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減収減益のボーイング、生産体制のずさんさが明らかに

 米ボーイングは24日、2019年1~3月期の決算を発表した。売上高は前年同期比2%減の229億ドル(約2兆5600億円)で、純利益は同13%減の21億4900万ドルの減収減益だった。

 減収減益の主因は3月10日に発生したエチオピア航空の事故以来、新型機「737MAX」の出荷を停止していることにある。同日のカンファレンスコールでデニス・ミューレンバーグCEOは「社員全員で737MAXの提供を早急に再開できるよう全力を尽くす」と話した。だが、問題解決には経営陣が考えているより長い時間がかかりそう。米国で同社の機体生産体制のずさんさがあばかれ、注目を集めているからだ。

 きっかけは20日に公開されたニューヨーク・タイムズの記事。記事によると、米サウスカロライナ州のノースチャールストン工場では、工具やとがった金属片などを機体の内部に残したまま顧客に引き渡すことがあり、複数回にわたり従業員が管理者に状況を報告していた。物が放置された場所の中には、コック
ピット下の重要機器類の配線が行き交う場所もあったという。十数人以上の従業員らの証言と数百ページに及ぶ社内メールなどを検証した結果、明らかになったとしている。

 同工場が生産しているのは、長距離飛行を可能にして売れ筋となった旅客機「787」。問題の737MAXが生産されているのは同工場ではなく米ワシントン州のレントン工場だが、こうした品質問題が「社風」となっている可能性はある。ここ数年、日本の生産現場でも数多くの品質不正が問題になっているが、そのほとんどで、1工場で発覚した不正は別の工場でも起きていた。

 「品質よりも業績を優先した結果だ」と記事は指摘している。
チャールストンの工場では今年初めから、月間の生産機数を従来の12機から14機に増やし、一方で品質関連の職員を約100人削減していたという。

 品質の改善には従業員の意識や風土の改革が必要になるため、相応の時間がかかる。ボーイングの苦難は、これから長期にわたって続くことになりそうだ。

(日経ビジネスより)

 ボーイング社の737Max機の墜落事故に関しては、本メルマガでも注視した。

大きな墜落事故を立て続けに2件も発生させたのだから、減収減益も当然だ。売り上げが前年同期比2%減、純利益同13%減という程度で済んだと言った方がよかろう。

更に追い打ちをかけるように、787機の生産工場で工具や金属片などが機内に残った状態で納品するという事故を起こしている。これらの残留異物が機内の配線、配管などを損傷すれば即重大事故が発生する。

アパレル関連の工場では、針やカッターナイフの混入は重大事故となる。電気・電子部品、製品でも梱包箱にカッターナイフの折れ刃が混入すれば重クレームとなる。

生産量が17%増えたからとか、品質担当が100人減ったからというのが言い訳となるようでは、重大事故を防ぐ仕組みが不十分であるとしか言いようがない。

マネジメントが現場から全く遊離してしまっているように感じる。
十数人の従業員を会議室に呼びつけて事情聴取をする、何百ページもの社内メールを読む、こんなことをしても現場を理解することはできない。自ら足を運んで現場を見れば、一目で重大な問題が潜んでいることがわかるはずだ。

現場の幹部・監督職にはそれが見えていたのではなかろうか?
金勘定しかできない経営幹部にそれが伝わっていなかったのか?伝えても無駄という諦観が現場にあったのか?

何れにせよモノ造りの企業としては重篤な病に冒されている状態と言わざるを得ない。


このコラムは、2019年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第817号に掲載した記事に加筆しました。

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ポカミス

 以前作業ミスに関する記事を書いた.

「作業ミス対策」

作業ミスの中でも「ポカミス」分かっているけどついうっかりやってしまうミスについて今回は考えてみたい.

ポカミスが発生する原因として

  • 疲労によるミス
  • 注意力散漫に夜ミス
  • 非熟練によるミス

などが考えられる.

人が作業をすれば必ず疲労やそれに伴う注意力の散漫が発生しうる.また作業環境によっては注意力が散漫になることもありうる.

そのため作業のムダ取りをして作業者の疲労を軽減する.
職場環境を整え,集中力が落ちないようにする.
といったことは必須であるが,これだけでは十分では無い.

ポカミスが発生しないようにする.万が一発生しても次工程に抜けてゆかないようにする.いわゆる「ポカよけ」と「ダブルチェック」が必要だ.

「ポカよけ」というのはミスができないようにすることだ.
例えば取り付け方向を間違えないように,取り付けネジ位置を非対称にする.こうしておけば反対方向に取り付けようと思っても組み付かない.

コピー機を開けるとやたらレバーがあり,それを解除しないと感光ドラムやトナーを交換できないようになっている.このレバーを戻し忘れると扉にぶつかって閉まらないように設計されている.これもポカよけだ.

「ダブルチェック」というのは文字通り2回チェックすること.
作業をした本人がチェックをし次工程の作業者がもう一度チェックする.一人だけでもダブルチェックは出来る.しかし単純に2回見ただけでは「ダブルチェック」にはならない.

例えばネジ締めをする場合,必要なネジをあらかじめ取りおいて作業完了後にネジの過不足が無いことをチェックする.こういう確認が「ダブルチェック」になる.

旅客機に乗ると駐機スポットから切り離される際に「乗務員はドアをオートモードにして相互確認してください」という機内放送が流れる.これが「ポカよけ」と「ダブルチェック」だ.

旅客機は万が一の際に扉を開けると脱出用のシューターが飛び出してくることになっている.しかし駐機スポットで扉を開けるたびにシュータが飛び出すとちょっと厄介だ.
そのためマニュアルモードというのが設けてあり,通常時扉を開けるときはマニュアルモードにしておく.飛行中はオートモードにし万が一に備えている.

このモード切替レバーにポカよけピンがあり,オートモードにしなければこのピンが取り付けられないようにしてある.駐機時扉が開いているときはこのポカよけピンを開閉レバーにタスキ掛けにかかっている帯にくるみこまれている.扉を閉めるためにはこのタスキを取らなければならない.タスキを取るとポカよけピンがでてくるという仕掛けだ.

更に乗務員は一連の動作が終わると,自己確認後別の乗務員と立てた親指を見せ合う.これが「ダブルチェック」だ.

もちろん全ての作業に「ポカよけ」「ダブルチェック」を入れているわけではなく,ポカミスが発生すると安全運行に重大な支障がある作業だけだろう.

非熟練によるミスは作業訓練で補えばよいのだが,それでもしばしばミスが発生する.

ある方から製品ラベルが傾いて貼られるというミスがなかなか無くならないというご相談を受けた.
この場合はラベルが傾いているという不良が工程内で見つかっているので「ダブルチェック」はできていると考えて良いだろう.(理想はラベル貼り工程で「ダブルチェック」がかかること)

またラベルを貼る位置には目印枠をつけてある.不完全だが「ポカよけ」もあるといってよいだろう.

それでもミスが発生する.
いくら作業訓練をしても発生する.
中にはものすごく不器用な人がいて,いくら練習しても上手にならない人はいる.こういう人を作業員として採用するのが間違いだが,まずは教え方を見直してみる必要があるだろう.

こういう作業の下手な人と上手な人(早くしかも正確に貼れる)との差を良く観察すると作業方法の違いが分かる.下手な人は目印線を水平または垂直にして非常にぎこちなく貼る.
上手な人は貼り付けるモノを少しナナメに置いて,目線も真上からではなく少し傾けて目標を見ている.

ただまっすぐ貼りなさいと言うだけではなく,上手くできる人のやり方を教える.それでもだめなら仕事を変わってもらうしかないだろう.


このコラムは、2009年7月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第105号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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モノ造りの心

 先月無料工場診断でヨーロッパ資本の中国工場を訪問した.
ヨーロッパから経営幹部が何人も駐在しておられた.しかし驚いたことに殆ど現場を見ていないように思える.

品証担当のドイツ人と話をしたが,どうも我々と論点がずれている.
顧客から作業ミスの不良が多いとクレームを受けているのに,現場には作業指導書もない.
この点を指摘すると,作業指導書はあるといって,秘書に持ってこさせて見せてくれた.作業指導書は現場ではなく彼のオフィスにあったのだ.

ヨーロッパ資本の中国工場を訪問するのは初めてだったので面食らった.

日本の企業は「現場起点」で物事を考えていると思う.
そういう言い方をすれば,米国の企業は「マーケット起点」だろうか.
ヨーロッパの国々は古くからマイスター(職人)を大事にする文化があると思っていた.日本よりも職人に対する評価は高いように思う.

職人が現場から離れてしまっては,陸に上がった河童のようなものだ.

いずれにせよ,この工場の中国人社長さんは危機感を持っておられるようで再度打ち合わせに呼ばれた.社長さんには改善活動を通して改善リーダの育成をしましょうと提案してきた.


このコラムは、2008年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第61号に掲載した記事に加筆したものです。

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明治乳業のビン牛乳、さび混入 159万本回収

 明治乳業(本社・東京都江東区)は25日、大阪府貝塚市の関西工場で製造された瓶入りの牛乳とヨーグルトに赤さびが混入していたとして、関西2府4県の宅配用の5商品計約159万本を自主回収すると発表した。混入は微量で、健康への影響はないとしている。

 22日に顧客から指摘があり、関西工場を調べたところ、回収した瓶を洗浄する作業で、仕上げのすすぎに使う水のタンク内で赤さびが見つかったという。

(asahi.comより)

この手の事故の報道を見るたびに,どうして未然に防げなかったのかと思う.

生産設備は毎日点検しているはずだ.
すすぎ水のタンクの点検が行われていなかった.
または点検は行っていたが,赤錆を見逃した.

すすぎ水のタンクが点検項目から漏れていたのならば,点検項目に追加をすれば良い.
しかしそれだけでは不十分だ.製品に影響を与える可能性のある潜在事故を洗い出して,見直しをする必要がある.

点検項目に入っているが見逃した,この場合の対策はどうすれば良いであろうか.
「作業員に対して点検作業の教育訓練をする」という対策では不十分である.点検の基準はきちんとしていたのか,点検方法に問題はなかったのか,見逃した原因をきちんと解析をして対策を打たなければならない.

作業者が不慣れなためのミスだったとしても「教育をする」で十分とはいえない.
教育方法・資料,教育の時期・頻度について改善すべき事がないか検討しなくてはならない.

以上の対策が出来てもまだ不十分である.
これらは錆の発生を見逃すという流出に対する対策でしかない.
錆が発生するという原因に対する対策が足りていない.

あなたの工場では同様の問題が発生するリスクがないだろうか.
一度こういう問題を出してしまうと,回収のための費用損失が発生するばかりか,顧客の信頼を失うという致命的なダメージを受ける.

致命的な品質不良が発生する可能性のある事故を洗い出してFMEAなどを活用してあらかじめ対策を打っておく必要がある.
業種が違ってもこのような事故は社内を再点検する良いチャンスである.


このコラムは、4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第31号に掲載した記事に加筆したものです。

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顧客クレーム(傷)

 先週に引き続きお客様からのクレームを紹介しよう.
顧客クレーム(誤出荷)

お客様から返却された製品は,プラスチックケースにカッターナイフで付けられたと思われる傷が一直線についていた.これが梱包箱に2,3個ずつ見つかるという.

製造工程の中ではカッターナイフを使う工程はない.
従って製造工程内で傷をつけていることはありえない.

梱包箱に付き2,3個ずつ見つかっていると言う状況から,開梱時にカッターナイフを使い誤って中の製品に傷をつけたと推定した.一直線の傷跡とも一致する.

工場の中で開梱するチャンスは,出荷抜き取り検査(OQA)だけである.
出荷抜き取り検査では製品に傷をつけないように,カッターナイフの使用を禁止している.カッターナイフの変わりにPWBの切れ端を少し尖らせた物を使用している.

これは以前,プリント基板(購入品)の梱包箱を開梱する際にカッターナイフで傷をつけてしまった経験から,全工場に水平展開した対策である.

さらに箱ごとに2,3個ずつ不良があるというのも,OQAで傷を付けたのを否定する要因である.なぜならOQAの抜き取り数量から言えば,一ロットに一箱分検査すれば十分だからである.

以上の検討から,傷はお客様で開梱する際につけたものと判断.
そのように報告書を作成し,報告した.

再発防止対策はお客様に要求しても良かったのだが,こちらは梱包箱の中に一枚ボール紙を追加して梱包するよう梱包仕様を変更した.身銭を切って再発防止をする必要はなかったかもしれないが,その方がお互いのためと判断した.

以降このお客様から同様の不良返却は一切なくなった.


このコラムは、2007年11月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第7号に掲載した記事です。

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機能検証と妥当性検証

 先週の「失敗から学ぶ:「Galaxy Fold」発売延期」に読者様からコメントを
いただいた。

※I様のコメント

何時も楽しく拝読させて頂いています。
激動の中国で数十年、頑張っていらっしゃる姿に、感動すら覚えます。

さて、今回のメール内容で珍しく「アレ」と思ったのでメールさせて頂きました。

完成を待たずに販売に走る典型と言へば、Windowsが上がると考えます。
当時、某ゲイツらはDOSからの更なるシェアー拡大など狙い、キャラティカルデザインからUNIX系が試していたグラフィカルデザインを模したWindows3.0(もっと前のバージョンもありますが割愛)を無償配布し、市場の反応を見て、間も無くWindows95を販売致しました。
これは、今でも続いている通り、不具合発生毎にバージョンアップの形で、時には有料にて修正しています。
ソフトウェアとハード的に縛りがあるスマートフォンやタブレットを、同じ土俵で考えるのは浅はかかもしれませんが、モノづくりはとりあえずやってみようの精神が大事です。
サムスンのやり方は、顧客を無視していますが、市場で使ってもらい、データーを蓄積させて行く形と考えれば、間違いではありません。
何時もの先生(勝手にそう呼んでいます)の意見なら、そこを突いて来るかなと思ったので、初めてメール致しました。

日本に戻って既に7年経ちますので、感覚に変化があるかも知れませんが、モノづくりの現場は忘れていないつもりです。

これからも有益な情報、よろしくお願いいたします。”

 ご指摘の通り、ハードウェアとソフトウェアは同列に考えるのはむつかしいと思う。

市販ソフトウェアの場合は開発費以外の変動費コストはかなり低くなる。したがってα版、β版と称して市場にばらまき、反応を見る(バグ取りをする)のはアリだと思う。

しかしハードウェアの場合は1台ごとにコストがかかっているのでサンプルバージョンを無料配布して市場の反応を見ることはできないだろう。
以前頻発したリチウムイオン電池の発煙・発火事故などが発生すれば、無料配布なのだから、というのは免責にはならない。

巨大化・複雑化するソフトウェアの信頼性検証は相当困難だろう。どれだけ検証評価をしても「バグはもう一つある」というのが業界の常識の様だ。そんな訳で銀行システムや、航空券発券システムがダウンしても「バグならしょうがないか」という諦めが社会的に許容されているように見える。

しかし今回の事例のようにハード購入後わずか数ヶ月で壊れてしまうというのは、購入者にとって許容できるレベルではないと思う。当然生産者にとっても無償保証期間内の故障なので莫大な品質損失が発生する。

先週の記事は、「そんなことにならないように事前検証をしっかりしましょう」というつもりで書いた。

ソフトウェアのバグも社会的に大きな損失を与える可能性大だが、どうすれば良いか、実は私にもわからない(苦笑)
「10連休後にアクセスが集中したら」の様に過去事例から検証パターンを作ることくらいしか思いつかない。
そういう意味ではI様がご指摘の通り「市場で使ってもらい、データーを蓄積させて行く」ことになる。(業務システムでは不可能だろうが)

しかしハードウェアの機能検証、妥当性検証は、もっと簡単に出来そうだ。

例えばスマホの寿命を5年(機能の進化が激しいのでもっと短い?)とし、1日の開閉回数を10回とすれば、10×365×5=18,250回程度の開閉試験を実施すれば確認できるはずだ。

保護シートを剥がしてしまったために故障したという事例もあった様だが、妥当性検証評価に「ユーザが間違って保護シートを剥がしたら」という仮定を評価項目に加えることはそんなに難しくはないだろう。


このコラムは、2019年5月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第824号に掲載した記事に加筆したものです。

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箇条書きの功罪

 問題が発生した時、不良が発生した時などの原因分析で、箇条書きでその要因をリストアップしているのを時々見かける。

箇条書きには箇条書きのメリットはある。
要因のリストアップがMECEにになっているかどうか確認が簡単だ。

MECEとはMutually、Exclusive、Collectively、Exhaustiveの頭文字を並べた言葉で「漏れなくダブりなし」という意味だ。

例えば市場不良の原因を

  • 発生原因
  • 流出原因

と箇条書きにした場合、MECEになっている。

しかし発生原因を4Mで箇条書きにしたらどうだろうか。

  • 方法
  • 機械

こうした場合、それぞれが直行した要因ではない。箇条書きでは相互作用を表現できない。
例えば人の要因(未熟、熟練)と方法の要因(簡単、困難)の相互作用で問題が発生するとすれば。

人/方法 簡単 困難
未熟 ×
熟練

◎:問題発生の可能性なし
○:問題発生の可能性低
△:問題発生の可能性高
×:問題あり

のような結果になる。これは箇条書きでは表現できない。
2因子だけであれば、上記のようにマトリックス図で表現できるが4要素以上になれば図示はできない。

人の要因だけを考えても、

  • 情報
  • 認識
  • 能力
  • 行動

など階層が変わるはずだ。

これらを箇条書きだけで表現し、MECEになっているかどうかチェックするのは難しい。連関図法、系統図法などを活用した方が良い。


このコラムは、2020年1月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第928号に掲載した記事です。

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N-WGNのリコール

電動パーキングブレーキのリコール

 ホンダは12月12日、電動パーキングブレーキの不具合で生産を停止している軽自動車『N-WGN』『N-WGNカスタム』のリコール(回収・無償修理)を国土交通省へ届け出た。
対象となるのは2019年7月4日~8月30日に製造された9437台。

不具合箇所は電動パーキングブレーキアクチュエータとスプリングパッケージの2つ。

電動パーキングブレーキアクチュエータについては、モータ配線接続部の圧着端子の加締めが不十分、またはモータのコンミテータおよびブラシの製造が不適切なため、走行振動でモータ内の接触抵抗が一時的に増加するとモータ回路断線検知信号が乱れてVSA(車両挙動安定化制御システム)が異常を検知し、故障と判定することがある。そのため、警告灯、警告表示が点灯して、駐車ブレーキが作動・解除できなくなるおそれがある。

(response.jpより)

 ホンダはこの市場不良で、新車の販売も延期している。
公表されている情報から問題を推測し問題を以下のように整理した。

  • 圧着(加締め)不良
  • モータ内部品(コンミンテータ、ブラシ)の製造不良により、制御システムが故障と判断し、駐車ブレーキの作動・解除ができなくなる。

圧着作業が正しくできたかどうか検査しようとすれば、圧着強度の測定(破壊検査)が必要となり全数検査はできない。正しい工具、作業員の技能(作業法及び目視検査)で品質を保証することになる。このような作業(作業者の技能に品質が依存する作業)工程を「特殊工程」という。

モータ内部品の製造問題は、精度を保証する工程能力(Cpk)が不足していたのだろう。これは製造設備の精度だけでなく、設計時の精度配分の考慮不足もありうる。

この問題を上流工程(設計時)で保証するためには、設計標準を持つべきだ。
もちろん具体的な公差を決定するような標準ではない。可動側、固定側の公差をどう分配するかを標準化する。設計が悪ければ、量産試作時に後戻りが発生。それを「経営判断」で量産開始をすると、工程内不良で悩むことになる。最悪顧客が使用開始した後の環境ファクターのばらつきで市場不良が発生する。

そして量産試作時に工程能力が足りていることを確認する。
手間がかかるようだが、この過程で手を抜くと大きな損失を招くことになる。

本件に戻って考察をすると「電動パーキングブレーキ」は本当に必要な機能なのだろうか?設計より前の商品企画時にどんな議論があったのか、そこから考え直さなければ、問題は形を変えて再発するだろう。


このコラムは、2020年1月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第934号に掲載した記事です。

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エレベーター、扉開いたまま急上昇 東京・台東区

 エス・イー・シーエレベーター(東京都台東区)が保守管理する同区根岸5丁目のビルのエレベーターで、人が降りた直後に扉が開いたまま、突然、かご部分が天井近くまで上昇する事故が起きていたことがわかった。同社管理のエレベーターでは、06年6月に港区で同様の事故があり男子高校生が死亡、警視庁が業務上過失致死容疑で捜査を続けている。

 同社によると、事故は今月11日午後3時ごろ発生。7階建てビルの5階から乗った男性が3階で降りた直後、扉が開いたままの状態でかごの部分が急上昇し、7階を約1メートル過ぎて止まったが、けが人はなかった。制御盤内部の故障が原因とみられるという。エレベーターは30年以上使用している日立製。法定の定期検査を昨年8月に、月1度のメンテナンスを事故3日前の8日に行ったばかりだった。

(asahi.comより)

 メンテナンス直後の事故というのは意外と多いものだ.
特に気をつけたいのが,メンテナンス時に変更した設定の戻し忘れ.メンテナンス作業時に機能を殺しておいた安全装置を戻し忘れると労災事故が発生する可能性がある.

部品の自動実装機,プレスマシンなど作業者の手が機械の中に入ると機械が安全停止するようになっている.このままではメンテナンスができないので,一時的に安全装置を解除してメンテナンスをする.作業完了後に安全装置を戻すのを忘れても,機械は正常に動いているように見えるので気がつかない.

以前こんな例を聞いたことが有る.
装置内でX線を使用しているため,装置内部に手を入れる扉を開けたときはX線が止まるように安全装置がついていた.メンテナンス時にX線が正しく出ているかどうか調べるために,扉の開閉を検出するマイクロスイッチをテープで止めて扉が閉まっている状態にしておいた.点検完了時にマイクロスイッチのテープをはがすのを忘れ運転を開始.このため運転中に扉を開けるたびに作業者がX線に被爆していた.幸いX線の量が微弱であったため人体への影響は心配なかったが,目に見えないだけに深刻な事故だといえよう.

今回のエレベータ事故はメンテナンスから3日後に発生しているので別の原因だと思われるが,メンテナンス作業後の点検項目,方法をチェックリストにしておくとポカよけに役に立つだろう.
今回の事例から,配線コネクタの不完全挿入,ねじの締め忘れなどの想定される原因に対してチェック項目を追加したら良いと考える.

それにしてもこのメンテナンス会社は前回の事故が教訓として活かされていなかった様である.


このコラムは、2008年1月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第18号に掲載した記事です。

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中華機の速度計、異常原因は虫? 会社が国交省に報告

 佐賀空港(佐賀市)の滑走路を越えて離陸し、速度計の異常で引き返した中華航空チャーター便(ボーイング737―800型機)について、同社は9日、「速度を計る装置に虫が詰まり、計器が正常に働かなかったとみられる」と国土交通省に報告した。

 同省によると、この装置は「ピトー管」と呼ばれ、機首についている。飛行機が進むときの風圧を測定し、これをもとに速度を算出する仕組み。装置の吸い込み口に虫が詰まっていたが、種類や数は不明という。

(asahi.comより)

現場・現物を見ていないのでいい加減なことはいえないが,一回のフライトでピトー管に虫が詰まってしまうと言うことは,ありえないだろう.そうであればこの手の障害がしょっちゅう世界中で発生しているはずだ.

日常メンテナンスが十分行われていなかったのではなかろうかと想像している.日常点検,メンテナンスと言うのは予防保全活動として重要な役割を担っている.

工場で仕事をしていても,似たような場面に良く出会う.
生産現場を見ていて半田槽のスプレーフラクサーのノズルの動きが遅くなっているのを見つけた.

スプレーフラクサーというのは,半田付け前にプリント基板の半田面にフラックスを吹き付ける機械である.空気圧を利用してノズルを左右に振りながら,コンベア上を流れてくるプリント基板の下からフラックスを吹き付ける仕組みになっている.

早速半田槽のメンテナンスを担当しているエンジニアを呼び,現象を見せた.エンジニアは装置を見るなり「分かりました」と答えノズルを左右に振るための空気圧をちょっと上げた.これで確かにノズルの動きはスムースになった.しかしノズルの動きが遅くなっていた原因に対しては何も対策が打たれていない.

ノズルの摺動部に粘度の高いフラックスがこびりついて,ノズルの動きを阻害している.これに対しては何も改善がされていないのである.これをそのままにして,問題が顕在化するたびに空気圧をあげてゆくと最後には大きな問題となるはずである.

日々の点検,メンテナンスをきちんとやっておくことによりこういう不具合は未然に防ぐ事が出来るわけだ.また上述の例のように,問題が顕在化した時点できちんと対応しておかないと,更に大きな問題となって再現するはずである.


このコラムは、2007年10月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第3号に掲載した記事です。

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