カテゴリー別アーカイブ: コラム

工程を止める

 生産中に同一不良が大量に発生する。または顧客に不良が流出した。
原因や改善方法がまだ判明しない。しかし客先への納入が必要。この様な状況を経験された方は多いだろう。(経験したことがないという方は、ラッキーな方か、まだ経験が浅い方だろう)

タクトタイムで次々と製品が上がってくる工程で、同一不良が発生すれば、あっという間に大量の不良の山が積み上がる。
こういう状況になった時に生産を止められるかどうかで、その工程の監督者の力量が判断できる。当然顧客の要求納期に答えなければならない。生産を止めれば、納期遅延が発生する。このプレッシャーに打ち勝って生産を止めることは難しいだろう。

しかし冷静に考えれば、不良が発生したまま生産しても納期が間に合うとは言えないだろう。滞留する不良の山をあちこちに移動したり、修理要員を確保するなどが必要となり、生産効率も生産量も落ちる。
最悪の場合、工程内で発生した不良が顧客に流出する。

工程の監督者は、納期通りに「生産」をするのが使命と思っており、生産を止める勇気を持つことができない。しかし本来の使命は納期通りに「出荷」することである。したがって、納期通りに良品を生産しなければならない。

監督職が不良品の「処置」に奔走していれば、いつまでも不良は発生し続ける。勇気を持って工程を止め、不良原因を解析し対策を実施する事が必要な処置だ。


このコラムは、2017年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第579号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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海自機墜落「人的ミス」

海自ヘリ墜落は人為的ミス 青森沖3人不明

海上自衛隊のヘリコプターSH60Jが8月26日夜に青森県の竜飛崎沖に墜落、乗組員4人のうち3人の行方が分からなくなった事故について、海自は7日、人為的ミスが原因との調査結果を公表した。方位指示器の誤差を復旧する作業中、バランスを崩して墜落、水没したという。フライトレコーダーや機内の音声データ、救助された乗組員の証言から判断した。

海自は機体に問題がなかったとして、操作手順の徹底など再発防止策を実施し、事故後に自粛していた同型機の飛行を8日以降に再開する。

海自によると、護衛艦「せとぎり」搭載のヘリは夜間の発着艦訓練のため、午後10時33分に艦上を飛び立った。直後に機長席と副操縦士席の方位指示器の値に大きな誤差があることを示すランプが点灯した。

同48分ごろ、復旧作業で機体の姿勢や方位を表示する装置の電源を落とすと、飛行が不安定になり、機首が上がり速力が低下。機長が高さ90~120メートルで速力を上げようと機首を急激に下げ、そのまま墜落した。バランスを崩してから十数秒で落ちたとみられる。

やや強い風が吹いていたが、視界は良好だった。作業に集中するあまり水平線の見張りが不十分になり、乗組員が機体の姿勢が変わったのに気付くのが遅れたという。〔共同〕

日本経済新聞より

その他の新聞記事も合わせて要約すると、
防衛省が墜落したヘリコプターのフライトレコーダを解析した結果、事故原因は「機長が機体の姿勢をしっかり把握しておらず、搭乗員間の連携も不十分だったことが重なって墜落」と言う事で「人的ミス」と結論づけている。

その経緯は、

  • 磁気で方位を確認する方位指示器に誤差が発生とアラーム表示。
  • 機長は誤差を修正するため、操作マニュアルに基づき、方位指示器と連動し、機体の姿勢を確認する装置の電源をいったん切って再起動
  • 電源を切ったことで、この装置と連動している機体の姿勢を維持する機能も低下。
  • その操作で、結果機首が上がって速度も落ちるなど機体姿勢のバランスが崩れた。
  • その結果、機体は降下し続けて墜落した。

この間に「人為ミス」があったとは思えない。唯一人為ミスがあったとすれば以下の記述部分だけだ。

  • 副操縦士や機体後部の2人の航空士も機体の姿勢や周囲の状況を確認しておく必要があったが、これを怠っていたという。

これは墜落の直接原因ではなく、我々製造業で言えば「流出原因」に相当する。

この記事が正しいとすれば、発端となったのは「方位指示装置の誤差」だ。機長は操作マニュアルに従って、機体の姿勢を確認する装置をオフ・オンしてリセットしている。その結果、姿勢確認装置と連動している機体の姿勢を維持する機能も低下、墜落となっている。

機体の姿勢を確認する装置を初期化してしまえば、実際の姿勢とずれが生じ、機体の姿勢維持をする事は出来なくなる。

機長はこの操作をマニュアルに従ってやっている。これは人為ミスではなく、操作マニュアルの不備だ。
こういう状況で、副操縦士らが機体の姿勢や周囲の状況を確認した所で墜落を防ぐ事は出来なかっただろう。流出原因防止を強化しても、発生原因を除去しなければ事故再発は根絶出来ない。

根本原因対策は、
飛行中に方向指示の誤差が発生した時の対応の仕方を変える(マニュアル変更)
又は、飛行中に機体姿勢確認装置のリセットをした場合に、姿勢制御維持装置の処理方法を変える(飛行システムのソフトウェア変更)事になるはずだ。

命をかけて国を守ってくれている自衛官3名が行方不明となっている。
「人為ミス」と安易な答えを出すのではなく、きちんと再発防止につながる原因分析をすべきだ。


このコラムは、2017年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第562号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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全日空便、パネル2度脱落 成田発着の同じ旅客機

7日から8日にかけ、成田空港を発着した全日空便の同じ旅客機から、脱出用シューターを収納する強化プラスチック製のパネル(縦60センチ、横135センチ、重さ約3キロ)が2度脱落していたことが9日、全日空への取材で分かった。

いずれも飛行中に落ちたとみられるが、見つかっていない。飛行に問題はなかった。全日空は同機を整備点検し、原因を調べている。

同社によると、脱落があった機体はボーイング767で、パネルは左主翼の付け根付近に取り付けてあった。7日夜、中国・アモイから到着後になくなっていることが判明。同じ大きさの新しいパネルを取り付けて運航したが、8日夕に中国・大連から戻った際にもなくなっていた。

アモイや大連の出発時にはパネルは脱落していなかったという。〔共同〕

日本経済新聞より

 最近旅客機による重大インシデントが続いている。ANA機のパネル落下事故を整理すると、以下の様になる。

7日、アモイ→成田便がパネル落下。
8日、大連→成田便の同機が再びパネルを落下。

パネルは強化プラスチック(FRP)製。左の主翼の付け根にある緊急脱出用スライドを収納するパネル。緊急脱出時に、高圧窒素を使ってパネルを開き格納された脱出シュータを出す様になっている。

旅客機に乗ると、離陸時に「扉をオートマティックモートにし、相互確認を行ってください」と言う乗務員向けの機内放送が毎回ある。駐機時には扉はマニュアルモードとなっており、扉を開けても脱出シュータは出ない様になっている。飛行中は、オートモードにし異常時に扉を開ければ、脱出シュータが出る様にしておく。今回の落下パネルは主翼後方のシュータ用なので、主翼上の非常口が開くとパネルを吹き飛ばす様になっているのだろう。

全日空は「非常時にパネルを外すための高圧窒素ボトルからわずかな窒素が漏れ、パネルのロックが外れた」と原因を説明している。

原因分析が正しければ、成田の整備工場での修理時に「わずかな窒素漏れ」は修理されているはずだ。翌日同じ事故が再発している。従って以下の問題があったと推測される。

  • 原因推定(又は漏れている場所の特定)が間違っていた。
  • 原因推定はあっていたが、修理が正しく出来なかった。
  • 修理後の点検も正しく行われなかった。

ところで脱出シュータの日常点検整備、修理後の点検はどう行われるのだろう。実際に脱出シュータを出す検査は「破壊検査」になるので出来ない。擬似的に検査をする事になるだろう。

航空機のメカニズムはよくわからないので、エレベータの事例で考えてみよう。
以前近隣のホテルでエレベータが最上階から地下2階まで落下し、乗客が怪我をする事故があった。新聞報道によると、21人!もエレベータに乗っており、緊急時ブレーキが機能しなかった様だ。エレベータは最大13人、1000kgの積載能力しかなく、オーバーすればブザーが鳴り扉が閉まらないはずだ。
従ってこの事故は、エレベータの牽引ワイヤの破断と積載オーバーの検出機能不全の二つが重なった事になる。
緊急ブレーキも機能しなかったが、こちらは設計仕様(定員13人、1000kg)をオーバーしており、緊急ブレーキが正常であっても事故は防げなかっただろう。

日常点検で牽引ワイヤの劣化は発見出来るはずだ。(中国における点検整備は壊れたら修理と解釈されている様だ・苦笑)
しかし積載オーバの検出機能はどの様に検査されているのだろうか?
しばしばエレベータの点検整備の現場を目撃するが、1000kgの錘りも、13人の点検作業員も見た事はない。重量センサーの出力端を操作し擬似的に検査しているのだろう。この場合重量センサーに故障があれば検出出来ない。

今回の全日空機事故も本質原因の他に、正しく検査が行われない流出原因がありそうだ。
あなたの工場で行われている設備点検に「落とし穴」がないか一度点検をしてはいかがだろう。


このコラムは、2017年10月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第571号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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原因調査・再発防止

 11月8日に群馬県でヘリコプター墜落事故が発生した。
乗務員4名全員が亡くなっている。
目撃者は、機体後部から部品が落下した、と証言している。機体に何らかの異変が発生し、機体の制御が出来なくなり墜落した様だ。

航空機事故が発生すると、運輸安全委員会が調査に入り原因の分析および再発防止対策の実施をしている。運輸安全委員会とは、国土交通省管轄の組織であり以下のミッションを持っている。

  • 航空、鉄道及び船舶の事故・重大インシデントが発生した原因や、事故による被害の原因を究明。
  • 事故等の調査の結果をもとに、事故・インシデントの再発防止や事故による被害の軽減のための施策・措置を勧告。
  • 事故等の調査、再発防止、被害軽減といった運輸安全委員会の施策推進に必要な調査・研究

運輸安全委員会のホームページ

今回のヘリコプター墜落事故に関する調査は始まったばかりであり、報告書はまだ出ていないが、過去の事故・重大インシデントの報告書は公開されている。調査報告書が公開されるまで2年程の期間を要している様だ。

例えば以前このメールマガジン(2015年6月8日配信・第427号)で取り上げた、那覇空港での航空自衛隊のヘリコプターと民間機2機が絡んだ離着陸トラブルの事故報告書は公開されている。

那覇空港での航空重大インシデント調査報告書

メルマガ過去記事「空自の復唱「気づかず」 重複の可能性も 那覇管制官」

60ページ以上の運輸安全委員会報告書の書き出しはこうなっている。
“本報告書の調査は、本件航空重大インシデントに関し、運輸安全委員会設置法及び国際民間航空条約第13附属書に従い、運輸安全委員会により、航空事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。”

私たち製造業においても、不良原因調査、安全事故調査を行う機会はしばしば有る。これらの調査の目的は、不良・事故の再発防止であり、問題発生の責任追求ではない。責任追及とすれば、責任逃れ、問題の隠蔽が発生し本来の目的で有る「再発防止」は達成出来ない。

社内や顧客に提出する報告書は、運輸安全委員会の報告書の様な「大作」で有る必要はないし、2年もかけて報告書を作成したのでは改善のチャンスを失する事になる。
(運輸安全委員会の名誉のために申し添えると、対策そのものは既に実施済みで有り、原因・対策とそれに至った調査記録をまとめた報告書となっている)

私たちも運輸安全委員会の基本ポリシーに従って不良・事故調査に当たるべきだ。そして不良・事故発生の再発防止・損失軽減に対する調査・研究を推進しなければならない。

再発防止・損失軽減に対する調査・研究とは

  • 設計基準、製造方法、作業要領などを改善改訂する。
  • それらが遵守される事を確かにする。
  • これら調査・研究対象を広く社外にも求める。

と言う事になるだろう。


このコラムは、2017年11月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第589号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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航空機事故から

 先週は米子空港の自衛隊輸送機のオーパーラン事故福岡空港の大韓航空機緊急着陸と立て続けに航空機事故が発生した。両事故ともに負傷者もなく重大事故とはならなかったが、ヒヤリハット事故として原因を究明の必要がある。
自衛隊機は減速、操舵の操作が出来なかった。大韓航空機は操縦席内で発煙を確認。とそれぞれの直接の事故原因は報道されているが、真因はまだ判明していないようだ。

現時点で再発防止や、水平展開を議論してもあまり意味がなかろう。
本日は1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空の着陸失敗事故を検討してみよう。

事故発生の経緯。

  • 着陸態勢に入った後副操縦士が、ゴーレバー(出力最大)を誤操作。
  • 機長が気がつきゴーレバーの解除を指示するが、解除されず。
  • 航空機(エアバス)は着陸やり直しモードに自動で切り替わり上昇を開始。
  • 副操縦士は自動着陸モードをオンにし機首下げ操作をする。
  • 着陸やり直しモードの自動操縦装置が反発し機首を上げようとする。
  • 機長が操作を変わり、着陸やり直しのためゴーレバー作動、機首上げ操作。
  • 機体が急激に機首上げし、失速墜落。
  • 乗客乗員264名死亡、7名重傷。

この事故の発端は副操縦士の誤操作であるが、操縦の矛盾(着陸やり直し時で機首下げ操作)時に自動操縦を優先する設計思想になっていた事で、失速してしまった。緊急時には、人よりコンピュータの方が冷静に判断出来る、と言うのがエアバス社の基本設計思想だった。一方ボーイング社は、人の操作を優先する設計思想になっていた。今回の事例で言えば、着陸やり直しモードで機首下げ操作をすると、着陸やり直しモードは解除される。

確かに人はミスをする。しかし自動制御が万全かと言うと、そうではない。プログラムにはバグがつきものである。更に制御プログラム設計時に想定できない事象が発生する事もあり得る。そう考えると、最後の砦は人の判断になる。

この問題は、機長の指示に対して副操縦士が従わず最大出力のまま着陸モードにした所が発端だ。普通に考えると、複数人で操作をする場合は、指示に対し復唱と確認は必須だ。コックピットの中で指示、復唱、確認の手順が遵守されていなかったのではなかろうか?

我々の仕事にも、指示、復唱、確認が必要な場面は多くありそうだ。
特に中国人スタッフに指示を出す場合、より復唱、確認が重要になる。


このコラムは、2017年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第532号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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航空機事故(人為ミス)

 先週は1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空の着陸失敗事故を検討した。着陸やり直しモードで自動操縦されている旅客機を手動で着陸させようとして発生した事故だ。
これも人為ミスと考えてよかろう。人為ミスに対して「パイロットの教育訓練」と言う対策では殆ど効果はないだろう。先週の記事では、機長と副機長間の認識の違いを埋めるため「指示」「復唱」「確認」を徹底すると言う対策を考えてみた。実は事故機のエアバス社は、自動操縦のプログラムを変更し、自動操縦時にパイロットが操縦操作をすると、自動操縦モードを解除する様にしていた。プログラム変更が事故機に適用されていれば、事故は発生しなかったであろう。
機長・副機長間のコミュニケーション改善(人に依存した対策)よりはプログラム改善(設計による対策)の方が効果は確実だ。

本日も人為ミスによる航空機事故を紹介する。

VORの誤入力により、自動操縦中の旅客機が山脈に激突墜落した事故だ。
VOR(無線信号灯)とはVHS周波数滞の電波により、航空機に方位を知らせる灯台の様な物だ。自動操縦ではVORを目指して飛んで行く。

機長が選んだ航路上のROZOのVORを自動操縦システムに入力する際に、誤ってROMEOのVORが選択されてしまった。平地を飛んでいるはずが、山脈に向かっており、警告が出た時には上昇が間に合わず山脈に激突墜落した。

警告が発生した時に機長が冷静に対処出来なかった事もあるだろうが、事故の発端はVORの入力ミスだ。

VORの入力は「R」を入力した時点で第一候補の「ROMEO」が表示されそのまま選択してしまった。そして間違った選択に気がつかなかった。と言うのが事故の根本原因だ。これを「人為ミス」で片付けてしまうと、有効な再発防止対策は得られない。

多分航空機会社の、システム設計者はユーザビリティを考えて、設定の簡便さを優先したのだろう。

例えばGoogleやYahooの検索も検索文字入力の途中で候補が表示される。そしてリターンが押されると即検索が始まる。検索の場合間違った文字列が入力され間違った検索が行われても、やり直せば問題はない。間違った検索結果が表示されても重大な事故につながる事はないだろう。

VOR設定ミスによる潜在問題を洗い出すと、XY軸(緯度・経度)に関しては燃料の浪費、時間の浪費に気がつく。Z軸(高度)に着目すれば、山に激突すると言う重大事故に気がつくはずだ。
航空機の航路設定の場合は、簡便さより安全性が優先されるべきだ。

航空機のコックピットの写真を見ると、スイッチ類がぎっしり並んでいる。多分「ROZO」と入力するだけで,何度もスイッチ操作を繰り返さねばならないのだろう(アルファベットが刻まれたロータリィSWを合わせ、一文字ごとにエンターSWを押すのではないだろうか?今ではこんなユーザインタフェイスは考えられないが、事故が起きたのは1995年だ。)最近の航空機は、操作性と確実性が両立していると考えたい。

しかし、出発準備が忙しく民間機と自衛隊機がニアミスした事故があった様に航空機の操作は、相変わらず煩雑さが改善されていないのかも知れない。

製造現場では、もっと容易に操作性と安全性を両立する事ができるだろう。
操作が複雑、分かりにくいなど改善のチャンスだ

今回の失敗事例は「失敗百選」中尾政之著を参考にさせていただいた。


このコラムは、2017年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第533号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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杭打ち工事、現場の言い分

杭打ち工事、現場の言い分。データ再調査は「パンドラの箱」となるか?=近藤駿介

 新たな不正が見つかり、日増しに批判の声が高まっているマンションデータ改ざん問題。この風潮に異を唱えるのが、30年前に元請会社の技術者として杭打ち工事を担当した経験を持つ、元ファンドマネジャーの近藤駿介さんです。
自然相手の工事における「必要悪」としてのデータ改ざんとは?

(以下略)
全文はこちら

(MONEY VOICE ニュースより)

 以前杭打ち工事のデータ偽造のニュースに関してコラムを書いた。

「旭化成建材、現場責任者の3割偽装 出向が大半、調査難航」

当初現場責任者の問題と言う論調だったが、予測通り業界全体の問題に発展して来ている。

本日取り上げたコラム著者・近藤駿介氏は杭打ち現場の経験があるようだ。現場人間の私には、彼の主張を理解できない訳ではない。

空調が効いたオフィスで仕事をしている実務経験のないボーヤが、偉そうに施工検査に来た所で何が分かる。と言う筆者の気持ちがコラムの端々から滲み出ている。

実務経験がない検査官は、施工データをどう読むか分からない。検査官は必要データが揃っている事をマニュアルに従って確認するだけになるだろう。コラム筆者はこのような「マニュアル検査」を続ける以上施工データの改ざん・流用は無くなる事はないと言っておられる。

この議論は納得ができない。

確かに現場には予期しないことが突発的に起きる。それによってデータが取れない事もあり得るだろう。だからといって、データの存在だけを問う施工検査をするから施工データを改ざん・流用してよいと言う事にはならない。データをきちんと取る様に努力を傾けるのが本物の現場人間だと思う。

コラム筆者は何度も「施工品質と施工データは別物だ」と主張しておられる。きちんと施工さえしていれば、施工データを改ざんしようが流用しようが施工品質は悪くはならない、と言う主張と理解した。
確かに、施工データは偽物でも、決められた材料を決められた工法で正しく施工すれば、施工品質は悪くはならないだろう。しかし正しい材料、正しい工法、正しく施工が行われた事をどのように保証するのだろう?

それを検証しようとすれば、破壊試験しかないだろう。

施工データは、合理的なコストで施工品質を保証する唯一の根拠だ。
施工データの改ざん・流用を施主の施工検査のせいにし、最終顧客には大丈夫だから信じろ、と言っているのと同じだと思うがいかがだろうか。


このコラムは、2015年12月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第453号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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続・現場力の継承

 第86号で「現場力の継承」を工場でどう工夫するかという問いかけをした。

作業指導書とか作業標準で作業方法は継承することは可能だ。

しかし作業指導書や標準書などで本当の現場力は継承できない。本当の現場力は作業方法などの方法論ではないはずだ。その作業方法を生み出す品質第一のココロ、継続改善のココロが本当の現場力だと思う。

また作業標準や規準書を後生大事に継承したのでは,進歩から取り残される。標準化をするということは、その時点で最善の方法にいったん固定することだ。従って時がたつにつれ、世の中の進歩から取り残されてしまう。標準化をするということは相対的な退歩だと考えねばなるまい。

(注)標準化が悪いといっているわけではないことをお断りしておく。標準化をしたその日から、標準の改定を検討しなければならない。

現場力を継承する方法として「コトづくり」を提案したい。

以前指導した工場で段取り換え短縮の改善に取り組んだ事がある。実際に1時間半かかっていた段取り換えは30分以下で完了できるようになった。これを手順書化してやれば、新しく入ってきた作業員でも同じように段取り換えをする事が出来るだろう。

しかしそれでは不十分だ。
段取り換え短縮の改善プロジェクトに参加した作業員達は,どう改善するかという目的意識によって色々工夫したはずだ。この意識をきちんと伝承しなければ、現状維持が精一杯である。むしろ段取り換え時間は徐々に長くなっていってしまうだろう。

そこで「段取り換えコンテスト」を年に1回とか2回開催することを提案した。段取り換えをする作業員が、段取り替えの手順を競う。最も良い方法で作業できた作業者が優勝の栄誉を得る。またその様子をビデオに撮影し新人作業員の教育資料として使う。こうすれば優勝者の誇りにもなる。

このようにただ手順を標準書に残して伝えるのではなく、目的意識や改善に向ける熱意を「段取り換えコンテスト」という「コト」を作って伝承するのだ。

日本にもモノ造りの技能を伝承するための「技能コンテスト」や「技能オリンピック」という「コト」がある。これをあなたの工場に応用可能な形に置き換えてみよう。

読者様からはこんな投稿をいただいた.

さて今週の「現場力の継承」ですが、林様のおっしゃるように現場力は、マニュアルや作業標準で継承できる、ものづくりのノウハウとは違います。マニュアルで伝えられるのは、いわば「停まっている技術」です。現場力とは、外部環境や要求に応じて技術をブラッシュアップしていく力、改善力です。
まさに情熱、プライド、こだわりといったものに乗って伝わるものです。

では情熱やプライド(誇り)といったものは、どのようにして形成されるか?
一つ目は、限られたジャンルであってもNo.1を目指すことではないかと思う。例えば品質ではなく、コストでNo.1を目指すとする。品質は二の次なのだから簡単なように思えるが、そうではない。品質を下限ギリギリまで下げれば、下限を下回る不良が増えて、結局コストを圧迫したり、市場クレームで出費がかさんだりして、コストNo.1は達成できない。どんなジャンルであってもNo.1であることは、容易でなく、常に切磋琢磨していなくてはその地位は維持できない。

そしてもうひとつは、自分の作ったものの、一つ先が見えるようにすることではないか。アッセンブリメーカであれば、完成した姿、使われる姿が見えやすいので、モチベーションは上がりやすい。しかし部品メーカとなると、作業者レベルでは、目の前のものが何になるのかまったく?で、モノづくりしていることが多々ある。僕はサプライヤーの経営者、従業員に、完成して据付の済んだ彼らの努力の集積(製品)の写真を見せたが、一様に皆目を輝かせ、良い顔をしていた。これは重要なことだと思う。
しかし、中国のカネのためだけに仕事している労働者が、そんなこと理解するか?と反論する人がいると思う。「カネのためだけに働く」と言う意識の低さと、これはある意味別次元だと僕は思う。それは自分の息子や娘を慈しむ目であるような気がする。このような感情は、断じて「労働に対する意識」とは、比例も反比例もしない。まさに誰もが持っている感情ではないだろうか。

Z様。いつもご投稿ありがとうございます。
私の思いと非常に近いご意見と感じた。

中国の若者は「カネの為だけに働く」という人が良くおられる。これはある面で真実であるが、一部の中国人のことしか捉えていないと思っている。特に最近の若い人たちは、自分のスキルアップ、キャリアアップに高いモチベーションを持っている。そのキャリアアップの先にたくさんお金を稼いでよい暮らしがしたいというのはあるが、目前にあるのは自己成長意欲だと考えている。


このコラムは、2009年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第87号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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現場力の継承

 第83号の「究極のモノ造り」で伊勢神宮の遷宮の話を紹介した。
伊勢神宮の遷宮時に使う和釘を、新潟・三条の加治屋さんが再現した、というお話だ。

伊勢神宮が20年に一度遷宮をする理由は、モノ造りの技術を次世代に伝えるためだ。
多分遷宮工事にかかわることは、大変名誉なことだっただろう。
大工、鍛冶屋など代々の棟梁は遷宮の工事を任されることにより、次世代にその技術を伝える。遷宮がモノ造りの技術を次世代に伝えるための仕組みになっていた。親方から弟子に代々受け継がれるモノ造りの技術は、遷宮により確かめられるわけだ。

ヨーロッパやエジプトの遺跡は「そのモノ」が現代にも伝わっているが、日本は「様式」を伝える文化といって良いだろう。

このような古来から伝わるモノ造りの技術だけではなく、今私たちの工場にある現場力も5年後・10年後に代々伝えてゆかなければならない。しかもそのままではなく改善して伝承をしてゆかねば、時代から取り残される。

中国の工場では作業者・技能者に5年・10年と勤務してくれることは期待できない。では作業標準・マニュアル類で現場力は伝承できるだろうか?
これらは最低条件ではあるが、十分ではないと考えている。
現場力は、モノ造りへの情熱という器に乗せて次々と伝承してゆくものだと思っている。

工場の現場力をどう伝承してゆくか、読者様も考えてみていただきたい。
私のアイディアは例によって「金曜日版」で発表します。


このコラムは、2009年3月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第86号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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工場のホコリ

 先週は「モノ造りのホコリ」について書いたが今週は「工場のホコリ」について考えてみたい。ホコリといっても先週のテーマは「誇り」だが今週は「埃」だ。

最近複数のお客様工場で「ホコリ」について取り組んでいる。印刷工程、組立工程などなど色々なところでホコリが悪さをする。たかがホコリされどホコリである。

随分昔になるがCRT(ブラウン管)ディスプレイの内部にある異物が原因で、「管内放電」という現象に悩まされた。CRT内部にある金属性異物とアノード電極(25kV)の間で放電が発生し、表示画面が一瞬ぱっとフラッシュアウトしてしまう。一瞬のことなのでめったに見る事はないが、工場の監視画面のようにユーザが四六時中画面を注視しているようなアプリケーションでは故障と勘違いされ、サービスコールが発生してしまう。

サービスマンが現場に行っても再現せず、原因不明となってしまう事が多い。最悪の場合CRT内部の放電電流が外部回路に流れ電子部品を破壊してしまう事もある。

ではこの異物はどこから来るかというと、CRT組み立て中のホコリ、CRT内部のシャドウマスクや電子銃のバリなどが原因となる。これをなくすためCRTの組立工程では叩いたりゆすったり洗浄したりということを繰り返していた。

CRTメーカの努力にもかかわらず僅かだが市場で発生してしまう事がある。我々セットメーカとしては最悪回路の破壊故障にならない様に放電電流が安全にリターンするように工夫・確認するしかない。

そこで故意に管内放電を起こさせ確認することになる。
YAGレーザのパルス光をCRT外部から電子銃に向かって照射し金属を溶かしてしまう。飛散した金属によりCRT内部の絶縁が一瞬劣化し管内放電が発生する。

システムに組み込んだ状態で、管内放電による破壊やそれによるノイズで誤動作をしないことを確認する。この実験の様子をサービスエンジニアにも公開し「管内放電」を理解してもらったりしていた。

このよう異物がどこから来ているかはっきりしているモノは比較的対策がたやすい。

しかし印刷工程に浮遊しているホコリが、素地表面や印刷表面に付着してしまうと厄介だ。静電気で吸着してしまう事が多く、なかなかホコリが除去できない。
ホコリによる不良は外観不良ばかりではなく機能不良となることも多い。例えばプリント基板ではホコリにより回路の断線やショートが発生しうる。

ホコリを除去するために洗ったり。拭いたり、エアブローをかけたりすることになるが、「拭く」「吹く」という作業は静電気を発生させやすい。エアブローをかけることにより帯電させかつ周りのホコリを巻き上げ吸着させることになる。

加工による付加価値という観点では、ホコリを除去する作業はなんら付加価値を生んでいない。従ってホコリを拭き取るよりは。ホコリを発生させない・付着させない努力が必要だ。

一般にホコリの発生源を特定できないと対策は困難となる。
また付着させないためには,材料を帯電させない工夫が必要だ。


このコラムは、2009年6月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第103号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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