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PK

 PKとはサッカーのペナルティキックのことだ.ゴールエリアで反則があると,キーパーと一対一で対決することになる.中国でも,よく『PK』と言う言葉を聞く.この場合は,サッカー用語ではなく「一対一の対決」と言う意味で使う.

以前指導していた中国人経営者(かりにZさんとしておこう)は,しょっちゅう『PK』と言っている.先週久しぶりにその中国人経営者Zさんと会った.相変わらず『PK』を連発していた.

自分はビル・ゲイツを越えたい,という意味で『PKビル・ゲイツ』という.まぁ,人それぞれ夢があるのだから,それも良いだろうと思う(笑)

しかし経営者として『PK』だけではいかにも能がない.
我々から見ると,ビル・ゲイツの宿敵は,Apple社を率いていたスティーブ・ジョブスの様に見える.ビル・ゲイツとスティーブが互いに『PK』をしていたかと言うと,ちょっと違うだろう.マイクロソフトは,マッキントッシュ用にオフィスを開発している.ライバルと対決するよりは,手を結ぶ方がより高度な経営決断だと思う.

PK経営者は,自分の従業員に対しても『PK』と言う言葉を使う.
業績の悪い従業員に対して『PK』すると言う文脈で使っている.

Zさんは,従業員に対して相場より多く給与を支払っている.
そして期待通りの成果を出さない従業員にたいしては『PK』をしてクビにする,と言う訳だ.
彼の理屈によれば,給与が相場より高いのだから,優秀な人間が集まって来る.だから『PK』をしても,次々と優秀な人が来るはずだ,と言うことになる.

地方都市の中小企業,しかも油まみれの工場に,給与だけで優秀な人間が集まって来るとは思えない.若者の製造業離れもあり,簡単には集まるはずもない.そうなると,人材を集められないとして,人事部門の責任者に『PK』の矛先が向く.

高い給料さえ払えば人は一生懸命に働く,などと言う考え方は今時通用しない.
今更ハーズバーグの「衛生理論」を説明するまでもなかろう.
部下に対して『PK』と言うが,ではその部下を採用した自分の責任をどう考えるか,と言うことだ.

すべては人のココロから始まる.
経営者たる者,初歩の心理学くらいは勉強して,どうすれば人のココロを掌握出来るか考えた方が良かろう.

このコラムをメールマガジンで配信したら、読者様からメッセージをいただいた.

※読者様のメッセージ
 久しぶりの投稿?になります。私は2006年から2010年まで広東省恵州市に
 あります香港系会社(主にACアダプタ類を生産)に勤務していましたが、
 当時私が勤務間もなく「Pk]の言葉をトップが使うようになりました。当然、
 戦いをさせるためですが、コンサルタント会社からの要求?でもありました。
 当時、そのコンサルタント会社に「その仕組みは罰金が目的ではないのか」
 をただしたことがありましたが、マインドコントロールのように「PK」の
 言葉がどんな時でも出て来ておりました。当時在職していました会社は
 「PK」=「罰金」でした。言葉自体懐かしく思いメッセージしました。

中国人経営者や中国人コンサルの多くは,未だに罰金が有効だと信じている人が多い様に思う.先週ご紹介した『PK』経営者Zさんも中国人コンサルを呼んで,罰金制度を含む目標管理を幹部に社内研修したそうだ.

組織にとって好ましくない行動に対し罰金をする.その結果好ましくない行動が抑制される.
組織にとって好ましい行動に対し褒賞を与える.その結果好ましい行動が強化される.

こう言う考え方が『PK式経営』の根底にあるのだろう.
高い給与で釣っておき,好ましくない行動をとればPKをする.いわゆる「飴と鞭」式の管理だ.

従業員は,目を離すとさぼる.管理をしないとちゃんと働かない.
多くの経営者がこう考えている様だ.
ここで「管理」と言うのは,コントロール(中国語では『控制』)の意味だ.中国語で『管理』と言うと日本語のマネジメントに当たる.

私の観察によると,香港人,台湾人経営者に中国人は管理しなければ働かないと考えている人が多い様に思う.そして,香港式,台湾式経営管理が優れていると思っている中国人経営者も,同じ経営スタイルをとるのだろう.

以前指導していた台湾資本の工場では,出荷不良を半年で半分,1年で1/3にする,と言う目標を立てて活動をしていた.
不良発生を誰かの責任にする,と言う企業文化を少しずつ変えて行き,社内の全部署が協力して不良を減らす体制を作り上げた.半年で不良半分は楽勝で達成出来た.その後もいい感じで出荷不良は減り続け,1/3の目標は達成可能と確信していた.

しかし台湾から出張に来たオーナー経営者が,深セン龍華の大手顧客工場を訪問した際に,その顧客の罰金制度を知り,自社工場にも導入すると言い出した.
反対したが,林は日本人だから中国人の民族性が分かっていない,と私の意見は却下された.

その後,社内に出来上がって来た良い文化は元の木阿弥.むしろ罰金にされる事を回避するために,互いに責任のなすり合いとなった.
ほぼ達成目前だった目標は,あっという間に活動前の状態に戻った.

今でもそのオーナー台湾人経営者に会うことがあるが,彼は未だに自分が正しいと思っている様だ(苦笑)

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