カテゴリー別アーカイブ: 品質保証

仕事の教え方

 指導先の工場は生産量が倍増し、作業員を大量に増員している。その結果、作業効率が大幅に低下する。工程内不良が激増する。という結果を招いている。製造担当の副総経理は、安定するまでに2週間はかかる、と諦め顔だ。

人がばらつけば、効率も品質もばらつく。作業手順を標準化しても、作業指導の手順を標準化してなければ、上記の様な結果となる。作業指導手順を標準化し、誰が指導しても、誰に指導しても、いつ教えても、同じ指導効果が得られる様にする。これがTWI-JI(企業内訓練・作業の教え方)の考え方だ。

通常作業指導法の研修には10時間かけている。指導人数も8人を超えない様にして、研修の効果を保証する様にしている。今回は顧客副総経理の希望により、2時間で50名弱の職場管理職、監督職に導入研修をした。初めてやる作業を、『教三連四』(三回教え、四回練習させる)を実演してみせた。仕上がりだけ見ても、どのような作業をすれば良いのか分からない。しかし『教三連四』の結果正確に、かつ同じ効率で作業出来る様になった。

本格的に導入するためには、更に多くの課題を実習し実践練習する必要があるが、作業員を直接指導している現場の監督者達、その上の管理職に学習意欲を持ってもらう事が出来た。

当初中途半端な指導をしても効果はないだろうと懐疑的であったが、対象者の学習意欲を高めると言う点で成果があったと考えている。
無理難題を克服し、成果を上げた助手を褒めてやりたい。


このコラムは、2016年10月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第500号に掲載した記事を加筆修正したものです。

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モグラ叩き問題

 モグラ叩き問題と言うのは、ゲームセンターにあるモグラ叩きゲームを思い起こしていただきたい。穴から顔を出すモグラを叩くゲームだ。穴から顔を出すモグラと同様に、同類の問題がしばしば発生し、その都度に問題解決をしなければならない問題のことを言う。

本日はなぜモグラ叩き問題が解決できないのかを考えてみたい。

当然モグラ叩き問題が発生している現場ごとに、事情は違うだろう。しかしいささか乱暴だが一言で言ってしまえば「現象として現れる問題にとらわれ、その原因にアプローチしていないから、問題は手を替え品を替えて現れる」と言うことだ。

「人為ミス」による問題に関してしばしばこのメルマガで取り上げている。
人為ミスは「現象として現れる問題」であり「原因」ではない。「人為ミス」と言う言葉を使って再発防止対策を検討している限り、モグラ叩きは続く。

例えば電子部品を搭載したプリント基板を筐体にねじ止めする場合を考えてみよう。プリント基板に実装されたトランジスタなどの発熱部品を放熱のため筐体に密着される様にねじ止め固定する。
このような構造の電子製品は、市場に出てから一定比率で故障が発生する。
プリント基板、筐体のねじ位置の誤差、プリント基板に実装した部品の位置誤差により、発熱部品のリード半田付け点に応力がかかり続けることになる。時間とともに半田フィレットに亀裂が入り、最終的には非導通となり故障する。リード部分に高電圧がかかっていると、亀裂の隙間で放電し発煙出火の危険すらある。

このような故障は、ハンダ割れが発生→半田フィレットに応力がかかっていた→筐体への固定により応力がかかる。と言う具合に問題から原因にフォーカスし対策を検討する。対策としては取り付け方法の設計変更が有効だ。既出荷品や対策完了前の生産には、プリント基板固定後再半田をし、半田フィレットの応力を解放すると言う対策を考えることが出来る。

このように原因にアプローチすれば、問題根絶の対策を考えることが出来る。
しかし問題の原因解析を人為ミスで終わりにしてしまえば、作業員の再教育、作業員の固定、などと言う対策しか出て来ず、人が替わればまた問題が発生する。
人為ミスと言う「現象」にとらわれている限り「原因」にアプローチ出来ない。


このコラムは、2016年2月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第465号に掲載した記事に加筆したものです。

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かつてない困難

 「かつてない困難からは、かつてない改革が生まれる。
  かつてない改革からは、かつてない飛躍が生まれる。」

松下幸之助の言葉だそうだ。

リチウム電池の発火事故で大規模回収に直面しているサムソンは、間違いなく「かつてない困難」に直面している。

私も前職時代に「かつてない困難」に何度も直面した。

サムソンのリチウム電池は自社のグループ企業の問題だが、私が担当していたコンピュータの周辺装置は協力メーカからの購入品であり、自社にとっては未知の技術領域だった。それでも協力メーカの設計技術者や品質技術者らと議論を重ね問題解決が出来たのは、原理・原則に基づいた正しい問題解決の道を外さない様に心がけたからだと思っている。

その過程で得た信頼性技術、解析技術の知見を自社に蓄積し、未然に問題発生を予防するノウハウを得る事が出来た。

高耐圧部品の絶縁不良問題、高電圧半導体の電解腐食問題、プラスチック部品の環境応力割れ、ゴム樹脂のブルーミング、ハンダ付けの応力割れ、メッキ部品の水素脆性破壊などは、短期間の評価では見つからない信頼性問題だ。また電解コンデンサの四級塩電解液による回路ショートなど、業界全体で未知の不良現象もあった。

こういう問題を一つずつ解決し、設計基準や評価手法を確立していく。
その結果製品の信頼性設計技術が向上する。

信頼性問題に直面している最中は、既に出荷してしまった製品への対応、まだ問題が顕在化していない出荷済み製品の寿命予測、など本筋ではないが緊急に対応する必要がある問題が山ほどでてくる。しかし現在の対応に消耗してしまってはダメだ。かつてない困難をかつてない飛躍に結びつけるために、せねばならぬことを忘れない様にしなければならない。

かつてない飛躍とは、信頼性問題を起こさぬ様、事前に対策を打てることだ。


このコラムは、2016年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第492号に掲載した記事です。

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改善活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、複数の部門の協力がなければ達成できないような改善はQCC活動に任せるのが良い。

QCC活動を指導している顧客で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、
新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。
したがってQCC活動に適したテーマと考えていた。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで出荷した試作サンプルは、まだ3件しかないということだ。
ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度サンプル不合格の原因
調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証でサンプル出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

QCC活動では「歯止め」を行う。不具合の再発防止、水平展開、未然防止などをさして「歯止め」といっている。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。
しかし一番大きな歯止めは、前述したサンプル出荷判定会議である。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。
製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。
それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。
問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

こちらもご参考にQCC道場


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事に加筆したものです。

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品質意識

 品質意識という時の「品質」は物の質(良品・不良品)ではない。もっと広義の「品質」だ。作業の質、サービスの質、経営の質などが含まれる。
作業、サービス、経営は全て「人」が行う。従って「品質」は「人質」と言えるだろう。

そう考えれば、「品質+意識」の意味が理解出来るのではないだろうか。

以前このメルマガでご紹介した、5S改善に意欲を発揮する班長さん、仕事貫徹に燃える電気店の店員さんなどが,品質意識の高い人だ。

●5S改善に意欲を発揮する班長さん「整理整頓が継続しない理由」
●仕事貫徹に燃える電気店の店員さん「仕事貫徹の意欲」

では従業員の品質意識を高めるためにはどうしたら良いだろう。

金銭的な報酬も効果があるだろう。
昔香港の警察官は、地回りのやくざと変わらなかったそうだ。自分の管轄区域の商店から「みかじめ料」を徴収するなどの行為がはびこっていたと言う。これに業を煮やした政府が、思い切って警察官の給与を上げたそうだ。この改革により、警察官の意識が変わり自分の仕事に対する誇りが高まった。結果不正を働く警察官が激減したそうだ。

しかし製造業において、金銭的な報酬を上げて従業員の意識を高めることが出来る企業はそうは多くないだろう。そのコストが利益を圧迫することになる。
従業員の品質意識が高まっても、会社が倒産したのでは意味がない。

香港警察の事例は、仕事に対する誇りを持たせることに成功した、と考えれば金銭を使わずに仕事に対する誇りを持たせる方法を考えればよいはずだ。

こちらもご参考に
品質道場「品質意識向上」


このコラムは、2017年3月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第521号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

 臨済宗円覚寺・横田南嶺管長のお話をうかがう機会があった。もちろん直接お目にかかってお話を伺ったわけではない。ありがたい事に、世界中のどこにいても、日本の高僧のお話を聞く事が出来る。IT技術により、私たちは計り知れない自由を手に入れている。

もちろん横田老師や私が若い頃は、そのような自由はなかった。(驚く事に横田老師は私より相当お若い様だ)横田老師は、若い頃に影響を受けた書籍の著者や、尊敬する方に直接手紙を書き会いに行っている。直接会って話を聞く。ネット上にある情報から得られる知識の数十倍、数百倍の価値があるはずだ。

既に若くはない私も、見習わなければならない。

横田老師のお話で特に印象に残ったのは「戒」に関するお話だ。
「戒律」「十戒」などの「戒」だ。「受戒」「戒名」は、私の様な葬式の時だけ仏教徒になる様な不信心な者でも知っている。

「戒」とはやってはいけない戒律と言うイメージが有った。
しかし横田老師によると、「戒」とは良き習慣、良き習慣に導くと言う意味だ。

つまり「殺すべからず」と言う戒律は、やってはいけない事として、殺人罪と言う罰則とセットで、守らされている。「戒」を良き習慣と理解すれば、「殺すべからず」と言う戒律は「命を愛する」と言う良き習慣となる。

良き習慣が、正しい智慧を生む。正しい智慧に基づく行いが慈悲である。
お釈迦様は、良き習慣を身につける事により幸せになる方法を説かれたのだ。

ここまで聞いて、すとんと腑に落ちた。
これは5Sの「躾」そのものだ。私には仏教を説き、布教する力はないが、5Sを通して、「戒」を説く事は出来る。

5Sとは、働く人々を幸せにするモノでなくてはならない。その結果企業の利益が上がる。これが5Sの根本原理・原則でなければならない。

「いろはにほへと―鎌倉円覚寺 横田南嶺管長 ある日の法話より」


このコラムは、2016年7月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第483号に掲載した記事です。

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顧客工場監査

 前職時代に、営業職の仲間にお客様を工場見学に連れて来てくれたら受注を確定してやる、と豪語していた(笑)

実際にそういう成果が上げられたのは、自社工場や生産委託先工場で顧客監査を、延べ二、三百回は受けたと言う経験があるからだと考えている。
顧客監査を受ける立場と、生産委託先・部品メーカを監査する立場の両方の仕事をしていた事も大きい。開発設計をしていた頃から、周辺装置メーカ工場を頻繁に訪問していた。述べ回数にすれば、顧客監査の数倍は監査訪問している。

ここ数ヶ月、3社のお客様から同時に顧客監査のご相談を受けている。

実は、顧客工場監査には「コツ」がある。
このメルマガの読者様の中には、顧客監査を受ける立場の方もあり、逆に監査をする立場の方もおられると思う。「コツ」などと書くと、監査官を騙して監査合格を貰う方法の様に思われるかもしれない(笑)
しかしそういう方法であれば、監査官も被監査者も読んでいるメルマガには書けない(笑)
どちら側の方にも参考になる様に書いてみたい。

監査を成長の機会と考える。自分自身の成長もあるが、メンバーの成長機会とする。何でもかんでも一人で監査対応をしない。現場のリーダに説明をさせる。
現場の作業員が直接答えられる様にする。
こういうことができる様になると、メンバーが自信を持てる様になる。

一方監査官は、対応するあなたが何でもすぐに答えることができれば、工場の隅々まで把握出来ていると理解してくれる。しかし少し頭の良い監査官ならば、あなたが帰任した後大丈夫か?と考える。

監査官は対立する相手ではなく、共通の目的を持ったパートナーとして考える。
つまりQCDが整った部材・製品を供給する・調達すると言うのが、双方の最終目的のはずだ。ここに焦点を当てて、監査に望む。
分からない事があれば、教えを請えば良いのだ。

監査官は、監査先に対する尊厳を持ってあたらなければならない。
まずは相手の良い所を探す。悪い所を見つけてダメ出しをするのが仕事ではない。良い所が見つからないのであれば、時間のムダなのでさっさと見切りを付けて帰る。例えば、5Sがきちんと出来ていない、しかし設計力があり安いコストを提案出来る。こんな工場があれば、5Sの改善を条件に採用をすれば、良い部品を安く購入することができるはずだ。
先方の事情を無視して、自分たちの考え方を押し付ける様な事は慎むべきだ。自分たちのやり方が最高だと思って、指導したつもりになっていても、先方の現場に適応出来るとは限らない。ただ相手を混乱させることになるだけとなる。
例えば先入先出の方法は、スペース、在庫品の大きさ、数量、品種の多さ、出庫の頻度など工場ごとに最適のやり方は変わるはずだ。

監査をする側もされる側も、きちんと理論武装をしておく。
少なくともISO9001/14000などの規格に出て来る単語は説明なしで通じる様になっていないと駄目だ。

以前、仕入先のプリント基板工場に顧客監査が入ったことがある。
たまたま品証部門のリーダが休暇中で、組長が対応した。「設備台帳を見せてくれ」と言う監査官の要求に対し、総務部から資産台帳を持って来てみせた。監査官は設備の校正管理状況を知りたくて、設備台帳を持って来いと言っている、と言う事を理解出来なければならない。従って持って来るべき台帳は、資産台帳ではなく、校正台帳だ。
リーダが休んでいた事を悔やんだが、お客様からは教育が不足と叱られた。

監査準備は必ず現場でやる。
監査官になったつもりで現場を見る。現場の責任者に説明をさせる。この様なリハーサルと、その後のフォローを最低でも1回はしておくべきだ。


このコラムは、2014年7月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第372号に掲載した記事に加筆したものです。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

改善人財の育成

 私の仕事はお客様の生産現場を改善することだ。生産性を上げる、品質を上げる、リードタイムを短縮するなど、お客様のお客様に価値が提供できる事を改善といっている。しかし本来の目的は、ここではない。

コンサルが現場に入って改善する。すぐに成果は出るが、これでは改善が継続しない。得られた改善を維持できないこともありうる。
私の本来の仕事は、お客様の生産現場に改善が定着し、改善が継続するようにすることだと考えている。

従って改善を維持・継続する人財を育成することが、本来の目的になる。

そのために現場での指導では、なるべく教えないようにしている(笑)
「教えない」という言い方は極端だが、改善リーダが自分で改善したと感じれば、リーダの改善意欲は高まるだろう。意欲を高めることができれば、自ら成長する。「馬を水場に連れて行くことはできても、馬に水を飲ませることはできない」というが、馬が自ら水場にゆき水を飲むように仕組むわけだ。

研修でも、講師と受講生との間で一方通行に教えても効果はあまりない。
座って講師の話を聞くだけではなく、頭や手を動かすことで効果が上がる。受講生間での「学び合い」「教え合い」が、研修効果をさらに高めるはずだ。

研修効果に関しては、吉田新一郎氏の著作が参考になる。
社内研修や、会議での部下育成の参考にしていただきたい。

「効果10倍の教える技術」
「『学び』で組織は成長する」

こういう考えで、現場の指導や研修のプログラムを考えている。
そして今年から「QCC道場」を開催することにした。
以前から実践的なQCC研修のプログラムを提供している。

改善リーダ育成のため、QCC活動を実践する研修だ。
QCC活動のスタートアップや、レベルアップのためにご利用いただいている。この研修では、社内から選抜された改善チームをが改善活動を実践する。

新たに開始する「QCC道場」も同様にQCC活動の実践を通して学んでいただく。
通常の研修と異なる点は、違う会社のチームが合同で実践研修するところだ。異なる会社、異なる業種・業界の改善リーダが、一緒に学び合い、教え合う環境でより効果を高めたいと考えている。

改善リーダがチームを率いて参加されるのもいいが、改善リーダでチームを作り参加され社内に戻り、参加者それぞれが自分のチームを作り活動をする、そんなやり方で研修の費用対効果を高めていただくをこと想定している。

QCC道場の詳細はこちらをクリック。

品質指標

 金属部品加工工場のお客様で、QCC活動の実践研修をしている。
11サークルのメンバーに、課題設定から発表までを、実際に活動する形で指導している。

各サークルとも大変興味深い(成果の出そうな)テーマに取り組んでおり、毎回指導を楽しみにしている。
先週は各サークルから、原因解析のステップを発表してもらった。
「ロット不良の低減」をテーマに取り組んでいるサークルの発表を聞いても、全く理解できない。こういう場合は、研修室を出てすぐ現場に行くことにしている。

4月にロット不良が44件もあった。これを8件までに減らす目標を立てている。
しかしその原因解析が、要領を得ない。
現場で分かったコトは、このサークルは製造部門のサークルではなく、IPQC(工程内品質管理)部門のサークルである。彼らが発見するロット不良を、減らしたいと言うテーマだ。

製造部ならばロット不良を減らすことが目標となるのは分かるが、IPQCがなぜロット不良低減を目標としているのか理解が出来ない。IPQCはたくさん不良ロットを見つけるのが成果だ。ロット不良を減らすのは目標にならない。

理解不能の原因はこの工場のロット不良の定義にあった。
この工場では、自動生産設備が生産している部品を、2時間に一回10個抜き取り検査を行い、不良が見つかるとロットアウトとして廃棄処分をする。しかし彼らはそれをロット不良としてカウントしない。2時間以内に見つけられなかった場合をロット不良として定義している。

IPQC検査員は12台の設備を巡回しながら、抜き取り検査をしている。従って一回の検査を10分以内に完了しないと、12台の設備の抜き取り検査に2時間以上かかってしまう。この時不良を見つけると、ロット不良となる。

考え方としては、IPQCが不良を適時に発見した場合はロット不良としない(製品は廃棄)ということだ。製造部や、設備メンテナンスの部門にとって明らかにロット不良であるが、IPQCがその損失を最小限に抑えたのだから、大目に見るということだろう。

これで全てが見えた。
彼らの活動は、ロット不良を減らす、という品質改善のテーマでは無い。2時間以内に12台の設備の抜き取り検査を終わるようにする、という作業改善のテーマなのだ。

ならば話が早い。
IPQC検査員の作業を見て、二次元投影測定器の操作に個人差があるのが分かる。これを改善すれば良いのだ。特定のIPQC検査員が出来ていないだけなので、この改善で2時間以内は全員が達成できるだろう。

しかし2時間に一回抜き取り検査というのは、自分たちの都合で決めた決まりだ。もし1時間に1回抜き取り検査をすれば、不良損失は半分になる。
本来不良をなくすのが改善だが、IPQCのメンバーにとっては検査時間を半分にするのが改善のはずだ。
こういう話を現場のリーダにすると即座に「不可能!」と答えが返ってくる。それは今の方法でやっているから、不可能なだけだ。方法を変えれば、可能となる。

その方法を教えたいのは山々だが、ぐっとこらえる(笑)
まず2時間以内をIPQC検査員全員が実現することで、達成感を持ってもらう。その次の課題として「検査時間半分=損失半減」と言う改善に取り組んでもらうことが出来ればと考えている。

ところで御社の品質指標にこのような矛盾が無いだろうか?
一度確かめて見るのが良かろう。正しく定義していると思っていても、現場が運用を変えている場合もありうる。

今回のように、製造部とIPQCで正反対の目標(つまり、一方はたくさん良品を造る。他方はたくさん不良を見つける)を持っている場合、適切にその指標を決めてやらなければならない。
正しい意味でロット不良を減らすことは製造部にとっては、努力しなければならない目標だが、IPQCが同じ目標を達成しようとすれば、検査をしなければ良いのだ。一方IPQCが不良を見逃せば、製造部は何の努力も無く改善できた様に見える。

IPQCの指標を「不良適時発見による損失コストの削減」とし、廃棄しなければならなくなった製品が何時間分(少ない方が良い)としてはどうか。
こうすれば製造部は品質を改善してロット不良を減らす。IPQCは作業改善をして、短時間で抜き取り検査を完了することにより、不良を造り続ける時間を減らす。当面は利害が一致するはずだ。

「当面は」と書いたのは、本来は設備を改善して不良を作らなくする、生産中に良品・不良品の判定機能を付加し、不良が発生したら停止する(人偏のある自働化)というのが本質だからだ。


このコラムは、2011年5月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第207号に掲載した記事です。

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究極を目指す

 欧米の契約社会が目指すモノは「合格点」だと思う。
欧米発の品質管理基準ISO9000では、顧客満足とは、顧客の要求をもれなく定義しそれを過不足なく満たすことだ。いわば「合格点主義」

一方本来の日本のモノ造りは「究極主義」だと思う。
不良は究極まで減らし「ゼロ」を目指す。
ほぼ1日かかっていた自動車ボディのプレス金型の段取り換え時間を3時間に短縮し、更に3分まで短縮してしまう。

こういう「究極主義」がなければ、田口メソッドの「損失曲線」という概念は生まれないだろう。

随分昔の話だが、シンガポールのハードディスクドライブ組立工場を見学した事がある。

工程を見て直行率が低そうに思えたので、質問をしてみた。責任者の話では普通は80%代、90%に達したら工程改善をしないそうだ。その改善リソースは次世代機立ち上げに振り向けるという。

いかにも合理主義的な考えである。
しかしこれは現場に改善エンジンを持たない者の「敗者の戦略だ」というと言過ぎだろうか。

日本のモノ造りの現場には、改善エンジンが仕込まれている。QCサークルのような現場の改善チームもそのエンジンのうちの一つだ。この改善エンジンが、モノを作り続ける限り改善をし続ける原動力となる。


このコラムは、2009年2月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第81号に掲載した記事です。

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