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コピー製品

 中国で暮らしていると,お札に始まりブランド物まで偽物は何でも揃っている.

日本のモノ造りも,欧米製品の物まねから始まり,力をつけて来た.それを考えれば,中国の製造業も発展過程にあるといえるのかもしれない.
しかし決定的に違うところがある.

日本が頑張って物まねをした時代にはアナログ技術しかなく,それを物まねするだけでも実力がついた.しかし今はディジタル技術が発達し,ほとんどコピーポンで同じモノが作れてしまう.

ソフトウェアのコピーを思い浮かべていただければ,ご理解いただけるだろう.

ハードウェアのモノ造りも同じだ.
ディジタルスキャンをすれば,実用レベルでほぼ問題ないモノが簡単に出来てしまう.化学製品ですら,分析装置を持っていれば成分を分析し同じ配分のモノが造れるだろう.
製品の機能部分をブラックボックス化できなければ,すぐ真似されることを覚悟した方が良い.

しかしこういう物まねを続けていても,技術的な進歩はない.

10年ほど前,アルミ電解コンデンサが1年程で寿命不良になるという不具合が,PC電源市場に蔓延したことがある.

これは電解コンデンサに入れる電解液に問題があった.
日本のメーカは,電解コンデンサの性能を上げる(直流抵抗を下げる)ために電解液を水溶性の物を使って成功していた.それの成分配合を真似した台湾企業が,電解液を中国のコンデンサメーカに販売した.多くの電解コンデンサメーカが,高性能(高価格)商品を生産できると,喜んで電解液を買った.

しかし水溶性電解液が,コンデンサの封止ゴムを腐食させ電解液が漏れ,あっという間に寿命不良となる.
実は日本メーカはこれを知っており,封止ゴムの方に対策を施してあったのだ.電解液だけを真似したので,寿命不良が多発して業界全体で大問題となった.

キーテクノロジーを支える周辺技術が理解できなければ,真似をしてもうまくはゆかない.

日本も真似をしていた過去を持つが,技術を極めようという姿勢を持っていた.
それは相手から技術を盗もうという姿勢ではなく,相手から学ぼう,相手を超えようという意欲から生まれる.安易に技術を盗んで金を儲けようという考えからは、このような意欲は生まれない。


このコラムは、2010年10月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第174号に掲載した記事に加筆しました。

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