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手放す事

 「手放す」「捨てる」と言う事が意外と難しい。
材料倉庫の片隅に、使わない材料が山の様になっている。完成品倉庫には、出荷の見込みがない完成品が残っている。当然こういうモノは、整理の対象だ。
しかし「勿体ない」と言う気持ちが働きなかなか捨てられない。気持ちは理解出来るが、本当に勿体ないのは、使わないのに余分に材料を買ってしまう事であり、出荷しない物を余分に作ってしまう事だ。

以前にもご紹介したが、私の友人は工程内の不良品は「修理しない」と決めた。
修理をすれば、材料は再利用出来る。しかし修理をせずに、捨てると決めた。
捨てることにより、この工場は「次のレベル」を手に入れることができた。
つまり、工程内不良が以前の1/10以下になったのだ。
歩留まりを上げると言う考えを捨て、不良を作らない工夫をすることにより、不良率1/10と言う「新しい品質レベル」を手に入れた。

両手にリンゴを持ったチンパンジーは、好物のバナナを見つけた時にリンゴを手放しバナナを拾うだろう。

とても単純な事だが、意外と実践出来ない人が多い。
特に過去に成功体験を持っている人がそういう傾向にある。
成功体験も手放さなければならない。手放さなければ、次の体験が出来ない。つまり成長出来ない。

営業に対する報奨制度を作ったら、売り上げが激増した。
しかし最近は売り上げが落ちて来た。経営者は、営業マンがさぼってるから、罰金制度も導入したいと言う。営業マンのモチベーションさえ上げれば、売り上げが伸びると言う考えを手放せば、顧客の需要の変化が売り上げ減の原因だと気が付くはずだ。

ベルトコンベア式の生産は効率が良い、と言う過去の体験を手放さなければ、時代の変化に即したフレキシブルなモノ造りは出来ない。

技術や作業の標準化も同じだ。古い標準を手放さなければ、新しい技術、作業方法は手に入らない。


このコラムは、2014年11月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第396号に掲載した記事を加筆改題したものです。

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