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異業種からの気づき

 ベンチマーキングはコンピュータの処理速度を比較するテスト、という意味で使われ始めたと認識している。いつの頃からか、企業のパフォーマンス比較という意味で使わられるようになった。ベンチマーキングにより優れた企業を見つけ、それをベストプラクティスする。つまり、優れた企業を見つけたらその真似をする。私は前職の社長が、ジャック・ウェルチとの懇談で聞いたと教えられた。

大野耐一が米国スーパーマケットの商品陳列をベンチマーキングしJIT、後引き生産方式を考え出したのは有名な話だ。

私たちはベンチマーキングをもっと直接的にTMP(トータル・マル・パクリ)と呼んでいる(笑)
マルパクリではその本質・真髄は解らないだろうと反論される方も多い。
しかし物事の本質・真髄とは形から入って極めるものだと、私は理解している。茶道、花道、能、歌舞伎などの伝統芸能は、理論から勉強してその真髄を学ぶのではなく、まず形から入り真髄を極める。

TMPを実践し、それが習慣となれば真髄が身についたことになると考えている。5S、KY、改善活動など理論を理解して何も起こらない。実践し、それが習慣になるまで継続して初めて成果が得られる。まずは実践してみることだ。

ただし、同業者からのTMPは推奨していない。なぜなら業界トップ同業者をTMPしてもその企業を超えることはできないからだ。異業種からのTMPならば同業内でトップになる可能性がある。


このコラムは、2013年1月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第291号に掲載した記事です。

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非常識なパフォーマンス

 不良率、生産性などのパフォーマンスを業界内だけで比較をしていると「井の中の蛙」になってしまう。

例えばセットメーカは電子部品業者に対し不良20ppm以下の納入品質を要求されるところが多い。部品にもよるだろうが、まったく実現不可能な品質レベルではない。がんばれば何とか達成できる。

しかしこの要求を電源装置にも適用されて、大いに弱った。
電源装置の中には、電子部品、機構部品が200点ほど入っている。それぞれの部品が20ppmの品質レベルなのに電源も同じ品質要求では不公平ではないかと、お客様に苦情を呈した事がある(笑)

このお客様に収めた電源装置は生産開始初期につまらない不良を何度か出してしまったため、最終的には20ppmを切れなかったが、0ppmを何ロットも継続した。

電源屋は電源屋の常識で品質レベルを考えていると、そこそこのところで止まってしまう。電子部品業界の常識レベルにチャレンジすることにより、更に上のレベルに到達できるわけだ。

一方自動車関連部品やモジュールを生産されている方々は、初めから不良ゼロが常識である。
ひとつには人の命を預かる部品であるということ、更に部品不良が発生すると最終の完成車組み立て工程が止まってしまう。という理由により不良ゼロが常識なのである。この常識は自動車関連の部品メーカであれば、ネジ屋にも適用される。

このように業界を越えてパフォーマンス評価をすると、更に高い目標がでてくるものだ。

同じような作業をしているにもかかわらず、業界内比較をしてしまうとこの程度で十分というレベルになってしまう。ベストプラクティスを業界の外に求め、それにチャレンジする。同業者の中では非常識なパフォーマンスを実現することにより、業界内で圧倒的な競争優位が得られるであろう。


このコラムは、2008年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第45号に掲載した記事です。

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外部の力

 北京オリンピックで中国がこれだけ多くのメダルを獲得するとは思っていなかった.

シンクロナイズドスイミングの中継を見た.表彰式ではいつも日本チームがいる場所に中国のチームがいた.中国シンクロチームは日本のシンクロコーチ第一人者・井村雅代氏を監督として招聘したのだ.井村氏は,たった1年半の間に,メダル圏外だったチームに銅メダルを与えた.

日本がメダルを取れなかったことは残念だったが,日本人の監督が中国のチームを勝利に導いたと言うのは誇りに思ってよいだろう.元々日本の敵は中国ではなかったはずだ.スペイン,ロシアに勝たなければ中国と一緒に表彰台にあがることはできない.

中国の五輪チームを見直してみると外国人監督が多いことに気が付いた.
バスケット,フェンシング,ホッケー,女子ハンドボール,馬術,セーリング,自転車,レスリング,野球など.メダルに届かなかった種目もあるが,外国人監督がそこそこに活躍したと評価してよかろう.

オリンピック開催国の面子にかけて,中国が一流のコーチを集めた結果と言うことだろうか.

これは日本の産業界が力をつけてきた過程と同じだ.
欧米の一流企業と技術提携をしたり,合弁会社を作ったりしてその技術力や経営ノウハウを勉強した.それが日本の産業界の基礎になっているといっても良いだろう.

外部の力を借りる,方法を真似ると言うことは悪いことではない.そこから自分たち独自の文化に進化させれば良いだけだ.GEのウェルチが言っている「ベストプラクティス」というのは,よその真似をしようということだ.


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第48号に掲載した記事です。

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新幹線方式

 以前勤務していた会社の社長が良く「新幹線方式」という言葉を使っていた.
「新幹線方式」というのは過去の方法を捨てて,新しい発想で物事を始めることである.

新幹線は在来線との互換性を捨てて,軌道の幅を広くしている.
昔は車輪と軌道の間に適度なガタがないと列車は脱線すると思われていた.新幹線はこの通説も否定した.新たな発想で高速走行とゆれの少ない乗り心地を実現している.
こういう発想を「新幹線方式」と呼んでいる.

工場の運営も同様に,従来の常識を超えた高みに到達することにより,更に高い生産性・品質・フレキシビリティを確保できる.業界の常識にとらわれていると,業界レベルのそれしか得られないであろう.

例えば電子部品の業界では,出荷不良20ppm以下が要求される.
この電子部品を組み合わせた電子製品の出荷不良を20ppm以下にしたら,顧客の反応はどうなるであろうか.

もちろん100個も200個も電子部品を組み立ててできる電子製品の不良率を電子部品1個のレベルまで下げることはそうは簡単ではない.
一方自動車産業では出荷不良が20ppmなどと言うのはとんでもない,ということになる.常に不良ゼロである事を要求される.

デリバリィーについても同様である.
業界常識のリードタイム,最小発注量というのがあるが,それを越えてデリバリィーができれば,顧客の利便性は高まる.
例えば今まで1週間かかっていた納期を1日に短縮し,必要な数量だけを納入できたら顧客は部品倉庫がなくてもオペレーションできることになる.

このように業界の常識を超えて,異業種をベストプラクティスとして改善することにより同業者の中で圧倒的に強い競争力を得る事が出来るであろう.

そのためには異業種のベストプラクティスを知り,「新幹線方式」で自社を改善することである.

社長は「新幹線方式」をGEのジャック・ウェルチに話をした事がある.この時ジャック・ウェルチはその日の内にFAXでGEグループの全社長にこの話を伝えたそうだ.さすがはベストプラクティスの本家である.


このコラムは、2008年7月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第41号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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ベンチマーキング

 年末にお客様の工場で交流会を2件開催した。

電子製品のメーカと機械加工のメーカ、光学部品のメーカと化粧箱メーカだ。それぞれ全く違う業種だが、テーマを持って交流をしていただいている。今回は「TWI(企業内教育訓練)の運用」「朝礼と環境整備(5S)」がテーマだ。

それぞれ係長以上7名、現場リーダ28名を経営者ご自身が引率して工場を訪問交流をしている。朝礼交流にこられた会社は、早朝に集合しバスを仕立てて、朝7時過ぎに工場に到着されている。経営者の本気度が伺える。

頭では理解できていても、実際に運用している現場を見る事で、より深く理解出来る。そして何よりも、現場でベンチマーキングする事により,実践のモチベーションが上がる。百聞は一見にしかずだ。コンサルタントから百回聞くより、実際に運用している姿を一見する事で現場リーダの腑に落ちる。更にリーダたちの行動モチベーションが上がる。

このような活動は、私自身の仕事にとって何の収入にもならない(笑)
しかし私の仕事の目的は、お客様従業員の成長を通して、お客様の業績に貢献する事だ。私が口で説明するより百倍くらいの効果があるはずだ。
そして交流を受け入れる工場も、従業員のモチベーションが上がる。(そうなる様に交流を受け入れる様にお願いをしている)

これからも、お客様同士、または知り合いの工場と交流していただきベンチマーキング、ベストプラクティスを進めて行こうと考えている。


このコラムは、2015年12月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第455号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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