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病院の顧客満足

 病院に行くと何がつらいかというと、延々待たされることである。待たなくて良いように開院前に出かけ受付窓口で並んで待つ。遅くなってしまうと待合室には座る場所もなく立って待つことになる。病人には辛いものがある。健康でないと病院にも行けない(笑)

先日健康診断のために病院に行った。
ここの病院は、患者さんが待っている間快適になるように待合室を大きくし、大型のTVも設置するなど顧客満足を図っているように思える。

しかし何かが違う。

私は胃のレントゲン検査を終え次は泌尿器科の受付で待っているように指示をされた。しかし待てど暮らせど呼ばれない。待っている場所を間違えていないか心配になってきて、そっと診察室をのぞいてみると、医師は文庫本を読んでいる。

これは看護婦さんに待っている場所があっているのか聞いてみなければと思っているところへ、ちょうど事務係がたくさんカルテを抱えて泌尿器科の受付にカルテを置いていった。

単にカルテが回ってこなかったので待たされていたのである。
カルテの運搬をバッチ処理で行っているため、運が悪いと延々待たされることになる。

待っている時間を快適にする事が顧客満足ではなく、待っている時間を短くする事が顧客満足である。

ということに気がついていないのだろうか。

しかも一番給与の高い医師を「手待ち」にしている。工場で言えば、一番高価な設備を遊ばせておくのと同じだ。物の流れをスムースにして、生産効率を上げなければならない。
病院も患者の流れをスムースにして待ち時間を短くして顧客満足を上げなければならない。

大きな病院では天井近くにパイプが通してあり、筒に入ったカルテが空気圧でスーッと跳んでゆくのを見た事がある。また最近ならばイントラネットでカルテを電子化しておけば、紙のカルテを運ぶことなど必要ないはずだ。

中小の病院だってこんな設備投資をしなくても改善できるはずである。患者にカルテを運ばせれば良いだけだ。
ひとつの窓口で診察が終わったらカルテを渡し次の窓口に行くように指示をすれば良い。

こういう方式ならば、待ち時間も少なくなるだろうし、カルテ運搬の事務員も削減できるはずだ。

コストを下げて顧客満足を上げる。
よい方法だと思うのだが。


このコラムは、2013年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第315号に掲載した記事に加筆しました。

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矩を踰えず

yuē:“shíyòuérzhìxuésānshíérshíérhuòshíérzhītiānmìngliùshíérěrshùnshíércóngxīnsuǒ。”

《论语》为政第二-4

素読文:
いわく:“われじゅうゆうにしてがくこころざす。さんじゅうにしてつ。じゅうにしてまどわず。じゅうにして天命てんめいる。ろくじゅうにしてみみしたがう。しちじゅうにしてこころほっするところしたがいて、のりえず。”

解釈:
孔子曰く:“我十五歳にして学問に志した。三十歳で自分の立ち位置を決め。四十歳にて惑うことは無くなった。五十歳で天から与えられた使命を理解し、六十歳にして全てを受け入れる余裕ができた。七十歳で心の赴くままに行動しても道理を踏み外すことは無くなった。”

十五歳:志学、三十歳:而立、四十歳:不惑、五十歳:知名、六十歳:耳順、七十歳:従心

六十代最後の一年で、なんとか耳順の境地に至りたいものです。

心のスイッチ

 第34号のメルマガ「四川省大地震」にも書いたが、四川地震以来の中国人の被災者を思いやる心、貢献心に大変感動をしている。

しかし通常の生活では相変わらずである。
先週はバスに乗って出張したが、バスの入り口は我先に乗り込もうとする。並んでいる私は一番最後の乗車になった。

バスの中では本を読んでいる私の耳元で大声で話をするカップル。みよがしに耳栓をしてみたが、まったく気にするフシもない。
携帯電話で自分の好きな音楽を鳴らしている若者。日本ではイヤホーンから漏れる音でさえ道徳違反だと騒がれるのに、彼は携帯電話のスピーカから音楽を流している。

思いやりのかけらもない。
こういう人たちがどうして被災者を思いやり貢献心を発揮するのだろうか。

今私がたどり着いた仮説は「共通目的」である。
地震災害により中国国民が一斉に「被災者救助」「被災地の復興」という共通目的を持った。この共通目標が彼らの心のスイッチを入れ「他人を思いやる心」「貢献心」を発揮しだしたのだと考えている。

この仮説は検証してみる価値が高いと思う。
あなたの工場には従業員の心のスイッチを入れる共通目的がありますか?

ホームラン打者

 伝説の営業マンと言われるフランク・ベドガーの本を読んだ。
「頑張れ社長!」のyoutubeチャンネルで紹介されているのを見て、即近所の古本屋に探しに行った。

「私はどうして販売外交に成功したか」フランク・ベドガー著

大リーグの選手だったベドガーは緩慢なプレーで解雇される。その後移籍先のマイナーリーグで、重要なのは野球の技術ではなく情熱だと気がつき大変身。しかし試合中に骨折で引退。保険外交員となるが鳴かず飛ばず。そんな不幸のどん底から伝説の営業マンになる。2日で読了した。

書籍中に「ベーブルースの偉大な記録714本のホームランは1,330回の三振に支えられている。」という記述があった。
では我らが王貞治は?という思いで調べて見た(笑)

【王貞治】
通算打数:9,250
本塁打数:868
三振数:1,319
四球:2,390

【ベーブルース】
通算打数:10,617
本塁打数:714
三振数:1,330
四球:2,062

王貞治の868本のホームランは1,319回の三振に支えられている。ベーブルースも王貞治も三振の悔しさをバネにホームランを打ちまくったのだろう。更に王貞治は2,390本の四球、ベーブルースは2,062本の四球を選んでいる。多分強打者に打たれるより四球を与える方が試合を組み立てる上で有利だ、という相手チームの判断だろう。一塁が空いていれば王貞治は敬遠され歩かさせる。四球はバットを振らせてもらえない。悔しいに違いない。

更に王貞治には「王シフト」という試練もあった。守備は全て右寄りに守る。外野に4人配置するチームもあった。
サード側に転がせば必ずヒットになる。
しかし王貞治はそれをやらなかった。どんな守備をされてもフェンスを超える打球を打ち返すことだけを考えていた。

私たちも今、悔しい、辛い状況にある。膝を屈することなく前を見よう。
明けない夜はなく、やまない雨もない。

■■ 編集後記 ■■

最後まで読んでいただきありがとうございます。

本日ご紹介した書籍「私はどうして販売外交に成功したか」は1964年初版です。
この年には東京オリンピックが開催され、王貞治は本塁打55本の記録達成。
2020年東京オリンピックは延期になったが、この書籍のメッセージを56年の時間を経て今受け取ったことに何らかの因縁を感じます。

久しぶりにYoutubeに動画を投稿しました。
よろしければご笑覧ください。


このコラムは、コロナ禍で日本待機中の2020年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第990号に掲載した記事です。

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信而后労、信而后諫

xiàyuē:“jūnxìnérhòuláomínwèixìnwéixìnérhòujiànwèixìnwéibàng。”

《论语》子张第十九-10

素読文:
子夏しかいわく:“くんしんぜられてしかのちたみろうす。いましんぜられざれば、すなわもっおのれなやますとすなり。しんぜられてしかのちいさむ。いましんぜられざれば、すなわもっおのれそしるとすなり。”

解釈:
子夏曰く:“君子は民の信頼を得て後に、民を働かせる。信頼を得ずに働かせると、民は自分たちが苦しめられていると思う。君子は君主の信頼を得て後に、君主を諫める。信頼されないうちに諫めると、君主は自分が謗られていると思う。

部下に信頼されていれば部下は心良く働く。上司の信頼を得れば自分の意見を聞いてもらえる。現代人の組織も同じですね。

100%成功したら面白みも何もないんです

100%成功したら面白みも何もないんです

NTN 会長 鈴木 泰信 氏

 7~8年前になりますが、若い人が動圧軸受という新しいアイデアを生み出してくれた。社内で反対があったのですが、開発を続けました。ありがたいことに、それが日本電産さんのHDD用のモータに用いられる軸受に育ったんです。
全文

(日経ものづくり Tech-On! より)

ハードディスクドライブのスペインドルモータの軸受けの開発を若手のエンジニアに任せて成功を収めた。今ではこの製品が月産1000万台だそうだ。

鈴木氏は経営者として迷いもあっただろうが、「チャレンジする機会を若者に与えてあげられるかどうかが経営者の責任」と開発を続けたそうだ。こういう経営者の元で働く若いエンジニアは意気に燃えるであろう。

鈴木氏のプロフィールを見ると、製造部門を長く担当しておられたようだ。設備は高さを低くし見通しを確保しなければならない。大きさは1/2。など製造現場で活躍しておられた方だから出てくる言葉だ。

私のパートナーも同じ考えだ。彼が設計する生産設備は「デスクトップ設備」というコンセプトでできている。

  • 大きさは作業台の大きさまで。
  • 完全自動は狙わない。
  • 人と調和を持って生産する自働機を目指す。

こちらのアイディアがすんなりと伝わるのは基本的なコンセプトが一致しているからだと思う。

まず私が徹底的に現存のラインのムダ取りをし、彼の設備を導入して更に改善するというスタイルでコンビを組んでいる。まずムダ取りを先にして置かないと、ムダも一緒に機械化してしまう可能性がある。そんなコンビでの仕事は、生産スペース1/2、生産性50%アップ、リードタイム1/6を実現化した。


このコラムは、2018年5月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第32号に掲載した記事です。

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ハードパワーとソフトパワー

 中国の拡大政策が止まらない。『一路一帯』と称してアジアから欧州まで、アフリカ大陸、ニュージーランド、北極圏まで手を伸ばしている。それらの国々は中国からの資金に期待しているように見える。しかし借入金を返済できなければ、領土を取られる。チベット、香港の人々は相当抑圧されているように見える。

一方で、日本は米国に原子力爆弾を投下され国中を焦土にされ占領された。
しかし現代の日本国民の大方は「鬼畜米英」などとはいわない。むしろ米英に親近感さえ抱いている。この違いはどこから来るのだろうか。

少年期を「ALWAYS三丁目の夕日」の時代で過ごし、高度成長とともに成長した世代の私にとって、アメリカは憧れだった。「名犬リンチンチン」「名犬ラッシー」「ライフルマン」「ザ・ルーシー・ショウ」「パパは何でも知っている」などのテレビドラマが世界に開いた窓だった。

今思えば占領国である米国は、それらTVドラマのソフトパワーで戦後の新世代を「洗脳」し親米国家を育て上げた。さらに占領軍が派遣したデミング博士の教えにより、日本は米国と比肩しうる工業国家に成長した。

その後もロカビリー、ポップス、映画などのソフトパワーで親米日本人を育成し続けている。

70年安保の頃、毛沢東語録を胸のポケットに持った学生が多くいた。しかし中共も毛沢東も日本人に何ら夢を与えなかった。夢を失った革命闘士は内ゲバに走り、自ら消滅していった。

第二次世界大戦後の覇権国家・米国はソフトパワーで世界を制し、その後中国が、金と軍事力のハードパワーで世界覇権を狙っているように思える。

2500年前中国は老子、孔子などの偉大な思想家を持つソフトパワー国家だった。
残念ながらそのソフトパワーは引き継がれていないようだ。
孔子は政治家を「ああそうひとなんかぞうるにらんや。」と嘆いている。(《論語》子路編第十三-20

孔子には現在の中国が見えていたのだろうか。


このコラムは、2019年11月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第906号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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山本品管部長奮闘記(35)

 山本は屋外の喫煙所のベンチに座っていた。午前中にU350の生産ラインを確認し、小楊に説明用資料の準備を指示した。昼食を済ませオフィスに戻ってもなんとなく落ち着かず、社屋入り口横の喫煙所に出て来た。
2本目のタバコに火をつけた時、U社の社名が入ったワゴン車が入って来た。駐車スペースに止まったワゴン車から、熊苗苗と背の高い男性が降りて来るのがみえた。慌ててタバコの火を消した山本は、オフィスの入り口で二人を出迎えた。「お久しぶりです」U社社長秘書の熊苗苗がにこやかに挨拶しながら近づいてくる。「お疲れ様です」山本は扉を開いて二人を迎え入れる。会議室に二人を案内すると、すでに陳総経理と小楊が待っていた。びっくりしている山本に「先ほど熊さんから、もうじき到着します、と電話があったんです」と小楊が説明する。会議卓を見ると、U350生産のQC行程図と作業手順書のコピーが準備されている。
早速名刺交換が始まる。名刺には「電源技術係長 前多和幸」とある。名刺を受け取った小楊が素っ頓狂な声をあげる。「わぁ!いい名前ですね!」着席しながら名刺を見直した山本は「前多」という性が珍しいと思ったが、いい名前の意味がわからない。陳総経理も「おぉ!」と声を上げている。熊苗苗は微笑を浮かべて小楊に頷き返している。山本と前田だけが意味がわからず顔を見合わせた。「前多さんの名字を中国語で発音すると『銭多』と同じになりなります」と小楊が説明する。「しかも名前も合わせると『お金が多くて幸せ』になるんです」と熊苗苗も微笑を浮かべて説明する。前多も初めて聞いたようで感心している。
「珍しい名字ですね。前多さんはどちらのご出身ですか?」「石川県です。前田はたくさんいますが前多と書くのは少ないです。石川県には同性の人が少しいるようですが」

なごやかな雰囲気で打ち合わせは始まった。QC行程図に従って作業順序、品質管理項目を説明。U350改善活動に従って作業手順をどう変えたかを説明した。
前多は山本が書いたU350改善活動報告書を読んでいたが、実際の作業手順を見ながら説明を受けいちいち納得したようだった。
「何かご質問はありますか?」山本の問いかけに「よくわかりました。現場を見せていただけますか?」と前多がいう。冷めかけたコーヒーを飲み干して「では現場に行きましょう」と山本は立ち上がった。
「ちょっと仕事を片付ける」という陳総経理を残して、前多、熊苗苗、山本、小楊の4人は2階の生産現場に向かった。

前多は作業工程を一つづつ丁寧に見て回った。時折山本に質問をするが、その質問が純粋に好奇心からくる質問であり、顧客工程監査時のようなあら捜しの質問ではない。山本は気持ちよく答えていた。一通り工程を見て回り、会議室に戻る。

「工程をご案内いただきありがとうございます」と礼を言いながら、前多は鞄から小さな電源を取り出した。U350の半分ほどの大きさだ。
「今回生産をお願いする電源の技術試作品です。小型プロジェクター用なので小さくするのに苦労しました。電力消費は小さいのですが、出力電圧が高いので絶縁距離を確保する苦労しました」前多が試作電源を山本の方に差し出す。
試作電源を受け取った山本は一通り眺めて、陳総経理に渡す。「今度の電源は作りやすそうですね」山本の言葉に陳総経理も頷く。

「今回の製品は、製品企画台数が月あたり10万台です。月7千台のU350と違って量産機種なので、品質管理手順が少し厄介なのです」前多は申し訳なさそうに続ける。「まず量産試作で1000台生産していただきたいと思います」「それは全然問題ないです」陳総経理が即答する。「量産試作電源と光源を組み合わせ最終評価をします」前多は続け、申し訳なさそうに「面倒なのは1000台分の特性データを全項目、工程能力指数を計算してもらわなければなりません」
「それも問題ありません。私どもの検査装置は検査データを、HDDに記録しているので自動で工程能力指数を計算できます。自社製品は量産試作だけでなく、量産開始後も工程能力指数を継続監視しています」山本の説明に前多は安堵したようだ。
「生産開始後3ヶ月は初期流動管理をしています。毎日検査データ、直行率を前多さんにメールすることも可能です」と山本は続ける。
「それはありがたいですが、私ではなく品質保証部の担当者に送ってください」前多は苦笑しつつ「私たちは次の製品を開発しなければなりませんから」と続け、「ところで御社の『初期流動管理』はどんな手順でやるのですか?」と質問する。
山本は商品企画会議(受託製品の場合は見積もり判定会議)、設計審査、量産試作審査、出荷判定会議、初期流動管理までの一連の流れを説明する。
真剣にメモを取っている前多に「弊社の品質保証体系図に手順の説明があるので、コピーを差し上げましょうか?」と声をかける。「え!良いんですか?」と顔を上げた。確かめるように陳総経理の顔を見て山本は「問題ないです」と答える。
前多は「ありがとうございます。うちはランプが主力製品なので、電源の開発手順と合わないところがあるのです。参考にさせていただきます」
「ところで最近はLED光源のプロジェクターが増えているように思うのですが、御社のビジネスに影響はありますか?」と陳総経理が尋ねる。
一瞬眉を曇らせた前多は「ランプは製造方法だけでなく駆動回路にも工夫が必要です。これが参入障壁になっているのですが、LEDはデバイスを買ってくればおしまいですからねぇ」自嘲気味の微笑みを陳総経理に向け「今回の新商品は、LED光源のプロジェクター市場に殴り込みをかける覚悟で取り組んでいます」
陳総経理は、まずいことを聞いてしまったという顔をしていたが「それは良かった」と破顔し「ところで夕食をご一緒しようと準備していますが、いかがですか?」と尋ねる。前多は隣の熊苗苗の顔を見る。
「すみません。今日は早く帰らないといけないので」と熊苗苗が答える。
「では、早めに切り上げるということで」陳は食い下がる。
「申し訳ないです。今日は夫が出張のため、私が娘を学校に迎えに行くことになってるのです」「えっ!熊さんお嬢さんがいるのですか?」山本は思わず声を出していた。隣にいる小楊が下を向いて笑いを堪えているのが視界の端に見え山本は危うく理性を保った。


このコラムは、2020年3月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第959号に掲載した記事です。

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山本品管部長奮闘記(34)

 二日酔い気味で日曜日をぼんやり過ごした山本は、先週末改善交流会に参加したメンバーの顔を思い浮かべながら出社した。彼らはどんな感想を持ったか話を聞くのが楽しみだった。
品証部のオフィスに入ると、小楊が挨拶もそこそこに声をかけてきた。「陳総経理が呼んでます。」陳総経理も改善交流会の感想を話したいのかな?などと考えながら、陳総経理のオフィスに向かう。
意外にも小楊がついてくる。小楊に顔を向けると「僕も一緒に来いと言われてます。」これは改善交流会の話ではなさそうだ。「何の話か聞いてる?」小楊は首をかしげるだけで、要領を得ない顔をしている。

総経理室に入ると、すでに陳総経理は未決書類の箱から伝票を取り出しサインをしている最中だった。会議卓を顎で刺す。席を立ちながら「今日午前中にU社の技術係長さんが来社する」と言いながら陳総経理は山本と小楊の向かいに座る。「山本君、何か聞いてるか?」そういえば春節休暇中に肥沼事業部長から聞いた話を陳総経理に話していなかったと気がついた。「肥沼さんからU社電源の受注を増やそうという話は聞いていないのですか?」「うん、それは今年度の事業部方針で知っている。どうもU社の社長は、山本君の改善活動に感心して、新機種の発注先をウチにするように、日本本社に進言してくれたそうだよ」肥沼事業部長はそんなことは一言も言っていなかったなぁと思いながら「新機種の開発前に設計部の前多係長さんという方が、うちの生産現場を見たいそうです。」「設計者が?」「そうなんです。製造現場を見なければいい設計ができない、と言っておられるそうです」「そういう考えの人がU350のような設計するかなぁ」陳総経理は皮肉な顔で言う。「まぁ、いいじゃないですか。今度は期待できるかもしれませんよ。」
肥沼事業部長の方針で主力製品をPC電源からプロジェクター電源に切り替えることは、陳総経理も理解している。今後主力となる製品の生産に苦労したくはない、と言う考えは山本と同じだ。「それは大歓迎だな。午後一で前多さんと熊さんがくるそうだ」熊苗苗の名前が出て、山本は心が踊るのを感じた。頬が赤くなっていないかと気が気でない。「でも今日はU350の生産予定ありましたっけ?」「今日から生産です。そういえばひと月ほど前に、熊さんからU350の生産計画を聞かれてます。」小楊が答える。「じゃぁ、午前中にちょっと準備をしておこうか」席を立ちかけた山本に「夜は前多さんと食事だな、空いてるだろ」と陳総経理が確認する。顔が緩みかけているのを抑えて山本は頷き総経理室を辞した。

山本は「よし。現場に行くぞ。」自室に戻るなり小楊に声をかける。

2階の一番奥のラインは、生産開始の準備中だった。欧楊組長と張春華班長が作業員をあつめ、作業手順・注意事項の確認をしているところだった。1ヶ月に1度しか生産がない。そのため毎回生産開始時に作業手順・注意事項の確認をすることになっている。以前このラインは陳南初組長と張春華班長が担当していた。陳南初が製造課長に昇格。SMT実装部の欧陽班長が組長として異動して来た。U350品質改善時に、他部所でありながら積極的に改善に貢献した欧陽が今はそのU350組み立てラインの組長になっている。ラインの作業指示書の横に掲示してある工程内不良事例は張春華班長の力作だ。改善活動で直行率は99.9%に改善し、更に今では99.95%まで改善している。不良がゼロの日もしばしばあるのだ。山本は生産開始を見届け「どうだい?」と小楊に声をかける。「心配なさそうですね」「まぁ、今日は工程監査じゃないんだからね」と頷きオフィスに引き上げた。


このコラムは、2020年3月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第956号に掲載した記事です。

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山本品管部長奮闘記(33)

 「どうかね?豊信精密の現場は」前を歩いていた林会長が振り返って山本に話しかける。「いや~感心しました。材料倉庫の保管期限ポスターもすごいですね。監査官の心理を理解していると思いますよ」「というと?」林会長が尋ねる。「監査官に対応する経営者や品管部長がどんなにうまく説明しても、監査官は安心しないものです」「どう言う意味かね?」「あのポスターを見れば、新人作業員でも間違いなく仕事ができると確信できますよ」「ほぉ。山本君はそう考えるのかね」「はい。仕入先の監査をしたり、お客様の監査を何度も受けていてそういう考え方になりました」林会長は嬉しそうに頷く。山本の隣に歩いている李玄宗も頷いている。

会議室に戻ると、すでに中国人メンバーたちはABC班に分かれて着席していた。山本と李玄宗は用意してきた模造紙と大判のポストイットを各テーブルに配り、改善のアイディアを各グループでブレーンストーミングする様に指示した。「ブレーンストーミング」を初めて聞くメンバーもあり、李玄宗が中国語で説明する。賑やかにブレーンストーミングが始まった。各テーブルを見て回った山本は、李玄宗を呼んで耳打ちする。「もっと自由に議論したほうがいいと思わない?」李玄宗も同じことを感じていたのだろう。すぐ前方に立ち作業を中断させ、ブレーンストーミングの注意事項を再度説明する。「自由闊達、批判禁止、質より量、整理・分類は後で、とにかくアイディアの量産!」再び賑やかに議論が始まった。

制限時間の30分が過ぎた頃、李玄宗はアイディアをまとめるように指示をした。5M(人、物、方法、設備、測定)+E(環境)でアイディアを整理分類するように指示する。李玄宗との事前打ち合わせで、山本は新QC七つ道具の活用を提案した。「まず簡単な手法だけでやりましょう。今回はアイディア出しに慣れてもらって、その後に新QC七つ道具を教えたほうが効果的だと思います」という李玄宗の意見に従う事にした。

各チームは検討結果の豊信精密生産現場改善案を発表。それぞれ質疑応答。第一回改善交流会はこうして終了した。

全員で近所のレストランに移動。いつもの「イー・アル・サン」「東莞和僑ナンバーワン!イェェィ!!」の乾杯で、懇親会が始まった。
小楊を始めスター電源のメンバーは興奮気味で次々と山本に話しかけてきた。一様に改善交流会への参加で多くを学んだ、と口々に言ってくる。しかし山本は、不満だった。そんな様子を見て北山総経理が話しかけてくる。「山本さん疲れましたか?」口まで持ってきていたビールグラスを下に置き「各チームが提案した改善案がイマイチでしたよねぇ」「いやいや。御社のメンバーも興奮してたじゃないですか」隣から林会長も「あれでええんだよ。皆が自分の頭で考えるきっかけになったはずだがね。」「そうですよ。まだ1回目ですよ」いつの間にかビールグラスを持って山本の後ろに立っていた李玄宗が言う。

そこから次々と改善交流会に参加した中国人メンバーがチームごとに乾杯にやってきた。山本が覚えているのはそのあたりまでだ。

翌日曜日の昼近くに、宿舎で目を覚ますまでの記憶が飛んでいる。


このコラムは、2020年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第953号に掲載した記事です。

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