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日産、米消費者情報誌の元幹部を採用 品質管理担当に

 日産自動車は22日、米国の有力な消費者団体専門誌「コンシューマー・リポート」の自動車試験センター幹部だったデイビッド・チャンピオン氏を、品質の管理や評価などを担当する部門の幹部に採用すると発表した。「コンシューマー(消費者)目線」を重視し、品質向上につなげる狙いだ。

 米コンシューマー・リポート誌は、自動車や家電製品などの安全性チェックなどで信頼が厚く、米国の消費者に大きな影響力を持つことで知られる。チャンピオン氏は、同誌で自動車メーカーが売り出した車の安全性などをテストして論評してきた経験がある。1994年から97年まで日産で品質向上関連の技術者として働いていたといい、今回は「古巣復帰」となる。

 米国日産は「彼の経験は、我々の自動車に対する顧客の満足度を高めるのに役立つ」とコメントした。(ニューヨーク=畑中徹)

(asahi.comより)

 コンシューマー・リポート誌は,独自の評価を消費者の立場で提供する専門誌として,1936年から発行されている月刊誌だ.メーカから評価サンプルの提供を受けず,第三者として評価する姿勢が,消費者の信頼を得ている.

実は私は,学生時代から「暮しの手帖」を愛読していた.主婦向けの雑誌ではあるが,製品評価記事が好きで読んでいた.大学の指導教官だった恩師の影響で読む様になった.
いずれの記事も一貫して商業主義に左右されない生活者本位の視点が貫かれ,家庭電化製品や日用品を中心とした商品テストは,その条件の厳格さで製品のメーカーに大きな影響力を持っていた.

社会人となり,メーカで開発のエンジニアになった時も,その評価手法を勉強した.同誌は家庭用品,私は工業用製品と製品のジャンルが違っていたが,使う人の立場となって評価する姿勢は大いに参考になった.

コンシューマー・リポート誌は読んだ事はないが,暮しの手帖と同様の匂いがする.その雑誌社から自動車評価の専門家をヘッドハンティングした日産の姿勢にも大いに共感する.
少し気になるのは,コンシューマ・リポート誌がどちらかというと日産に好意的な評価をしている様に思える事だ(笑)自社に批判的な記事を書くテスターを採用していたら,もっとすごいと思っただろう.

新製品開発をする場合,設計が設計仕様通りに出来ている事を評価する事を,設計検証という.新製品評価は設計検証だけではなく,より消費者の立場に立った「妥当性評価」をする.この妥当性評価は,設計担当者部署ではなく,品質保証部が中心となって実施する事が多い.

私は開発エンジニア,品質保証部門の責任者として仕事をしていた時に,若い頃暮しの手帖を愛読した経験が役に立ったと実感している.

妥当性評価の結果,設計変更を要求した事もある.しかし残念な事に,この仕事は社内ではあまり評価されない(苦笑)
なぜならば,消費者からのクレームを未然に防ぐ仕事だから,その成果が見え難い.具体的にユーザクレームが発生していれば,その損失金額は明確となる.しかし製品をリリースする前に,クレームの芽を摘んでしまうので,損失金額は見えない.

新製品のクレーム損失金額が,売り上げに対する割合をいくら以下に抑える,という目標を立てることにより,成果を経営陣にアピールする様にしていた.

しかしどちらかと言えば,縁の下の力持ち的な仕事である.
今回の様に,評価のプロを外部からヘッドハンティングして来る,という経営判断は,縁の下の力持ちたちに,自分の仕事に誇りが持てる様再認識を与える事が出来たのではないだろうか.

日本の企業は「自前主義」が根っこのところにあるが,外国人社長を迎えた日産ならではの判断だろう.

実は私も自社の海外工場の品質保証責任者としてマレーシア人を採用する様,事業部長に進言したことがある.彼はお客様のQE(品質保証エンジニア)として,インドネシアの工場に監査・指導にたびたび来ていた.その度に私が日本から出張し,顧客監査の対応をしていた.立場が違うが,お互いの力量を認め合う仲となった.

彼がインドネシア工場の品質責任者になれば,顧客監査は全て彼が対応することができる.顧客の内部事情を良く知っているので,一石二鳥だ.しかもマレーシア出身の彼ならば,インドネシア語が理解出来,現場のリーダ,作業者を直接指導出来る.

一石三鳥くらいの効果があると,事業部長を説得したのだが,残念ながら本人から断られてしまった(笑)


このコラムは、2012年8月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第272号に掲載した記事です。

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