品質保証」カテゴリーアーカイブ

続・平均値と中央値

 以前のメールマガジンでコロナウイルス症治療薬の臨床試験で効果の判定は治験薬とプラセボの中央値を比較して行うと解説した。

メルマガ1056号「平均値と中央値」

それに対してこちらのニュースでは平均値で70%の有効性が確認できたと言っている。

「英アストラゼネカ ワクチン臨床試験暫定結果 平均70%の有効性」

中央値と平均値のどちらで評価するのが正しいのか?と疑問に思われた方もあると思う。再度平均値と中央値について解説したい。

治療薬の臨床試験では、治療薬を処方したグループとプラセボ薬(効果のない偽薬)を処方したグループで各々治癒に要した期間を比較評価する。この際、プラセボ群と治験薬群の治癒期間の中央値で比較評価する。これは治癒期間がすごく早い、または遅いという「離れ値」があるため平均値がそれぞれの群の特性を代表しないため、代表値として中央値を使って評価する。

一方、ワクチンは予防薬であり治癒期間を比較できない。ワクチンの効果は抗体ができたか、できなかったかで評価する。ここで平均70%と言っているのは、ワクチンの摂取量を変えて試験したところワクチンの有効性は高いもので90%、低いもので62%、平均で70%という意味だ。

コロナウィルス感染者が急激に増えている。記事によるとアストラゼネカは来年30億回分を生産可能にする、とある。第三波の鎮静化には間に合わないと思われる。


このコラムは、2020年11月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1065号に掲載した記事です。

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1円玉から1万円金貨まで…重さチェック 貨幣大試験

 貨幣の重さが規定通りになっているかどうかをチェックする恒例の「貨幣大試験」が22日、大阪市北区の独立行政法人・造幣局であった。貨幣への信頼を維持するために1872(明治5)年に始まり、今年で139回目。

 桜井充・財務副大臣ら約80人が出席。今年度に造られた1円(1枚1グラム)▽5円(同3.75グラム)▽10円(同4.5グラム)▽50円(同4グラム)▽100円(同4.8グラム)▽500円(同7グラム)――や天皇陛下在位20年記念の1万円金貨幣(同20グラム)など計21種類の貨幣を電子てんびんなどで計量し、基準を満たしていることを確認した。

(asahi.comより)

 新聞の記事なのでこれでよいのだが、科学や工学を勉強した人は、こういうレポートを書いてはいけない。

どこがまずいかお分かりだろうか?

重さが規定どおりになっているかどうかチェックする、と言う目的で「貨幣大試験」を行った。そしてその結果は、基準を満たしていることを確認した。とあるが、その基準がどこにも明記されていない。

つまり1円玉が1gと決めてあるが、測定値がいくらならば、基準どおりと判定してよい、と言う基準が明記されていない。

全てのモノにはバラツキがある。
1円玉を作って1gにせよ。と言う製造指示をもらっても、これを達成するのは不可能だ。公差を入れてもらわなければ、モノ造りはできない。

例えば重量1g±0.01gと書いてあれば、造ったモノの内99.9gから1.01gの間に入っているものが合格品だ。

公差が指定してない場合は、有効数字を明確にしておけば、どれだけばらついてもよいと言うことは類推できる。

硬貨の重量の例では、各硬貨の製造工程は完成品の重量の工程管理能力が同じだとすれば、小数点第二位の精度で作れるはずだ。(5円玉:3.75g)
従って各硬貨の重さはそれぞれ、
1円:1.00g
5円玉:3.75g
10円:4.50g
50円:4.00g
100円:4.80g
500円:7.00g
と表記しなければならない。
つまり有効数字が小数点下二桁であることを明記しなさいと言うことだ。

この場合小数点第三位まで測定できる測定器を用い、1円玉であれば0.995g~1.005gまでの製品が合格となる。

ところで、賢明な読者様は測定にもバラツキがあるのがお分かりだろう。
同じモノを同じ人が測定しても測定値が、違う値になる。その測定のバラツキを評価したものを「ゲージR&R」と呼んでいる。

通常は測定のばらつき(σ)は、測定の公差範囲より一桁精度が高くなくてはならない。3σが公差範囲と同じくらいになってしまうと、1000回測定して3回ほど公差ぎりぎりのものを誤判定することになる。


このコラムは、2010年11月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第181号に掲載した記事です。

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「印影を間違えたから」94万人の通知再送付 年金機構

 国から公的年金の運営業務を委託されている日本年金機構が、間違った印影が印刷された国民年金保険料の通知を年金加入者に送っていたことが分かった。千葉、新潟、長野の3県在住の約94万人分に上り、訂正版を再送付した。受注業者のミスのため、再送付にかかった費用は業者負担となったが、同機構は「不手際で迷惑をかけ、大変申し訳ない」としている。

 印影が間違っていたのは、国民年金保険料の控除証明書(10月1日付発行)で、所得税の確定申告などをする際に添付する書類だ。証明書は「歳入徴収官 厚生労働省年金局事業管理課長」名で出されるが、別の役職者の「支出官厚生労働省年金局事業企画課長」と記された印影が印刷されていた。確定申告などで証明書を提出すれば、その年に支払った国民年金保険料の全額を所得控除できるが、印影が間違っていると証明書としての効力がないという。

 同機構によると、3県分を受注した業者が、別の受注業務のために保管していた印影を印刷した。機構は送付前に確認したが、気づかなかったという。証明書は10月下旬~11月初めに発送され、誤りに気づいた年金加入者から
の連絡で判明した。

(asahi.comより)

 なんともお粗末なミスだ。
実は私も以前同様な不具合に直面したことがある。

製品に貼り付ける主銘板ラベルの安全規格ファイル番号が間違っていたのだ。ラベルはこちらでデザインしており、ラベル業者には版下データで渡しているのでこのような不良が発生するはずが無い。

調査の結果、その業者はこちらが渡したガーバーデータが読めずに、確認用のPDF図面から自分達で版下データを起こした。この時に安全規格ファイル番号を間違えて転記してしまった。ということが分かった。

中国では、しばしばこういうことが起きる。
データフォーマットが読めないと分かった時点で、連絡・相談してくれれば何事も発生しなかったはずだ。

勿論この事故はラベル業者の責任である。しかしラベル業者の責任として片付けてしまえば、再発防止ができない。この様な場合も、自己責任と考え再発防止を検討する。

データ出図時のチェックリストに、データファイルタイプの確認を追加し、設計作業者と購買担当者が確認をすることとした。

上記のニュース記事によれば、年金機構には責任が無いような書き方がしてあるが、業者のミスをそのまま顧客に流出させた責任はある。

私の事例では、工場の受け入れ検査で間違いを見つけており、生産現場、顧客には一切迷惑をかけることは無かった。

ところで今回と類似の事故を想定してみよう。
ありがちなのが、設計変更前の部材が誤納入される事故だ。
発注側も、業者も設計変更直後は「変化点管理」で十分注意しており、事故は発生しにくい。しかし設計変更後2回目、3回目の発注で、レビジョンの古い物が納入されると言う事故はありがちだ。

これを防止するために、図面は発注・納入ごとに出図・返却するようにしておくのが効果的だ。

社内においてはISO9001の仕組みにより、図面の最新版が閲覧されるように保障されているはずだ。しかし業者における外部図面の最新版管理を保障するのは容易ではない。
勿論、仕入先を選定する際に、それが保障できるかどうかを監査しているはずだが、それが維持できていることを保証することはそれほどたやすくは無い。

発注時に加工図面を渡し、納品時に図面を回収する。こうすることにより、業者側で旧図面に従って生産をしてしまう事故は防げる。


このコラムは、2010年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第182号に掲載した記事です。

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続・旅客機滑走路逸脱事故

 2019年6月5日配信のメールマガジン832号で、山形空港で発生した旅客機が滑走路を逸脱する事故をご紹介した。

「旅客機滑走路逸脱事故」

当時のメルマガで、事故原因を推察してみた。
運輸安全委員会の正式調査結果が既に出ているのを発見し、答え合わせ(笑)をしてみた。

運輸安全委員会の事故調査結果↓
「エンブラエル式ERJ170-200STD型JA11FJ滑走路からの逸脱」

調査報告書をざっくりまとめると、地上走行時の操舵方式には二種類ある。
左操縦席の左側のハンドルを手で操作する「ハンドルモード」
左右のラダーペダルを足で操舵する「ペダルモード」

「ハンドルモード」はハンドルを押し込むことにより、左右に回すことで操舵が可能となる。低速でタクシングするときに使う。
「ペダルモード」は離陸時など高速で真っ直ぐ走行するときに使用する。
ハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチが働き、ペダルモードに切り替わる。

今回の事故原因はハンドルモードからペダルモードに切り替わらずラダー操作ができなかったことによる。その原因はハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチがONにならず、ペダルモードに切り替わらなかった。(マイクロスイッチの不良原因は不明)

現在の操舵が、ハンドルモードかペダルモードかを表示されていれば事故は避けられたと思われる。

製造現場の設備も現在の「モード」を表示する機能を追加すると同様の問題を回避する事ができる。

例えば製品検査でX線を使用する装置はX線が外部に漏れない様になっている。
しかし装置内のメンテナンス中はX線が出ない様にしたい。同時に点検時は装置内のX線強度を測定したい。これらの相反する目的のために暫定的にX線をON/OFFする必要が発生する。これを作業後元に戻すのを忘れるとX線に被曝することになったり、検査ができていなかったりする。点検・運用のモードを表示すれば、事故は防げるだろう。


このコラムは、2022年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1264号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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チェックリストの使い方

 何らかの不具合(特に人為ミスに起因する不具合)の対策として「チェックリストを作成しました」という事例を多く見ると思う。

人為ミスの対策として「ポカ避け」「チェックリスト」「ダブルチェック」が三種の神器の様に信奉されている。

私自身この考え方に異論はない。
しかしよく考えると「ポカ避け」はミスの原因が起きない様にする発生原因対策だ。一方「チェックリスト」「ダブルチェック」はミスが流出しない様に検査をする、という流出対策だ。「ダブルチェック」に至っては付加価値を産まないチェックを二度もする。

それでも過去の失敗事例を集め、その集大成としてチェックリストを作成することを推奨している。それはチェックリストには、仕事が終わってから問題がないことを検査するという役割の他に、使い方があるからだ。

本来ミスが起きない作業方法(ポカ避け)を採用すれば、チェックという付加価値を生まない作業をする必要はないはずだ。しかし設計作業でポカ避けを組み込める場面は限られる。コンピュータ支援の設計作業には比較的簡単にポカ避けを組み込める(例えばPWB設計のCADでは、部品の間隔、位置などのルールを自動的にチェックできる)が、その手前の基本設計などではポカ避け機能を導入することはそうは簡単ではないだろう。

チェックリストは設計が終わってから確認するのではなく、設計開始時に何を確認して設計を進めるか考えるために使う。

設計完了後にチェクリストをリーダとともに確認をする。この時のリーダの役割は、設計者がチェックリストの意味を正しく理解していることを確認することだ。


このコラムは、2018年9月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第724号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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指差喚呼

 「指差喚呼」とは鉄道の運転手がやっている指差し点呼確認動作のことだ。
例えば列車運転手は出発前に前方にある信号機を指差し「出発進行」と発声。これは出発(信号)進行(緑)という意味だ。出発時の指差喚呼だ。出発信号等が赤色点灯ならば「出発停止」と点呼し発車しない。

運転手、車掌、駅職員皆がこの指差喚呼を行なっている。万が一事故があれば何百人、何千人の命が危うくなる。従って危険なところだけで指差喚呼をするのかというと、そうではない。習慣とするためにあらゆる動作で指差喚呼をしていると思う。

工場でも指差喚呼を取り入れると良い。
プリント基板に部品を挿入する作業員が、一斉に指差喚呼をしていては騒々しくていけない(笑)しかし自分が挿入した部品は指差し心の中で数を数える。

部品の出庫・準備、設備の準備・設定など生産に重大な影響を与える作業は型通りに指差喚呼をした方が良いだろう。

ヒューマンエラーに対して作業者に対し「再指導・注意」などという対策より「指差喚呼」導入のほうが効果がありそうだ。


このコラムは、2022年2月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1259号に掲載した記事です。

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失敗学

 今週の《ニュースから》「大阪市の電車型おもちゃに不具合 電池が60度まで過熱」では他社の失敗事例を自社の失敗未然防止に役立てようという趣旨で書いた。

たまたま先週は「失敗の予防学」という本を読んでいた。
著者の中尾政之氏は元々エンジニアだった人で、今は東大工学部の教授である。

失敗から予防保全につなげないと、毎回同じような失敗ばかりしていることになる。良く失敗は授業料だと思えば良いというが、授業料だけ払っていてはいけない。今回のように他人が支払った授業料で予防保全ができれば大変お得である。

同じ現象を見てもそこから改善のヒントや、そこにある失敗のリスクを見分ける事が出来る人と、できない人がある。この能力は天性の能力ではなく、訓練で身につく能力だと思っている。
書物からも勉強できるがこの手の能力は実践訓練が一番身につきやすい。


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第48号に掲載した記事です。

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米FDA、中国に初の海外事務所 食の安全問題に対応

 【シカゴ=毛利靖子】米食品医薬品局(FDA)は16日、今年末までに中国に初の海外事務所を開設する計画を明らかにした。インドや中南米にも事務所を新設する。新興国から輸入した食品や薬品に有害物質が混入する事件が相次いでおり、議会が安全対策を求めていた。

 中国ではまず北京に設け、来年には上海と広州にも拠点をつくる。係官を常駐させ、中国政府の協力を得ながら現地の工場を監視し、衛生管理が米国の安全基準に適合しているか調べる。インドにも複数の拠点をつくる方針で、ニューデリーへの進出を決めた。

(NIKKEI.NETより)

輸入時の抜き取り検査で保証するのではなく、現場に出向き保証をする体制を作ろうという考えであろう。

すばらしい考え方だと思う。
品質保証も同じ考えが適用できる。受け入れ検査を実施しても抜き取り検査であり、どんなにがんばってもAQL=0.45%の検査をするのがせいぜいだろう。これは言い方を変えれば、0.45%の不良は許すということだ。

製品の安全に影響を与える部品は不良率0%を保証したい。例えば電気製品の安全規格関連部品や自動車に使われる部品などに不良があれば、火災事故、人身事故につながりかねない。このような部品を0.45%まで不良を許容するという考え方そのものが相容れないモノだ。

それを防ごうと思うと全数検査となり、大きな検査コストがかかる。
そのため生産現場に行き、製造工程が品質を保障できるものになっている事を保証する、という考え方を取った方が合理的だ。

具体的には定期的に生産現場を監査し、生産工程が品質を作りこめる様になっていること、不良を流出させない仕組みが機能している事を確認・保証することになる。


このコラムは、2008年10月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第56号に掲載した記事です。

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トヨタリコール問題・部品共通化について

 今度ばかりはさすがにヤバイ。
世界一の自動車メーカ、超優良企業のトヨタといえど、今トヨタは存続の危機に直面している。1950年労働争議により直面した経営危機以来の大ピンチだ。

世間では、一連のリコール問題の深層を探り、問題の真因を捉えようとする動きが活発になっている。

今回目にしたコラムは、部品の共通化とリコール問題について検討している。『「大型リコールの原因は部品共通化」のウソ、真因は製品の品質検証体制』では、筆者の日野氏は部品共通化擁護の立場でコラムを書いている。

トヨタは、設計効率の向上、生産効率の向上のために部品の共通化を強力に推し進めて来た。今回のリコール問題の拡大は「部品の共通化」にありとする一部の議論に対し、日野氏は「部品の共通化」は表層の問題点であり、真の問題点は「部品の共通化を品質保証できていない点にある」と評論している。

私流に言わせてもらえば、品質保証が出来ていない部品の共通化などありえない。ただ同じ部品を使いまわしているだけである。部品の共通化というのは、適用できる設計要件を明確にした上で、その品質を保証できるということだ。共通化は、設計の標準化、部品の標準化のプロセスを経て達成される。

元々部品・モジュールは特定の動作環境の下で設計され、検証・評価されている。それをそのまま共通化部品として取り扱うわけには行かない。当然動作環境の変動により、見えていなかった問題点が顕在化することがありうる。

部品・モジュールの機能に着目してブラックボックス化してしまうと、大きな過ちを犯す。動作環境、製造環境などの設計要件を明確にしておき、共通部品を選択する設計手順を標準化しなければならない。

この様な過程を経て、部品の共通化は設計ミスの排除、設計効率の向上、生産効率の向上、在庫量の削減、コストダウンに貢献することが出来る。

しかし極度の共通化は、設計の自由度を奪う。
また共通化をするということは、進歩をいったん停止するということである。

車を嗜好品として考えたとき、部品の共通化はデザインの自由度を奪うことになる。車は単なる移動手段ではない。所有する喜び、運転する喜びをユーザに与えるべきものだ。

元々トヨタはそのような車造りが下手だ。レクサスからトヨタの名前を排除しているのもその現われだろう。
トヨタよりはホンダ、Panasonicよりは(昔の)Sonyの製品の方が、ワクワクするのは私だけではないだろう。

インドや中国メーカによる車の価格破壊に付き合う必要はない。
消費者の価値観に対しきちんとコストをかけるモノ造りをすれば、高くても売れるはずだ。

トヨタは量の追求で大きくなった。一定の量を生産していないと利益が出ない構えを作ってしまった。残念ながら、低価格車にも対応してゆかなければならない体質が出来てしまっている。

車が単なる移動手段であったときは、安い車を市場投入すれば右肩上がりに売り上げも利益も伸びる。しかしそのような市場で利益を上げ続けるのは困難だ。コストダウンに明け暮れ疲弊する。そしてある日金属疲労が限界点に達したように、ポキッと折れてしまう。品質不良による損失は、直接利益の部分をマイナスする。それをカバーするための売り上げは10倍以上は必要だろう。

日本の時計メーカは、高品質・高機能な時計を大量に生産し、同時に貧乏も量産してしまった。その間スイスの高級時計メーカは、顧客の価値観にしっかりコストをかけ、高級品を少量だけ作り生き残っている。

日本はこの様なモノ造りがうまくできていない。
大量同一規格製品の市場は中国にくれてやり、魅力的品質製品のモノ造りに転換してゆかなければならないだろう。


このコラムは、第143号2010年3月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第143号に掲載した記事です。

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バッテリー積み忘れ

救急車にバッテリー積み忘れ電気ショックできず

 東京消防庁は1日、救急車に載せた除細動器のバッテリーが取り付けられていなかったため、心肺停止状態に陥った男性に電気ショックを施せなかったと発表した。

 男性はその後、搬送先の病院で死亡が確認されたという。同庁は「病院の医師は除細動器を使えたとしても効果が期待できなかったと説明した」としている。

 コロナ禍で救急出動の要請が増えており、同庁によると、男性が搬送された1月31日は管内の救急隊の98%が出動していた。このため、救急隊の経験者らによる非常用の救急隊を編成しており、今回の隊もその一つだったという。

 この隊は31日午前10時35分ごろに通報を受け、丸の内消防署から出動。東京都新宿区の70代男性宅に到着した時には、呼吸と脈があったという。

 搬送中に男性が心肺停止状態に陥ったが、バッテリーが装着されていなかったため、除細動器が使えなかった。搬送先の病院の医師に引き継ぐまでの約12分間、心臓マッサージや人工呼吸などの蘇生措置を施したが、電気ショックはできなかったという。男性はこの日、死亡が確認された。同庁は「事前点検が不十分だった」としている。

 丸の内消防署の斉藤悦弘署長は「二度とこのような事案を発生させないよう、再発防止対策を講じるとともに信頼回復に努めてまいります」とのコメントを出した。

朝日新聞(2月1日朝刊)より

 AED(除細動器)が使えてもこの男性が助かったかどうかはわからない。
しかし遺族としては残念な思いを持っただろう。当然再発防止を行い、全国の消防署に徹底してほしいモノだ。

私たちの仕事で同様なリスクは無いかも知れないが、○○がなくてラインが止まった、とか不良が発生した、というトラブルは発生する。

AEDの写真を見ると本体の内部に電池が入っている様に見える。
記事の「バッテリーが装着されていなかった」というのは実際に電池が入っていなかったのだろう。さらに電池が入っていても、電気の残量が足りていないという場合も想定しなければならないだろう。

生産現場でも同様なことは発生する。
組み付ける部品が足りなくなりラインが止まる。部品が間違っている。などを想定すればよかろう。

製造現場ではミズスマシなり班長工程を巡回して確認・補給している。

消防署も同様に、予備のバッテリーを携行する。始業時の点検でバッテリー残量を確認する。という手順を追加すればよさそうだ。予備のバッテリーを違う機種のものを携行しない様に、予備バッテリー専用の袋を用意し写真でも貼り付けておけば万全だろう。


このコラムは、2022年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1255号に掲載した記事です。

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