カテゴリー別アーカイブ: 品質保証

失敗の科学

 「失敗に学ぶ」ためには、失敗からその本質を抽出しなければならない。

例えば、接着が剥がれると言う不具合が発生したとする。これを抽象化すると接着力<外力 と言う単純な原理で表現出来る。
ではこの原理が成り立つのは?と考える。
・接着力が想定より小さくなった。
・想定より大きな外力がかかった。
この二つの条件のどちらか、もしくは両方が発生しているはずだ。

更に接着力の大きさはどのように決まるか、と抽象化を繰り返す。

問題解決のためには、抽象化した原理を、三現主義により具体化することで、原因を発見し、対策を検討する。

同様に抽象化した原理を他の事象に合わせ具体化することにより他の事象にも応用が出来る様になる。

失敗から学ぶために重要なことは、全ての失敗事例を記憶することではない。
失敗事例を抽象化し原理を抽出する。抽象化した原理を事象に合わせ具体化する。と言う思考法を学ぶことだ。


このコラムは、2016年3月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第468号に掲載した記事に加筆しました。

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失敗から学ぶ

 「ニュースから」のコーナーは、ニュースの中から教訓となる不適合事例をピックアップして、その再発防止を考えるコラムとしてスタートした。
事例として取り上げた不適合事例・再発防止を抽象化することにより、自社に適用すれば同類の不適合事故を未然に防止することが出来るだろう。そんな思いで、市場回収事案、鉄道事故、不祥事事案などを取り上げ、原因を推定し再発防止対策を考えて来た。実際には当事者ではない私には真の原因を知る機会はなく、原因がこうならばこんな再発防止対策が有効になるのでは?と言うシミュレーションだ。こういう訓練を繰り返すことにより、現実に発生した不適合に対応する能力も高まると考えている。

自分自身の訓練になるとともに、読者様にも気付きの機会を提供出来たのではと自己肯定している(笑)

しかし問題も有る。
ニュースからそのような事例を探すのに非常に時間がかかる。メルマガのネタを探しているはずが、途中からネットサーフィンになってしまったりする(笑)

そこで次週から「ニュースから」のコーナーを「失敗から学ぶ」とタイトルを変え、ニュースにこだわらず、広く失敗事例から題材を選んで、記事を書こうと考えている。

もちろん読者様から事例をご提供いただくのも大歓迎だ。


このコラムは、2016年3月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第466号に掲載した記事に加筆しました。

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工程の可視化

 新聞を読んでいたら「研究中の遺伝子組み換え植物、外で育つ 名大、急ぎ回収」と言う記事が目に入った。

遺伝子組み換えの研究で作った植物が、実験室の外の自然界に漏出してしまい大騒ぎになった、と言うニュースだ。遺伝子を操作した自然界にはあり得ない植物が、実験室と言う管理された場所から漏出すると何が起こるか分からない。
不測の事態を予防するために、遺伝子操作をした植物や生物は、外界に漏出しない様に厳重に管理しているのだろう。

実験植物の種子がゴミや培養土壌と一緒に、外界に出てしまう可能性が有る。そのため、植物も土壌も高温高圧で死滅処理をしていると言う。

多分この死滅処理の過程に何か問題が有ったのだろう。
(1)死滅処理をしていない土壌を廃棄してしまった。
(2)死滅処理はしたが、設備に不調が有り、十分な死滅処理が出来なかった。
設備の不調には、設定ミス、故障、停電などによる障害などが考えられる。

(1)の潜在不適合は、我々製造業では「工程とばし」と呼んでおり、いくつも事例がある。
金属加工の熱処理が代表的な例だろう。熱処理前の製品と熱処理後の製品は見分けがつかない。
特性検査で見つけることができれば良いが、通常は破壊試験となり全数保証はできない。熱処理が寿命特性に影響が有る場合は検査に時間がかかり過ぎ、問題を見つけた時は出荷済み、と言う事態になりうる。

熱処理前、熱処理後を可視化することにより工程とばしを防ぐことができる。

「熱処理待ち」「熱処理済み」などの看板を使う、バーコードなどを使い工程管理をコンピュータ化する、などの対策が有る。
しかしこの対策が有効なのは(1)の場合だけである。

(2)の対策として設備のメンテナンスや稼働状況を見える化を実施している。熱処理投入時と完了時に設備の稼働状態を確認、チェックリストに記入などと言う作業がこれに当たる。

もっと簡単に出来る方法は無いだろうかと考えてみた。
一定温度以上になると色が(非可逆的に)変わってしまう塗料をテストピースに塗布し、製品と一緒に熱処理する。具体的には、熱処理に投入する時にテストピースを一緒に入れておく、熱処理完了後にテストピースの色が変わっているのを確認する。ロットごとにテストピースを保管すれば、品質記録になる。
塗料の変色閾値を温度×時間で調整出来ると万全だ。

こういう塗料が開発出来れば、相当需要があると思う。少なくとも名古屋大学は買ってくれるだろう(笑)

ところで名古屋大学は、今回の事故で全ての漏出実験植物を回収するため、市民にも協力を求めている。

しかしその前に、死滅処理がなぜ正しく行われなかったのか?(1)なのか?(2)なのか?を突き止め、それが波及している範囲を特定する必要がある。
死滅処理が正しく行われなかったのが、今回限りと判明すれば、今の処置で十分だ。もし設備の故障により死滅処理が正しく行われていなかったとすると、故障が発生した時を特定(いつまで正常だったかを特定)しなければ波及範囲が膨大になってしまう。

品質保証のためには、メンテナンス記録(品質記録)が重要だ、と言うのはこの様な万が一の事故が起きた時に損失コストを押さえることができるからだ。


このコラムは、2015年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第425号に掲載した記事に加筆しました。

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続・モノ造りの変遷

 先週は、日本の大手企業が設計・製造を外注化し設計・製造の現場力を下げているのではなかろうか、と言う問題提起をした。

先週のコラム「モノ造りの変遷」

経営効率を考えると、設計者の育成に時間がかかる設計部門、生産設備などの固定費を抱える製造部門は経営を重くする。それらを外注に出し、固定経費を変動費化する。そして経営資源を価値創造の商品企画に集中することになる。

しかし設計・製造を外注化したとしても、製品の品質保証は自社に有る。当然、外注化した設計・製造の品質保証をしなければならない。

製品の検査に関与するのは得策ではないだろう。せっかく付加価値の高い商品企画に集中しようと言うのに、付加価値を生まない検査を取り込んでは意味がない。

品質保証の鉄則は「源流管理」だ。最終検査に注力するより製造工程に遡る、製造より設計に遡って管理する。

具体的には、設計・製造のレビューや審査に遡って先に問題をつぶしておく事が必要となる。レビューや審査で成果を出すためには設計・製造の現場力がなければならない。と言う事で、問題は振り出しに戻ってしまった(笑)

中堅中小企業でも人財の不足などで、源流管理が難しくなっている事例を見る。

前職時代にファブレス事業部(製造は全て社外の生産委託先)の品質保証部門責任者として同様な問題を抱えていた。(当時は当たり前の事だったので問題と言う認識はしていなかった)

他の事業部を含め品質保証部門には生え抜きの品質保証マンは殆どいなかった。
研究開発、製品設計、生産技術、製造、商品企画、営業など様々な経験を持ち品質保証を担当しているメンバーばかりだった。

設計出身の者は、設計レビュー・審査で潜在的問題を嗅ぎ分ける事ができる。
しかし別の経歴を持った者はそれは出来ない。逆も然りだ。品質保証部門に色々な経歴を持った者を集めれば良い訳だが、簡単ではない。

私が実践して来た方法は、設計で発生した問題、製造で発生した問題を収集し事例集を作る事だ。

自社の問題だけではない。部品、材料の仕入れ先、生産委託先、同業者の問題も収集した。同業者の問題など知る事は不可能だと思ったら、不可能となる。可能になる方法を考えれば良いのだ。

例えば、コンピュータの電源ユニットの回収が新聞記事に出れば、秋葉原でジャンク屋を回り、回収対象品を探しまわる。手に入れた回収対象品を分解し問題を探る。それでも原因が分からない時は、顧客の品質担当者から聞き出す。
コンペチターの製品なので、当然顧客の品質担当者はコンペチターから報告を受け不具合内容を知っている。興味本位で聞いたのでは教えては貰えない。同様な問題で、顧客に迷惑をかけないためにコンペチターの電源ユニットを分解し原因を分析していると知れば、先方も教えてくれるモノだ。

そうやって、電気電子部品、半導体、プラスチック成型、機構部品、化学材料などの信頼性問題を沢山仕入れ、それが設計や製造のチェックリストになっている。それらの内、公開しても問題ないモノはホームページで公開している。参考にしていただければ光栄だ。

コラム:信頼性技術

自社に設計・製造部門がなくても、このような努力により、設計レビューや製造レビューで問題を未然に防ぐ現場力を持つ事が出来るだろう。


このコラムは、2017年11月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第585号に掲載した記事です。

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モノ造りの変遷

 日本の大手製造業のモノづくりが最近大きく変わってきているように感じる。

日本は伝統的にモノ造りの職人に対して尊敬の念を持つ心がある。(経済的に優遇されているかどうかはちょっと疑問に思うところもあるが、いかがお感じだろうか?)その伝統が日本の製造業の根っこの所を支えてきたように思う。
近年それが変わってきたように感じている。

明治以降近代化が進み、日本は先進国のモノマネを始める。当時日本製品は世界から「安かろう悪かろう」の代名詞として認識されていた。戦後の復活期にデミング博士から教えられた品質管理を愚直に徹底。小集団活動により改善を繰り返し、品質、コストダウンを追求した。そして「モノ造り日本」という称号を得て、経済大国に成長した。その背景には勤勉な日本人労働者がいる。

ここまでは、先頭ランナーの背中を追いかけていればよかった。
先頭に飛びたしてしまってから、ちょっと勝手が違ってきた。もうマネをする相手がいない。自ら価値を創造しなければならない。そんな時期にバブル崩壊がやってきた。

その時期に、日本的伝統を捨て欧米流の合理主義経営に飛びついた。
製造や設計の外部リソース化により、製造や設計を変動費化し経営を身軽にしようとした。アップルやグーグルなどの優良企業の様に、商品開発による顧客創造を目指したと言えるのではなかろうか?

中堅中小企業がこの様な戦略を取っているとは思えないが、大企業がこの戦略で、製造や設計の現場力を落としている様に思えてならない。

一方中国のモノ造りの変遷は以下の様になるだろう。
先進国の生産委託を受け入れることにより、先進国のものづくり技術や設備を取り込んだ。そして安価な労働力を背景とし、同一規格製品の大量生産により経済成長を果たす。急速に経済発展した中国は労働コストの優位性を失ない、次の展開を目指さねばならなくなっている。

中国の新興民営企業は、独自製品の設計・生産を始めている。しかし残念ながら、中国企業は現場力を極める姿勢がまだ足りない。設計力をつけてきた企業は次の段階(設計品質保証)を目指すことになる。

日本の製造業が進んできた道を、経路は違っても中国企業がキャッチアップしてくる。日本企業も次のステップに向かわねば追いつかれる。


このコラムは、2017年10月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第582号に掲載した記事です。

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2018年の抱負

 2018年最初のメールマガジン配信にあたり、今年の抱負について考えてみた。
2018年の折り返し点を迎え振り返ってみたい。

独立して丸12年、今年から13年目となる。改めて自分の使命を整理すると、
What(何を):経営幹部、現場リーダの能力・行動力を
How(どうやって):現場活動の実践により育成・強化することにより
Why(目的):顧客の経営改善に寄与する。

この使命を果たすために製造業の経営環境の変化は
・作れば売れた時代:同一規格大量生産
・売れるものを作る時代:多品種少量生産
・価値を創造する時代:多品種変量生産
・モノ造りからコト造りの時代:製造業から創造業へ

それぞれの時代に要求される能力
・作れば売れた時代:モノマネ・手段の活用・応用
・売れるものを作る時代:商品企画・手段の開発
・価値を創造する時代:商品創造・手段の革新
・モノ造りからコト造りの時代:コト創造・目的の発見創造

それぞれの時代に要求される組織・人財
・作れば売れた時代:命令服従型組織・忍耐力
・売れるものを作る時代:説得納得型組織・問題解決力
・価値を創造する時代:参加型組織・問題発見力
・モノ造りからコト造りの時代:異業種参加型組織・統合力

現在は、売れるものを作る時代から価値を創造する時代になっていると認識している。

そして近いうちにモノの消費からコトの消費の時代がやってくるだろう。
モノ造りからコト造りの時代には、もはや製造業という概念だけでは生き残れないかもしれない。製造業は創造業になると考えている。製造業はモノを造ることにより「体験」というコトを創造する創造業になるだろう。
「創造業」という概念については、今の所具体的なアイディアはない。
例えばバルミューダという家電メーカの寺尾玄社長は「商品そのものではなく、商品を使った時の楽しさを提供する」と言っている。私の考える創造業に一番近いところにいるのがバルミューダだと思う。

以上の経営環境の変化を踏まえ、2018年は中国の工場も「設計の品質保証」を確実にすることがテーマと考えている。


このコラムは、2018年1月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第609号に掲載した記事に加筆しました。

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方法より目的

 あなたの工場では,受け入れ検査をする部署を何と呼んでいるだろうか.
「品質管理部・受け入れ検査課」だろうか?

この「受け入れ検査課」と言う組織名称は,その組織が行う業務によって名付けられた名称だ.しかし受け入れ検査課が果たす本来のミッションは,受け入れ部品の品質保証であろう.

もし組織の名称を業務ではなくミッションにすれば,「部品保証課」という名称になる.

受け入れ検査というのは部品の品質を保証するための一つの方法だ.
部品品質の保証のためにはその他にも,部品仕様の検討,納入業者の選択,納入業者の品質指導などが必要となる.
受け入れ検査という方法ではなく,部品の品質保証という目的を組織名称としたほうが分かりやすいと思うがいかがだろうか.

ISOなどの文書により,各部署のミッションをきちんと定義してあるとは思うが,組織名称がそのミッションを明確にした方が分かりやすい.
拡大解釈をすれば,部品品質の保証は製品品質の保証のため,製品品質の保証は顧客満足のためだ.こんな解釈を適用すれば,社内の組織はみな「顧客満足課」になってしまうかもしれない(笑)

同様に,部下に仕事を与えるときに方法を指示するのではなく,目的を理解させることが重要だと思っている.
方法だけ与えられている場合,例外事象が発生したときにその方法が適用できなくなる可能性もある.しかし目的が理解できていれば,例外事象に適応する工夫が生まれるはずだ.

経営幹部の方が,ウチの職員はいわれたことは一生懸命やってくれるが,自分で考えて仕事が出来ない.マニュアルどおりに仕事をしてくれるが,マニュアルには全ての例外事象まで書ききれない.と嘆いておられるのを聞く.

ひょっとして,方法論の指導が中心になっているのではないだろうか?
指導法を目的中心にすることを一度試されてはいかがだろうか.


このコラムは、2010年5月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第155号に掲載した記事です。

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福知山線脱線事故

時事通信社

 JR西日本・福知山線脱線事故が発生したのは2007年4月25日。丸11年の先週いくつかの報道を目にした。

4月11日に配信したメルマガ第652号「組織事故」で福知山線脱線事故は組織事故の一つだったとご紹介した。

運輸安全委員会は、福知山線脱線事故の調査報告書を発行している。
全261ページ+別添資料の膨大な報告書だ。

簡単にまとめると以下のようになる。

原因:
 本件運転士のブレーキ使用が遅れたため、本件列車が半径304mの右曲線に制限速度70km/hを大幅に超える約116km/hで進入し、1両目が左へ転倒する様に脱線し、続いて2両目から5両目が脱線したことによるものと推定される。

以上の原因は、脱線に至る物理的原因だ。運転士のブレーキ操作が遅れた誘引があるはずだ。

誘引:
 事故発生前に伊丹駅で停止位置を通過してしまい、車掌が非常ブレーキをかけ停止位置に後退して停車している。運転士はこのミスを内緒にしておいて欲しいと車掌に車内電話で頼んでいる。
本件運転士は2004年6月に片町線下狛駅で所定停止位置行き過ぎ事故で13日間の「日勤教育」を受けている。日勤教育とは、重大インシデント、規約違反、ヒヤリハット事象を起こした者が受ける教育で数日から一月以上続くケースもある。懲罰的な要素が強い教育指導だ。本件運転士は日勤教育を避ける事に気をとらわれブレーキをかけるのが遅れている。
日勤教育には、事故またはヒヤリハットが発生した原因を分析する事が含まれているというが、本件運転士の日勤教育の記録を見ると指導官との指導問答、感想文のような本人レポートしか残っていない。

この脱線事故を組織事故としたのはここにある。
日勤教育を受けている間は、同僚運転士の目にさらされる事になる。
教育指導というより、数日間も説教を聞かされているだけ。
これではヒヤリハットや失敗を隠蔽する風習が組織にはびこり、ヒヤリハット事例で問題の未然防止どころか再発防止さえおぼつかなくなる。

ヒヤリハットや失敗を責任追及すれば、問題は隠蔽され必ず再発する。
ヒヤリハットや失敗を共有すれば、発生原因を分析し再発対策が可能となる。

失敗を称賛する必要はないが、失敗を学びに変え、再発対策、未然対策を称賛する組織文化を持つべきだと思う。

永田町の役人、旧国鉄、旧財閥系企業など古い因習があり、変わる事が難しいとは思うが、変わらねば恐竜やマンモスの様に死滅してしまうだろう。


このコラムは、2018年5月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第661号に掲載した記事です。

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慢性不良

 繰り返し発生する不良を「慢性不良」と呼んでいる.
設備のチョコ停,製品の外観不良,原因不明のIC不良,などなど.色々対策を打て見ても,再び発生する.形を変えて発生する.こういう厄介な不良だ.

人に例えれば,慢性病と言う事だろう.
病膏肓に入る.
「疾,為む可からざるなり.膏(こう)の上,肓(こう)の下に在り.之を攻むるも可ならず.之に達せんとするも及ばず.薬も至らず.為む可からざるなり」
「膏」と言うのは,心臓の下辺り.
「肓」は,横隔膜の上辺り.
体の奥深くで,針も届かず,薬も効かない場所と言われている.ここに病因があると,治療の方法がないという意味だ.

慢性不良も同様だ.
膏肓にある原因に対策をせずに,病状(現象)に対処療法を施しているから,本当に治癒しない.病因が残っているので,再び病状が出て来る.

例えば,設備の加工原点がしばしばずれてしまう.原因を調べると,位置出しのネジが緩んで,原点がずれる.対策を「ネジの増し締め」とする.

ネジが緩むのが原因だから,増し締めをする.

論理的に見えるが,「ネジが緩む」は原因ではなく「現象」だ.従って「ネジの増し締め」は対処療法にしかなっていない.つまり「熱がある」と言う病状に対し解熱剤を与える,と言う対処療法になっている.

「ネジが緩む」原因を見つけなくてはならない.
この原因が膏肓に隠れている限り,不具合は改善されず,再発する.

ネジが緩むのは,ネジの締結力より強い力が,軸回転方向に加わるからだ.この力を特定し,その力が発生する原因を見つけて,対策すれば良いのだ.

論理的な思考力と,現場・現物を観察する眼力があれば,膏肓に入った病を治癒する名医となれる.


このコラムは、2013年3月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第302号に掲載した記事に加筆したものです。

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