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医療事故

 航空機は一番安全な乗り物だ。空を飛ぶという危なげな航空機の方が地上を走る列車、自動車と比べても安全だ。それは、事故や重大インシデントを徹底的に業界全体で共有し、再発防止・未然防止を図っているからだ。

その対極にあるのが医療業界だろう。
医療事故が公表され業界で事例共有されることはほとんどない。

厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長・白鳥圭輔、愁訴外来科医師・田口公平が活躍する小説「チーム・バチスタの栄光」が発表されたのが2006年。2008年には映画化され、TVドラマも放映されている。
現実には2014年の医療法改正により医療事故調査委員会が設置されている。
よほど医療業界の抵抗が大きかったのだろう(苦笑)

「失敗の科学」という書籍には、2005年米国で発生した医療事故を紹介している。

「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」

副鼻腔炎の手術で入院した患者を医療ミスで死亡させてしまった事例だ。
手術の前に麻酔技師が麻酔をかけ、酸素吸入のため気管挿管をしようとするが、うまくゆかない。執刀医、麻酔主任が集まって気管挿管を試みるが、うまくできない。気管挿管に手こずったまま時間が経ち患者は脳死状態となった、という事故だ。気管切開によって気道確保すれば事故には至らなかったはずだ。実際看護師は気管切開のための準備を完了していた。

医師たちは目の前の問題に囚われ、別の解決方法が見えなくなっていた。チームの上下関係により看護婦は代替え解決案を発言できなかった。チームが自由闊達な組織文化を持っていれば、このような視野狭窄を防ぐことができたはずだ。医療界そのものがこういう組織文化を持っているのではなかろうか?

コミュニケーション、上下関係が硬直した組織では、事故事例の共有・再発防止は難しい。


このコラムは、2020年7月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1000号に掲載した記事に加筆したものです。

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