先で,不良が見つかった原因も同様に「ナゼナゼ」をする.ここを忘れがちだが,「発生原因」だけではなく「流出原因」もきちんと突き止めておく必要がある.

この「ナゼナゼ」の結果,

  • 出荷前に簡単な再検査(出力がある事をLEDの点灯だけでチェック)をした.
  • 負荷が軽かったので再検査後回路中に電荷が残っていた.
  • 検査フィクスチャを使っていなかったので,電荷をディスチャージできなかった.
  • 検査後製品を梱包箱に戻す時にプリント基板の高電圧パターンと部品リードが作業台縁の金属に接触した.
  • その際に回路中に残っていた電荷が直接部品に流れ部品を破壊した.

という事が分かった.

これらの解析により,

  • 作業台の縁の金属を全て取り除く.
  • 全ての検査は回路中の電荷をディスチャージしてから完了とするよう,検査手順を標準化する.

という対策を採った.

重要なことは「ナゼナゼ」の過程で,現場・現物による確認をすることだ.
これを怠ると「風が吹けば桶屋が儲かる」になってしまう.


このコラムは、2009年1月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第80号に掲載した記事に加筆したものです。

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こちらの記事もどうぞ「なぜなぜ5回」

なぜなぜ5回

 定期開催している品質道場では、「顧客クレームの対応」をテーマとする回がある。

毎期同じテーマで開催している。昨年開催時に、参加者から困っている慢性不具合を聞いてみた。
色々な不具合があったが、要約してしまうと、人為ミスによる不具合が慢性化し易い様だ。もしくは人為ミスに対する再発防止対策をどうしたら良いか?と言う点に困っているケースが多かった。

参加者皆で例題として取り組んだ人為ミスは、出荷梱包に乾燥剤の入れ忘れがあり、顧客からクレームをいただいた、と言う不具合だ。
製品をトレーに入れて、2トレーごとにビニール袋で簡易真空パックする。
顧客要求でビニール袋に一個ずつ乾燥剤を入れることになっている。

これをなぜなぜ5回の演習として皆で演習した。
「なぜなぜ5回」と言う名前から、本当に効果的な分析が出来るのか?と思う方もあるかもしれない。しかし適切になぜなぜ5回が出来る人がやれば効果がある。まずは最初の問題の定義の仕方が重要だ。

この不具合を「乾燥剤を入れ忘れた」と定義しては駄目だ。
「乾燥剤が入っていない製品が、客先で見つかった」と定義する。

「乾燥剤を入れ忘れた」としてしまうと、入れ忘れ以外の原因に気が付かなくなる。「乾燥剤が入っていなかった」と定義すれば、入れたがその後に落ちてしまったと言う可能性も気が付く。

今回の不具合の原因が脱落でなくても、ビニル袋に乾燥剤を入れた後、真空パックするまでの間に乾燥剤が脱落する、取り出すなどの可能性があれば、そこに事前に対策を打っておくことができる。

「客先で見つかった」と定義することにより、乾燥剤が入っていない物を流出させた事が明確になる。これにより、なぜなぜ5回は最初の質問で二つに分岐して、発生原因と流出原因を分析することになる。
つまり
「なぜ乾燥剤が入っていなかったか?」
「なぜ乾燥剤が入っていない物を出荷したか?」
と言う二つのなぜに分岐することになる。

これで発生原因対策と、流出原因対策の両方を検討出来る。

参加者でやったなぜなぜ5回により、
(1)作業方法の改訂
  ・乾燥剤を入れる位置をビニールパックの外から見える位置に規定
  ・乾燥剤を入れる作業に十点法を採用
(2)作業指導書の改訂
(3)梱包作業者による確認(流出防止対策)
以上三つの対策が出来た。

作業者への注意喚起、再指導と言う再発防止対策よりは、ずっと効果がありそうだ。
この様な即興のなぜなぜ分析を私が全てやった訳ではない。
参加者した中国人幹部が分析をした。
適切な指導さえすれば、現場リーダでも出来る様になる。


このコラムは、2013年12月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第341号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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