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研究開発

 中国の現場で仕事をしていると,どうしても製造現場に偏りがちだ.今まで日系・台湾系のお客様が多かったため,研究開発は本社,生産は中国と住み分けが出来ているからだ.

元々開発設計上がりの品質証証マンなので,設計品質保証の仕事が少ないのを寂しく感じていた.

それでも応用設計は中国でやります.と言うお客様はあった.
応用設計の仕事は,ミスを減らしたり効率を上げるのは比較的易しい.

中国企業の場合は,開発設計の機能を持っているところが多い.
先週訪問した中国企業も,商品開発主導型の企業だ.
生産の方は,開発設計部隊の試作生産の延長と言う趣であり,多分あっという間に20%,30%は生産効率を上げられるだろう.

商品開発・製品開発の現場は,応用設計のように仕事がパターン化していないことが多く,効率を上げる努力をすると創造性を失ってしまうこともありうる.
大体設計者と言うのはルールに縛られるのを嫌がる(自分もそうだった・笑)

こういう仕事を無理やり「ISO9001だから」みたいな強制力で縛ろうとすると,うまくゆかないことがある.
例えば,設計審査などのレビューが形骸化しており,実際には設計を完了しているのに,初期設計審査の開催がまだ済んでいない.などと言うことが起こる.

もう仕事は終わっているのに,ISOのための「アリバイ作り」のために設計審査をするという形式主義に陥っている.このようなことはムダ以外の何物でもない.更に本来,設計審査で機能すべきチェックが働かなくなる.

私は前職の会社で,開発期間が3年もかかる製品の設計をしたことがある.
同時に顧客の受注から1ヶ月で最初の量産出荷をしたこともある.
もちろん異なる事業部での経験だが,会社の品質保証システムは一つである.システムと運用を工夫し,全くカテゴリィの違う製品も,同じ品質保証システムでマネジメントを出来るようにしていた.

こういう運用の工夫をすることで,研究開発エンジニアの創造性を失うことなく,新製品プロジェクトの目標管理,品質保証をしてゆくことが重要だ.


このコラムは、2012年3月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第247号に掲載した記事です。

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中堅中小企業の技術戦略

 元インテル日本支社長の傳田信行氏の話を聞く機会があった。
インテルと言えば,今では一流企業だが,傳田氏がインテルに入社した当時は従業員100名ほどのベンチャー企業だった。

絶妙なコピー「インテル入ってる」を,日本発で世界中に「Intel in it」として広めたのも傳田氏だ。
世界中のPCメーカがこぞってインテルの宣伝をしてくれた。
B to Bビジネスのインテルの宣伝をTVに流しても意味がない,とお考えの方はまだ思慮が浅い(笑)このTVコマーシャルで,学生の採用が格段にやり易くなったはずだ。

その傳田氏の話で,一番興味を持ったのがインテルの技術開発戦略の話だ。
インテルほどの大企業が,実は中央研究所を持っていないそうだ。しかし,まだインテルが小さかった頃から,新規技術の探求は怠らなかった。

インテルはCPUメーカとして成功を納めたと言っても良かろう。
1970年代に開発した4004という4ビットのCPUチップが、現在のCPUの原型だ。このICは,論理演算をするALUしか持っていない。コンピュータとして,プログラムの実行順序を制御するプログラムカウンタは、別のチップで実装せねばならなかった。

今でも鮮明に覚えているが、実験のデータをリアルタイムに処理するためにインテルの4040を使用してコンピュータを作ったと言う学会発表を聞いた。1970年代中頃、私はまだ学生だった。
当時の最新CPU4040は、ALUとプログラムカウンターが一体になった。
発表者は4040の採用により画期的に小型化することができたと説明していた。
しかし発表スライドにあった,その計算機の姿は小さめのミニコンと表現した方がよく,お世辞にも小さいとは言えなかった。

話が脱線してしまった。

当初インテルのCPU開発は,お客様から開発費をいただいてやる、下請け仕事だったのだ。
彼らのCPU開発を助けたのは,ビジコン、東芝テックなど日本のメーカだ。
ビジコンに勤務しておられた嶋正利氏が,インテル本社とともにCPUの開発をされ、その後の汎用CPU開発の基礎を作られたのだ。

その後も,日本人研究者のクリーンルームに関する論文に目を付け,彼と一緒に実験プラントを作り理論実証を一緒にやった。

こういう技術開発を,中堅中小企業も取り入れたらよいと思う。
中堅中小企業は,潤沢な資金も人材リソースもない。自前で研究開発をする事は難しい。しかし今のまま、モノ造りをしていたら早晩行き詰まる。新興の中国企業との価格競争に巻き込まれ,利益確保が難しくなるのは,目に見えている。常に新しい技術を模索していなければ,ならない。

中長期の事業計画の中に,3年,5年ごとの技術革新マイルストーンを置き,そのマイルストーンに適合する大学の研究や,異業種の交流会などに参加する。人材や資金がなくても,理論の実証実験の場を提供する,設備を作るなどの協力をする事は可能だろう。

まずは,自分たちの進む方向,マーケットの進む方向を考え,中長期に必要となる技術をピックアップしロードマップを作る。闇雲に手を出しても駄目だ。行きたい方向をまず定める。

来年度からの中長期ビジョンを,正月休みにでも考えてみられてはいかがだろうか。

参考文献「傳田信行 インテルがまだ小さかった頃」
(既に絶版となっている様だ。私は古書を確保できた)


このコラムは、2013年12月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第342号に掲載した記事に加筆修正しました。

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