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モチベーション

 先週末は東莞和僑会の定例会「方針管理・目標管理勉強会」で東莞市黄江鎮の工場に出かけた。2018年の勉強会最終回は来年の経営計画の発表を行った。

午後は一般の参加者も交え会場となった工場を見学した。数ヶ月おきに工場を訪問しているが、そのたびに新たな発見をする素晴らしい工場だ。

今回の訪問では涙が出るほど感動した。

この工場では「気づき提案」制度があり、全従業員から「ここが不便だから直して欲しい」という気づきを上げることができる。提案された案件は、改善チームが必ず検討し、提案を採用するか見送るかを判断し提案者にフィードバックする。多くは作業手順書の誤記の指摘とか、通路の区画線が消えている、などの簡単なものだそうだが、中には予算をつけて本格的な改善活動とする例もあるという。

この制度に昨年は約24万件の提案があったそうだ。従業員500名ほどなので、年間一人平均480件ほどの気づき提案をしていることになる。驚くことに最も多く提案した人は21,000件の提案をしているという。
毎日100件ほど提案していることになる。
最多提案者には報奨金も出るそうだが、大した額ではない。毎日100件も提案を続けるモチベーションはどこになるのか興味を持った。同じ興味を持った人の質問に対し、直接作業員たちと仕事をしている監督職は自分たちのリーダのために気づき提案をたくさん出してくれるのだ、と答えた。

チームリーダーは、業績でチームが評価される。最も生産性の高いチームは3,000元の賞金が出るという。他にも気づき提案の件数も評価の対象となる。チームリーダのため、チームのためという利他の精神を発揮できる従業員が多くいるということだ。以前メルマガに書いたマズローの第六段階「自己超越欲求」だ。

マズロー第六段階欲求

もちろん提案しても何も変わらない様では提案制度そのものが機能しなくなる。
気づき提案全てに対し、改善チームの検討とそのフィードバックがあるというのも、提案件数をあげるモチベーションになっていると思う。しかしこれはネガティブな要因の排除に過ぎない。「チームリーダを喜ばせたい」というポジティブなモチベーションがあるのが大きいはずだ。

ポジティブなモチベーションが発揮されるのは、チームリーダとメンバー間の信頼関係に基づいた、貢献と感謝の相互依存があるからだ。


このコラムは、2018年12月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第764号に掲載した記事に加筆しました。

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マズロー第六段階欲求

 先週末は第八期品質道場の最終回「品質意識向上」を開催した。
人の意識・意欲はどの様なメカニズムで動くのか?社会学者や心理学者の実験・研究を紐解き、それを組織の品質意識向上にどう役立てるのか?というテーマで勉強した。

20世紀にはあらゆる角度で人のモチベーションに関する研究が行われその成果が発表されている。しかしその研究成果が十分経営に生かされていないと常々感じている。

例えば「マズローの段階欲求説」は人の欲求を五段階に分け、下位の欲求が満たされると、上位の欲求を望む様になる、という理論だ。
五段階の欲求は以下の様になっている。
第一段階:生理的欲求
第二段階:安全欲求
第三段階:社会的欲求
第四段階:尊厳欲求
第五段階:自己実現欲求

中国人従業員のほとんどは、第一段階、第二段階の生理的欲求、安全欲求を満たしている。それでもなお、金銭が労働に対する主要因であると考えている経営者が多くおられる様に感じる。

ほとんどの従業員は、社会的欲求(所属している組織や集団に守られていると感じることができる)、尊厳欲求(仲間や組織が自分を承認していると感じる)を満たしている、または望んでいる段階だと思う。
その上で「自己実現」を目指すことになる。

というのがマズローの段階欲求説だ。
従って、金銭的なインセンティブよりは、より挑戦的な仕事を達成し仲間や上司から賞賛されることの方がモチベーションが上がるはずだ。

ところで「自己実現」を果たしてしまった人は、どこに行くのだろう?
もう死んでもいいという境地になるのだろうか(笑)
達観してしまえば、もうこの世には未練はないのかもしれない、と小人の私は考えていた(苦笑)

マズローは五段階欲求説を発表後、晩年に第六段階の欲求を発表している。
実は恥ずかしながら最近知った。

その第六段階の欲求は「自己超越欲求」と言われている。
自己実現の次は自己超越というとなんだか当たり前の様に思えるが、自己超越とは「利己」を超えて「利他」の境地に至るということだ。

自己実現までの段階はすべて「自分」が中心だ。自己生存欲求、自己成長欲求、自己実現欲求。自己が他人や社会・組織との関係で自己実現するまでの欲求で五段階は終わっている。

その先は他人の利益「利他」を目指す、というのは私たち仏教徒(葬式の時にだけ仏教徒になる潜在的仏教徒を含む)にとってとてもわかりやすい。

つまり自己実現を果たした人は、世のため人のために貢献することを欲求する。
自己超越欲求とは、社会貢献欲求と言い換えてもいいだろう。これには終わりはない。自己実現を果たした後も永遠に続く欲求だ。これなら何歳まででも生きられる(笑)


このコラムは、2018年5月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第663号に掲載した記事に加筆しました。

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