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水野氏が台湾の自動車メーカーへ!その意図とは!?

 2014年12月12日、東京・品川のTKPガーデンシティ品川において「華創日本株式会社」の発足発表会が開かれた。

この華創日本(かそうにほん)株式会社の代表取締役・最高執行責任者(COO)に、あの“ミスターGT-R”と呼ばれGT-Rの開発責任者を務めた「水野和敏」氏が就任したというのだから驚きだ。

華創日本株式会社は、台湾の「HAITEC(ハイテック)」と呼ばれる自動車技術開発会社の日本部門「HAITEC JAPAN」の開発窓口として設立された。HAITECとは「ITと自動車の結合」を目的とした会社で設立は2005年。

「htc」や「ASUS」「acer」などの台湾のIT系企業と「裕隆グループ」など自動車系企業の両面から出資を受けている。なお、水野氏はHAITECの車両開発担当 副社長にも就いている。

なぜ、水野氏は台湾の会社の取締役へ就任したのか。それについて、水野氏は「“日本・台湾圏”という、車両開発における新たな『アジア圏』を構築したい」とする。

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(オートテックワンより)

 水野和敏氏は日産で数々の名車を作り出した開発エンジニアだ。日産での彼の仕事の集大成がGT-Rだったのではないだろうか。エンジニアが「やりたい放題」で楽しんで作った車だと思う。

その水野氏が日産を定年退職した後に台湾企業に、迎えられると言う。
日本の五大紙はこの大ニュースを全く報じていない様だ。(検索をしても全くヒットしない)半導体技術の流出と同じレベルで捉えているのではなかろうか?

水野氏が考えている事は、そんな小さな事ではない。

日本が世界の自動車産業をリードして行けるか?
トヨタが、販売台数世界一になっても、売上高世界一になっても、それが10年続くのか?と言う問題提起だ。
100万円台の車を新興国でたくさん売っても、それはすぐにでもキャッチアップされる。電気自動車の普及はそれを加速するだろう。電気自動車では従来の自動車企業が持っていた優位性は無くなる。
普及品をたくさん売っているだけでは、価格競争の波に飲み込まれ、未来への開発投資が確保出来なくなる。それは未来の収入が無くなる事と同じだ。

そのためには、300万~500万円の高級車ゾーンでシェアをとらねばならない。開発にかかる投資は、100万円の車でも500万円の車でも大差はない。この価格帯で成功しているのは、ドイツのメーカだ。彼らは自国で未来の開発
をするとともに、東欧で今日と明日の開発をしている。米国ではメキシコとの協業が進んでいる。

(余談だが、広西省のGMには、本社からクレイモデル作成や、試作評価のエンジニアが赴任して来ていた。彼らは中国で設計開発する事も視野に入れていると考えた方が良さそうだ)

では日本はどうするか、水野氏の答えは台湾企業との協業だ。

そのために、“クルマの造り方”と“開発の仕方”。つまり「クルマを作る思考」そのものを作る仕事、「思考作り」を第二の人生の仕事としたのだろう。

別の記事の中で、水野氏はこう言っている。

俺はこの話があったときに向こうの会社に行って、コアメンバーを、200人くらいいたかな。みんな集めてもらった。そして全員の前で、「みんなに聞きたいことがある。これからも日本車や韓国車と競合するようなクルマで満足するのなら、悪いけど俺はここへ入らないよ。みんなが本気になって、欧州のトップブランドと真っ正面から張り合う気があるのなら、俺はこの会社に来る」と言ったんだ。「今ここで決めてくれ。水野がここで仕事していいのか、それとも水野なんか要らなくて、今まで通り自分たちのやりかたで仕事をしていくのか!」、と。

水野氏の問いかけに対し、台湾のエンジニア達は、日本が自動車先進国であることは百も承知している。そしてヒュンダイあたりが安くてバリューのいい車で世界に打って出ていることも意識している。じゃあ、俺達台湾勢はいったい何を作ったらいいんだという迷いが吹っ切れ「一緒に世界を目指そうぜ」と言うことになったそうだ。

これは自動車産業だけの話ではなかろう。
最近低迷している日本の電気・電子産業にも同様の事が言える。

開発が停まれば、未来はない。今日明日の食い扶持を稼ぎながら、未来に投資する戦略を考えなければならない。


このコラムは、2014年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第403号に掲載した記事に加筆したものです。

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