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台湾メーカの電解コンデンサ

生産委託先から、コストダウンのために台湾メーカの電解コンデンサを採用したいと申し出がありました。設計者の部品指定は、全て日本メーカの電解コンデンサでした。従って台湾メーカの中国工場の電解コンデンサに変更すれば、コストダウンになります。
早速協力工場のVQA(ベンダーQA)のメンバーを連れて、電解コンデンサメーカの工場に採用監査に出かけました。広東省東莞市にある協力工場からベンダーの工場までクルマで1時間足らずです。輸送費だけ考えてもコストダウンになります。
立派な工場で、検査設備も一応のものは揃っています。工程間での中間検査も一生懸命やっています。これはうがった見方をすると、工程で品質を作りこむ自信がないから検査で不良を除去しようと言う姿勢とも受け取れます。これだけでは安心できません。
工程内を一通り見て回り、少なくとも不良品が流出してくる可能性はかなり低いように思えました。一応このメーカと付き合い始めて、品質指導をすればよい工場になるかもしれないと言う思いが芽生えていました。
しかし電解コンデンサの性能・信頼性を左右する電解液の調合工程を最後に確認したところ、調合比率に関する作業手順書も品質記録も見当たりません。他の工程では手順書も品質記録もしっかりしているのに、この工程だけがありません。この点について聞いてみると、手順書に落としてしまうと、作業員が調合比率を知って、よその工場に行ったり、独立したりして同じ製品を作ることができるから秘密にしてあるのだと言います。さらに驚くべきことに、調合作業は2人の作業員に教えてあり、2人が調合した電解液を混ぜて始めて使えるのだそうです。従って2人が揃ってスピンアウトしない限りは本当の調合比率は分からないと言うことです。
実はこの会社の創業者は、以前日系の電解コンデンサメーカに勤務をしており、そのときのノウハウで創業したのです。自分自身がそうであった様に、彼は従業員を信用できないわけです。
そのために、中間検査を一生懸命やっていたわけです。電解液の調合比率については、中間検査の結果が品質記録だと言えば、ISO的には文句のつけようがありません。しかし電解液の調合比率をその初期特性だけで評価することはできないと思います。最近話題になった水系の電解コンデンサが磨耗型の市場不良が多発した問題は、初期特性だけでは評価できません。
そのほかの管理については比較的よくやっており、この1点のみで採用不可にするのはあまりにも惜しいので、条件付で採用OKにしました。その条件は生産ロット(出荷ロットでは意味がありません)ごとにサンプルを抜き取り、ORT(On Going Reliability Test)で品質を保証する、と言う条件です。
しかし残念ながら、私の採用監査レポートを読んだ設計のエンジニアは腰が引けてしまい、部品表にこのメーカは追加されませんでした。
品質保証の立場から行くと少しほっとしたのは事実ですが、安い部品を使おうと思ったら何らかの工夫をして使えるようにしなければなりません。