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那覇空港ヒヤリハット事故

 先週のニュースからで、自衛隊ヘリ、日本トランスオーシャン航空機、全日空機、のヒヤリハット事故を紹介した。
続報によると、
全日空機に対する管制官の「速やかに離陸せよ」と言う指示を、自衛隊副操縦士が自分への指示と勘違いした。
管制塔との通信の間に機長は、乗組員への指示や機内の点検にあたっていた。
そのため副操縦士の勘違いに、機長も気が付かなかった。
その結果離陸助走中の全日空機の前を横切ってしまった。
と言う顛末の様だ。

続報で新たに分かったのは、自衛隊のCH47ヘリは、操縦席から後方確認がしづらい構造になっていると言うことだ。

自衛隊那覇基地の幹部は、11日に記者会見で経緯を説明し再発防止対策を発表している。

各紙の報道によると、その再発防止対策は
朝日新聞

  • 乗組員への指示と管制のやりとりを同時に行わない
  • 離陸前に後方の安全を確認するために機首を向ける
  • 管制の指示の確実な聞き取り

日本経済新聞

  • パイロットが管制官の指示を確実に聞き取る
  • 離陸時には他機の状況を把握する

読売新聞

  • 重要な交信などを決して聞き逃すことがないよう運用を見直した

毎日新聞

  • 飛行量の多い那覇空港などについては、飛行前の点検などで機内のクルー間のやりとりが終了した後に、管制に離陸許可を得るよう運航手順を見直した

同じ記者会見からこうも幅のある記事が出て来るとは(苦笑)
取材記者の問題意識と理解度により同じ再発防止でも違う内容に理解される。

朝日新聞の「管制の指示の確実な聞き取り」日経新聞の「パイロットが管制官の指示を確実に聞き取る」これらは対策とは言わない。どうすれば「確実な聞き取り」となるのかもっと踏み込まねばならない。

読売新聞の記事では、運用をどう見直したか不明だ。毎日新聞の記事を読んで初めてどう運用を見直したかが判明した。

今回のヒヤリハットの原因は、

  1. 管制官の離陸許可を聞き間違えた。
  2. 離陸助走中のANA機を見落としていた。

の2点だと思う。これを更に真因まで原因分析を深める。

1.に関して、

出発前の準備完了後管制塔とのコミュニケーションをすると言う再発防止対策は、流出防止対策だ。
機長が出発前の確認、乗務員への指示に忙しく、ダブルチェック出来なかった、と言う「流出原因」の防止対策でしかない。
本来、なぜ他機に対する離陸許可を自機のモノと勘違いしたか?と言う原因を追求しなければならない。
記事には公開されていないが、管制官の指示「ANA○○便、速やかに離陸せよ」の前半がなければ、勘違いしてもムリはない。また管制官は、自衛隊機の復唱を聞いていないと言っているが、なぜ聞こえなかったのか?この原因を追及しなければ、形を変えて事故が発生する。
また「飛行量の多い那覇空港では」と再発防止対策に曖昧な制限を付けると、潜在要因に対する「未然防止対策」とはならない。

2.に関して、

自衛隊のヘリコプターは、昔の黒電話の受話器様な形をしており、操縦席から後方確認が出来ないのは、素人目にも理解出来る。そして災害救出の為に出動する自衛隊のヘリコプターは、管制設備が整った飛行場以外でも離着陸をしているはずだ。離陸時に一気に上昇しないで、ホバリングで前後左右を確認した後に上昇すると言うのは常識のはずだ。
何かまだ隠れている原因が有るはずだ。

大事故と言うのは、水面に浮かぶ氷山と同じだ。
大事故として見えているのは水面上の部分だけであり、水面下には大事故の何倍ものヒヤリハットが有る。
原因も水面下の氷と同じく、表面には見えていない。原因究明を表面的にやって、対策をしても水面上の氷は以前として存在し、また浮上して来る(事故は再発する)


このコラムは、2015年6月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第428号に掲載した記事に追記しました。

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