品質保証」カテゴリーアーカイブ

防錆塗装不良

 本日の失敗事例は「失敗百選」から選んだ。

「失敗百選」中尾政之著

ショックアブソーバに使うコイルスブリングの防錆塗装の前洗浄工程にて排水ポンプが故障。そのため新しい洗浄水が供給されず、コイルスプリングから脱落した不純物が洗浄槽に堆積。コイルスプリングに不純物が付着したまま防錆塗装。不純物付着箇所より錆が発生。腐食箇所が破断。約1000台をリコール。という事例だ。

防錆塗装完了後の目視検査を行なっていたが、コイルスプリングの上部しか検査しておらず発見できなかった。洗浄水に浮いている異物であれば、洗浄槽から引き上げるときに異物が付着するはずだ。その様な想定で上部のみ検査をしていたのだろう。しかし付着異物はコイルスプリング成型時に発生する金属粉であり、洗浄層に沈殿しておりコイルスプリングの下部に付着したようだ。

この事例から学ぶべきことを考えてみよう。

排水ポンプの故障に2ヶ月間気がつかなかったそうだ。設備点検の方法に問題があったと思われる。

外観検査基準は適切だったとは思えない。洗浄層に溜まるのはその前工程で発生する物と容易に推定できる。加工時に発生する金属粉は底に沈むはずだ。多分洗浄・乾燥後ワークをハンガーから取り外す作業と同時に目視検査をしたのだろう。ワークを置く方向を変えれば、簡単に上部と下部の検査ができる。

この2ヶ月間に不良の増加など全くなかったのだろうか?
外観検査不良は簡単に処理されてしまう傾向があるように思える。例えば簡単に手直しできる不良は、検査員が手直しをして合格品として扱う事もありうる。

今回の事例を汎用化すると

  • 設備故障を確実に捕捉できる点検方法になっているか。
  • 製品検査はその工程で発生しうる不良を全て捕捉できるか。

またリコールによって得た該当品の異物付着率や、腐食具合などをきちっとデータ化しておけば得がたいノウハウとなるはずだ。

頭の体操

 中国に帰還後、現在広州のホテルで2週間+1日のコロナ隔離生活中である。三食打包弁当が配給される。ありがたいことだ(チャント料金は取られているが・笑)打包弁当には、箸のセットがついてくる。割り箸、小さなプラスチックレンゲ、爪楊枝、紙ナプキンが入っている。

今の隔離ホテルに移動してからわずか3日間9回の給食で2度箸セットの不良を発見した。
1回目:すでに割れた割り箸(片側だけ)が入っていた。
2回目:爪楊枝の一部が箸セットの袋の封止部分に入っていた。

作業現場を見ていないが、相当改善のやりがいがある現場のようだ。
退屈しのぎに、どんな事故が起きてどう改善すべきか頭の体操をしてみた。現場も見ずに何を考えても無駄かもしれないが原因探求、対策検討の道筋の参考になればと思う。

1回目の不良品:
片側だけの割り箸の元々つながっている部分の破断面を観察すると、引きちぎられた痕跡がある。ということは、割り箸の加工時に発生した問題ではなく、何らかの問題により割ってしまった箸が袋詰め工程に混入した。と考えるのが妥当だろう。
自然に割れるものではない。故意に割ったと推測した。割り箸の受入検査(自社加工ならば初物検査)で割れる事を確認した箸が最終工程に回ってしまった、と推測した。
流出原因は、袋詰め作業員、最終検査員が気が付かなかった。または気が付いたが、もう一本割れた箸の片われがあるかもしれない、という想像力が足りなかったのかもしれない。
この推理に従うと、工程内で行う破壊試験サンプルの扱い(確実な廃棄と確認)のルールを明確にし、徹底するべきだ。

2回目の不良品:
現物を見ると、爪楊枝(透明袋入り)の一部が箸セットの封止部分に融着されており、先端部分のみが袋に残っている。観察により推測される原因は、融着作業が水平の場合、爪楊枝が袋下部まで落ちていない状態で融着してしまった。
融着作業が垂直の場合、爪楊枝は下まで落ちるかもしれないが、袋(爪楊枝と外装袋)が帯電していれば袋の途中で静電気吸着するかもしれない。
融着作業者の自主検査で気がついて欲しいが、原因除去の対策を打つべきと思う。
対策は、融着作業を垂直にしアイオナイザーで除電する。さらに確実にするため、袋詰め手順を決める。爪楊枝を先に入れ紙ナプキン、割り箸、レンゲで爪楊枝を下に押しやるように挿入すれば良さそうだ。

このコラムはあくまで頭の体操です。本来の原因追求、対策立案は5ゲン主義でやるべきです。


このコラムは、2021年1月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1087号に掲載した記事です。

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MECE

 問題を定義したり、原因を分析したりする場合に「MECE」になっているか?ということにしばしば気を配っている。これがうまくできていないと、論理が崩れてしまったり、まともな答えが見つからないことになる。

「MECE」とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、ミーシーと発音するようである。早い話が、ダブりもモレもない状態のことを言う。

例えば仕事の優先順位を考える時に、「緊急度」と「重要度」の組合せで考える。「緊急・非緊急」×「重要・非重要」の4つの組合せがMECEになっているので、このフレームワークで話をするとすっきりと理解が出来るわけだ。

例えば、日本人という集団を層別する時に、「犬好き」と「猫好き」に分けたのではMECEにならない。
・犬が好き
・猫が好き
以外に
・犬も猫も好き(ダブり)
・犬も猫も嫌い(モレ)
があるからだ。

「男性」「女性」の二つに分解すればほとんどの場合はMECEになっている。
ほとんどの場合と限定をつけたのは、分解をする目的によっては「同性愛者」を入れる場合もありうるだろう。

マーケティングへの応用で、消費者の嗜好を研究する場合など、商品によっては
・男性
・女性
・同性愛者
と分類しなければ、見えてこないマーケットもあるだろう。

そして層別がMECEであると共に重要なのは、層別の感度である。
例えば消費行動を、女性・男性だけの層別で調査しても層別による誤差が大きすぎて、意味のある結論を引き出すことは出来ない。
・収入による層別
・地域による層別
・既婚、未婚による層別
・年齢による層別
など消費行動により感度の高い層別法を考えなければならない。

顧客で不良品が見つかった場合にも、MECEの考え方が役に立つ。
不良が発生した場所をすべて挙げる(MECEになっていること)
1。原材料
2。前加工
3。組み立て
4。検査
5。梱包
6。出荷・輸送
7。顧客開梱
などのように列挙すればもれなく上げることができるだろう。

例えば人為ミスがあった場合
・知らないのでミスをした
・知っていてミスをした
更に知っていてミスをした、を
・故意にミスをした
・ミスをしたと認識できなかった

という具合にMECEになっているように分解してゆく。
このように分析してゆけば、人為ミスに対して作業員に注意を喚起した、という効果が実感できない対策でお茶を濁すことはないであろう。


このコラムは、2011年8月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第216号に掲載した記事です。

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Oリングの劣化

 石油給湯機を使用中に異音がし、確認すると、当該製品から発煙・発火していた。

(NITE事故情報より)

 NITE(製品評価技術基盤機構)の事故情報によると、2008年から12件の同様な事故が発生している。

事故調査によると、灯油を燃焼室に供給制御する電磁弁のゴム製Oリングが、経年変化により劣化し灯油が燃焼室近辺に漏れたことによる引火が原因だ。

ゴムは経年変化により、硬化したりひび割れたりする。そのためOリングとしての機能を果たさなくなる。設計者はゴムが劣化することを知っていたはずだ。
更に真因を探れば、Oリング寿命の見積もりを誤った、または材料不良により設計どおりの寿命がなかった、と言うことだろう。

ゴムの寿命は、添加剤により大きくばらつく。しかも事前に評価確認することが困難だ。原料ゴムをロットごとに、寿命評価をしてから製品組み立てに使用することは可能だが、経済的に困難だろう。

安全性と経済性をトレードオフすることは出来ない。ロットごとに寿命評価をするという対策を取れば、安全性と経済性はトレードオフ関係になる。

Oリングが劣化しても火災にならないフェールセイフ設計が必要だ。
制御電磁弁を燃焼室から離し、灯油が漏れても発火しないようにする。または漏れた灯油は密閉容器に溜まるようにしておき、漏れを検出したら燃焼をシャットダウンするように設計しておけば、事故は発生しないだろう。

製品の安全性だけではない。あなたの工場では設備からの油漏れをきちんと管理できているだろうか?
床に油だまりが出来ている。設備の下にウェスがたくさん突っ込んである。
こんな状況はイエローサインだ。もちろん機械油は、灯油より引火温度が高い。
簡単に火災が発生することはないかもしれない。しかし火災に準じる深刻な不具合が発生する可能性はあるはずだ。


このコラムは、2011年3月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第196号に掲載した記事です。

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品質基準

 ずいぶん昔のことだが、納入品に不良が1台あったので、仕入れ先に返却し不良原因の解析を求めたことがある。仕入れ先の営業担当者から「納入仕様書にはAQL0.1%で検査すると明記してある。今回発生した不良は0.1%未満なので不良解析・報告の義務はない」と言われて驚いたことがある。説明するのが面倒だったので「そちらの品質部長さんにAQLの意味を教えてもらえ」と言っておいた(笑)

AQLとは抜き取り検査の基準であり、言葉どおりの「許容品質基準」ではない。
製品の品質基準にはいろいろな段階がある。

品質目標:設計部門の目標品質
品質標準:製造部門の目標品質
検査基準:検査部門の判定基準
保証品質:顧客に保障する品質

顧客に保証する品質基準は検査基準より緩い。使用中の劣化も見込むためだ。
検査部門の検査基準は製造部門の検査基準と同じか若干緩い。
AQL検査の場合は、製造部門が全数検査であることに対し抜き取り検査であり、が緩い。
製造部門の品質基準は、部品ばらつき作業ばらつきを考慮するので、設計部門の目標品質より緩い。
設計部門の品質目標は、製品の要求に基づき最も厳しい。部品のばらつき、製造上のばらつきがあるので設計時の品質目標は最も厳しい。


このコラムは、2020年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1064号に掲載した記事です。

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PCの品質劣化

ある書籍を読んでいて驚いた。
「工場で正常に生産され検査も合格したのに、市場で不良が発生する。これは出荷後に劣化するのが原因である」当然こういう事例はある。しかし著者はその事例としてパソコンを挙げている。彼の主張は以下の通りだ。

「購入して二年ほどでスイッチを入れてから立ち上がるまでの時間や画面の切り替え時間が目に見えて遅くなる。わずか二年で製品が劣化してしまうのは工業製品のトップグループに入る」

これはパソコンが劣化したのではなく、アプリケーションソフトの機能が進化したためメモリを大量に必要とし、しばしばメモリ領域のスワップが発生するためだろう。これを製品の劣化と言われてはパソコンメーカは立つ瀬がない。

著書の本質はそこではないし、OA機器メーカの開発設計者としての経歴があり、現在も後進の指導をされている方だ。著者を非難するつもりは全くない。

パソコンという商品は単体では何も役には立たない。アプリケーションソフトがあって初めて機能する。そういう意味では二年間で劣化したのではなく、たった二年で進化したと考えるべきだろう。

例はまずかったが、著者の指摘は正しい。
昔から出荷後の環境ストレスで色々な故障が発生している。
出荷時に良品だった製品が環境ストレスで故障する事例は多い。

信頼性問題

または出荷時に機能検査ができない製品もある。タカタのエアーバックも出荷検査で機能検査はできないし、爆発することもない。

環境ストレスによる劣化は製造や検査で解決できない。設計時に環境ストレス耐性を上げておかなばならない。そのためには多くの環境ストレス事故事例とその原因を知らなければならない。


このコラムは、2020年7月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1011号に掲載した記事です。

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笹子トンネル事故から6年

 中央高速笹子トンネルの天井板崩落事故が発生したのは2012年12月2日。先週日曜日には現地で遺族らが慰霊式典を開催した。

6年経った今もまだ事故原因が明確になっていないようだ。

事故を契機にNHKの取材斑が5年間かけて、日本全国のトンネルや橋梁などの安全性を取材している。

笹子事故5年 インフラは安全になったのか?

しかしこの記事は「老朽化」がキーワードとなっている。
重大災害につながりかねない交通インフラの老朽化を取材し明らかにする事に異議はないが、笹子トンネル事故は「老朽化」が原因ではないはずだ。当時の記事からは、不適切な施工が原因と思われる。

ボルト、引き抜ける状態 笹子トンネル、6割が強度不足

笹子トンネル天井崩落事故

当時の調査では、引き抜かれたボルトには先端の一部にしか接着剤が付着していなかったものが多数あった事がわかっている。老朽化により接着剤の強度が劣化することはあるかもしれない。しかし硬化した接着剤の量が、経年変化で少なくなるとは思えない。

NHKの取材そのものは意味があるにせよ、記事タイトルに「笹子トンネル」を入れることにある種の「作為」を感じるのは私だけだろうか?どこかに真実を隠蔽する力が働いていると言う疑惑を感じざるを得ない。


このコラムは、2018年12月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第754号に掲載した記事です。

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リアサス連結プレート誤装着

 ホンダは4月8日、『CBR1000RR-R』のリアサスペンションについて、不適切に組付けたものがあるとして、リコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。対象となるのは2020年3月31日~7月23日に製造された439台。

今回、リヤクッションアームとスイングアームを連結するクッションコネクティングプレートの表裏を逆向きに組付けたものがあることが判明。そのため、凹凸路面等を繰り返し走行するとプレートが折損し、最悪の場合、走行安定性が損なわれるおそれがある。

改善措置として、全車両、クッションコネクティングプレートの組付け状態を点検し、該当するものはクッションコネクティングプレートとダストシールを新品と交換する。

不具合は2件発生、事故は起きていない。市場からの情報によりリコールを届け出た。
                        

carview.yahoo.co.jp/news/より)

 リヤクッションアームとスイングアームを連結するプレートの裏表を逆に取り付けてしまったという不良だ。
不具合を二件発見している、と記事にある。このような作業ミスの対象範囲を約4ヶ月、439台とどうやって特定したのだろうか?同じ作業員がプレートの組み付け作業した製品を全て回収対象としたのだろうか?
それにしても、回収対象範囲を特定するのは相当困難だっただろう。

この手の作業ミスによる不具合は、何度も発生する。裏表を勘違いしていたらその作業者が作業した分は全て対象となる。しかし「うっかり」間違えたのならば問題のない製品まで回収し確認をしなければならなくなる。非常に厄介な問題だ。従ってこの手の不良を「作業ミス」と考えるべきでない。

設計ミスと言ってしまうと設計者に気の毒かもしれないが、設計配慮が足りていなかったと考えるべきだ。今回の事例を設計FMEAの潜在故障モードに追加し、「裏表のない設計」「裏表逆には取り付かない設計」となるようにしなければならない。

「失敗から学ぶ」という事は知識を増やすことではなく、失敗が二度と発生しないように標準を作る(または変える)ということだ。

回収対象製品を知らないので「プレートを逆に付けるとプレートが破損する」という故障モードのメカニズムが理解できない。しかし裏表が逆だと取り付かない構造にする事は可能だろう。


このコラムは、2021年4月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1123号に掲載した記事です。(タイトルを変更しました)

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初期流動管理

 先週のコラム「設計審査を企業文化とする」で、設計審査の事例をご紹介した。また設計部門を持たない、中国工場で設計審査を企業文化にした事例もご紹介した。

それに対して読者様からメッセージをいただいたので、ご紹介したい。

※M様のメッセージ

 私が以前所属していた企業も、生産を100%外部に委託するファブレスでした。QAレビューの後に、量産開始の初期流動会議、量産移行会議等で、事前確認するようにしていました。それでも予期せぬ不具合が発生することもありましたが、概ね不具合を事前に予防することができたと記憶しています。
 やはり基本をコツコツと手抜きせず継続することが成功への近道なんですね。

全く同感です。
決められた事をコツコツやってゆく。そういう行為が、習慣となり、習慣が文化を作る。

今の時代のモノ造りは、差別化する事がどんどん難しくなって来ている。
同じ材料を、同じ機械で、同じ様に加工するだけでは、競合との差別化は出来ない。材料も、設備も、技術も誰でも簡単に手に入れることができる。
差別化出来る要因は「人」以外にはない、と言えるだろう。
人の感性を商品設計に盛り込む。人の良き習慣で企業文化を作り上げる。
モノ造りは,人の手作業から、省力化・機械化に向かった。そして今度は、「感性」と言うキーワードに従って「人」に戻って行くのだと思う。
人の手から出て人のココロに戻ると言う事だ。

さて前置きが長くなったが、「設計審査を企業文化とする」の続編として、M様もメッセージで触れている、初期流動管理について、話をしてみたい。

設計審査文化として、設計完了から生産・出荷までのフェーズには「出荷判定会議」と「初期流動完了判定会議」を開催していた。
設計審査は、設計部門の主催で、設計の完成度を確認する審査だ。
出荷判定と初期流動完了判定は、品質保証部門の主催で、生産品質を確認する審査だ。

出荷判定会議は、最初の出荷ロットの生産で、今後の生産で品質保証出来る事を確認する。

  • 生産のための設備、治工具類が準備出来ている。
  • 生産設備の調整や設定が確定している。
  • 作業手順は確定し、作業者への教育・訓練が確実に行われる。
  • 工程能力指数が十分ある。
  • 工程内不良の解析設備・能力が十分ある。
  • 工程直行率が一定の基準をクリアしている。
  • 原因を特定出来ない工程内不良がない。
  • 関連法規の認定がおりている。

等を確認する。
最初の出荷ロットを、ただ造り上げただけでは、上記の項目はパス出来ない。
同じ品質で次のロットも作り続ける事が出来るかどうかを確認する。

この審査が合格しない限り、出荷は出来ない。

出荷判定会議にはもう一つ決定事項がある。それが初期流動管理期間と管理項目だ。

出荷判定会議がめでたく合格判定となると、出荷が開始され初期流動管理期間となる。初期流動管理とは、予防保全活動の一種であり、初期の段階で潜在不良の要因を潰してしまうための活動だ。

初期流動管理期間は、最低3か月。製品にあわせて初期流動管理終了の条件を決める。例えば、直行率99.9%以上を初期流動管理終了の条件と決めると、3ヶ月経っても、直行率99.9%を達成していないと、初期流動管理は継続となる。

初期流動管理中は、最低1ヶ月に1回初期流動管理会議を開催する。
会議では、管理項目に指定された内容を報告審議する。例えば、工程能力指数、工程内不良の不具合解析結果、などが報告され、改善方法などが審議される。

当然この様な管理は,工場にとっても、事業部にとってもコストがかかる。
利益幅があるから、コストをかけても平気な訳ではない。本格量産になってから問題が顕在化すると、顧客に迷惑がかかるし、修復のために大きなコストが発生し、利益など吹き飛んでしまう。それを防ぐための予防保全なのだ。

顧客が価値を感じてくれている所には、コストをかけてでもその価値を上げなければならない。

顧客の我々に対する評価は、開発期間が短い、量産試作サンプル提供が速い、市場品質が安定している、と言うポジティブな評価が、価格が高いと言うネガティブな評価をカバーしていた。

この様な顧客の期待に応えなければ、その他大勢のベンダーと価格競争で受注を奪い合うことになる。


このコラムは、2013年10月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第331号に掲載した記事です。

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可視化管理

 一目で分かる様にすることを可視化管理とか見える化管理と言う。「一目で」と言う部分が重要だ。例えば今月の売り上げは、売り上げ台帳を合計すれば分かる。しかし利益を知ろうと思えば、更に経費を集計しなければならない。こういう状態は、経営が見える化出来ているとは言わない。

工場の現場も同じだ。コンピュータの管理画面を見なければ分からないのでは、まだ不足だ。現場で一目で分かる様になって初めて可視化管理が出来ていると言える。

更に「誰が見ても」を追加する。
現場の作業員が見て分かる必要があるが、管理職や掃除のおばさんが見ても分かる様にしておく。究極は、今日初めて工場監査に来たお客様でも分かるレベルにすることだ。

可視化管理の要点は

  • 一目で分かる
  • 誰が見ても分かる

と言うレベルにすることだ。
このふたつが揃えば、一瞬で理解出来る、考えずに理解出来る、と言う水準に到達出来るはずだ。

実はこういう説明をしても、なかなか理解していただけない。こういう水準に到達している現場を見て理解するのが一番の近道だ。

先週訪問した工場は、現場の可視化のみならず、部署ごとの業績も可視化管理を実施しておられた。


このコラムは、2015年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第431号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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