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サッポロが宇宙ビール5カ月「滞在」した大麦の子孫を使用

 サッポロビールは3日、国際宇宙ステーションに5カ月保管されていた大麦の子孫を使ったビール「スペースバーレイ」を販売すると発表した。
小瓶(330ミリリットル)6本入りを1セットとし、価格は1万円。250セット限定でインターネットで申し込みの受け付けを始めた。

 同社は昨年にも同様のビールを生産し、抽選で60人に無料で提供した。一般に販売するのは今回が初めて。売上金は岡山大学を通じ、子どもの科学教育のために活用するという。

 サッポロはロシア科学アカデミー、岡山大学と共同で、宇宙環境が大麦に与える影響を調べてきた。「タンパク質の性質などから通常の大麦とまったく変わりがないことが確認できた」(岡山大学)ため、商品化に踏み切った。
受付は12月24日正午まで。

(NIKKEI.NETより)

 6本で1万円もするビールにどう価値を求めるか。
たった250セットしかないという希少価値と、宇宙帰りの大麦という浪漫が1万円に見合うと感じるかどうかであろう。

コスト的な観点から考えれば250万円の売り上げでは、大麦を宇宙に5ヶ月保管した上で栽培し、ビールにすることは不可能だろう。サッポロビールはビジネスとして「スペースバーレイ」を販売したわけではないはずだ。

しかしこの事例は顧客が価値を感じる部分、希少価値、浪漫に徹底的にコストをかける。という戦略を示唆している。

顧客価値に対し積極的にコストをかけ、その「物語性」をアピールする。
これによりとんでもない販売価格を実現できるのだ。

例えば今私がキーボードをたたいているMacBook Pro。
このノートPCの筐体はアルミを削りだして作ったものだ。普通のノートPCはプラスチック成型の筐体であり、明らかにコストがかかっている。
しかしキーボードのタッチ感覚、そのデザインなど所有者の価値認識を的確に捉えており、同等機能PCの2倍の定価で販売されている。それに加え「アップル社」という物語性がその価値を支えている。

こういう戦略は顧客から受け取った図面どおりの生産をしていては絶対に出てこない。どのようにしたら顧客に価値を与えられるかを考え抜く必要がある。顧客すらまだ気がついていない価値をこちらから提供できれば、顧客-業者という関係から、一気に顧客に不可欠なパートナーとなることができる。

ところで6本1万円のビール、私は買うことはないだろう。
いくらビール好きとはいえ、「スペースバーレイ」に物語性を感じられない。
ビールと宇宙がつながっていないのだ。

しかも宇宙帰りの大麦が「タンパク質の性質などから通常の大麦とまったく変わりがないことが確認できた」というのでは最悪だ。これではずっと地球で育った大麦のビールと同じ味しかしない。


このコラムは、2009年12月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第129号に掲載した記事に加筆しました。

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