方針管理」タグアーカイブ

目標設定

 先週末は、東莞和僑会「マネジメント塾・改善交流会」に出席した。

東莞和僑会年間会員企業の中国人幹部が参加して「方針管理・目標管理勉強会」を3年間開催した。各社の幹部・中堅中国人社員の育成を目的としている。
方針管理・目標管理の展開方法を年間を通して実践する勉強会だ。
方針・目標を達成するための現場力を鍛えるため、2年目からは順に会員企業の現場で開催している。現場で交流することにより、相互に学び合う事を目的としている。

この勉強会を通して中国人幹部の知識向上だけではなく、目標達成のコミットメントが格段に上がった。総経理から与えられた目標ではなく、自ら決めた目標だ。他人事ではなくなる。

4年目の今年から、更に内容を深め各社テーマを決めて現場の改善事例を相互に発表する形とした。今年の参加企業は5社だ。改善事例を聞きその現場を見学しディスカッションする形式だ。

ディスカッションが想定以上に活発となり、時間が押してしまうという嬉しい誤算があった。多分今までに他社の現場を見学し、改善事例を話し合うという経験がなかったのだろう。

その後各社混合で3チームに分けて取り組むべき課題をディスカッションし、発表。その後社内で議論して取り組む改善課題を決定してもらう。

交流会の中で改善目標の立て方について考えて見た。
年度計画を立て改善活動をする時に、人員削減前年比〇〇%、不良損失金額削減〇〇%という目標を立てるのが一般的だと思う。

生産性向上、多能工化などの具体的改善施策の結果を評価する時に人員削減を使う。同様に品質改善の評価に不良損失金額を使う。これは合理的だと思う。

しかしよく考えると、売り上げが下がれば必然的に人員削減をしなければならない。または売り上げが上がれば、不良率を下げても損失金額が下がらない事がありうる。

売り上げ金額も年度計画に入っているだろうが、計画は計画だ。市況により売り上げ金額は左右されてしまう。売り上げ金額は自社だけではコントロールできない。市場や顧客による影響が大きい。改善活動を実践する部門にとって追い風にも向かい風にもなりうる。

極端なことを言えば、不良損失金額をゼロにするための最も簡単な方法は生産しない事だ(笑)

例えば人員削減を目標とするではなく、一人当たりの生産性を目標とする。
損失金額を目標とするのではなく、損失金額を売り上げ比率で目標とする。
こういう目標であれば、追い風、向かい風の風向きに関係なく改善の評価が出来るだろう。


このコラムは、2019年3月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第798号に掲載した記事を改題・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

ココロで繋がる組織

 企業経営において方針管理・目標管理が重要であることには誰も異論はないと思う。
方針管理・目標管理と方針と目標を対であげている。目標を上意下達で一方的に下ろすのではなく、方針を共有しそれに合わせた目標を現場の管理職・監督職で決定するという意味だ。

目標そのものを上意下達すれば、それはノルマにしか見えない。しかし方針を上位下達し、現場で目標を設定すれば、現場の必達使命となる。使命とは文字通り命をかけたコミットメントだ。
それほど大袈裟なことではないかもしれないが、社長が鉛筆を舐めた目標よりは、自分たちで議論した目標の方が達成モチベーションは高くなる。

しかしこれだけでは弱い。
目標は期限内に達成したか、達成できなかったは明確に判断できる。
前職時に事業部長が業界ナンバーワンになるために年間売上500億という目標をぶちあげたことがある。500億円という数字には実感が湧かなかったが(笑)しかし業界ナンバーワンという目標には心躍った。しかし上期が終了した時点で、年間500億円は到底無理だと判明してしまった。メンバーのモチベーションは急降下、下期の成績も振るわなかった。

当時金額で目標を設定するから、達成不可能と判明するとモチベーションが維持できないのだと考えていた。

後に自分たちで設定した目標を必達目標とするための「ココロ」が欠けていたと気が付いた。
「ココロ」とは抽象的な言い方だが、組織の存在意義と理解していただきたい。自分たちが仕事をする目的が目標につながっていなかったということだ。

企業には経営目的とか経営理念がある。それが「ココロ」だ。経営目的や経営理念は、今期達成する・しないというモノではない。企業が存続する限り持ち続けるモノだ。

組織のメンバーが「ココロ」を共有し、それに反していない限り目標を達成できなくても、来年頑張ればいい、ということになるはずだ。

残念ながら、業界ナンバーワンという目標は1年で終わった。


このコラムは、2019年9月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第876号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

経営チーム

 企業経営をするのは経営者である、というのが一般的な理解だろう。
・経営理念をつくる
・経営計画を作り経営目標を作る
・経営目標を達成するための施策を考える。
・定例の経営会議で経営目標の達成度をレビューし、対応を指示する。
こういう仕事を一人でこなさなければならない。激務であり、心理的負担が大きい。そういう中で目標を達成し、業績を上げる。これが経営者冥利ということだろう。

以前お手伝いした企業の中国工場総経理は、自分は雇われ社長なので経営理念を作るのは自分の役割ではない、と遠慮しておられた(笑)3年近く説得して中国工場の経営理念を作っていただいた。そのあと中堅幹部までに、経営理念を説明。幹部・中堅幹部一人一人が各自その理念を実現するためのコミットメントを発表した。
メンバーの一体感が向上し、積極性が上がった。当然それは業績として目に見える形となる。

経営者が孤独に経営するより、経営チームとして経営する方が達成感が大きい。
経営者が孤独に祝杯を上げるより、プロ野球の祝勝会でチーム全員でビールかけをした方が達成感は大きいはずだ。メンバーの成長をメンバーと共に実感する喜びがある。自分一人の成長より、メンバーの成長の方が翌年以降の業績への貢献は大きいはずだ。

昨年から準備してきたプロジェクトがそろそろ開始する。
今回のプロジェクトでは、今までバラバラだった経営幹部の気持ちを一つにし、チームとして経営が可能なレベルにする。経営チームで企業文化を作り、業績を上げる。そんなプロジェクトになる。


このコラムは、2019年7月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第846号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

経営計画

 先週土曜日は朝から一日東莞和僑会の勉強会に参加していた。
朝からお昼を挟んで2時までは、限定メンバーで目標管理勉強会。3時から5時半までは、一般参加者向けの定例会。その後8時過ぎまで懇親会に参加した。

目標管理勉強会は今年から始めた試みだ。年度事業計画を作る事により、目標管理を勉強している。年末までに2016年の事業計画を作成し発表会をやる予定でメンバーの工場持ち回りで勉強会を開催している。第三回の今回は中国人スタッフも参加して、大人数で開催した。

私も前職時代は、品質保証部門長として、毎年年度計画を作成していた。
事業部室から、事業部年度計画作成の為の基礎データとして各部門の計画提出要求が来る。
品質保証部門の年度計画は、協力工場・仕入れ先指導の出張経費、人材育成費用、品質損失コスト程度しか無い。人員の変動はほとんどないので、労務費は前年のコピペで済んでしまう。

これを年度末にやる訳だが、ほとんど私一人で鉛筆をなめながらやってしまう。品質損失の売り上げ比率を、毎年の品質目標にしているので、営業部門の売り上げ計画から計算すれば来年度の品質損失コストの計画(目標)が出る。次年度の協力工場・仕入れ先指導計画だけは、メンバーが集まって各協力工場、仕入れ先の今年のパフォーマンス評価、来年の計画を作る作業をしていた。

事業部全体の事業計画を立てる事は無かったが、自部門の計画作成はこの程度で良いと思っていた。

しかし目標管理勉強会で、これでは不十分だと気がついた。
年度計画の作成は、予算の確保だと言う観点でしか考えていなかった。もちろん毎月のQA会議では、事業部長に目標の執行状況を報告する。品質損失コストの推移、品質指導の出張経費の執行状況、人財育成費用の執行状況により、計画が予定通り執行出来ているかどうか判断出来る。未達の項目が有れば、対策を議論する事になる。

こういう目標管理活動の計画を、自分が鉛筆をなめながらやってしまう。これが間違いだったと気がついた。人材育成計画や品質損失コストの目標達成施策は、予算の承認が降りた後にメンバーと議論していた。これではメンバーの参画意識を高められない。またメンバーに自部門の年間計画作成する訓練が出来ない。

勉強会の講師を勤めていただいている富田氏は、こういう日常業務を通して中国人幹部の育成をしていたのだろう。初めの2、3年は各部長が持ってくる計画はほとんどザルだそうだ。自分自身でザルだと分かっているので、自ら工夫努力する様になる。

最終的にはA3シート1枚の売り上げ計画が、A3エクセルシート30枚のバックデータを元に作成される。バックデータは顧客の製品別生産計画・新製品投入計画、業界の経済動向および自社の拡販計画が織り込まれている。

製造部門,生産技術部門なども同様に次年度の計画がA3シートで出てくる。

各部門の次年度計画が合体して次年度の事業計画が出てくる。
そこには毎月の人材採用計画、購買計画、設備投資計画が出て来て、それらの計画を実施する為に月次の資金計画が出てくる。

この過程に参加させる事が、最高の人財育成だと感じた。
こういう実戦訓練により経営マインドが育成され、自部門の都合より全体を考える力がつくだろう。

私自身も、そのような心構えで自部門の次年度計画を作っていれば、もっと経営者マインドを高める事がで来ただろう。多分独立後の苦労も少なかったはずだ(苦笑)

東莞和僑会「目標管理勉強会」はさらに進化し「改善交流会」を定例開催している。


このコラムは、2016年5月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第476号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】