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9本の指を失ってなお山に挑み続ける

 登山家・栗城史多(くりき のぶかず)氏の記事がに朝日新聞電子版に掲載されていた。(残念ながら記事は現在保存されていないようだ。URLのリンク先には記事はなかった。)

彼は学生時代に付合っていた女性に振られる。その彼女が登山愛好家だった。彼は元カノに対する未練で大学の山岳部に入部したと言っている。不純な(笑)動機で始めた登山だったが、先輩と二人で中山峠から小樽に至る縦走を1週間かけて達成する。無理だと思っていた事が達成出来た。無理だと自分自身で限界を設定している事に気がつく。それ以降登山にのめり込んでいく。
単独登頂にこだわり世界五大大陸の最高峰制覇を目指している。単独登頂に加え、無酸素登頂というハンデを自らに課している。8,000m級の高所では新雪の中を一歩進むのに、6回深呼吸が必要だそうだ。下手をすると、脳に酸素が行かなくなり視界がホワイトアウトしてしまう。少ない酸素で活動出来る様に、修行僧の様にひたすら鍛錬する。

ここ数年は秋季エベレスト登頂にチャレンジしている。エベレスト登頂は、装備やサポートのシェルパさえ揃えれば難しくはない。春期にはエベレスト山頂付近は大渋滞するそうだ(笑)しかし秋季はジェットストリームが吹き荒れ様相は一変する。秋季にエベレスト登頂した者はいないそうだ。

登山中に滑落し九死に一生を得て生還。天候の変化により両手、両足、鼻が重度の凍傷となり、指9本を失う。今年の挑戦は天候不順により中止となった。そんな過酷な失敗を繰り返しつつ、登頂を果たす事は出来ていない。エベレストに登るためには、多額の費用が必要になる。成功しても何ら報酬は発生しない。
なぜ再び山に入るのだろうか?

彼は「失敗こそが人生を豊かにしてくれる」と言っている。
滑落し満身創痍となる。天候の変化により凍傷にかかる。そのような経験を得て自己成長をし続けているのだろう。その体験を「見えない山」を登り続けている我々と共有し「出来ない」「ムリ」という否定の壁を取り払う事を発信し続けている。

我々が体験する失敗は、命に関わる様な事は希だ。
一度や二度の失敗で挑戦を諦めることはない。出来るまでやれば必ず成功する。
そんな勇気を彼の生き様から得る事が出来た。


このコラムは、2017年1月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第509号に掲載した記事に加筆したものです。

2018年5月22日、8度目のエベレスト登頂にチャレンジ中の栗城史多さんの訃報に触れ信じられない気持ちです。ご冥福をお祈りします。

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改善指導

読者様からご相談をいただいた。
ご相談者は、経営幹部として中国企業に招聘され、社内改革を進めておられる方だ。

※K様のご相談内容
会社設立して、10年ですが、土足で工場内に入らないようにすることもできていない状態です。
一人でしゃかりきになって、トラブルを起こして意味がないと思っています。
今の段階でも、私の改善や指示のペースについてこれないようで、脱落者が出そうです。
あまり慌てては、墓穴を掘ることになるか もしれません。

今のところは、こういった嘆かわしい状態から脱出して、先生をお呼び出来るぐらいの状態にすることが目標です。

実は私も、コンサル現場で似た様な経験をしたことがある。
この現場では、経営者から生産性の改善を依頼された。初日に現場に入ったら、現場リーダから「何しに来た」と詰問された(笑)
経営幹部(日本人)と現場リーダの間でコミュニケーションが出来ていないと言う大きな問題をまず発見出来た。

経営者の改善イメージは、自動化により、作業員を削減し、生産効率を上げる事だったが、莫大な投資をして全自動化の設備を構築しても、人の作業が必ず残る。

人と機械の調和をとって生産する「自働化」と言うコンセプトでLCA(ロー・コスト・オートメーション)を目指している私としては、現場で働いているリーダや作業員の意欲を高めなければ、改善は上手く行かない。
無理矢理改善をしても、コンサル契約が終わった後も、その効果が維持出来るとは限らない。
現場リーダの改善能力を高める事により、我々の仕事が終わった後も、改善が維持・継続する事を主眼としている。

従って、現場リーダ・作業者とのコミュニケーションや信頼関係は重要だ。

ご相談者の「一人でしゃかりきになって墓穴を掘ることになる」と言う認識は正しいと思う。まず「改善」をするのではなく、まず「関係」を構築するのが良い。

上下・左右・斜め全方位で関係を構築する。
経営者から、信頼と期待を獲得し、全従業員に発破をかけてもらう。
部下から信頼されれば、多少厳しいことを言っても付いて来る様になる。
改革は一部門の努力で達成出来るモノではない。社内全部門の協力・支援が必要だ。一人でしゃかりきに改善をすると、部分最適になったり、他部門から浮いた存在になってしまうことがある。

前述の顧問先で、私がとった信頼関係構築の方法を紹介しよう。

まず経営幹部を叱り飛ばした(笑)部下に対する「ホウレンソウ」が全く出来ていない、こういう状態は仕事の管理など不可能だ。「叱り飛ばした」と言うのは相当誇張が入っているが、現在は歳をとった分、老練になった(笑)

次に現場リーダの信頼を得る方法を考えた。
言葉を尽くしてもムリだ。こちら側の能力が圧倒的に高い事を実感させる。「言う事を聞いた方が得だ」と分かってから、初めて言葉で意欲を高める事が出来る様になる。

具体的には、現場を観察してリーダ達が困っている事を探した。
当然聞いただけでは、何も答えない。信頼していない相手に「困っている」などと言いたくないのが人情だ。

観察の結果、どのラインも共通の作業工程がボトルネックになっているのを発見した。単純な人作業なのだが、熟練度の差が大きく、その工程で大量に滞留している。作業者を観察し、その作業動作のキーポイントを見つける。
そしてリーダに、ビデオ動画を見せてキーポイントを解説、上手く作業する方法の指導方法を教えた。リーダは即各ラインの班長を呼び、もう一度説明してくれと頼んで来た。心の中で「やった!」とガッツポーズを作ったモノだ(笑)


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第373号に掲載した記事に加筆したものです。

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部下に対するホウレンソウ

 先週の読者様ご相談に対して別の読者様からご質問をいただいた。

※H様のご質問
 現場リーダとの信頼関係を結ぶ方法は、大変参考になりました。
 自分も実践してみます。まずは現場に行く事が大切ですね。

 ところで、経営幹部に対し「部下に対するホウレンソウ」が出来ていないと叱り飛ばしたとありますが、ホウレンソウとは部下が上司にする事と理解しています。部下に対するホウレンソウの意味を、教えていただければ 幸いです。

経営者や管理者の仕事は、成果を出す為に組織や部下のパフォーマンスを最大に上げる事と言えるだろう。そのためには部下の能力を高め、正しい方向を向かせる事が必要だ。ノミュニケーションも有効だが、現場で指導をする事で、信頼関係を構築する事が出来ると考えている。

お客様の経営幹部を叱り飛ばした、と言うのは痛快な表現かもしれないが、相当誇張が入っている。「提言した」位の穏当な表現にしておけば良かったと後悔している(笑)

多分H様は、最近私のメールマガジンを読み始めてくださった方だろう。
何度かメールマガジンで「ホウレンソウ」の事を書いたが、「ホウレンソウは上司がするモノだ」と考えた方が上手く行く、と言うのが私の考え方だ。

先週のメルマガの例でいえば、経営幹部は自分の部下に対し、まず自分たちの生産性をもっと高めなければならない事を伝えなければならない(報告)
今回林と言うコンサルタントに現場改善指導をお願いした。現場での指導を良く聞き、学習して欲しい(連絡)
コンサルタントと一緒に現場改善をするメンバーを公募し、意欲のある者を選考したい(相談)
と言うホウレンソウをしなければならない。

部下に対して、目的目標を理解してもらい、実践方法を伝え、意欲を上げる。
これが上司のホウレンソウだ。

当然部下からホウレンソウが上がっている様にしておかなければならない。
ホウレンソウを待っていては駄目だ。どういうタイミングで報告をするか、どういう事を誰に連絡するか、どんな事が発生したら誰に相談するか、これらを事前に決めておく事は上司がすべき事だ。

部下にホウレンソウが出来ていないと叱るよりは、ホウレンソウを仕事の手順、スケージュールに埋め込んでおけば良いのだ。

部下と上司は立場が違う。立場の違いをホウレンソウで埋めるのならば、双方がそれぞれの立場で行動しなければならない。


このコラムは、2014年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第374号に掲載した記事に加筆したものです。

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異文化理解より自己理解

 海外で仕事をしていると,その国と日本との違いに対しとても敏感になる.

  • 明らかに間違っていても謝らない.
  • 仕事より個を優先する.
  • 同僚の仕事には関心を払わない.
  • 上司に指示された事はやるが,指示されない事はやらない.
  • 直属の上司に指示された事はやるが,別の上司に指示された事はやらない.

こう言う日本とは違うリアクションを,部下から受ける事が多々ある.
この時に,なぜ彼らが想定外の行動をとるのかと考える.しかしこう考えているとなかなか彼らの行動原理を理解することができない.
日本はどうしてそういう行動をとらないか?と逆のアプローチで考えると,答えを見つけることができる様な気がしている.

そういう訳で,中国人の行動様式について書かれた書籍より,日本人の行動様式がどういう背景で成り立っているのかをテーマとした書籍に目がいく様になった.
海外に出ると日本がより理解出来る,と言うが,こう言う事なのだろう.

先週は「すみませんの国」と言う本を読んだ.
「すみませんの国」著者:榎本博明

私は,日本人の特殊性を「均一性」で説明して来た.
つまり日本民族が世界の中で特異な存在であるのは,日本社会が「均一」である事を要求することにより,日本人の特殊性が何代にも渡って形成された.
それに対して,大方の国は「多様性」が基本となっている.

日本人がすぐに謝るのを「均一性」で説明すると,その場にいる人々との調和を乱さない為に「とりあえず」謝っておく,と言うことになる.

著者の榎本氏は,日本は他国から侵略を受けた事がないから,謝る事に抵抗がない,と説明している.世界で侵略を受けた事がないのは,日本人,アラスカのイヌイット,ニューギニアのニモ族だけだそうだ.

そう考えると,中国は統治者が変わるたびに,侵略を受けて来た様なものだ.いちいち謝っていては,命が危ないと言う意識がDNAに刷り込まれているのだろう.

日本人がその場の調和(均一性)を保とうとする行動を,著者は「状況依存」と説明している.原理原則を通す事より,その場の状況に合わせて,場の雰囲気を乱さない様に行動する事だ.それに対し欧米は「原理原則」を優先する.

例えば,中国人部下に同僚の仕事を手伝う様に指示しても「それは私の仕事ではありません」となる.これは職務分掌と言う契約(原則)が優先であり,「困っている人がいれば助ける」と言う行動にはならない.
日本では職務分掌そのものが曖昧である事もあるが(笑)契約と言う原則より仲間が困っていると言う状況解決の行動をとることになる.

中国人の行動を理解するよりは,日本人の行動原理を理解した方が早い.
中国人部下の行動が理解出来たとしても,それを解決する事にはならない.
日本人の行動原理を理解すれば,どうすれば部下が好ましい行動をとれる様になるのかが分かるだろう.
もしくは自分が好ましいと思い込んでいる行動様式は,非常識だと気が付くかもしれない(笑)

異文化理解より自己理解.一度試されてはいかがだろうか.


このコラムは、2013年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第303号に掲載した記事です。

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日中モノ造りの発展

 中国のモノ造り産業の発展のために,何か助言が出来ないか考えた(今週の雑感「外国人専門家の懇談会」参照)日本のモノ造りがたどった発展の道と,中国が世界の工場になった道の違いを分析し,更なる中国発展の課題が見えるはずだ.

この検討は,中国企業ばかりではなく,日系中国工場,日本の製造業にも気付きが得られると思う.

製造業を二つの軸でカテゴライズする.
縦軸を「製品の設計力」とする.
横軸を「製造力」とする.
それぞれを,高い・低いと層別する.
上図を以下の4つの象限で検討する.
右上:高い設計力,高い製造力(例)工作機械
左上:高い設計力.低い製造力(例)高機能LSI
右下:低い設計力,高い製造力(例)高精度の加工部品
左下:低い設計力,低い製造力(例)大量生産の日用品

日本も中国も,左下から製造業がスタートした.同一規格大量生産品を,安価に生産することにより,世界の市場要求に応えることができた.

日本はその左下モノ造りの過程で,製造力を磨き,高品質・高効率のモノ造りに達することができた.つまり左下から右下にシフト出来た訳だ.
加工機の限界制度を引き出す職人のワザ,加工機を改造する智慧,それらの製造の力が,モノ造りニッポンを支えている.

そのインフラをもとに,右上の領域に達することができた.

一方,同じ左下から出発した中国の発展は,次の様な経路だ.
海外からの投資,技術指導で同一規格大量生産品を,安価な労務費により低コストで生産し,あっという間に世界市場を席巻した.

次のステップで,中国は左上を目指した.つまり高設計力,低製造力分野にシフトした.
例えばPCの生産は,高い設計能力が必要だが,製造的には機械設備を買ってくれば可能となる.高機能LSIも同様に,設計は高度だが,製造は機械設備さえあれば可能となる.

つまり中国は,今までの延長で投資の力により左下から左上にシフトした.
従って,高機能な製品を生産出来る様になったが,高信頼性の製品は,生産出来ない.例えばPCの生産は可能だが,同じ機能のプロコンは生産出来ない.1台あたりの利益幅が大きくても,投資した設備の稼働率が落ちるからだ.

そして現在,右上の高設計力・高製造力を目指している.

この時点で中国製造業の進化がスピードダウンしている,と私は感じている.
高設計力を簡単に身につけることは難しいかもしれない.しかし左下から,左上にシフトした時の様に,海外の先進技術を導入することは可能だ.そして13億の人口を持ってすれば,優秀な頭脳は必ず育つだろう.
しかし,高製造力を得るのは簡単ではない.

ここが日本の進化と大きな違いだ.
日本では,長期雇用を前提として高い製造能力を自社で育成できた.
それは日本人の,仕事を通して成長する,仕事が人生そのものだ,と言う信条がプラスに作用している.

しかし中国では,離職率が高く能力の高い職人が育ち難い.
それは中国人労働者が,一つの仕事に熟練する喜びに気が付いていないからだ.また経営者も,投資効率を優先し,旋盤工を育てるよりは,NCマシンを買った方が速いと考えているのが原因だ.

しかし中国企業及び日系中国工場が,右上に行けないと言う訳ではない.
日本がやって来た様に,製造力を鍛えれば良いのだ.
中国人には無理だと考えている人は,人を表面でしか見ていない.環境や文化に影響される,ココロの表面は,日本人と中国人では大いに差がある.しかし人間としてのココロの深層は同じはずである.これを信じることができる経営者だけが,本物の職人を育てることが出来,右上に到達出来る.

一方日本のモノ造りが安泰であるかと言うと,そんなことはない.まさに危機に直面している.
高い製造技術を支えている,中小企業が次々と廃業に追い込まれている.高い技術があっても,受注がない.受注があっても,銀行の貸し剥がしで運転資金が確保出来ない.利益があっても,後継者がいない.この様な状況では,日本製造業の根源的な強みが失われてしまうだろう.

政府の政策には期待が出来ない.
中小企業のモノ造りが,事業として成り立つ様に必死で考えるしかない.


このコラムは、2012年10月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第280号に掲載した記事です。

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外国人専門家の懇談会

 先週は,広西省柳州市政府から招待を受け「国外専家柳州行座談会」という会議に出席して来た.柳州の企業をサポートしている,もしくは柳州で経営をしている外国人の座談会だ.
米国,ドイツ,フランス,ベルギー,日本の専門家が23人集まった.自動車関連企業を中心に様々な業種の人たちが参加していた.ドイツ人の女医さん,乳製品の工場を経営しているフランス人,ベルギー人の農業家,米国の大学教授をしている台湾華人のコンサルもいた.

それぞれの外国人専門家が,柳州の産業発展のためのアドバイスをし,それを政府の役人が聞くと言うスタイルで,会議が進んだ.

外国人子弟のための,インターナショナルスクールが欲しいとか,生活面での改善を要求する方もあったが,大方が,中国人の人情とか,風景環境などを賛美する,よいしょ的発言が多かった(笑)

私は,以下の2点についてPPTを用意していた.

  • スマイルカーブで製造業の位置を示し,今後どの方向に向かうべきか.
  • 製造業を,設計力,モノ造り力の2軸,4象限でカテゴライズし,日本のモノ造りがたどって来た道と,中国のモノ造りの位置を示し,今後中国製造業が目指すべき方向と,課題(本日のテーマに書いた内容

しかし会場にはプロジェクターはおろか,ホワイトボードさえなかった(苦笑)
この2点を,図を見せずに語るのは困難だ.特に第2点目は.フレームワークを頭に描かなければ,理解出来ないだろう.涙をのんで,第1点目だけを,はしょって話をした(笑)

本当は第2点目の話をしたかった.
それでも大学教授の台湾華人は,スピーチ後の懇親会ですばらしいスピーチだったと,話しかけてくれた.お世辞とは思うが嬉しいモノだ.

柳州政府は,外国人専門家の意見を政策に反映するつもりで会議を開いたとは思えないが,ものすごく金のかけている感じだった.30人は座れる丸テーブルで豪華な食事が振る舞われた.久しぶりに豪勢な広東料理を食べた(笑)
柳州の工業区に融資してくれた企業へのサービスなのだろう.

ところで会議の公用語は,英語だった.それぞれの専門家の通訳が,中国語に通訳する形だった.
ここ5,6年英語を話す機会が全くなく,自分の英語が錆び付いているのを痛感した.
それでも,会場を辞す時にドイツ人の女医さんに「アウフビーダーゼイエン」とドイツ語で挨拶出来た.40年前に習ったドイツ語が,すっと出て来たのには自分でも驚いた(笑)


このコラムは、2012年10月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第280号に掲載した記事です。
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語られ始めた「日本の失われた20年はウソ」という真実

 現代史を振り返っても「日本経済は1990年代初頭に燃え尽きた」という説ほど疑いようのない「事実」として定着しているものは少ない。この説は他国の政治家を大いに惑わしてきた。これから述べるとおり、米国はその最たる例だ。

 日本の「失われた20年」というのは、単なる作り話どころではない。英語メディアがこれまで広めてきた中でも、とびきり不合理で、あからさまなでっちあげの一つである。私の話が信じられないのであれば、『インターナショナル・エコノミー』誌最新号に掲載されたウィリアム・R・クライン氏の記事を読んでいただきたい。
今年に入ってポール・クルーグマン米プリンストン大教授も同じような主張をしているが、一見低迷しているような日本経済は、それは経済的根拠とは無縁の、人口の変化に基づく幻影であるとクライン氏は指摘している。

(日経新聞電子板より)全文

詳細はぜひ全文をご覧いただきたいが、要約すると次の様になるだろう。

  • 日本の一人当たりの労働生産性は伸びている
    「失われた20年」と言われる20年間で、米国の労働人口は23%増加しているのに対し、日本の労働人口はわずか0.6%しか増加していない。つまり一人当たりの生産量で見れば、日本の生産量は増えている。
  • 日本の平成デフレは「良性デフレ」
    この20年間日本を苦しめたと思われている平成デフレは、米国の大恐慌デフレとは全く異質なモノである。この20年間、物価が下落している時の方が日本経済は上昇していた。
  • 円が上昇しても貿易面では成功
    失われた20年の間に、日本円は対米ドルで49%上昇している。それでも日本の企業は利益を出して来た。トヨタ、日産はこの20年間で3倍以上の売り上げを上げているが、米国ビック3は惨憺たる結果だ。
  • 「弱い日本経済」は意図的に操作された虚像
    日本政府、日本企業のトップは「破滅的状況」「崩壊寸前」など日本経済の危機感を煽ったが、その実体経済は成長を続けていた。IMFの統計データでは、日本の人口1人当りの電力生産は米国の2倍のペースで伸び続けた。
  • 中国の経済モデル
    中国の貿易実態は、日本からの輸入が米国からの輸入より40%多い。日本の労働人口が米国の1/3しかない事を考えあわせれば、その差は大きい。日本からの輸入品は、先端材料、部品、生産設備などハイテク製品が大部分を占める。中国工場は、日本からの輸入品を元に生産をし、世界に消費材を供給している。
    一方米国からの輸入品は基本的なコモディティーであり、特に多いのは、金属スクラップや古紙だ。

記事はこれらの論証により「失われた20年」と言うのはまやかしだと結論付けている。

私は、ここまで楽観的には見ていなかったが、「景気が悪い」と言うのは、メディアの操作によって作り出された「感情」だと考えていた。一部の困難を報道することにより、尾ひれが広がり、業界全体の困窮と捉えられると言う事が繰り返されたのだと思う。

2009年に、日本の謀TV局が「金融危機に喘ぐ世界の工場」と言う絵を撮りたいと、北京支局の方が取材に来られた。当時私のお客様の工場は、生産が落ちている所もあったが、このチャンスに生産改善をして体力をつけようと考えておられる所ばかりだった。マスコミの報道によって、多くの経営者が自信を失い守りに入る、その結果不況がホンモノになる。と言う私の観点を、記者の方にお話した。結局この番組企画はボツになったそうだ。

中国の労務費が毎年上がり続けている。
製造業に従事する若者が減っている。
東莞の労働人口が○百万人減った。

などネガティブな情報が、蔓延している。
しかし、だから業績が上がらないと結論付けるのは、経営者として余りにもレベルが低いと言わざるを得ない。
これらの条件は、同業者全員に同じ制約条件だ。この制約条件の中で結果を出すのが、ホンモノの経営者だ。

じゃぁどうすれば良いんだ。と言う声が聞こえて来そうだが(笑)
どの業種にも、通用する万能薬はない。あるとすれば「諦めない」と言う事だけだろう。
頭が真っ白になるまで考え抜く。それが経営者の仕事だ。日々の実務などやっている場合ではない。

私の頭髪がどんどん白くなっているのは、志の高い経営者様と一緒に考えているからだ(笑)


このコラムは、2013年9月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第325号に掲載した記事です。

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地下鉄丸ノ内線車内で洗剤の缶破裂 男女2人重傷

 20日午前0時20分ごろ、東京都文京区本郷2丁目の東京メトロ丸ノ内線本郷三丁目駅に停車中の電車内で、「乗客の女性が持っていた缶を振っていたら破裂した」と110番通報があった。東京消防庁や警視庁によると、中に入っていた液体が飛び散って乗客にかかるなどし、11人が手当てを受けた。いずれも意識があり、男女2人が重傷という。
 東京消防庁によると、11人は20代から50代で、男性4人、女性7人。このうちの20代の女性が持っていた容器が破裂したという。メトロによると、缶には「強力洗剤」と書かれていた。東京消防庁によると、女性は、コーヒーのキャップ付きアルミ缶に強アルカリ性の業務用洗剤を入れていたという。

asahi.comより

 アルミニウムとアルカリ性の洗剤が反応し,水素が発生.アルミ缶の内圧が上昇し,その圧力に耐えきれず破裂したのであろう.

こういう事故も人ごとではない.
中国の工場で,プラスチック容器に潤滑油や薬剤を入れているのをしばしば見かける.大きな缶から,使い易い様に小分けにしているのだろう.

しかしプラスチック材料によっては,切削油や潤滑油の様な鉱物性油によって劣化してしまう.ペットボトルなどは手軽に使えるが,酸やアルカリに対する耐性はあまり強くない.

ペットボトルに平気でガソリンを入れているのを見るが,危険きわまりない.ガソリンを入れておいても,短時間ならばPETは劣化はしないだろう.
しかしペットボトルからガソリンを注ぐ時に,ペットボトルが帯電する.絶縁体であるペットボトルから放電することはないが,それを支える人体は導体だ.給油中に給油口の金属に静電気が放電すると,ガソリンに引火し爆発・火災が発生することがある.

また容器を移し替えた場合,入っている物が何であるか表示も必要である.誤用があると大変なことになる.

ある工場で5Sを指導する時に,トイレ掃除用にペットボトルに入ったコヒー色の液体を発見した.掃除係のおばちゃんの説明によると,塗装の前処理に使う酸洗い用薬液の廃液だそうだ.この廃液で便器を磨いていたそうだ(苦笑)
表示がしてないこと以前に,この様な危険な薬液をトイレ掃除に使うべきではない.
表示が無い訳の分からないモノを処分しようとして,事故が起こる可能性も十分に考えられる.

本日のニュースは,現場に訳の分からない液体が,ペットボトルにないか再点検する様に,我々に示唆を与えてくれている.


このコラムは、2012年10月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第280号に掲載した記事です。

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人誑し改善

 「人誑し改善」などというと何か怪しげなことのように聞こえるが,メンバーをその気にさせるための「人誑し」だ.女性の関心を言葉巧みに惹きつけて,こちらの思い通りに動かしてしまうのが「女誑し」だ.それを女性に限らずやってしまうので「人誑し」といっている.

改善をするためにはまず現場のリーダがその気にならなければうまくゆかない.
トップダウンで「こうヤレ!」とやれば手っ取り早いように見える.
しかしリーダがその気になっていないと暫くすると元の木阿弥になってしまう.
そこで「人誑し」を駆使する.

特に私たちのように外部の人間が改善をする場合は「人誑し」が必要だ.外部の人間なので,リーダたちに対する「人事考課」という伝家の宝刀は抜けない.
彼らは外部の人間のいうことを聞かなくても何も困らない.上司に対しては改善策を試してみたがうまくゆかなかったと報告しておけば丸く事は収まる.
今までの方法でできているのに,変えるための余計なエネルギーは使いたくは無いだろう.今までどおりやっておけば何も苦労をすることは無い.

それを一歩踏み出すためのモチベーションを与えるのが「人誑し」だ.

やる気にさせるためにはまず「メリット」を理解してもらうことだ.
例えば,改善をすると○○%生産性が上る.というのは彼らにはそれほど高いメリットにはならない.改善するために作業者に頑張ってもらわなければならないようだと,メリットどころかデメリットになる.リーダたちは嫌がる作業者を説得するという余計なエネルギーを使わなければならない.

従ってメリットは「作業者が楽になる」「作業が安全になる」などなど作業者よりのメリットを前面に出す必要がある.その上でリーダ個人のメリットを訴求する.

更にこちらを信頼させる事が重要だ.
きっとうまくゆくという確信を持たせることだ.自分自身で不安を持っていれば,確実に相手に伝わる.まず自分自身で理論武装をしておく必要がある.
例えば,簡単に改善できそうだということを具体的に現在の方法と比較して理解させる.これを分かりやすくやる.

このあたりの作業が言葉巧みに相手の関心を惹くという「人誑し」の技術だろう.間違ってはいけないのは「人誑し」であっても「詐欺師」になってはいけないということだ.

仕事上で相手が困っていることをいとも簡単に解決してあげる.一種のプレゼント作戦だ.こちらが味方であること,解決能力があることを印象付けることも狙いだ.

最後にこの改善がワクワクするほど楽しいと思い込んでもらう.
言うほどは簡単ではないが,仕事が楽しいと思い込んでしまえばものすごいパフォーマンスを発揮する.
私は事あるごとに褒めるという作戦をとっている.


このコラムは、2009年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第111号に掲載した記事です。

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決断

 経営者の仕事を一言で言えば「決断」だろう。
組織の中で最終決断が出来る人が、経営者であり、毎回正しい決断をする人が、優秀な経営者だ。

先日読んだ本に、決断を誤るパターンが紹介されていた。
参考になりそうなので、ご紹介したい。

  • 二者択一をする誤り
     決断とは二者択一ではない。
    例えば新型の設備を購入する、しない。と言う決断は二者択一の様に見えるが、「購入する、しない」と言う問いの立て方が間違っている。
    新型設備を購入する・しないは、生産能力を上げる(又は生産効率を上げる)ための手段に過ぎない。新型設備を購入する以外にも、方法があるはずだ。はじめから二者択一問題に落とし込んでしまうと、別の方法は絶対に考えつかない。
  • バイアスがかかった確認をする
     当然だが現状把握が間違っていれば、正しい決断は出来ない。
    厄介なのは、バイアスがかかった見方をしていると、間違っていても正しいと思い込んでしまう事だ。バイアスにとは、思い込みと言ったら良かろう。ネガティブ・ポジティブ両方がある。初めから先入観を持って見ているので、現実を間違って把握する。
    思い込みとか先入観が何処から生まれるかと言うと、自分自身の体験、常識と言われている事だ。厄介な事にこの壁は意外と厚い。
    例えば「生産効率を挙げるにはまとめて作れば良い」と言うのがある業界では常識となっている。これは常識ではなく、段取り替え時間を短縮出来ないという制約による、妥協である。
  • 短期的感情で決定する
     動物は、目の前にある恐怖や脅威を避ける様に行動する。これは生存本能であり、人間も同様だ。恐怖、脅威、不快と言う感情で決断をすると、間違ってしまう事が多い。まずは、自分も相手も感情で行動している事を理解する。
    世の中そのものが、大衆の感情で動いている事が分かれば、世の中を動かすメカニズムが見えて来る。
  • 過信で判断する
     自信は必要だが、過信は危険だ。
    過信とはどういう時に発生するかを考えてみると良い。
    少ない情報だけで判断する。
    少ない経験だけで判断する.
    得てして過信に陥り易い人は、人の話を聞かない。

正しい決断をするためには、以上の4つに陥らない様にすれば良いはずだ。
私の対処方法を列記しておこう。

  • 二者択一の前に別の質問をする。
     例えば「新しい設備を買う・買わない」と言う二者択一の設問の前に、設備を買わない場合は何が出来るかを考える。
  • 常識を疑う。
     社内の常識、業界の常識を疑う。
    これは意外と難しいと思う。何せ自分の頭に刷り込まれてしまっている事を疑えと言っている。業界外の人とディスカッションする事が有効。
  • 異業種を沢山見る。
     表面的に見ていては、分からないと思うが、深く見れば常識の違いに気が付く。
  • 自分の立ち位置を変える。
     立っている場所の高さ、時間軸を変えるという意味だ。
    虫の目と鳥の目(視野の広狭)を持てば、物事を仔細に見たり俯瞰する事が自在に出来る。明日死んでしまうと考え行動し、100歳まで働くと考えて準備をすれば、永い時間軸で判断出来る様になる。
  • 人の話を聞く。
     顧客の話を聞くのは当たり前だが、部下、同業者、異業種、コンサルなど色々な人の話を聞く事。ただ表面的に聞くだけではなく、好奇心を持って聞く。

私はこの五点に気をつけて、日々を送っている。

参考図書:「Decisive」Chip Heath,Dan Heath(著)


このコラムは、2013年9月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第325号に掲載した記事です。

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