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水虫薬に睡眠剤誤混入

水虫薬の誤混入、健康被害113件に 交通事故も14件」

 福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造した爪水虫などの皮膚病治療薬に睡眠導入剤の成分が混入していた問題で、健康被害を訴える人が、新たに29人増えて計113人(8日時点)となった。北海道から熊本県まで約20都道府県に及ぶという。福井県と同社が取材に明らかにした。同社によると、運転中に意識が薄れるなど服用の影響とみられる交通事故が14件あったという。

全文

(朝日新聞より)

 誤混入というより、間違った薬剤で水虫薬を生産したようだ。
本来主成分の「イトラコナゾール」を入れるところを睡眠導入剤を投入し錠剤を生産した。

睡眠導入剤を投入してしまった原因を、「作業員が勘違いで量ってはいけないものを量り、袋に入れた」と作業員の人為ミスと説明している。

しかし人為ミスを原因とすると「作業員に注意した」「作業員に再指導した」「ミスした作業員を解雇した」などという効果の期待できない再発防止対策しか出てこないだろう。

「なぜミスをしたか」を分析しなければならない。

  • 薬剤の瓶に名前ラベルがなかった。
  • 薬剤の瓶の名前ラベルが消えかかっており読みづらかった。
  • 配合指示書が間違っていた。
  • 配合指示書が読づらく読み間違えた。
  • イトラコナゾールと睡眠導入剤の保管棚が同じで取り間違えた。
  • 睡眠導入剤がイトラコナゾールの代用として使えると思った。
  • イトラコナゾールと睡眠導入剤がそばに置いてあり、間違って取った。
  • イトラコナゾールを正しく準備したが、別の調剤中の睡眠導入剤を配合した。
  • などなど

これはありえないだろうと思える原因もたくさん挙げる。
それぞれの原因を消滅される対策をする。

今回の原因ではないと思われる原因にも対策をする。
今回の問題は、運転中に眠くなったり、意識を失えば直ちに人身事故となる。過剰な対策と思えても実施すべきだ。

皆さんの仕事でも人為ミスで大きな事故が発生することもありうるだろう。事故が起きる前に対策を実施すれば問題は発生しない。
小林化工は取り返しの効かない問題を発生させてしまった。せめて我々はこの事故に学び未然防止をしたいものだ。

原稿を書き上げた後に、本件により死亡事故が発生したという報道があった。

『水虫薬の製造で「名ばかりチェック」 社長らの一問一答』

この記事により以下が明らかとなった。

  • 投入すべき薬剤と間違えて投入した薬剤は、形状の異なる容器に入っていた。
  • 薬剤の名称・ロット番号は容器に表示されていた。
  • ダブルチェックは名ばかりで機能していなかった。

社長が発言した「厳密なるチェックができなかった」の意味を問われ、社長は「最終試験」について述べている。記事からは読み取れないが、薬が完成後その成分分析をしなかったようだ。

医薬品業界の常識はわからないが、完成品の出荷検査はやらないのだろうか?

ダブルチェック記録、作業記録だけを品質管理の記録として品質保証するのは無理だろう。今回の事故は、製品ロットごとに成分分析を実施し出荷の可否を判定していれば防げたはずだ。


このコラムは、2020年12月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1072号に掲載した記事です。

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リコールのTDK加湿器が火元か 長崎の介護施設火災

 4人が死亡した長崎市の認知症グループホーム「ベルハウス東山手」の火災で、電子部品大手のTDK(東京)の上釜健宏社長は22日、長崎市内で記者会見し、リコール(無償回収・修理)の対象になっている同社製加湿器が火元となった可能性が極めて高いことを明らかにした。

 1998年9月に発売した加湿器「KS―500H」で、ヒーターなどに不具合があり、99年1月にリコールを通産省(現経済産業省)に届け出た。販売された2万891台のうち約26%の5509台が回収されていない。上釜社長は「亡くなった4人の方々、遺族の方々、負傷された方々などに、心よりおわび申し上げます」と謝罪した。

 TDKによると、KS―500Hは長崎の火災のほか、焼損16件、発火14件、発煙16件の計46件の事故を起こしている。火災となったり、けが人が出たりしたケースはないという。

 都道府県別の事故件数は北海道が10件、東京が9件、埼玉が5件、千葉、静岡、三重が各3件、栃木、愛知、京都が各2件、秋田、宮城、群馬、長野、富山、兵庫、宮崎が各1件。

 KS―500Hは内部で蒸気を発生させる蒸発皿にヒーターを十分に固定できていないものがあり、ヒーターが変形して蒸発皿から外れ、底の部品に接触するなどして発煙、発火することがある。異常発熱すると、ヒーターの温度は1000度を超えるという。

 TDKは15日に長崎県警から連絡を受け、21日に火元の部屋にあった焼けた加湿器を確認。ヒーターの一部が蒸発皿から外れ、脱落するなどの不具合があったことから、過去の不具合と同様に脱落部分が異常発熱し、ほかの部品に触れて発火した可能性が極めて高いと判断した。

 TDKは回収への取り組みが不十分だったとして、全国のグループホームなどに加湿器の使用状況を確認する作業を22日から始めた。

 火災は8日夜、ベルハウス東山手が入居する4階建てビルのうち、入所者の居室がある2階から出火。入所者の女性3人と、元入所者で建物3階に住んで
いた女性(82)の計4人が死亡した。

(日経電子版より)

 2月8日に発生した、長崎の認知症グループホームの火災について先週のコラムで、加湿器のショートは「原因」ではなく「現象」だと書いた。
丁度2月22日の日経電子版に、上記記事が出ていた。

記事によると、加湿器内部のヒーターが動作中に脱落、加湿器内部に接触、接触部分が加熱され焼損に至った、という事が判明した。

製品は燃えてしまっているため、ショートして発熱した様に見えるが、焼損の原因はショートではなく、ヒーターの脱落だ。
そしてヒーターの脱落にも原因がある。
ヒーターの固定が不十分だという作業不良が原因であり、作業不良が発生し易いという誘因があったはずだ。

例えば、ヒーターの固定箇所の機構設計が、ロバストになっていなかった。ヒーターの固定作業方法が、作業者によってばらつく様になっていた。

ここまで原因調査を深堀して初めて有効な再発防止対策が検討出来る様になる。

メーカのTDKは、99年1月にリコール届けを出し、回収を告知している。この時どのような「再発防止対策」を施したのかは、外部からは窺い知る事はできない。
残念ながら、TDKはリコール届けを出してすぐに、加湿器事業から撤退している。加湿器を生産しなくても、同じ轍を踏まないための、ノウハウ化は可能だ。

今回の事件を
「発熱箇所が脱落し、機構部品と接触する」
という潜在故障現象として、設計FMEAや工程FMEAで検証レビューをすれば、他社の失敗事例でさえ、共有出来るだろう。

他業界の企業もこのようにして、失敗事例から「未然防止対策」を引き出せば不必要な品質損失コストの発生を防ぐことができる。品質損失コストは、自社が負わなければならないものだけではない。社会全体、被害に遇われた方及びその家族の方々すべてに損失が発生している。その損失は、金銭的な補償で補いきれるものではないはずだ。これらの損失を未然に防止する事は、企業の社会的責任でもあるはずだ。


このコラムは、2013年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第298号に掲載した記事です。

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加湿器にショートの痕跡か 長崎グループホーム火災

 長崎市東山手町の認知症グループホーム「ベルハウス東山手」で高齢女性4人が死亡した火災で、火元の部屋にあった加湿器とみられる電気製品にショートのような痕跡があることが県警への取材で分かった。県警は燃え残りを分析し、出火原因の特定を進める。

 県警は12日、4人の死因を一酸化炭素中毒と発表した。司法解剖の結果、4人に目立った外傷はなかった。火元は2階中央付近の男性入所者の居室と断定した。

 火元の部屋からは、加湿器とみられる焼け焦げた電気製品が見つかっている。この電気製品付近の焼け方が特にひどかったという。施設内は禁煙で、暖房はエアコンのみを使用。加湿器は、希望者に施設側が貸し出していたという。

 一方、長崎市によると、火災が起きた8日午後7時30分ごろ、本来は2人の職員が勤務すべきところ、このホームでは当直の女性職員(56)1人しかいなかった。別の職員1人が出火直前に早退し、交代で出勤予定だった職員が遅刻していたためだった。長崎市による、ホームの運営会社への聞き取りで分かった。

 3階に居住していて亡くなった中島千代子さん(82)を担当していた訪問介護のヘルパーも出火直前に朝食用のパンを買いに出て部屋を離れていた。長崎市は、当時の勤務実態を詳しく調べる方針だ。

(asahi.comより)

 先週に引き続き焼損事故だ。

高齢者のグループホーム火災は、現場調査により、加湿器が火元と判明した。記事には加湿器のショートが原因の様に書かれているが、加湿器のショートは現象であり原因ではない。
しかも、加湿器のショートは火災後の現象であるだけの可能性もある。

例えばAC電源の様に電圧が高い部分の半田付けに不良が発生し、断続的に接触・非接触を繰り返す。接触・非接触のたびに火花が発生しプリント基板の絶縁がじわじわと劣化。最終的にAC100Vがショートし発熱焼損。つまりショートに至る前に、半田付け不良という原因がある。

実はこういう事例が意外と多い。

電源スイッチが使用中に劣化し接触抵抗が上がる。接触抵抗が上がり発熱。ますます接触抵抗の上昇が加速する。最終的に発煙焼損。
結果的に電源スイッチが丸焦げになっているので、スイッチのショートの様に見えるが、原因はスイッチ接点の接触不良である。

電源ケーブルのコネクタが、挿抜による外力でカシメ部分が緩んで来る。カシメ部分の接触抵抗が上昇し発熱、同様のプロセスにより発煙焼損。これもコネクタのショートの様に見えるが、電源ケーブル挿抜の外力が直接カシメ部分にストレスを与える様になっている機構設計のミスだ。

結果的には、製品がショートし発熱焼損した様に見えるが、原因は製造不良であったり、設計不良だったりする。ここまで原因の解析を深める事により、再発防止を検討することが可能となる。


このコラムは、2013年2月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第297号に掲載した記事です。

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ホームの客の手、ドアに挟んだまま90メートル 愛媛

 6日午前10時ごろ、愛媛県西条市小松町のJR予讃線伊予小松駅で、松山発観音寺行きの普通列車(1両編成)が同市に住む乗客の女性(75)の手をドアに挟んだまま出発。女性は約90メートル引きずられてホームから転落し頭や足などに軽いけがをした。列車の乗客10人にけがはなかった。

 JR四国によると、伊予小松駅は無人駅で運転士がホームの鏡を確認するなどして出発する規則だが、運転士の男性(28)は「異常がないと思い出発した」と説明しているという。ホームにいた人が気付き110番通報した。列車は気付かずそのまま走り続けたという。半井真司・鉄道事業本部長は「けがをさせてしまい大変申し訳ありませんでした。再発防止を徹底します」と謝罪した。

(asahi.comより)

 車両の扉には,完全に閉まったことが確認されるスイッチがついているはずだ.女性の手が挟まっていてもそのスイッチが作動しなかったのだろうか?もしくは扉が閉まっていないことはランプなどで表示するだけで,運転手の見落としがあったのだろうか?

私も以前終電の車内で,上着を挟まれそのまま電車が発車したことがある.このようなヒヤリ・ハット事故は無数にあるはずだ.ヒヤリ・ハットを放置せずに改善する姿勢があれば,列車の扉開閉センサーは違う形になっているはずだ.光センサーを使った方式にすれば,完全に防げる事故だろう.

また開閉センサーは,ブレーキとインターロックをかけておき,扉が閉まっていなければブレーキが解除されない方式にしなければならない.

「伊予小松駅は無人駅で運転士がホームの鏡を確認するなどして出発する規則」と言う規則も理解ができない.運転手はホームに降りて,扉が閉まったことを確認の上発車すべきだ.

電車の扉開閉センサーをすべて交換するには,それなりのコストが必要だ.
安全とコストをトレードオフにすべきではないが,上記の運転手による確認動作の変更には,コストや運行効率にはなんら影響が無いだろう.

「再発防止を徹底します」と言うのは当たり前だ.
私たちが製品開発や,工程設計時に使っているFMEA(潜在故障モード効果解析)を使って,潜在事故に対し未然防止対策を検討すべきだ.

工場でも,従業員の安全,顧客の安全は最優先しなければならない.
あなたの工場でもFMEAを活用されているだろうか?


このコラムは、2010年12月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第183号に掲載した記事です。

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原因と言い訳

 発生してしまった失敗の原因を探求し、再発を防止する。類似の失敗が発生しないように水平展開をする。さらに失敗を抽象化しまだ発生しない問題を未然防止する。

ここで重要なことは、正しく不良原因を見極めることだ。

例えば、100台生産ロットの部材発注時に1台2個使いの部品を100個しか発注しなかった、という問題を考えよう。業務システムを使っていれば、この様な問題は発生しないだろう。例題と思ってお付き合い願いたい。
発注担当者はExcelの部品表を確かめながら、発注伝票を作成。その際にミスが発生した。発注伝票はリーダが確認するが、見逃してしまった。

ここでその発生原因(間違った伝票を作成した原因)と流失原因(間違った伝票を見逃した原因)を分析し対策をすることになる。

発注担当者は「風邪気味でぼんやりしていた」
リーダは「仕事が忙しく焦っておりチェックが不十分だった」
発生原因、流出原因に、体調や心理状況などの人為的要素を入れてしまうと、「体調が悪くならない様に健康管理を徹底する」「体調が悪い時は休む」「忙しくても焦らない様に精神強化する」「リーダを増員する」などという、実現不可能または困難な対策しか考えつかない。

「ぼんやりしていた」「忙しかった」というのは原因ではなく「言い訳」だ。
言い訳に対して対策を考えても現実的な効果のある対策は出てこない。
ぼんやりしていると間違ってしまう、ということは「難しい」「複雑」「煩雑」などの原因があるはずだ。したがって、ぼんやりしていても問題が発生しない様にするのが本当の対策だ。
忙しいとチェックの時間がなくなる、という言い訳は作業改善で時間確保する方向に改善しなければならない。

例題は、業務システムの活用や、Excelのマクロなどで自動チェックができる様になるはずだ。
より複雑な問題でも、原因分析の結果が「言い訳」になっていないかどうか見極める。言い訳は、「ぼんやりしていた」「忙しくて焦っていた」の様に個人的な体調、心理的状況に依存している場合が多い。


このコラムは、2020年2月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第937号に掲載した記事です。

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トヨタ、ヴィッツ8万台リコール 窓開け閉めで不具合

 トヨタ自動車は21日、乗用車ヴィッツ8万2226台(05年1月~8月製造)のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。運転席のドアにある窓を開け閉めする電気スイッチの内部がショートして、窓の開閉が
できなくなる恐れがある。これまでに32件の不具合が報告され、08年11月には、島根県でスイッチから発火した事案もあった。けが人はなかった。

(asahi.comより)

 トヨタがおかしい.
この8月にトヨタは中国市場で窓の開閉スイッチの不具合によりヤリスを含む68.8万台のリコールをしたばかりだ.

「トヨタ、中国で乗用車68万台をリコール 窓の開閉装置に不具合」

ヤリスは名前が違ってもヴィッツそのものだ.中国でリコールを発表して2ヶ月経ってから日本国内で回収を発表している.しかも中国で回収対象となっている他の車種,カムリ,カローラ,ビオスについては記事には何も触れられていない.

市場での発煙事故から14ヶ月かかっての回収発表だ.

国内市場向けの車は国内で生産しているだろうから,問題のスイッチメーカは中国で回収対象となったメーカとは違う可能性もある.しかし68.8万台の回収事故に対して,水平展開が図られなかったのだろうか.

簡単な事だ.
スイッチの故障モードに対してFMEAを全車種に展開すれば良いだけだ.

  • 検査容易度:スイッチベンダー,工程内でのこの不良モード検出度
  • 故障率:この不良モードの予測故障率
  • 影響度:この不良モードが完成車の運転に与える影響度
     パワーウィンドウが開閉できなくなったとしても,重大な影響はないと考えてはだめだ.運転手がパワーウィンドウに気を取られて運転ミスをすれば即人身事故につながる.これは完成車メーカが一番良く知っているはずだ.

この評価を使用しているスイッチの構造,製造方法ごとに実施すれば,どの車種が危ないかすぐに分かったはずだ.

トヨタはモノ造りに関しては自動車産業を超えて世界中の企業から尊敬・研究の対象となっている.
そのモノ造りの根底にあるのが「顧客中心主義」「品質第一の心」だと理解している.
最近立て続けに発生した回収問題が,トヨタ崩壊の予兆でないことを祈るばかりだ.

このような大きな回収問題を発生させても,まだ生き残っているのはトヨタという強い体力を持った大企業だからだ.中堅・中小企業ならばひとたまりもない.

設計段階,生産移行段階から安全レビューを実施するなど予防保全的な仕組みを構築する必要がある.


このコラムは、2009年10月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第122号に掲載した記事に加筆したものです。

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ヒューマンエラー

 先週はつくばエキスプレス南流山駅で20秒早く列車を発車させた「事故」について考えた。この様な事故の原因を「ヒューマンエラー」とするから「乗務員の再教育」などと言う効果を実感出来ない再発防止対策しか出て来ない。

先週のコラム「南流山駅早発事故」

このメルマガでも再三申し上げているが、ヒューマンエラーは「原因」ではなく、「現象」だ。ヒューマンエラーが発生する原因を特定しなければ有効な再発防止対策を打つ事は出来ない。

ではヒューマンエラーとは何だろう?
JIS Z8115:2000「信頼性用語」定義では「意図しない結果を生じる人間の行為」となっている。

では人間の行為(行動)はどの様に決定されるのか?
心理学者レヴィンの行動の法則によると、人間行動は「人間特性」と「環境」の関数だ。つまり人は環境の制約中で、環境から得た情報を判断し行動する。情報の認識、判断、行動には人間特性が影響を与える。

ここで注意すべき点は「環境」は物理的な環境ではない。人が認識した心理的環境だ。

例えば、先日こんな笑い話をネットで発見した。
英語の授業中にall day longの下に教師が「田中」と板書した。さっぱり訳が分からなかった。と言うツィートが有った。教師が板書したのは「田中」ではなく「1日中」だ。1と日が近く「旧」の様に見える。しかも日の横棒が左に突き出ている。「1日」→「田」と誤認識した訳だ。

これをたんなる「笑い話」と考えてはいけない。我々製造業にも深い教訓が有る。例えば、材料の配合指示を手書きメモで「ABC(硬化剤 )10mg」と記した時に、硬化剤ABCを「110mg」添加してしまう可能性は否定出来ないだろう。

普通に考えればすぐに分かる事だが、人は自分の心が認識した現実に基づいて判断し行動する。その結果「意図しない結果を生じる人間の行為」となり事故が発生する。

ヒューマンエラーに対して、

  • 職業意識が高ければヒューマンエラーはしない
  • 初歩的なミスだ
  • 精神がたるんでいる
  • 注意力が足りない
  • こんな偶然はしかたがない

この様な考え方では、有効な再発防止は期待出来ない。
再教育・再指導をするが、年に1、2度再発する。それは偶然と諦める。と言う事になる。

我々はヒューマンエラーをした人の心理的環境や、行動の元になった判断を直接観察する事は出来ない。観察出来る行動により、なぜそうなったのか当人から話を聞くしかない。当然叱責、責任追及などとなれば真実は引き出せない。慢性化しやすいヒューマンエラーに有効な再発防止をしたいのであれば、叱責、責任追及は脇に置いて、再発防止対策検討の協力をあおぐ、と言う姿勢で対応した方が良かろう。


このコラムは、2017年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第595号に掲載した記事です。

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問題解決の優劣

 問題に優劣なし、問題解決に優劣有り。
 問題に気付かぬは問題外。
 処置のみするは下。
 再発防止をするは中。
 未然防止をするのが上。

現場の改善指導をしていてこの標語を思いついた。
問題には影響の大小、重軽はある。リコールに発展する市場問題、工程内で発見出来る不良問題など、経営に与える影響の大きさは同じではない。従って問題に対する対応の優先順位や緊急度の違いはある。しかし問題そのものに優劣がある訳ではない。

問題に優劣はなくとも、問題解決には優劣がある。
問題解決を誤って倒産、と言う事例を挙げればきりがないだろう。

使用期限切れ材料で問題を起こした飲料会社は、問題解決を誤り倒産。
ゴキブリ混入問題を起こした食品会社は、工場・設備を作り直し清潔の見える化を徹底した。たった1件の問題にここまで対応し、消費者の信頼を回復。

この差は大きいが、違いは僅かだ。
問題発生時に世間(お客様)から逃れようとするか、真っ向から対応するかの違いだ。

問題解決の優劣を検討してみよう。

「問題に気付かぬは問題外」
 これは説明するまでもないだろう。
職場で発生しているヒヤリハット問題に気が付かず放置した結果、安全事故が発生する。
工程内で発生している慢性不良に気が付かず(麻痺して)放置、客先に流出、最悪市場まで流出。

「処置のみするは下」
 処置とは、発生した問題を正常に復帰させることをいう。次の様な例で理解出来るだろう。
設備から異音が発生。調査の結果扉を固定しているねじが緩んで、扉が設備の振動と共鳴し異音発生と原因が分かった。
ねじのまし締めをするのが処置。
なぜねじが緩んだのかを原因究明しないと問題解決は出来ない。

人為ミスに対し、ミスをした作業者に「注意」「再教育」「罰金」をするのが処置。
なぜ人為ミスが発生するのかを原因究明しないと問題解決は出来ない。

「再発防止をするは中」
 前述の例で言えば、再発防止とは次の様な対策となる。
なぜねじが緩んだ→ねじに振動がかかり続けた。なぜネジに振動がかかった→モータが振動した。なぜモータが振動した→モータのプーリーが偏心。
と解析の深度を深めれば、プーリーの偏心を修正する事が再発防止となる。

人為ミスも同様に解析し、やりにくい、分かりにくい、間違えやすいなど人為ミスが発生する原因を除去する事で再発防止となる。

再発防止の中でもランクが存在する。

  • 人の注意力に依存する対策(例えば目視検査)は下の下。
  • 検査で不良を除去するのは下。
  • 発生原因を除去する生産方法の改善(例えば治具の活用)は中。
  • 発生原因そのものを除去する(例えば設計変更)は上。

「未然防止をするのが上」
 未然防止とは、まだ発生しない問題に対し対策を実施する予防保全だ。
例えば次の様な問題に対する事前対策が未然防止対策だ。

  • 工程内で発生したヒヤリハット。
  • 設計、生産に於ける潜在不良。(FMEAが活用出来る)
  • 他社事例、異業種事例。

このコラムは、2017年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第533号に掲載した記事に加筆しました。

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原因調査・再発防止

 11月8日に群馬県でヘリコプター墜落事故が発生した。
乗務員4名全員が亡くなっている。
目撃者は、機体後部から部品が落下した、と証言している。機体に何らかの異変が発生し、機体の制御が出来なくなり墜落した様だ。

航空機事故が発生すると、運輸安全委員会が調査に入り原因の分析および再発防止対策の実施をしている。運輸安全委員会とは、国土交通省管轄の組織であり以下のミッションを持っている。

  • 航空、鉄道及び船舶の事故・重大インシデントが発生した原因や、事故による被害の原因を究明。
  • 事故等の調査の結果をもとに、事故・インシデントの再発防止や事故による被害の軽減のための施策・措置を勧告。
  • 事故等の調査、再発防止、被害軽減といった運輸安全委員会の施策推進に必要な調査・研究

運輸安全委員会のホームページ

今回のヘリコプター墜落事故に関する調査は始まったばかりであり、報告書はまだ出ていないが、過去の事故・重大インシデントの報告書は公開されている。調査報告書が公開されるまで2年程の期間を要している様だ。

例えば以前このメールマガジン(2015年6月8日配信・第427号)で取り上げた、那覇空港での航空自衛隊のヘリコプターと民間機2機が絡んだ離着陸トラブルの事故報告書は公開されている。

那覇空港での航空重大インシデント調査報告書

メルマガ過去記事「空自の復唱「気づかず」 重複の可能性も 那覇管制官」

60ページ以上の運輸安全委員会報告書の書き出しはこうなっている。
“本報告書の調査は、本件航空重大インシデントに関し、運輸安全委員会設置法及び国際民間航空条約第13附属書に従い、運輸安全委員会により、航空事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。”

私たち製造業においても、不良原因調査、安全事故調査を行う機会はしばしば有る。これらの調査の目的は、不良・事故の再発防止であり、問題発生の責任追求ではない。責任追及とすれば、責任逃れ、問題の隠蔽が発生し本来の目的で有る「再発防止」は達成出来ない。

社内や顧客に提出する報告書は、運輸安全委員会の報告書の様な「大作」で有る必要はないし、2年もかけて報告書を作成したのでは改善のチャンスを失する事になる。
(運輸安全委員会の名誉のために申し添えると、対策そのものは既に実施済みで有り、原因・対策とそれに至った調査記録をまとめた報告書となっている)

私たちも運輸安全委員会の基本ポリシーに従って不良・事故調査に当たるべきだ。そして不良・事故発生の再発防止・損失軽減に対する調査・研究を推進しなければならない。

再発防止・損失軽減に対する調査・研究とは

  • 設計基準、製造方法、作業要領などを改善改訂する。
  • それらが遵守される事を確かにする。
  • これら調査・研究対象を広く社外にも求める。

と言う事になるだろう。


このコラムは、2017年11月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第589号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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