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IPQCの検査データ捏造

 第337号のメールマガジンで、JR北海道のデータ改ざんニュースから、工場内の同様な事例を紹介した。

2週続けて、安全規定の非遵守受け入れ検査の偽造の事例と、それに対する対策をご紹介した。今週はIPQCの検査データ捏造の事例についてご紹介したい。

IPQCの問題点は以下の通りだった。

  • IPQC(工程内検査)の検査データ捏造
    IPQCは2時間ごとに、半田ごての温度、絶縁抵抗を測定することになっていた。
    しかし現場に巡回して来たIPQC検査員は、絶縁抵抗測定器を持っておらず、全て10MΩ以上と記入していた。検査員に理由を問いただすと、自分が使っている絶縁抵抗計が壊れ修理中だと言う。

本件に対して、皆さんはどのような再発防止対策をされるだろうか?
本件には、読者様から何も反応がなかった。実は当時私もどうすべきか困った(笑)

結論から先に言うと、絶縁抵抗をIPQCでチェックするのを止めた。
肩すかしの様な回答で申し訳ないが、検査をしたかの様に捏造をするよりは、やらないと決めた方が良いと判断した。
絶縁抵抗を測定しなくても良いと判断した理由は、工程内で使っている半田ごては、全て高絶縁のセラミックヒータを使用していたからだ。ヒーター線はセラミックの中に埋め込まれており、絶縁不良となる事はあり得ない。セラミックが破れて、内部のヒーター線が露出すると言う故障モードが発生したとしても、劣化でその様な故障が発生する訳ではない。落下などの事故により発生する。従ってIPQCのチェックでは事前に劣化を見つけられない。

小手先の温度測定も、同様にIPQCの温度測定機が故障中と言う事はあり得る。
温度測定機は、各工程が小手先温度の設定確認用に持っている。IPQCの役割は第三者チェックだ。
IPQCの小手先温度計が故障している時は、生産現場の測定器を使用する事とした。勿論第三者チェックなので測定器も別の物を使うのが原則だ。IPQCは1フロア20ラインを一人で見ており、2階、3階に一名ずついる。二人に一台予備機を準備すると言う方法でも良かったが、現実的な対応を選んだ。

現実的な対応で良いかどうか議論はあるかもしれないが、もっと大きな問題は別の所にある。

測定器が壊れているのだから検査出来ない。適当にチェックリストを埋めておけば良い、と言う風潮が一般化する方が大問題だ。

ではなぜその様な事が行われるのか?
この問題を作業者の素質が低い、とすれば「作業者に注意しました」「作業者に再教育しました」と言う再発防止対策になる。

どうして作業者が、測定もしないでデータをチェックシートに書き込んだか、その理由を考えなければ解決は出来ない。

検査用測定器が壊れている時に

  1. 測定器が壊れたら、どうすれば良いか分からなかった。
  2. 今まで不具合はなかったのだから、測定しなくても大丈夫と判断した。
  3. 測定しなければならないと思ったが、相談する相手がいなかった。

検査作業員は、半日に1回20ライン全ての半田ごてをチェックしなければならない。上記の様な状態で悩んでいたら、仕事は終わらなくなる。

最終的には、IPQCの作業手順書を書き換え、測定器が異常となった時の手順を加えた。測定器が故障した時の報告、現物への表示、台帳への記入、修理依頼、この様なやらねばならない手順が不明確だから、何とかごまかそうとする。

データを捏造した事は叱らねばならないかもしれないが、結局指導者の配慮が足りていない事が本当の原因だ。作業者の素質のせいにしておくと改善の方法は見つからない。指導方法に問題があると考えれば、改善が出来る。


このコラムは、2013年12月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第340号に掲載した記事に加筆しました。

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