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F1プロジェクト

 設備産業の場合は設備の稼働率が生産性に大きな影響を与える.

  • メンテナンスをきちんとすることにより設備停止時間を減らす.
  • バッチの切り替え時間などの段取り換え時間を極限まで短くする.

これらの改善で生産性が向上する.

また段取り換え時間を極限まで短くすることにより,作りすぎをしない,フレキシブルな生産体制が実現できる.

現在お手伝いしている工場では当初,バッチ切り替えの段取りに1時間半かかっていた.これを1/3にすることを目標に活動している.簡単に1/2まで改善できたが,そこからが意外にも進まなくなってしまった.

作業員たちに私がいっていることの意味が良く伝わっていないと感じ,F1のピットの話をした.
レース中にピットインしたマシンに,さっとクルーが駆け寄り,タイヤの交換と給油を一瞬のうちに済ませサーキットに送り出す.中国でもF1グランプリが開催されるようになったので,この話は管理者たちに良く理解できたようだ.

まず管理者の心に火がついた.
しかしこれだけではまだ改善はできない.そこで段取り換えの作業を全てリストアップしてもらい,タイムチャートを作った.これをチーム作業として誰がどのタイミングで何を準備して,どう作業するかが分かるタイムチャートに作り変えた.

更に段取り換え時間短縮活動にF1プロジェクトを言う名前をつけた.
これで作業者の心にも火がついた.
毎回何分で作業が完了したか大きなグラフで掲示をした.毎回の成績が目で見えることで皆のやる気が出てきた.

実はこれだけで今は段取り換え時間1/3(30分)を達成しており,新たな目標15分で活動を継続しているところである.

実はこのストーリィには経営者の大きな助力があった.
工場の管理者たちは全てF1を知っており,TVなどで中継を見たこともある.しかし作業員の殆どは知らなかった.
そこで経営者は帰国した折に鈴鹿サーキットに出向きフェラーリチームのピットの上からピット作業をビデオに納め,従業員全員に見せたのである.

多分サーキットで一番高い席であろう.サラリーマン経営者としては自腹でビデオを撮ってくるのは大変なことだったと推測している.こういう熱意があるから改善ができるのだと思う.


このコラムは、2008年5月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第35号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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