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異文化理解より自己理解

 海外で仕事をしていると,その国と日本との違いに対しとても敏感になる.

  • 明らかに間違っていても謝らない.
  • 仕事より個を優先する.
  • 同僚の仕事には関心を払わない.
  • 上司に指示された事はやるが,指示されない事はやらない.
  • 直属の上司に指示された事はやるが,別の上司に指示された事はやらない.

こう言う日本とは違うリアクションを,部下から受ける事が多々ある.
この時に,なぜ彼らが想定外の行動をとるのかと考える.しかしこう考えているとなかなか彼らの行動原理を理解することができない.
日本はどうしてそういう行動をとらないか?と逆のアプローチで考えると,答えを見つけることができる様な気がしている.

そういう訳で,中国人の行動様式について書かれた書籍より,日本人の行動様式がどういう背景で成り立っているのかをテーマとした書籍に目がいく様になった.
海外に出ると日本がより理解出来る,と言うが,こう言う事なのだろう.

先週は「すみませんの国」と言う本を読んだ.
「すみませんの国」著者:榎本博明

私は,日本人の特殊性を「均一性」で説明して来た.
つまり日本民族が世界の中で特異な存在であるのは,日本社会が「均一」である事を要求することにより,日本人の特殊性が何代にも渡って形成された.
それに対して,大方の国は「多様性」が基本となっている.

日本人がすぐに謝るのを「均一性」で説明すると,その場にいる人々との調和を乱さない為に「とりあえず」謝っておく,と言うことになる.

著者の榎本氏は,日本は他国から侵略を受けた事がないから,謝る事に抵抗がない,と説明している.世界で侵略を受けた事がないのは,日本人,アラスカのイヌイット,ニューギニアのニモ族だけだそうだ.

そう考えると,中国は統治者が変わるたびに,侵略を受けて来た様なものだ.いちいち謝っていては,命が危ないと言う意識がDNAに刷り込まれているのだろう.

日本人がその場の調和(均一性)を保とうとする行動を,著者は「状況依存」と説明している.原理原則を通す事より,その場の状況に合わせて,場の雰囲気を乱さない様に行動する事だ.それに対し欧米は「原理原則」を優先する.

例えば,中国人部下に同僚の仕事を手伝う様に指示しても「それは私の仕事ではありません」となる.これは職務分掌と言う契約(原則)が優先であり,「困っている人がいれば助ける」と言う行動にはならない.
日本では職務分掌そのものが曖昧である事もあるが(笑)契約と言う原則より仲間が困っていると言う状況解決の行動をとることになる.

中国人の行動を理解するよりは,日本人の行動原理を理解した方が早い.
中国人部下の行動が理解出来たとしても,それを解決する事にはならない.
日本人の行動原理を理解すれば,どうすれば部下が好ましい行動をとれる様になるのかが分かるだろう.
もしくは自分が好ましいと思い込んでいる行動様式は,非常識だと気が付くかもしれない(笑)

異文化理解より自己理解.一度試されてはいかがだろうか.


このコラムは、2013年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第303号に掲載した記事です。

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