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初期流動管理

 先週のコラム「設計審査を企業文化とする」で、設計審査の事例をご紹介した。また設計部門を持たない、中国工場で設計審査を企業文化にした事例もご紹介した。

それに対して読者様からメッセージをいただいたので、ご紹介したい。

※M様のメッセージ

 私が以前所属していた企業も、生産を100%外部に委託するファブレスでした。QAレビューの後に、量産開始の初期流動会議、量産移行会議等で、事前確認するようにしていました。それでも予期せぬ不具合が発生することもありましたが、概ね不具合を事前に予防することができたと記憶しています。
 やはり基本をコツコツと手抜きせず継続することが成功への近道なんですね。

全く同感です。
決められた事をコツコツやってゆく。そういう行為が、習慣となり、習慣が文化を作る。

今の時代のモノ造りは、差別化する事がどんどん難しくなって来ている。
同じ材料を、同じ機械で、同じ様に加工するだけでは、競合との差別化は出来ない。材料も、設備も、技術も誰でも簡単に手に入れることができる。
差別化出来る要因は「人」以外にはない、と言えるだろう。
人の感性を商品設計に盛り込む。人の良き習慣で企業文化を作り上げる。
モノ造りは,人の手作業から、省力化・機械化に向かった。そして今度は、「感性」と言うキーワードに従って「人」に戻って行くのだと思う。
人の手から出て人のココロに戻ると言う事だ。

さて前置きが長くなったが、「設計審査を企業文化とする」の続編として、M様もメッセージで触れている、初期流動管理について、話をしてみたい。

設計審査文化として、設計完了から生産・出荷までのフェーズには「出荷判定会議」と「初期流動完了判定会議」を開催していた。
設計審査は、設計部門の主催で、設計の完成度を確認する審査だ。
出荷判定と初期流動完了判定は、品質保証部門の主催で、生産品質を確認する審査だ。

出荷判定会議は、最初の出荷ロットの生産で、今後の生産で品質保証出来る事を確認する。

  • 生産のための設備、治工具類が準備出来ている。
  • 生産設備の調整や設定が確定している。
  • 作業手順は確定し、作業者への教育・訓練が確実に行われる。
  • 工程能力指数が十分ある。
  • 工程内不良の解析設備・能力が十分ある。
  • 工程直行率が一定の基準をクリアしている。
  • 原因を特定出来ない工程内不良がない。
  • 関連法規の認定がおりている。

等を確認する。
最初の出荷ロットを、ただ造り上げただけでは、上記の項目はパス出来ない。
同じ品質で次のロットも作り続ける事が出来るかどうかを確認する。

この審査が合格しない限り、出荷は出来ない。

出荷判定会議にはもう一つ決定事項がある。それが初期流動管理期間と管理項目だ。

出荷判定会議がめでたく合格判定となると、出荷が開始され初期流動管理期間となる。初期流動管理とは、予防保全活動の一種であり、初期の段階で潜在不良の要因を潰してしまうための活動だ。

初期流動管理期間は、最低3か月。製品にあわせて初期流動管理終了の条件を決める。例えば、直行率99.9%以上を初期流動管理終了の条件と決めると、3ヶ月経っても、直行率99.9%を達成していないと、初期流動管理は継続となる。

初期流動管理中は、最低1ヶ月に1回初期流動管理会議を開催する。
会議では、管理項目に指定された内容を報告審議する。例えば、工程能力指数、工程内不良の不具合解析結果、などが報告され、改善方法などが審議される。

当然この様な管理は,工場にとっても、事業部にとってもコストがかかる。
利益幅があるから、コストをかけても平気な訳ではない。本格量産になってから問題が顕在化すると、顧客に迷惑がかかるし、修復のために大きなコストが発生し、利益など吹き飛んでしまう。それを防ぐための予防保全なのだ。

顧客が価値を感じてくれている所には、コストをかけてでもその価値を上げなければならない。

顧客の我々に対する評価は、開発期間が短い、量産試作サンプル提供が速い、市場品質が安定している、と言うポジティブな評価が、価格が高いと言うネガティブな評価をカバーしていた。

この様な顧客の期待に応えなければ、その他大勢のベンダーと価格競争で受注を奪い合うことになる。


このコラムは、2013年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第331号に掲載した記事です。

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