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相違点より共通点に着目

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 中国で企業経営をされているほとんどの方は,中国人の考え方がわからないなどの悩みを持たれていると思う.オペレーションを中国人にまかせて,仕事をする訳だから,種々の困難があるだろう.
そのため世の中には,「日中の文化の違い」「中国人の考え方」「中国人管理法」などの書籍が溢れている.

これらの書籍は,中国文化や中国民族性と日本の違いを例を挙げ説明し,どう中国人を管理したら良いかを説いている.
曰く,中国の若者は「反日教育」の影響で,皆反日感情を持っている.
一人っ子政策のため,大事に育てられ,忍耐力や協調性が弱い.
公より私を重視するため,会社より個人を優先する.その結果条件が良ければすぐに転職する.
利己主義が強く,回りに迷惑をかけても気にしない.
などなど上げたらきりがない.

もちろん,中国文化や生活環境を理解することは重要だろう.特に日本の「特殊性」を理解し自覚することが重要だ.

しかし日中の相違点にばかり注目しても,有効な答えは見つからないだろう.
相違点を理解して,「だから駄目なのだ」と分かったとしても,どうすれば良いかと言う答えは見つからない.

反日教育を変えることは我々には不可能だ.
「私より公を重要視する」「忍耐力」「協調性」「利他主義」などは,日本人が持っている「特殊性」だと思っている.それは日本と言う国が「均一性」を前提として成り立っているからだ.
実はこれらの特性は,日本の中でも我々ロートルの常識であり,若い人たちにとっては非常識なのかもしれない.

相違点を探し,違いに着目するよりは,共通点を見つけ,それをマネジメントした方が,ずっと楽で効率的なはずだ.
つまり中国人と日本人の違いに着目するのではなく,人間としての共通点に着目すると言うことだ.

日本でも,中国でも「幸せになりたい」と言う願望は同じだろうし,そのため「自己成長」を目指すことになる.
この共通点をマネジメントすれば,「自己成長」を求心力として.従業員のモチベーションを高めることができるはずだ.

公より私を重視する人たちに,「愛社精神」を説いても,心には響かない.「愛社精神」は古き良き時代の日本的特殊性だ.それよりは「自己成長」と言う共通性でマネジメントをした方が,より効果的だと考えている.


このコラムは、2012年11月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第284号に掲載した記事に加筆したものです。

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TED Talks

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 TEDと言う言葉をお聞きになったことがあるだろうか?
広める価値のあるアイディアを、T(テクノロジー)E(エンターテイメント)D(デザイン)の分野で、世界中の人々がプレゼンテーションをする、という趣旨で活動している人達だ。
年に一度TEDカンファレンスを開催している。
その広める価値のあるアイディアのプレゼンテーションをインターネット上で拡散しているのがTED Talksだ。

先週たまたまPodcastの番組を探していたら、TED Talksの日本語字幕付きの動画を見つけた。その中でアレックス・ラスキーと言う人が「行動科学で電気代が安くなる」と言うテーマで講演している動画を見つけた。彼は米国で、節電を促進する啓蒙活動をしている様だ。

講演の中で面白い事例があったので、皆さんにご紹介したい。

カリフォルニア州サンマルコで行動科学の実験が行われた。
調査を行った大学院生達は、近所の家庭を回り、エアコンを止めて扇風機を使って節電する様に訴えるチラシを配布した。そのチラシは以下の4種類あり、それぞれ同数ずつ配布した。

  1. エアコンを止めて扇風機にすれば1ヶ月で54ドル節約出来る
  2. 環境保護に関するメッセージ
  3. 節電をして善良な市民になろう

1.のチラシは具体的な節約金額も入っており、効果がありそうに思える。
しかしこれら3つのチラシはどれも、全く効果がなかった。

効果があったのは4番目のチラシだけだった。
4番目のチラシにはこう書かれていた。
「調査の結果、ご近所の家庭の77%がエアコンを切って扇風機を回しています」

日本人は個より全体を重視する傾向にある。従ってご近所が皆節電していると分かると、自分もやろうとする。こういう心理や行動は理解出来る。しかし日本人よりはずっと個を大切にする米国人にも、効果があると言うのは意外だった。

余談だが、最近米国の中国駐在大使が辞任して本国に帰国したそうだ。
理由は「家族のため」と公表している。しかし本心は「PM2.5がひどくてもうヤダ」と言う事の様だ(笑)日本人のメンタリティとは随分違っている。

そういう米国人でも「ご近所が……」と言うと行動を起こす、これは驚きだ。
そして、中国人にも、こういうアプローチが有効かもしれないと気が付いた。

好ましい行動を促進するために「周りの人は皆そうしているよ」と動機付けをする。中国人の部下をお持ちの方は、ぜひお試しいただきたい。
バレバレな「皆そうしてる」は逆効果かもしれないが(笑)
ぜひ試してみた結果をお知らせいただきたい。

「皆そうしてる」は、行動心理学では社会的証明と言われており、成果が期待できそうだ、ということを一言付け加えさせて頂く。


このコラムは、2013年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第337号に掲載した記事に加筆したものです。

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