カテゴリー別アーカイブ: コラム

信頼

 人や組織との良好な関係は「信頼」だと言っても間違いではなかろう。
上司は部下を信じて任ずる、部下は上司の信任に応えて働く。これが信頼関係だ。同僚間、チームと個人、チーム間、会社と個人、会社同士に信頼関係があれば、そこにいる人々は仕事を通して幸福感を感じることが出来るはずだ。

では「信頼」とは何だろうか?
最近読んだ本にはこう書いてあった。
「信頼」とは「約束」と「実行」の積み重ね。

「モチベーション・リーダーシップ」小笹 芳央(著)
 

人は、相手の言葉や容姿を通して信頼できる人かどうか判断している。しかしそれは入り口であり、本当の信頼ではない。約束したことが実行されることにより、期待が実現する。この繰り返しにより信頼が形成される。

例えば「企業経営は人財育成だ」と言っている経営者に対して、信頼できる人かも知れないと言う期待が発生する。その言葉を、経営者が実際に行動することにより、期待が実現し信頼関係が生まれる。

「約束」は明示的な約束だけではない。日頃の言動から発生する暗黙的な約束も含まれる。例えば上記の経営者に対し、自分も育成対象だと言う期待を持つ。この期待が暗黙的約束になる。約束が実行されなければ、失望が生まれ信頼が崩れる。

人から信頼を得たければ、約束を実行する。自分の心情や信念から発生する暗黙的約束を実行し続ける。相手方にとって顕在化されていない約束を実行すれば、信頼度は高くなるはずだ。


このコラムは、2016年2月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第462号に掲載した記事に加筆しました。

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リーダーシップの形

 リーダーシップと言うと、あなたはどんな事を連想するだろうか?

人の心をつかむ力
人々を巻き込む力
説得する力
感動させる力
これらの力を使って目指す世界を実現する。これをリーダーシップというのではないだろうか。

youtubeにこんな動画を見つけた。
裸の男とリーダーシップ

動画は、何かの野外音楽祭と思われる場所で、若い男が上半身裸で踊っている所からスタートする。一人きりで狂った様に踊っている。周囲の人は、彼には注意を向けていない。しかしその内もう一人踊り出す人が出て来る。一人一人と増えていくうちに、臨界点を越えた様に大勢の人が踊りに加わり、大きなムーブメントになって行く。

このムーブメントを起こしたリーダーは、最初の裸の男だろうか?
多分彼は、個人的に踊り狂っていただけだろう。二人目、三人目あたりの参加者が周りを巻き込み始め、後は雪崩を打った様に人が集まって来ている。

このムーブメントを起こしたリーダーはこの二人目の参加者といっても良いだろう。踊り狂う怪しげな新興宗教の教祖を担ぎ上げ、信者を集める様な、リーダーシップだ(笑)

実は組織内にこういうリーダーシップは重要だ。
トップにはならずに、参謀役に徹する様な、フォロワー型のリーダーシップだ。
重要な役割ではあるが、ある種割りに合わない部分もあるだろう。

我々の様なコンサルタントも、こういう役割だ。


このコラムは、2017年4月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第524号に掲載した記事に加筆しました。

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リーダーシップ

 仕事がら、何人もの中国人経営者と会って来た。
お目にかかった中国人経営者は、ほとんどが自分で起業し経営している人だ。
親から事業を継承したとか、社内で階段を上がって経営者となったと言う人は、弊社のお客様の中にはいない。改革開放からまだ30年あまり、民営企業の経営者はまだ一代目の人が多いのだろう。

弊社の顧客中国人経営者を見ていると、判で押した様に同じタイプの人が多い。強いリーダーシップでメンバーをがんがん引っ張って行くタイプばかりだ。今月から支援している企業の董事長兼総経理もそのようなタイプの経営者だ。

経営幹部を集めた経営会議ではほとんど自分がしゃべっており、出席者はただひたすら聞いているだけだ。彼らがおとなしい人だと言う訳ではない。自部門の会議では董事長と同じ様に、部課長に向かってしゃべり続けており、部下に発言するチャンスを与えない。

この董事長の悩みは「経営幹部が自主的に動いてくれない」ということだ。私の見立てでは、経営幹部が自主的に働かないのは、董事長がそのようにしているだけだ(苦笑)

残念ながらこの企業には、自由闊達に意見を言い合う文化はなく、上司の意見を黙って聞く(聞き流す)のが美徳になっているようだ。このような組織は、起業したての企業ではうまく回るかも知れない。しかしある程度の社歴や人数規模になったらうまく立ち行かなくなる。経営者一人の力では会社を回せなくなるからだ。

この会社を更に成長させるには、董事長を変えなければならないだろう。
まずは会議ではしゃべるのを半分に減らし、部下の発言に耳を傾けるようにアドバイスした。
機関銃の様にしゃべり続けているので、助手が口を挟む暇がない。こういう時は私が直接話をする様にしている。

私の中国語では、真剣に聞き取らねば意味が分からない(笑)
普段人から叱られる事がない経営者が、日本の年寄りに意見される。この二つが効果があるようだ(笑)


このコラムは、2016年3月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第466号に掲載した記事に加筆しました。

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サーバント・リーダーシップ

 サーバント・リーダーシップと言う言葉を,耳にする機会があった.
リーダー(先導者)とサーバント(従者)と言う相反する概念が一つになっている点に興味を持った.

関連しそうな書籍を検索して読んでみた.
「サーバント・リーダーシップ入門」池田守男・金井壽宏

著者のお二人は,
池田守男氏は,元資生堂社長・秘書として5代の社長に仕えた後,社内改革の任を受け社長となった人だ.
金井壽宏氏は,神戸大学大学院経営学研究科教授.リーダーシップ,モチベーション,キャリアなどを研究する経営学者だ.

リーダーシップと言うと,私と同世代の方は「俺について来い」と言うリーダを思い浮かべるのではないだろうか.1964年東京オリンピックで「東洋の魔女」を率いて,女子バレーボールで金メダルを獲得した大松博文監督の名せりふが「俺について来い」だった.

若い頃,そういうリーダーシップを発揮できる人にあこがれた時期があった.
そういうリーダーの下で仕事をしたこともある.しかしどうも自分のスタイルではないと,感じていた.

自分が部下を持った時は,褒め倒してその気にさせるスタイルだった.
「俺について来い」式のリーダーではなかった.率先してチームの先頭に立って仕事はするが「俺について来い」ではなかった.「俺について来い」と言って後ろを振り向いた時に,誰もいなくなっていたらどうしよう,と言う不安があったのだろう(笑)

ナンバー・ワンのリーダーになるよりは,部下にとってオンリー・ワンのリーダーになりたいと思っていた.

その延長で,前職を早期退職してコンサル業を始めたのも,ナンバー・ワンの経営者になるよりは,経営者にとってオンリー・ワンの支援者でありたいと考えたからだ.

そんな自分のあり方を,スパッと言い表したのが「サーバントリーダー」だ.

サーバント(従者)であるからと言って,部下に対してへりくだったり,おもねったりすることではない.部下の成長・成功を支援することにより,チームの業績を上げることが,サーバントリーダーの仕事だ.

サーバントを従者でなく,支援者と理解した方が分かりやすいかもしれない.
あなたは,組織の中でどのようなリーダーシップを発揮されているだろうか?
サーバント・リーダーシップと言う言葉に興味をもたれたら,是非この本を読んでみていただきたい.


このコラムは、2013年11月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第282号に掲載した記事に加筆しました。

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企業の存在意義

 先週は内陸部の中国企業に呼ばれ、今年の事業計画発表会に出席した。何社ものグループ企業の董事長、総経理が出席していた。
私たちを呼んだのは、それらのグループ企業を束ねる統括企業だ。
環境関連商品を生産するために、昨年から12社の企業を買収して今年から本格的に操業する。環境関連商品は政府からの補助が有る。しかも販売先は政府関連の企業だ。半ば官制市場であり、景気のてこ入れでますますパイが大きくなりそうな業界だ。

彼らは今年中にホールディングカンパニーとして上場するつもりであり、生産能力の向上や、グループ企業の運営システム導入の指導を、私たちに打診して来た。

買収したばかりでまだ2、3人しかいない工場や、既に生産をしている工場ももあり、1年では到底上場できないだろうと感じる。しかし彼らは、金ならいくらでもある、と言う強いノリで望んでいる(笑)

この仕事はどう見ても2、3年がかりの仕事の様に見えた。
なぜなら、12社のグループ会社が集まっている理由が「金」でしかない様に思えたからだ。実現したい夢を共有している集団とは言いがたい。
各社の経営者の思惑をかいくぐり、外部の私たちが彼らの方向性を一つにする事は至難の業だ。経営トップの強いリーダーシップが必要だ。

環境負荷を減らす製品を生産する訳だから、実現したい夢は、「青い空」や「子供達が安心して成長できる未来」であるはずだ。経営の目的をここにおきグループ会社が同じ「夢」を共有すれば、顧客の顧客である消費者と夢を共有出来、それが社会に対する企業の存在意義となる。

各企業トップの話を聞いても、そのような気概は感じられなかった。
唯一の希望は、統括会社の董事長(まだ30代の若者)だ。彼は「電気自動車を生産している米国テスラと我々の企業集団の違いは何だろうか?」と質問してきた。私はテスラは新しい車社会を作ると言う「夢」を共有した集団であり、その夢を消費者と共有し企業の存在意義を持っている、と説明した。

そしてこの企業集団が共有するべき夢を、宣伝フィルムの様なストーリィにし、即席で語ってみた。少し心が動いたようだ(笑)


このコラムは、2016年1月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第459号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗の科学

 「失敗に学ぶ」ためには、失敗からその本質を抽出しなければならない。

例えば、接着が剥がれると言う不具合が発生したとする。これを抽象化すると接着力<外力 と言う単純な原理で表現出来る。
ではこの原理が成り立つのは?と考える。
・接着力が想定より小さくなった。
・想定より大きな外力がかかった。
この二つの条件のどちらか、もしくは両方が発生しているはずだ。

更に接着力の大きさはどのように決まるか、と抽象化を繰り返す。

問題解決のためには、抽象化した原理を、三現主義により具体化することで、原因を発見し、対策を検討する。

同様に抽象化した原理を他の事象に合わせ具体化することにより他の事象にも応用が出来る様になる。

失敗から学ぶために重要なことは、全ての失敗事例を記憶することではない。
失敗事例を抽象化し原理を抽出する。抽象化した原理を事象に合わせ具体化する。と言う思考法を学ぶことだ。


このコラムは、2016年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第468号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗から学ぶ

 「ニュースから」のコーナーは、ニュースの中から教訓となる不適合事例をピックアップして、その再発防止を考えるコラムとしてスタートした。
事例として取り上げた不適合事例・再発防止を抽象化することにより、自社に適用すれば同類の不適合事故を未然に防止することが出来るだろう。そんな思いで、市場回収事案、鉄道事故、不祥事事案などを取り上げ、原因を推定し再発防止対策を考えて来た。実際には当事者ではない私には真の原因を知る機会はなく、原因がこうならばこんな再発防止対策が有効になるのでは?と言うシミュレーションだ。こういう訓練を繰り返すことにより、現実に発生した不適合に対応する能力も高まると考えている。

自分自身の訓練になるとともに、読者様にも気付きの機会を提供出来たのではと自己肯定している(笑)

しかし問題も有る。
ニュースからそのような事例を探すのに非常に時間がかかる。メルマガのネタを探しているはずが、途中からネットサーフィンになってしまったりする(笑)

そこで次週から「ニュースから」のコーナーを「失敗から学ぶ」とタイトルを変え、ニュースにこだわらず、広く失敗事例から題材を選んで、記事を書こうと考えている。

もちろん読者様から事例をご提供いただくのも大歓迎だ。


このコラムは、2016年3月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第466号に掲載した記事に加筆しました。

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上司の言われた通りに仕事をする

 中国の工場を観察していると、以下の様な風潮を感じる。
作業員は監督職の言う通りに作業をするのが仕事。言われた通りに仕事をしてミスがあれば、それは監督職の責任。
監督職は管理職の言う通りに作業をするのが仕事。言われた通りに仕事をしてミスがあれば、それは管理職の責任。

上司に言われた通りに作業するのが自分の仕事だ、と思い込んでいるように見える。

しかし私の経験から言うと、言われた通りにやるから上手く行かなくて上司に叱られる事の方が圧倒的に多い。上司も、細かく方法を指示する人ほど、結果だけを問うたりする。

創造的な仕事をさせる場合、細かく作業方法を指示するのは、相手の考える力や仕事に対するモチベーションをそいでしまう。むしろ目的や、仕事に対する価値観を共有するための時間を多くとり、方法は部下に考えさせた方が良いだろう。

前職時代に「瞬間湯沸かし器」の上司がいた。しかも説教の時間が長い(笑)
若手の部下達は、叱られない様に言われた通りに仕事をしようとする。そして上手く行かず叱られる。彼らは本来優秀な人間だ。自分の頭で考えれば、出来るのだ。

私も団塊の世代の尻尾の所にいるのだが、団塊の世代には「方法論」の人が多い様に思う。多分先輩世代が「理念派」「理想論派」だったのだろう。その下の団塊世代は、先輩世代の理念や理想を実現する「方法論」が鍛え抜かれた、というのが私の仮説だ。そのままのスタイルで、歳をとり部下に「方法論」で指示をしてしまう。

理念や理想を語る上司の元で、方法論に長けた世代が育った。
では方法論を語る上司の元で、どんな世代が育つのか?と思いを馳せると、明るい未来が見えて来ない。

年齢とともに、立場を変えていかなければならないのだろう。
最近は年齢を重ね、そのような思いに至る事が多くなった。


このコラムは、2017年7月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第524号に掲載した記事に加筆しました。

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続・問題解決の心得

 先週配信のメールマガジンで問題解決の心得について考えた。
「問題解決の心得」

先週はその事例になりそうな問題が発生したので、今週は続編として問題解決の心得について考えてみたい。

オフィスのネット接続に問題が発生した。
調べ物をする必要があり、検索サイトにアクセスした。検索サイトからの応答がなくアクセスできない。VPNを介してアクセスしようと考えたが、VPNも接続できない。こういうことは、中国の長城ファイアウォールの内側にいると、しばしばある(苦笑)

まずはWifiの管理画面を開いてみる。
ここですぐに原因がわかった。Wifiルーターが応答していない。
原因はわからないが、こういうことがしばしばありWifiルーターをリセットで対処していた。(固有技術はないが、経験的対処法がわかっている状態)

その結果Wifiの管理画面を開くことができた。
管理画面から、ISPのサーバに接続できていないことがわかった。
同様にISPにつながっているモデムもリセット。しかし復旧はしない。
ISPのサービス窓口に電話すると、こういう場合の問題点は次の3つだ、と指摘された。
1)ISPサーバへのログインIDが間違っている。
2)ISPサーバへのパスワードが間違っている。
3)モデムが壊れている。

当然1)と2)は問題ない。電話の向こうのサービス担当者は、モデムが壊れているから買い換えろという。

どうも納得できないが、既に7年も使っているモデムだ。そういうこともあろうと、近所の電気屋に行くことにした。サンプルとして使っているモデムを持参することにした。
モデムを持ち出す時に気がついた。モデムとWifiルーターを接続しているケーブルが抜けかかっていた。

ケーブルを挿し直して、問題は解決した。

問題解決をステップに分けると、以下の様になる。
1)問題の把握
2)解決課題の設定
3)問題発生の要因を列挙
4)要因から問題発生の原因を絞り込む
5)対策検討・実施
6)効果の確認
7)歯止め

今回の問題は、問題発生の要因列挙が不足していた、ということになる。
全ての要素を挙げて、可能性のある故障モードを全てあげる。
ISPのサーバ→電話回線→モデム→Wifiルーター→PC
それぞれに、ハード、ソフトの要因がありうる。
さらに一つの要素を掘り下げる。
例えばモデムならば、以下の要素があるはずだ。
・電源
・電話線(RJ11コネクタ)
・イーサネット線(RJ45コネクタ)
・モデム本体
それぞれに故障原因となる要因があるはずだ。
この様に全ての要素を分解して故障要因を挙げれば、漏れはなくなる。

ISPのサービス窓口担当者がこういう発想を持っていれば、もっと適切な対応ができただろう。

今回の原因は、私が粗忽にも過去の経験からいきなりWifiルータのリセットをした際にモデムのRJ45コネクタが外れかかってしまったことだ。次回から問題発生時の点検手順を変更しなければならない。


このコラムは、2017年7月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第540号に掲載した記事に加筆しました。

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問題解決の心得

 工程内不良の改善活動を指導していて、しばしば感じる事がある。
問題の原因を「経験」から判断し、決め打ちで対策を考える傾向がある様に感じる。

例えば。機械加工で寸法不良が多発する。その原因を加工設備の精度不足が原因と決め打ちし、その他の要因を考えない。対策として高価な加工設備を導入することになる。たいていの場合ここで改善活動は頓挫する。特に加工設備に関する固有技術がない場合はこういう傾向が強い。

しかし寸法不良が発生する要因は他にもある。
・加工原点がずれている。
・設備の使い方に問題がある。
・加工材料に問題がある。
・測定方法に問題がある。

まずは設備の加工精度を仕様書で確認するのが第一歩だろう。その上で、考えられる要因を一つずつ確認していく。
この様なアプローチが必要だと考えている。

今QCC活動を指導しているお客様で、設備不良による工程内不良の改善に取り組んでいるサークルがある。彼らは製品の加工法などに関しては固有技術がある。しかし設備内の電源故障が設備不良の大部分を占めている。電源に関する固有技術は残念ながらない。設備メーカも、電源は購入している。自ら設計する能力はない。

しかし電源に関する固有技術がないからと言って諦める訳には行かない。
故障のたびに電源メーカに修理を依頼する。しかしこれは現状復帰の処置だ。改善をしなければ、電源は再び故障する。いつ故障するか分からなければ、工程内不良を改善する事は出来ない。

まずは不良の現物を見る事だ。
今までは修理だけしていたので、不良現物の内部は見た事がない。不良現品の写真が残っていたので観察してみる。すると電源内の部品が破損しているのが分かる。
ではその部品が破損する原因は何か?
破損した部品(電解コンデンサ)の周辺を観察すると、プリント基板が変色し、銅箔の回路パターンが腐食している。電解コンデンサの寿命モードの故障と推定出来る。寿命モード故障に大きな影響を与えるのは、温度だ。ここまで分析が進めば温度が上昇する要因を検討すれば良い。
・周辺の環境温度が高い。
・部品自体が温度上昇している。

部品自体の温度上昇は、設計に依存する要因だ。電源に関する固有技術が必要となる。ここからはこの事実を元に電源メーカと原因追及を進めることになる。
原因追及を電源メーカだけに任せるのではなく、一緒に議論する。初めは何も分からないかも知れない。しかし「信頼性技術」はどんな製品にも共通する技術だ。固有技術がない分野であっても得られる知見は多い。電源を設計する事は出来なくても、どんな電源を選ぶべきかは分かるはずだ。

別の企業では、リチウム電池不良が多発しておりリチウム電池を供給しているメーカのエンジニアが、工程に貼り付いて選別・調整していた。しかし自社のエンジニアは現場にはいない。この企業の技術部門長には、自社のエンジニアも現場に貼り付ける様に指導した。リチウム電池や充電回路に関する固有技術はなくても、少なくともどんな電池を採用してはいけないかは分かる様になる。

私自身も前職時代に周辺装置を担当していた事がある。周辺装置に関する固有技術は社内にはない。周辺装置は全て購入品だ。しかし問題が発生するたびに購入先の品質エンジニア、設計エンジニアと一緒に原因分析、対策の検討に立ち会った。この経験が社内や自分自身への信頼性技術蓄積に貢献したと考えている。

上述のQCC活動に取り組んだサークルはとりあえず電源の環境温度を下げてみることにした。他の熱源から距離を置く、冷却ファンを設置する、などの対策を試している。即座に改善は出来ないかも知れない。しかし寿命モードの故障はアレニウスの法則に従って故障間隔は伸びるはずだ。これで一件落着とはならないかも知れない。設備メーカ、電源メーカとともに更に原因究明を深める事が必要だろう。これらの経験から得られた知見を蓄積する事により、設備導入時の選定基準を持つ事が出来る様になる。

実際には、上記の活動後設備故障は激減し、加工不良が発生したロットの損失金額(修復および再処理費用)は、年間で350万元程度節約できた。


このコラムは、2017年7月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第537号に掲載した記事に加筆しました。

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