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警報スピーカーにトイレ紙 運転士が音量絞る? JR西

警報スピーカーにトイレ紙 運転士が音量絞る? JR西

 JR西日本は6日、列車の緊急時に自動で非常ブレーキがかかる「緊急列車停止(EB)装置」で、運転席に設置されたスピーカーに紙を挟み、音量を絞る「細工」をしていたケースが計10両で見つかったと発表した。同社はスピーカー音をうるさく感じた運転士がかかわった可能性が強いとみており、
再発防止に向けて指導を徹底する。

 JR西によると、EB装置は2005年4月の宝塚線(福知山線)脱線事故を機に設置が義務づけられた。列車の運転席に設置され、1分間にわたって運転操作が行われないと警報音が鳴る。その際に運転士が確認ボタンを押すか運転操作をしないと、5秒後に非常ブレーキがかかる仕組みになっている。

 スピーカー音を小さくする「細工」が発覚したのは、山陰線で8月31日に発生したトラブルが発端だった。

 島根県東出雲町のトンネル内で、普通列車のEB装置が作動し、非常ブレーキがかかり停止した。運転士が「スピーカーの警報音が小さく気づかなかった」と報告。車両基地で調べた結果、スピーカー(直径約7センチ)のふたと本体の間にトイレットペーパーが挟まれていた。

 JR西が同じスピーカーの構造を持つ1594両を一斉点検したところ、山陰線のほか、和歌山線や山陽線、呉線などの車両9両でも同様の細工を確認。各路線の運転士約1300人から事情を聴いたが、だれが細工をしたのかは判明していないという。

 8月18日には、24両の電車で自動列車停止装置(ATS)の作動を知らせるスピーカーにテープが張られていた問題が判明したばかり。JR西は「安全に重大な影響はないが、運転室内の機器類の適切な取り扱いについて指導を徹底する」としている。

(asahi.comより)

 先週はメンテナンスのミスで事故が発生した事例をご紹介したが、今週のニュースはもっと深刻だ。まだ事故にはつながっていないが、今回の場合は「ミス」によるものではなく、「故意」によるものだからだ。

このニュースを見ると、かなり根が深そうだ。
今年3月31日に発生した事故から時系列に並べてみるとこうなる。

3月31日:JR西日本が、運転士が意識を失うなどした際に自動的に非常ブレーキをかけるEB(緊急列車停止)装置が働かない状態で、列車を運行していたことが31日わかった。2年間で少なくとも4件あり、このうち1件は装置そのものが取り外されたまま18日間運行していた。

8月4日:JR西日本が、運転士に急変があった場合に自動で非常ブレーキをかける緊急列車停止(EB)装置の電源が切れた状態で電車を運行していた
ことがわかった。定期点検時のミスが原因とみられる。今年3月にもEB装置を取り外したまま運行するなどの不備が4件発覚し、再発防止策を講じたはずだった。

8月16日:ATSは、ブレーキをかける必要性などを運転士に知らせ、必要な操作をしないと、自動的にブレーキがかかる。6月に運転士から「ATSの音が小さい」と申告があり、該当する320両を調べたところ、103系24両で、スピーカーにテープが張ってあるのが確認された。

JR西日本はこの事件に対して、真剣に再発防止を考えていないとしか考えられない。

3月31日の問題発見時に、ナゼ今回のスピーカの音量調整を防げなかったかが、問題だ。EB装置の電源が入っていないという事故から、EB装置の作動を知らせるスピーカにも「未然対策」を広げるべきである。

EB装置に電源が入っていない(EB装置そのものがない)という状況によって失われる機能は、

  • 警報音を発生する
  • 4秒後に緊急ブレーキをかける
    • である。

      これら失われる機能に対しどう対策をするのか、という視点が必要だ。
      素人である私にも、スピーカの点検は、3月の時点で行うべきものと分かる。

      8月16日になって、スピーカにテープが張ってあることに気がつき、再点検をしている。しかし9月4日にスピーカにトイレットペーパーがはさまれているのが発見されている。

      8月16日に見つかったのはATSのスピーカであり、9月4日はED装置のものだ。
      スピーカが違うので8月にはED装置のスピーカの点検は出来なかった、というのでは情けない。機能から類推すれば、容易に水平展開できたはずだ。

      こういうのをもぐら叩きと言う。

      もぐら叩きとなってしまう真因はかなり深いところにあると見ている。
      そもそもED装置が導入されたのは、2005年4月の宝塚線(福知山線)脱線事故を機に06年、国土交通省が省令を改正しED装置の設置を義務づけたからだ。

      ED装置、ATSともに運転手がブレーキ操作をしなかった場合に、自動的に緊急停止をかける機能を持っている。そのため毎回事件を発見した際の記者会見では「ATSがあるので事故にはつながらない」とJR西日本は釈明している。

      このような考えが根底にあり、毎回の対策が本気になっていないと推測して
      いる。

      例えば、ED装置が実装されていない状態で運転したという不具合が見つかった時に打った対策は、

      • メンテナンスで取り外す時は文書で報告する
      • 運転席天井にあるED装置の電源スイッチを確認するだった。
      • その対策は現場では守られず、8月4日にも再び、ED装置の電源が入っていない状態で運行していたのが発覚している。

      本気で対策するならば、作業者や運転手の注意力に頼るのではなく、ED装置が動作していなければ運転が出来ないように改造すべきだ。
      当然それにはコストがかかる。コストがかけられなければ、運転台にあるED操作スイッチのそばに、ED装置の電源と連動したパイロットランプを付けておくだけで、運転手の負担を増やさずに点検をすることが出来たはずだ。

      たぶん現場の全員が、国土交通省が出してきたED取り付けという宝塚線脱線事故の対策を信じていないからだろう。現場からかけ離れた「空論」で作られた対策は、効果がないばかりか、現場の統率も得られない。

      あなたの工場に、

      • なかなか改善できない不良。
      • 何度対策を打ってももぐら叩き状態になっている不良
      • 客先報告のため苦し紛れに再発防止を作ったが作業員が従わない。

      そんな問題があれば、ぜひ見直していただきたい。


      このコラムは、2010年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第170号に掲載した記事に加筆しました。

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ブルートゥースイヤホン後日譚

 以前ご紹介したブルートゥースイヤホンの故障事件(「顧客満足」「続・顧客満足」)がようやく結末を見た。

今回は代替え品の箱に、充電時の注意事項を大書したメモが添えられていた。
取説には5V1A以下の充電器を使う様指示がしてあった。メモにも同様の注意が書いてあるが、許容範囲も書いてあった。1A以下は結構マージンのある値の様だ。容量の大きな電源で充電すると、どこがどう壊れるのかまでは説明してないが、突入電流で内部の回路が壊れるという予測は当たっていた様だ。

流石にその様な注意書きが添えられていたので、代替え品を受け取った店員は充電するのをとまどった様だ。注意書きを添えたまま保管してあった。「大は小を兼ねる」を信じている人には、注意書きの意味がわからず躊躇したのだろう(笑)

電源装置の品質保証を担当していた時に同様な不具合を体験したことがある。
汎用充電器の側からこの様な事故を防ぐことはほぼ不可能だ。〇〇専用充電器でなければならない。出力端にL成分を入れておけば突入電流を減らすことができるかもしれないが、その効果をあらゆる製品で保証することは難しい。

専用充電器を添付しないのであれば、装置側で対処するのが現実的だろう。
取説の端に小さく書くのではなく、きちんと目立つ様に書き、守らなかった場合の結果も記載しておくべきだ。

電源装置の品質保証をしていた者としては、突入電流で壊れてしまう様な製品を設計して欲しくないのだが(笑)

 販売店は代替え品を取りに行った後、充電してくれました。しかし待てど暮らせど充電が完了しません。充電器を見たら5V /0.2Aと書いてある。
こういうのを「羹に懲りて膾を吹く」というのでしょう。


このコラムは、2021年9月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1189号に掲載した記事です。

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データを看える化

 工程内不良率のデータをきちんと収集しているが、何のために収集しているのか不明という事例を良く見る。

工場全体の工程内不良率が毎日集計されており、翌日にはそのデータが出てくる。データは各ラインから上った生産ロット毎の工程内不良率をエクセルで集計している。ピボットテーブルまで使った高度な集計処理をしている。

しかし出てきたデータはただの数字の羅列で、ここからは何を言いたいのか、データを収集した意図が見えてこない。

まずはデータを看える化する。
工程内不良率を折線グラフにするだけでも相当に違う。
更にこのデータから何をしたいのか、その意図に従ってデータを加工する。

工程内不良の発生要因によって層別をする。
例えば部材ロット、生産ライン別にデータを層別し、各要因の工程不良率に対する影響度を分散分析により評価する。この分析により部材のロットが工程不良に与える影響が支配的であり、生産ラインの違いは誤差と判断できれば、工程内不良をp管理図でモニターしていれば、部材の品質改善に役立てる事が
できる。

工程内不良を低減しようとして部材を全数検査した後生産投入した。しかし工程内不良率は上がってしまった。
この様な場合に、事前に工程内不良の支配的要因が何かを把握していなければ、部材の検査・選別方法が悪いのか、工程内不良の支配的要因が部材以外にあるのかを判断する事ができない。

品質管理には統計的手法が威力を発揮する。
中国語の良いテキストは見た事が無いが、日本語ならば良いテキストはある。これは日系企業にとって有利な条件だと思う。あなたの工場でもこの優位性を活用してみてはいかがだろうか。


このコラムは、2009年7月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第108号に掲載した記事です。

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電気掃除機で充電池破裂7件、リコールへ 経産省

 エレクトロラックス・ジャパン(東京都港区)が輸入販売した充電式の電気掃除機「エルゴラピード・アップグレード」で充電池が破裂する事故が7件起き、1人が手のひらをけがしたと経済産業省が3日発表した。充電池のふたの圧着が弱いことが原因とみられる。

(asahi.comより)

エレクトロラックスというとスウェーデンの電気メーカだがこの掃除機は中国で生産されたものだ。内臓のニッケル水素電池が使用中に電気化学反応によって発生した気体により内圧が上がり事故にいたったようだ。

通常は異常内圧が発生すると安全弁が先に働き爆発を防ぐ構造になっている。
今回の事件では電池の封止部分の不具合と安全弁が働かなかったという二重の欠陥があったようだ。

このモデルは従来から、電池の寿命が短いというクレームが発生していた。
このクレームから封止部分の圧着欠陥が想定できなかっただろうか。市場からのクレームをただのクレームとして捉える姿勢からは、今回の事故は予測できなかっただろう。

ところで圧着作業というのはどのように品質保証すべきだろうか?
圧着部分の強度を検査するのは破壊試験になってしまう。
100%検査をすると出荷ができない。抜き取り検査で圧着作業の品質を保証し、製品を保証する形となる。

つまり初物がきちんと圧着できていることを検査する。
これにより設備・治工具が正しく設定されていることを保証する。
更に定期的に抜き取り検査をすることにより、設備・治工具に変化がないことを保証する。
ロットの最終品を検査することにより、一ロット問題なく生産されたことを保証する。
という形になるだろう。

前提は生産工程が要求される圧着強度に対して十分な工程能力を持っていることである。


このコラムは、2009年4月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第92号に掲載した記事です。

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京成電鉄脱線事故原因

 東京都葛飾区の京成線青砥(あおと)駅構内で2020年6月に列車が脱線した事故について、国の運輸安全委員会は24日、台車に生じた亀裂の影響で車体のバランスが崩れ、車輪がレールに乗り上げたことが原因とする調査報告書を公表した。約3年半前の定期検査時には亀裂があった可能性も指摘した。

 事故があったのは、青砥駅に進入中だった普通列車。8両編成の7両目後方の車輪が脱線した。事故後、脱線車両の後部台車の右側の枠(高さ17センチ、幅18センチ)に最大幅約2・8センチの割れ目が見つかった。報告書によると、亀裂の影響で左右の車輪にかかる重さのバランスが崩れ、右側の車輪がレールに乗り上げたとみられるという。京成電鉄は16年12月の定期検査で異常は確認されなかったとしているが、検査時には亀裂が存在していた可能性を指摘した。

(朝日新聞より)

 2020年6月12日に発生した京成電鉄脱線事故の事故調査報告が運輸安全委員会から発表された。

例によって長文の報告書だがご興味のある方は原文に当たっていただきたい。
要約すると、車両下部に取り付ける台車の補強板の溶接止端部から亀裂が入り車体が傾き脱輪した。幸い駅の手前で減速していたので片側の車輪がレールに乗り上げた程度で、大きな事故にはならなかった。

部分的に継続して応力がかかる設計となっている。定期点検は外観検査しかしておらず、鋼材内部で亀裂が進行しているのを発見できなかったということの様だ。

運輸安全委員会は、亀裂の早期発見のため超音波探傷検査を推奨しているが、利用客としては、定期点検より設計的に対処して欲しいものだ。

原文を見ていただくと、応力が継続的にかかった場合の破断面、ディンプル状断面、ビーチマークなどの写真もあり参考になると思う。


このコラムは、2022年4月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1276号に掲載した記事です。

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中国の新エネ車リコール

中国の新エネ車リコール台数、累計198万台

 中国国家市場監督管理総局は10日、2021年末時点で全国の自動車のリコール(回収・無償修理)台数が9130万台、うち新エネルギー車(NEV)のリコールが229回、198万台だったと明らかにした。消費財のリコールは8027万件、企業への技術改良指導は5800回余りだった。(以下略)

AFPBB Newsより)

               

 中国の新聞記事を日本語に翻訳した記事の様だ。
新エネルギー車と言っているが、EV車のことと考えてよかろう。自動車全体のリコールが9,230万台、NEV車が198万台。自動車全体に対するNEV車の比率が約2.6%なのでNEV車もほぼ同程度リコール修理があった、と言うことだろう。

記事は、
中国国家市場監督管理総局は、企業が技術研究開発に力をいれ、製品の安全性能試験を強化するよう誘導し、産業チェーンの質の向上をはかっている。
と報道している。

さらに当局は、
NEV車のリコールについても
“安全面の重大なリスクを防止・解消、新エネ車産業の旺盛で健全、安全で秩序ある発展を後押しした”と自賛している。続けて、“統計によると、99.9%の自動車のリコールと50%以上の電子機器のリコールは、製品が標準に達したものの、財産・生命の安全を脅かす不具合が使用後に発覚したことで起こっている。同局はこれを受け、「欠陥の発見-安全性に関わる助言-品質の改善」を取り組みの筋道とし、企業が設計、生産、アフターサービスなどでの技術改良と品質向上に力を入れるよう促している。”

製品がその標準(機能・仕様など)を満たしていることは当たり前である。
その上で安全性などの問題が発覚しリコールとなる。製造時の問題、使用中の劣化、設計時に想定外の使用方法、などなどの要因でリコールをする事になる。

最近頻発している日本企業の製品検査不正を省みると、日本企業も姿勢を正す必要がありそうだ。


このコラムは、2022年4月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第1279号に掲載した記事です。

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送迎バス園児取り残し

 沖縄県糸満市の市営バスで16日夕、車内に小学生の児童1人が一時取り残されていたことがわかった。児童は10分後に窓を開けて自力で脱出し無事だった。運転手が確認を怠ったという。市が22日、発表した。
 市によると、児童は16日午後4時12分、予約制の巡回バス「いとちゃんmini」(10人乗り)に乗車。眠って目覚めたときには車内に誰もおらず、携帯電話で母親に連絡した。母親の指示でクラクションを鳴らしたが誰にも気づかれず自力で窓を開けて下車。バスは終点の営業所に停車しており、そこで保護されたという。
 児童の降車地はバスに登録されていたが、運転手は停車せずに通過。午後5時2分ごろ終点についた際も、児童に気づかずに施錠したという。バスを運行する会社から報告を受けた市は20日、保護者に謝罪した。

(朝日新聞 9月23日朝刊より)

 この手の事故が何度も再発している。自分のところでは発生しないと過信しているため、有効な再発防止策がとられていないのだろう。

自分の園では発生していいないので「再発防止」は不要だと考えている自信過剰な人はいないだろう。他所で発生した事故の再発防止は「勉強代」無料で事故防止できるのだから、積極的に再発防止対策を実施すべきだと思う。

何度も同様の事故が発生している原因は「注意する」「ダブルチェックする」など効果が期待できない再発防止対策しかできていないためだ。 

2人でチェックする、など非効率な方法は「忙しければ」おろそかになる。園長先生の事故も発生している。職場の上下関係があれば「園長先生のやったことをチェックする」というのは若手の先生には心理的負担になるかも知れない。

ムダな手間をかけずに、簡単にできる方法を考えるべきだろう。
今回のように「子供にスマホを持たせておく」というのは家族ができる再発防止対策だ。しかし事故の責任は幼稚園側にある。バスの運行で対策を考えるべきだ。

運転を終了しバスに鍵をかける前に、運転手又は添乗員が一番後ろの席まで行かねばならないような仕組みを考える。

例えばバスの扉を閉めるための鍵をエンジンをかける鍵と別にする。その鍵は最後列に置いておく。バスの通路を目を瞑って最後列までゆく運転手はいないだろう。子供が寝てしまっていても目に入るはずだ。

運転手が休みで園長先生が送迎バスを運転。外出中に園長先生宛に電話があり、園に到着時に若手先生が折り返し電話の伝言を伝え、園長先生は残っている子供のチェックをせずに自室に向かう。閉めずに走っていった園長先生のために若手先生は扉を丁寧にバスの扉を閉めてしまう。こんなことがありそうだ。

運転手が到着後、別の人間が扉に鍵をかけるときもバスの最後列まで行かねばならないようにしておく、それを知らない職員はバスの扉に鍵をかけることができない。こんな手順を実装しておけば、手順を知らない運転手が運転しても事故は起きないはずだ。

通常は鍵のかけ忘れの事故の方が多いだろう。鍵をかけてしまったため事故が発止するという珍しい事例は、即再発防止をそれぞれの現場で考えた方が良かろう。


このコラムは、2022年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1351号に掲載した記事です。

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続・平均値と中央値

 以前のメールマガジンでコロナウイルス症治療薬の臨床試験で効果の判定は治験薬とプラセボの中央値を比較して行うと解説した。

メルマガ1056号「平均値と中央値」

それに対してこちらのニュースでは平均値で70%の有効性が確認できたと言っている。

「英アストラゼネカ ワクチン臨床試験暫定結果 平均70%の有効性」

中央値と平均値のどちらで評価するのが正しいのか?と疑問に思われた方もあると思う。再度平均値と中央値について解説したい。

治療薬の臨床試験では、治療薬を処方したグループとプラセボ薬(効果のない偽薬)を処方したグループで各々治癒に要した期間を比較評価する。この際、プラセボ群と治験薬群の治癒期間の中央値で比較評価する。これは治癒期間がすごく早い、または遅いという「離れ値」があるため平均値がそれぞれの群の特性を代表しないため、代表値として中央値を使って評価する。

一方、ワクチンは予防薬であり治癒期間を比較できない。ワクチンの効果は抗体ができたか、できなかったかで評価する。ここで平均70%と言っているのは、ワクチンの摂取量を変えて試験したところワクチンの有効性は高いもので90%、低いもので62%、平均で70%という意味だ。

コロナウィルス感染者が急激に増えている。記事によるとアストラゼネカは来年30億回分を生産可能にする、とある。第三波の鎮静化には間に合わないと思われる。


このコラムは、2020年11月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1065号に掲載した記事です。

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1円玉から1万円金貨まで…重さチェック 貨幣大試験

 貨幣の重さが規定通りになっているかどうかをチェックする恒例の「貨幣大試験」が22日、大阪市北区の独立行政法人・造幣局であった。貨幣への信頼を維持するために1872(明治5)年に始まり、今年で139回目。

 桜井充・財務副大臣ら約80人が出席。今年度に造られた1円(1枚1グラム)▽5円(同3.75グラム)▽10円(同4.5グラム)▽50円(同4グラム)▽100円(同4.8グラム)▽500円(同7グラム)――や天皇陛下在位20年記念の1万円金貨幣(同20グラム)など計21種類の貨幣を電子てんびんなどで計量し、基準を満たしていることを確認した。

(asahi.comより)

 新聞の記事なのでこれでよいのだが、科学や工学を勉強した人は、こういうレポートを書いてはいけない。

どこがまずいかお分かりだろうか?

重さが規定どおりになっているかどうかチェックする、と言う目的で「貨幣大試験」を行った。そしてその結果は、基準を満たしていることを確認した。とあるが、その基準がどこにも明記されていない。

つまり1円玉が1gと決めてあるが、測定値がいくらならば、基準どおりと判定してよい、と言う基準が明記されていない。

全てのモノにはバラツキがある。
1円玉を作って1gにせよ。と言う製造指示をもらっても、これを達成するのは不可能だ。公差を入れてもらわなければ、モノ造りはできない。

例えば重量1g±0.01gと書いてあれば、造ったモノの内99.9gから1.01gの間に入っているものが合格品だ。

公差が指定してない場合は、有効数字を明確にしておけば、どれだけばらついてもよいと言うことは類推できる。

硬貨の重量の例では、各硬貨の製造工程は完成品の重量の工程管理能力が同じだとすれば、小数点第二位の精度で作れるはずだ。(5円玉:3.75g)
従って各硬貨の重さはそれぞれ、
1円:1.00g
5円玉:3.75g
10円:4.50g
50円:4.00g
100円:4.80g
500円:7.00g
と表記しなければならない。
つまり有効数字が小数点下二桁であることを明記しなさいと言うことだ。

この場合小数点第三位まで測定できる測定器を用い、1円玉であれば0.995g~1.005gまでの製品が合格となる。

ところで、賢明な読者様は測定にもバラツキがあるのがお分かりだろう。
同じモノを同じ人が測定しても測定値が、違う値になる。その測定のバラツキを評価したものを「ゲージR&R」と呼んでいる。

通常は測定のばらつき(σ)は、測定の公差範囲より一桁精度が高くなくてはならない。3σが公差範囲と同じくらいになってしまうと、1000回測定して3回ほど公差ぎりぎりのものを誤判定することになる。


このコラムは、2010年11月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第181号に掲載した記事です。

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「印影を間違えたから」94万人の通知再送付 年金機構

 国から公的年金の運営業務を委託されている日本年金機構が、間違った印影が印刷された国民年金保険料の通知を年金加入者に送っていたことが分かった。千葉、新潟、長野の3県在住の約94万人分に上り、訂正版を再送付した。受注業者のミスのため、再送付にかかった費用は業者負担となったが、同機構は「不手際で迷惑をかけ、大変申し訳ない」としている。

 印影が間違っていたのは、国民年金保険料の控除証明書(10月1日付発行)で、所得税の確定申告などをする際に添付する書類だ。証明書は「歳入徴収官 厚生労働省年金局事業管理課長」名で出されるが、別の役職者の「支出官厚生労働省年金局事業企画課長」と記された印影が印刷されていた。確定申告などで証明書を提出すれば、その年に支払った国民年金保険料の全額を所得控除できるが、印影が間違っていると証明書としての効力がないという。

 同機構によると、3県分を受注した業者が、別の受注業務のために保管していた印影を印刷した。機構は送付前に確認したが、気づかなかったという。証明書は10月下旬~11月初めに発送され、誤りに気づいた年金加入者から
の連絡で判明した。

(asahi.comより)

 なんともお粗末なミスだ。
実は私も以前同様な不具合に直面したことがある。

製品に貼り付ける主銘板ラベルの安全規格ファイル番号が間違っていたのだ。ラベルはこちらでデザインしており、ラベル業者には版下データで渡しているのでこのような不良が発生するはずが無い。

調査の結果、その業者はこちらが渡したガーバーデータが読めずに、確認用のPDF図面から自分達で版下データを起こした。この時に安全規格ファイル番号を間違えて転記してしまった。ということが分かった。

中国では、しばしばこういうことが起きる。
データフォーマットが読めないと分かった時点で、連絡・相談してくれれば何事も発生しなかったはずだ。

勿論この事故はラベル業者の責任である。しかしラベル業者の責任として片付けてしまえば、再発防止ができない。この様な場合も、自己責任と考え再発防止を検討する。

データ出図時のチェックリストに、データファイルタイプの確認を追加し、設計作業者と購買担当者が確認をすることとした。

上記のニュース記事によれば、年金機構には責任が無いような書き方がしてあるが、業者のミスをそのまま顧客に流出させた責任はある。

私の事例では、工場の受け入れ検査で間違いを見つけており、生産現場、顧客には一切迷惑をかけることは無かった。

ところで今回と類似の事故を想定してみよう。
ありがちなのが、設計変更前の部材が誤納入される事故だ。
発注側も、業者も設計変更直後は「変化点管理」で十分注意しており、事故は発生しにくい。しかし設計変更後2回目、3回目の発注で、レビジョンの古い物が納入されると言う事故はありがちだ。

これを防止するために、図面は発注・納入ごとに出図・返却するようにしておくのが効果的だ。

社内においてはISO9001の仕組みにより、図面の最新版が閲覧されるように保障されているはずだ。しかし業者における外部図面の最新版管理を保障するのは容易ではない。
勿論、仕入先を選定する際に、それが保障できるかどうかを監査しているはずだが、それが維持できていることを保証することはそれほどたやすくは無い。

発注時に加工図面を渡し、納品時に図面を回収する。こうすることにより、業者側で旧図面に従って生産をしてしまう事故は防げる。


このコラムは、2010年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第182号に掲載した記事です。

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