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統計思考力

 以前「統計学が最強の学問である」という本を空港の書店で発見し、一気に読んだ。

「統計学が最強の学問である」西内 啓著

先週末は「統計思考力」という本をBOOK OFFで見つけ即買いした(笑)

不透明な時代を見抜く「統計思考力」神永 正博著

どちらも数式を使わずに、統計学の意味を伝えようという趣旨で書かれている。

私は製造現場で統計学を応用できる様に指導をしている。
統計学の意味を理解するだけではなく、実際に活用しなければならない。
しかし私も、極力数式を使わない様にしている。
数式はExcelが勝手に計算してくれるので、その意味を理解してもらう様にしている。数式で説明してしまった方が簡単だが、その数式を見て理解するにはある程度の素養が必要となる。

そんな訳で、この二人の著者の努力には大いに共感できる。

私の場合は現場で応用するという必然性がある人に教えているので、彼らより楽だろうと思う。統計理論や確立理論となじみのない人に対して、統計学に興味を持ってもらう様に書かねばならない。このつかみがなければ、本は手にとられない。

神永氏は「ゆとり世代は学力が低い」は本当か?という問いでつかみに成功している様に思う。
少なくとも「統計力」などというマニアックな分野で出版し、文庫化を果たしている。多分多くの人がこの本を手にしたのだろう。じっくりこの本を分析し、どうしたら数学に興味がない人をこちらの世界に引き込めるか研究したい(笑)


このコラムは、2015年10月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第445号に掲載した記事です。

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データの活用

 データを活用して仕事のパフォーマンスを評価する。生産活動の中で日常的に行われていると思う。SPC(統計的工程管理)SQC(統計的品質管理)もその一種だが、1日の生産量、品質の出来映え、納期の遵守率など単純なデータで管理する事も多い。

管理すべき指標に合わせて採取するデータが変わる。
例えば、生産量のデータを毎日記録していても生産性は分からない。生産に要した時間、作業人数を記録する事により一人当たりの単位時間生産量が計算できる。これが生産性の指標になる。

当たり前の事だが、これが出来ていない工場を時々見かける。
ある工場では、品質指標として「直行率」(手直しなしで工程内検査を合格する率)と「品質達成度」を毎日記録していた。「品質達成度」が平均90数%となっている。
日々の推移を見るグラフでは、ほぼ毎日100%を達成しており、1日だけ85%と言う日が有った。これで平均が100%近くになるはずはない。よく見ると、品質達成率が125%の日がある。
またもう一つの品質指標である「直行率」を見ると、0%(手直せずに完成する製品が0個と言う意味)の日が沢山ある。

このような状況で、平均90数%の「品質達成率」と言うのは奇異だ。担当者に「品質達成率」の意味を尋ねると答えられない(笑)

このように作成したグラフが、毎月の経営会議なり品質会議で一人歩きしている。

どこかに間違いがあるはずだ。収集しているデータがおかしい、データを計算しているExcelの計算式がおかしい、指標そのものがおかしい、と言う事を確認しなければならない。

実はこのような事はままある。
標準作業時間を決める時に、ストップウォッチで作業時間を計測しただけの値を使っている。
部品調達率を計算する時に、ベンダーの納期回答に対する差異を使っている。
ベンダーの品質能力の指数に、受け入れ検査合格率だけを使っている。
顧客に対する納期遵守率に、納期変更後の日付を使っている(苦笑)

例を挙げれば、いくらでも出て来るだろう。

またこのような事例は現場だけではない。
経営者がバランスシートしか見ていないのでは?と疑問を持たざるを得ない事例を良く目にする。この様な工場では、材料在庫、中間在庫、完成品在庫が大量にある。こういう状態で受注が増えれば、あっという間に資金がショートし倒産する。

事例に挙げた工場では、コンサルに指導を受けてKPI管理をしている。
グラフを作成するためのExcelシートはコンサルが提供してくれたそうだ。管理すべき指標が正しいのか、指標が正しく管理出来ているのかをコンサルは指導しなかった様だ。

こちらもご参考に
「データの活用」


このコラムは、2016年8月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第488号に掲載した記事です。

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データで確認する

 常識だと思って、間違った判断している事が、意外と多いのではないだろうか?

例えば、静電気による不良は空気が乾燥している冬の方が多い、と皆が思っているが、実は夏場空調の風が当たる場所の方が帯電しやすかったりする。
ヒューマンエラーについて研究している中田亨氏は、ヒューマンエラーによる労働災害のデータを調べてみると、常識と思っていた事がことごとく違っている。と指摘している。

「ヒューマンエラー対策 事例から見たミス防止の実際」中田亨著

以下の様な事例が上記の書籍に出ていた。

  • 安全事故が多い時間帯:終業時刻間際? または 午前中?
  • 事故が多い季節:夏と冬? または 季節で有意差なし?
  • 事故を起こしやすい人:慌て者、新人,年配者? または 模範的中堅者?
  • 落下事故が起きやすい高さ:3m以上? または 3m未満?

どちらが正解と思われるだろうか?

調査データによると、全て後者だそうだ。
「常識」だと思っている事がただの「思い込み」である、という事が多い様だ。
「こうであるに違いない」と思い込んでいると、全てがその様にしか見えなくなる。他の考えが思い浮かばなくなる。

事実は現場・現物・現実でデータで理解する。
データがないモノは、先ず疑ってかかる。
このくらいの心構えがちょうど良いくらいだろう。


このコラムは、2017年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第518号に掲載した記事に加筆しました。

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RQCとPQC

 RQC、PQCとは何だ?と疑問に思われた読者様も多いだろう。
無理もない、私の勝手な造語だ(笑)
RQC(Reactive Quality Control):反応的品質管理
PQC(Proactive Quality Control):積極的品質管理

例えば工程内不良を分析し、再発防止対策を実施する。これはRQCだ。
不良が起きなければ改善は出来ない。
それに対し、PQCは不良の発生を予測し事前に対策を実施する。

例えばP管理図やC管理図で工程管理するのはRQCだ。一定期間の生産が終わった所で不良率や欠点数を計算して初めてP管理図又はC管理図が描ける。管理図を見て問題を発見した時は、既に問題が有った生産は完了している。
同じ管理図でも、生産開始時に初物検査でx-barR管理図を描けばPQCになる。初物検査で問題を見つける事が出来れば、生産開始前に改善が可能となる。

工程能力指数(Cp、Cpk)も同様にRQCとしてもPQCとしても機能する。
試作時に工程能力指数を計算し、しかるべき手を打てばPQCとなる。ロットごとに工程能力指数を計算するのはRQCだ。

PQCを更に高度にした場合を考えてみよう。
例えば、生産設備にセンサを取り付けて、故障を先に予測し保守作業を事前に行えば、設備起因の不良や、生産停止は大幅に削減出来るだろう。
マイクや振動センサーを使えば、設備の振動の変化で異常を事前に感知出来る。
非接触温度計で刃具の先端温度を測定していれば、刃具の摩耗が進むと先端温度が上昇するはずだ。

以前勤務していた会社は、工場のオートメーションのための自動制御システム、各種のセンサーや測定器を開発商品化していたので、このような設備のPQC応用も研究していた。しかし本当のノウハウは、それを必要としている現場にある。


このコラムは、2017年1月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第511号に掲載した記事に加筆しました。

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