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航空機事故

 このメルマガでしばしば航空機事故をとりあげている。数えてみると10件ほどあった。

過去記事「航空機事故」

航空機事故はほとんどの場合死亡事故につながる。一度の事故で多数の死亡者がでる。印象としては、航空機は危険な乗り物という印象がある。しかし自動車と比較しみると、航空機の方が桁違いに安全だ。

日本国内の交通事故死亡者数と全世界の航空機事故死亡者数を比較してみる。
比較できるデータ(平成26年~28年)を対比してみると

  • 日本国内、自動車事故死亡者数:12,134人
  • 全世界、航空機事故死亡者数:58人

なんと200倍以上の差がある。
航空機事故による死亡者数は全世界、自動車事故死亡者数は日本国内だけであることを考えると、その差はさらに大きくなるだろう。

自動車は簡単に運転免許が取れる。しかも運転免許は特別な訓練を受けずとも終身継続可能だ。しかし旅客機のパイロットは定期的に訓練がある。
最も大きいのは、航空機事故が発生すると専門家の徹底的な調査と、調査結果を共有されることだろう。

我々の製造現場でも日々いろいろな「事故」が起きている。死亡にいたる事故はあまりないと思う。しかし安全、品質に関わる事故は発生するだろう。

「ヒヤリハット」段階で徹底的に再発防止対策をする。
そのためにはきちんと「ヒヤリハット」が上がる仕組みと風土を確立し、徹底的に改善対策をしなければならない。自社事例のみならず、他社事例も積極的に自社展開する。


このコラムは、2022年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1252号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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東方航空公司MU5735墜落事故

昆明から広州に向かった東方航空公司MU5735航班の波音737機が広西省梧州市の山中に墜落する事故が発生しました。

捜索隊が墜落現場に入りましたが、生存者は発見できていません。
乗客123人、乗組員9人は全員死亡した様です。

事故原因は今のところ不明です。地上を走行していた車のドライブレコーダの映像と思われる動画が公開されていますが、ほぼ垂直に落下しています。
フライトレーダには約2万フィートを2分15秒で墜落。

普通では考えられない墜落です。操縦士が故意に墜落させた可能性もあると思えます。黒匣子(ブラックボックス)が回収できた様なので、原因調査結果が公表されることを期待したいと思います。

(メルマガ・【技術者のための中国語講座】より)

事故の一報は『南方時報』で読んだ。

ブラックボックスの解析により中国で3月、132人が乗った旅客機が墜落した事故で、米紙ウォールストリート・ジャーナルは17日、「コックピット内の誰かが意図的に墜落させた」可能性があると報じた。事故に関連して、米側の調査に詳しい関係者への取材でわかったという。

 同紙によると、関係者はブラックボックスのデータなどから、「飛行機はコックピットにいた誰かに指示された通りに動いた」と指摘。操縦システムへの操作によって、機体が急降下したとの見解を示したという。米国の当局はパイロットの行動に注目しているが、機内にいた別の人がコックピットに侵入し、墜落させた可能性もある、としている。

 米ABCテレビによると、当局はパイロットの1人の私生活についても調べており、事故の直前に問題を抱えて苦しんでいた可能性があるとみている。
 事故は3月21日、中国広西チワン族自治区梧州市で起きた。中国東方航空の米ボーイング737―800型旅客機が雲南省昆明市から広東省広州市に向かっていたが、高度約9千メートルから2分余りで8千メートル近く急降下して墜落した。事故の調査は、中国民用航空局に加え、米当局やボーイングなども加わっている。

(朝日新聞の記事より)

 「コックピットの誰か」というのが謎であるが、B737の場合、通常であればコックピットには機長と副操縦士の二人しかいないはずだ。また飛行中はコックピットに部外者は入れないはずだ。

記事には「パイロットの1人の私生活についても調べている」とあるので、機長もしくは副操縦士が精神的に異常をきたし故意に墜落させた、という事故の様だ。メルマガ第1274号の推測は当たってしまった様だ。

1982年に羽田沖で着陸滑走路に入る手前で逆噴射をして、墜落させた事故があった。機長の精神分裂病を原因とする異常行動による事故と判断された。その後、操縦士の精神状態を確認することが航空会社に義務付けられたと記憶している。今回事故を起こした東方航空では精神状態胃の確認は実施されていなかったのだろうか?

羽田沖事故では機長のパイロット資格は取り消されたはずだ。
今回の事故では、機長の健康状態検査を怠った航空会社が営業免許を取り消されるのだろうか?


このコラムは、2022年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1297号に掲載した記事です。

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シカゴ条約

 3月21日午後、昆明から広州に向かった東方航空のB737機が広西省梧州市の山中に墜落する事故が発生した。墜落現場は広西省梧州市の山中であり救援隊は徒歩で現場に出かけた。機首からほぼ垂直に墜落しており、全員死亡したと見られている。

航空機事故に関して何度かこのメルマガに書いた。航空機事故が発生するとほぼ間違いなく大勢の死者が出る。そのため世界の国々が再発防止のため、事故の原因調査を徹底的に実施している。

その元になったのが1944年に締結された国際民間航空条約(通称シカゴ条約)だ。事故原因解析のため航空機の運行状況を記録するブラックボックス、操縦席の録音装置の搭載が義務付けられている。これらを回収することにより、事故発生時の機体の状態、操縦席での会話が再現できる。

東方航空の事故現場からブラックボックスが回収できている。
ジェット旅客機のエンジンが停止しても垂直に墜落したりはしない。
操縦士の精神状態に何かあったのかもしれない。

・日本航空350便墜落事故の機長の錯乱。
・副操縦士の精神失調で山に激突したルフトハンザ機
をこのメルマガでも紹介している。


このコラムは、2022年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1274号に掲載した記事です。

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続・旅客機滑走路逸脱事故

 2019年6月5日配信のメールマガジン832号で、山形空港で発生した旅客機が滑走路を逸脱する事故をご紹介した。

「旅客機滑走路逸脱事故」

当時のメルマガで、事故原因を推察してみた。
運輸安全委員会の正式調査結果が既に出ているのを発見し、答え合わせ(笑)をしてみた。

運輸安全委員会の事故調査結果↓
「エンブラエル式ERJ170-200STD型JA11FJ滑走路からの逸脱」

調査報告書をざっくりまとめると、地上走行時の操舵方式には二種類ある。
左操縦席の左側のハンドルを手で操作する「ハンドルモード」
左右のラダーペダルを足で操舵する「ペダルモード」

「ハンドルモード」はハンドルを押し込むことにより、左右に回すことで操舵が可能となる。低速でタクシングするときに使う。
「ペダルモード」は離陸時など高速で真っ直ぐ走行するときに使用する。
ハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチが働き、ペダルモードに切り替わる。

今回の事故原因はハンドルモードからペダルモードに切り替わらずラダー操作ができなかったことによる。その原因はハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチがONにならず、ペダルモードに切り替わらなかった。(マイクロスイッチの不良原因は不明)

現在の操舵が、ハンドルモードかペダルモードかを表示されていれば事故は避けられたと思われる。

製造現場の設備も現在の「モード」を表示する機能を追加すると同様の問題を回避する事ができる。

例えば製品検査でX線を使用する装置はX線が外部に漏れない様になっている。
しかし装置内のメンテナンス中はX線が出ない様にしたい。同時に点検時は装置内のX線強度を測定したい。これらの相反する目的のために暫定的にX線をON/OFFする必要が発生する。これを作業後元に戻すのを忘れるとX線に被曝することになったり、検査ができていなかったりする。点検・運用のモードを表示すれば、事故は防げるだろう。


このコラムは、2022年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1264号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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自責で考える

 失敗の原因を追求し適切に再発防止対策をする。不良改善の鉄則だ。
工程内不良でも、客先不良でも「人為ミス不良」が原因という不良解析が多い。作業者にとっては「自責」であるが、不良を解析する生産現場のエンジニアや品質担当者にとっては「他責」だ。こういう不良解析をしていると、対策として「作業者に注意した」「作業指導をした」などという効果の実感できない再発防止対策となる。

自責で考える必要がある。
例えば「作業方法がやりにくい」という原因であれば作業方法の改善、治具化、設計変更などの対策を検討すべきだる。「作業員の勘違い」であれば作業指導書の記述を改善すべきだ。

他責にすれば有効な解決方法は見つからない。
景気が悪いから売り上げが上がらない。
作業員の人件費が上がったので利益が減少。
顧客の使用方法が悪いから壊れる。

これらの分析は全て「他責」であり、言い訳程度の効果しかない。「他責」をやめなければ成長はない。


このコラムは、2021年11月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1216号に掲載した記事です。

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ケアレスミスと人為ミス

 人の作業ミスにケアレスミスと人為ミスがある。普通はこれらのミスを区別することはないだろうが、今回はこの二つのミスについて考えたい。

ケアレスミス:注意不足で発生するミス。
人為ミス:人が関わるミス。ヒューマンエラー。

人為ミスの中にケアレスミスが含まれているような図式だが、

  • ケアレスミスを注意力という属人的なものに依存するミス。
  • 人為ミスは人の思考・動作などに関わるミス。

と分類してみた。

例えば外観検査で、未検査のものを検査済みと間違え合格とするのは、ケアレスミス。
合格基準に満たないものを合格と判断するのは、人為ミス。

どちらも人に関わるミスだが、原因が違う。ケアレスミスは「不注意」という属人的な問題。一方人為ミスは認知、動作など人の特性に依存する問題。
このように分類して考えてみよう。

普通に考えると、ケアレスミスは注意して作業をする、ダブルチェックする、などというあまり効果・効率を期待できない対策をとりがちだ。

一方人為ミスを属人的な問題と考えてしまうとケアレスミスと同じになってしまうが、人の動作や認知の特性によって発生する問題と解釈すれば、個人に依存しない対策を考えることになる。

こう考えれば、
「間違った方法では作業できないようにする」という発想が生まれるはずだ。
つまり冒頭で申し上げたケアレスミスと人為ミスのどちらもミスが発生しない方法を考えるということだ。

人が絡むミスを一括りにしてしまうと「作業員に再教育」など効果が疑わしい対策になりがちだ。誰がやっても同じ効果が期待できる作業方法の改善を考えるとよいだろう。

例えば、
ケアレスミス:注意力を発揮しなくてもよい作業方法に変える。
人為ミス:人の判断を極力減らす作業方法に変える。


このコラムは、2022年1月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1242号に掲載した記事です。

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東横線の車いす転落 別の7駅も急傾斜、さく設置へ

 東京都大田区の東急東横線多摩川駅で車いすの女性(当時81)がホームから転落した死亡事故に絡み、東急電鉄の別の7駅でもホームの傾斜が急で、車いすでは線路に転落する恐れがあることが同社への取材で分かった。同社は転落防止策としてホームでガードマンが警戒し、11月中にさくを設置する。

 同社によると、死亡事故を受け、さくが未設置の54駅を緊急調査。この結果、東横線の中目黒、自由が丘、新丸子、武蔵小杉と田園都市線の渋谷、鷺沼、長津田の7駅は、ホームから線路までの傾斜が1メートル当たり2センチ以上と急であることが判明したという。

 多摩川駅では07年9月にも車いすの女性が線路に転落して骨折する事故が起きている。

(asahi.comより)

 先週の苦言が功を奏したわけではないだろうが、水平展開という意味ではなかなか良い答えが出てきたといって良いだろう。

事故に対する暫定処置としてホームでガードマンが警戒する。
再発防止対策としてホーム端に柵を設ける。
同様な危険のある駅を調査して暫定処置と再発防止対策を水平展開した。

しかし事故の真因である、プラットホームの傾斜に関しては何も改善されていない。ホームから線路に転落しなくとも、転落防止柵に激突して怪我をするということもありうるだろう。

もちろん日々の利用客があるので、工事が難しいのは理解できる。
しかし日本の「段取り力」を持ってすれば、終電と一番電車の間に工事を済ますことも不可能ではないだろう。

この「段取り力」というのは目立たないが、日本の優れたところだ。

中国の工事はこの段取り力がないため、利用者に迷惑のかけ放題だ。
道路工事で渋滞など当たり前。工事しているのだから「没方法」というわけだ。渋滞しないように工事をするという「段取り力」がない。

私事であるが、以前通っていたジムではシャワールームの排水を改善する工事のため工事資材をロッカールームに積み上げた。そのためシャワーばかりでなくロッカールームも使用不可能になった。
その工事資材は何日も使わずにロッカールームに積み上げられたままだった。
必要な資材を必要なときに持ち込むという初歩的な「段取り力」もない。


このコラムは、2009年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第118号に掲載した記事です。

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車いす女性、線路に落ち死亡 2年前も事故、対策とらず

 東京都大田区田園調布1丁目の東急東横線多摩川駅下り線ホームで13日、車いすに乗った川崎市の女性(81)が車いすごと線路に転落し、死亡していたことがわかった。同じ場所では2年前にも車いすの女性(95)が転落してけがをしたが、東急電鉄は具体的な再発防止策をとっていなかった。

 同社と警視庁田園調布署によると、13日の事故は午後4時半ごろ、ホームの横浜寄りにあるエレベーター前で起きた。亡くなった女性は長女(61)に車いすを押してもらって1階改札からエレベーターに乗り、2階ホームで降りた。長女がいったん車いすから手を離し、エレベーター内のボタンを操作していたところ、車いすが動き出してそのままホームから線路上に転落。女性は頭を強打し、翌14日に亡くなった。エレベーター前からホーム端までは約5メートルにわたり緩やかな下り傾斜になっている。

 ここでは07年9月、車いすの女性が介助者の手が離れた際に線路に転落し、左足を骨折した。同社によると、介助者が「車いすのストッパーをかけ忘れた」と説明したため、転落防止の対策をとらず、駅員に口頭で車いすの利用者への注意徹底を指示しただけだったという。

 同社は今回の事故を受け、エレベーター前に係員を置くとともに、17日朝までにホームの端に転落防止用のさくを設ける。同社は「事態を深刻に受け止めている。再発防止を徹底したい」としている。

(asahi.comより)

 長らく品質保証の仕事をしてきたので「再発防止」という言葉には敏感に反応してしまう。

最初の事故のときに適切な再発防止処置をとっておけば、今回のような事故は防げたはずだ。また「再発防止対策」も私が考えている「再発防止」とは少しずれている。

記事によると07年の事故以来とられた処置,これからとられる処置は

  • 車椅子利用者への注意徹底
  • エレベータ前に係員を置く
  • ホーム端に転落防止柵を設ける
  • 再発防止を徹底する
    • となっている。

      「車椅子利用者への注意徹底」というのは再発防止対策ではなく、対策の検討が終わるまでの「現場処置」だ。しかも注意喚起というあまり効果が期待できない処置でしかない。
      工場でたとえれば、不良を見逃した検査員に注意を徹底しました、という改善処置と同じだ。

      これでは事故発生の真因に対する対策はできていない。

      「エレベータの前に係員を置く」というのも暫定対策でしかない。もしこの対策が有効ならば,07年の事故以来エレベータの前に係員がずっと立っていたはずだ。のど元過ぎれば何とかで、こういう対策はいつの間にかうやむやになる。
      所詮無理がある。エレベータの前に立っている職員を新たに雇用するのならいざ知らず。現状の職員でエレベータの前に係員が立っているという対策は、絵空事といってよい。

      不良が出たので検査を二重にします、という対策と同じで、その場限りの言い逃れとしか思えない。
      もしもこれしか対策がないというならば、常時エレベータの前にいる職員をどう手配するかというところから説明しなければならないだろう。

      ホーム端に転落防止柵を設けるという対策も有効とは思えない。第一こんなところに柵があったら乗車下車に邪魔ではないだろうか?
      落ちるといけないから柵をつけるというのは、真因に対する対策ではない。
      もう一歩「なぜ」を繰り返し事故の原因を探れば、エレベータ前がホーム端に向かってスロープになっているのが真因だと分かるはずだ。

      真因が分かれば,真因に対策を施すべきだ。
      すなわち傾斜を是正すればよいのである。人身事故というリスクの大きさを考えれば、プラットホームの傾斜修正工事のコストとトレードオフなどできないはずだ。

      100歩譲ったとしても,エレベータの出口脇に手すりを作るなど、もっとましな対策が考えられたのではないだろうか?

      もちろん私は現場を見ていないし、ここでシュミレーションした内容が正しいとは思っていない。
      ただし報道だけを見ると、事故原因に対する再発防止対策がプァに思える。
      少なくとも我々製造業の間で、このような再発防止対策を顧客に提出したら、つき返されるのが落ちだろう。


      このコラムは、2009年9月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第117号に掲載した記事です。

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防水加工の電気カーペット注意 操作部分、ぬれると発火

 「防水加工」と表示された電気カーペットの操作部分(コントローラー)から発火したという苦情が国民生活センターに寄せられている。操作部分に水分が入って周辺部分でショートしたのが原因とみられる。センターは19日、説明書やカーペット本体に「操作部分には防水機能がない」と明記するよう
メーカーに求めるとともに、利用者にも注意を呼びかけた。
 1月に起きた静岡県の50代の女性の事例では、電源や温度調整のコントローラーから30センチほど炎が上がった。メーカーは、飼い犬の尿が操作部分にかかったのが原因とみている。「防水加工はカーペット本体だけということは取り扱い説明書には明記している」というが、利用者に誤解を与えないように、新年度モデルから、「ペットの尿による水ぬれの恐れを説明書に加える」という。

(asahi.comより)

 この記事を見て日本の自宅にある電気カーペットを思い出してみた。
操作部分は電気カーペットと一体になっているが、構造的に防水されているとは思いにくい。
カーペット部分だけ防水加工をして、操作部分は防水加工していないというのは安全設計上の不備だと思う。

ユーザの使い方としてカーペットに座ってビールやお茶を飲むことは容易に想像できる。
ペットがいなくても同様の事故は発生しうるだろう。

説明書に注意書きを追加する、操作部分に注意書きを表示する、ということでは事故は防げない。操作部分も防水加工にすべきだと考える。

以前コンセントに本体ごと差し込めるプラグイン型の電源装置を開発した事がある。
品証部の「製品妥当性評価」により、テーブルタップに並べて3つ以上差した場合に、内部温度上昇が設計基準を超えることを発見した。

壁コンセントに差した場合は単体でしか使用できないのでなんら問題がない。
しかしテーブルタップを使用した場合、ちょうどぴったり並んで差さってしまうのだ。この時両隣の電源からの熱で真ん中の電源の内部温度が設計基準を超えることを発見した。

設計者は壁コンセントに挿入して使用することを前提としていたため、周囲温度は40℃以下で設計していた。テーブルタップに並べて最大負荷を取った時にケース表面が50℃程度になるため想定より10℃上がってしまった。これで火災になると言うことではなく、内部の部品の期待寿命が設計規格を満足できなくなる。

急遽製品のケースの幅を若干大きくし、テーブルタップを使っても並べて差せないようにした。
金型を修正する費用は発生したが、殆どコストをかけずに顧客の不満を未然に防ぐ事が出来た。

このときに電気回路の寿命設計を見直す、内部の部品をグレードアップする、という解決策を取ると「説明書に注意書き」ということになったかもしれない。火災事故にはならないという前提があるので、品証責任者だった私も同意したと思う。

しかしちょっと考え方を変えるだけで、この時の様にコストをかけずに問題を解決できる事があるものだ。


このコラムは、2009年2月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第85号に掲載した記事です。

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失敗から学ぶ:知床・観光船事故

出航可否、基準は 法に基づく規程、業者作成「縛りにならず」

知床・観光船事故

 北海道斜里町の知床半島沖で消息を絶った観光船「KAZU1(カズワン)」荒天が予想され、漁船も出航を控えるなかで、乗員・乗客26人を乗せて港を出た。出航の判断や安全確保にはどのようなルールがあるのか。

(略)

 出航できるかどうかの基準は、各事業者が海上運送法に基づいて作成する「安全管理規程」で定めている。この規程は、安全確保のためのルールを事業者自身が決め、国土交通省に届け出るものだ。違反すれば罰金刑などの罰則がある。

(略)

 こうした取り決めについて、船会社に法律的なアドバイスをする海事代理士の春山勝さんは「あってないような基準」と指摘する。規程を作成する際の実態として、「台風などで絶対に運航できないぐらいの基準をつくり、縛りにならないようにすることが多い」と内情を明かす。

 福井県の東尋坊観光遊覧船は、岩場が多いため、海から陸に向かう風の風速が10メートル以上、それ以外は13メートル以上なら出航しないと定めている。波の高さ0.8メートル以上、視程300メートル以下でも運航をやめる。

(朝日新聞より)

 事故発生後、海底に沈む観光船は発見できたが、人命の救助は絶望的な状況だ。

板子一枚下は地獄、という格言があるが海上での事故には大きな犠牲が伴う事が多いだろう。航空機の場合も同様だが、運行基準や事故原因の調査が格段に違う。航空機は自動車より安全だ。

船舶の事故を調べてみると、2012年から2021年の十年間で遊漁船の死傷事故は7件あった。他船の走行波によるもの、乗船者の不注意による転落が原因であり天候による事故はない。

カズワンの事故は、天候に対する判断ミスと考えるべきだろう。法による縛りがなければ何をしてもいいというわけではない。どんな事業も最優先は安全だ。司法がどう判断するのかはわからないが、このような姿勢の企業は世間が許さないだろう。


このコラムは、2022年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1291号に掲載した記事です。

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