品質保証」カテゴリーアーカイブ

営業力

 営業力というと営業部門の力と考えがちだが、全ての部門で営業力、営業センスが必要だと考えている。

営業力を「物を売る力」と単純化し、更にこの「物を売る力」を要素分解してゆくと、PR力、顧客とのコミュニケーション力など基本要素に分解できるだろう。

こう考えると会社の中のどの部門も営業力が必要だといえないだろうか。例えば各部門の長は自部門の仕事を簡単にPRできるだろうか?
もちろんこのPRは他部門に対しても必要であろうが、自部門のメンバーに対して正しくPRできるということが、メンバーの結束力を高める基本となるだろう。

私は以前お付き合いのあったS社のプロキュアメント品質保証部の統括課長Tさんから「営業力」を教わった。昔S社向けの製品で一台だけ不良が見つかった。台湾で生産している部品の不良であった。即台湾の生産工場に飛び、原因究明と対策をして報告にうかがった。

Tさんからはまだ詰めが甘いとお叱りを受け、Tさんと一緒に再度台湾に出張することとなった。3日間朝から晩までご一緒し、仕事のことから趣味、家族のことまで色々語り合った。

Tさんの自部署の運営はこんな感じである。
自部署のパートさんにPC教育をして「商品価値」をあげる。
よその事業部へ出かけて行き新製品の立ち上げのため部材ベンダーの指導をする。この時の予算はきちんと当該事業部にお支払いいただく。

Tさんの自部門運営が営業センスがあると大変感心した。
それ以来私なりに自部門の運営に営業センスを入れてきたつもりだ。例えば品質目標として損失コスト(直接・間接を含め)を売り上げの0.2%以下とした。
協力工場、部材ベンダーに品質指導に行くときは「お金を払ってでもまた指導に来てほしい」といわれるレベルになるよう部下の育成努力をした。

品質保証部だけではなく全ての部署でも同様に、営業力を磨く必要があると考えている。特に間接部門は目標設定に営業センスが有るか無いかで、営業力が見えてくる。


このコラムは、2008年5月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第32号に掲載した記事です。

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免震装置不正 徹底的な解明を急げ

 安全を守るための装置の品質に、長年にわたる不正があった。衝撃は大きい。

 油圧機器大手のKYBが免震・制振装置の検査データを改ざんしていたと公表した。免震装置では大臣認定の基準を満たさない製品が499本、顧客に約束した基準を外れたものが1914本、調査中のものが5137本あり、合わせれば出荷総数の7割を超えるという。

 不正もしくは疑いのある製品を使っている建物は1千カ所近い。病院、役所、大規模な商業施設など、不特定多数の人が日頃出入りする建物も多い。なかには「地域の減災・防災機能の拠点」とされる施設もある。

 会社の説明によれば、記録に残っているもので2003年から不正があり、少なくとも8人の検査員が口頭で引き継いできたという。本来は、基準から外れた製品は分解・調整し、再度検査するのが適正な対応だが、それには約5時間かかるため、検査データを書き換えていたとされる。

(以下略)全文

(朝日新聞社説より)

以前メールマガジンで東洋ゴムの免震データ改竄問題を取り上げた。
免震データ改ざん問題↓

免震データ改ざん問題

担当者は製造部からの納期の催促にプレッシャーを感じて改ざんに関わってしまったと言っている。

KYBの事例も同様に、生産を優先させるため検査データを書き換えた。

今回の事例を考えると、製造部門や検査部門の責任ではない様な気がする。
新聞記事によると、出荷総数の70%以上が検査不適合だ。製品設計、工程設計が未完成のまま生産を続けていた、と考えるのが妥当だ。

量産に移行すべきではない製品を販売開始してしまったKYBの品質保証システムに問題がある。そして現場の状況(直行率30%未満という驚くべき状況)を放置したまま、生産を継続させた経営判断に問題がある。

最近色々な業種で同様な不正が噴出している。
中には測定方法に問題がある、基準が厳しすぎる、などの理由があるのかも知れないが、それならそれで正々堂々製品規格を変更すべきだろう。

朝日新聞の社説は、かつて日本の品質は「過剰品質」と言われていたが、実態は「架空品質」だったのではないかと結ばれている。この言葉は我々製造業にとって重い警句と受け取るべきだろう。


このコラムは、2016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事です。

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データ改竄

 素材企業のデータ改竄問題が次々と明るみに出て来た。自動車業界の完成車検査問題が発端の様に思うが、こちらは別問題だ。法規に違反する事は問題だが、問題の本質は無意味な検査を継続させている監督官庁の既得権保護に有る様に思える。

データ改竄問題は素材メーカの「おごり」と言ってしまうと言い過ぎかも知れないが、顧客企業に対する欺瞞・不遜と言うそしりは免れないだろう。

顧客設計者は、材料メーカから提示された仕様に基づき一定の余裕度を加味し、設計する。それが顧客要求仕様として購入契約が成立する。メーカの都合で顧客要求仕様を満足出来ない場合「特採願い」を提出し、顧客設計者の検証を経て、合意の上で出荷するのが常道であるべきだ。
通常「特採」は一度だけ許される。「特採」出来るのであれば設計変更せよ、と言う考え方が一般的だと思う。

データ改竄が恒常化していたのは、材料メーカ側の質的生産能力が不足していたためと考えられる。その場合は特採ではなく「仕様変更願い」を提出し、顧客設計者の設計再検証を経て、仕様変更を合意するのが手順だ。

川中産業である加工メーカは、材料メーカの一方的な値上げ、仕様変更要求に対して唯々諾々と従うしかない。そのような力関係を利用して、データ改竄が横行している様に思えてならない。

日本の素材メーカの力は、世界的に一定の地位を得ていると考えている。それは新素材の開発、素材の高品質に支えられている。日本のモノ造りが労務費の高騰で競争力を失っている中で、設備集約型の素材産業が日本のモノ造りを支えて行かなければならない。大手の日本素材メーカが世界市場から信頼を失う事になると、日本の製造業全体の問題になりかねない。

仕様逸脱を誤摩化すのではなく、仕様に適合する様生産能力を改善する事が本来の姿だ。


このコラムは、2017年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第598号に掲載した記事です。

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羽田滑走路、データ改ざん 東亜建設工業液状化対策で施工不良か

 国土交通省は6日、大地震時の液状化を防ぐ羽田空港の滑走路の工事で施工不良の疑いがあることが分かり、施工データも改ざんされていたと発表した。
同省関東地方整備局は、施工した東亜建設工業(東京都新宿区)に調査を指示した。

全文はこちら

(朝日新聞電子版より)

 この手の事件が頻繁に再発している。
マンションの杭打ちデータ捏造車の排ガス規制逃れ車の燃費データ捏造
すぐさまこの3件くらいは思い出せる。なぜこの様な不祥事が再発するのか?再発防止は不可能なのか?ちょっと考えてみたい。

当然だが、不正を働く側はばれないとタカを括っているからこういう事案が無くならない。しかしほとんどの場合は内部告発でばれる。情報を内部にも漏らさなければ告発は不可能だ。しかし現場で作業をする人間に秘密に出来るはずは無い。では口止め料を握らせる?多分逆効果だろう。

内部告発を止める方法は無いと考えた方が良いだろう。

しかし内部告発が起きない方法は有る。顧客、従業員、取引先、社会に対して誠実に仕事をする事だ。これを守れば、告発すべき内容が無くなる。
期限切れ食材使用の問題、データ改竄、リコール隠しなど幾多の過去事例から学べる唯一の方法だ。

工場の品質保証をしていると、普段はデータを捏造する必要はない。
しかし出荷品の不良や、顧客監査時の指摘事項などでウソの報告をしたくなる事は有るだろう。しかし一度ウソをついてしまうと、その後整合性を保つため更にウソを重ねる事になる。

絶対にウソはつかない。それが現役時代品質保証部の仕事をしていた時の鉄則だった。しかし顧客に心配をかけるのは本意ではない。ウソはつかないが、言う必要がない事は言わない、と言うポリシーだった(笑)

前職の会社では、第一出荷ロットで「出荷判定会議」をするのが決まりだった。
ある製品で、最初の生産で直行率が99.3%だった。出荷判定の条件は満たしていたが、0.7%の不良が全て同じ部品の不良であり、部品メーカからの不良解析報告はまだ入手していなかった。
この不良モードが波及性を持っているとすると、検査合格の製品にも何らかの問題が有るはずだ。出荷を止める事を決断し、翌日顧客に報告に行った。
当然叱られると思っていたが、逆に褒められた(笑)

その後部品メーカから報告書が届き、部品製造時に設備に不調が有り、ロット全体に波及する不良と分かった。

黙って出荷してしまっていれば、この報告書が届いた時点で製品回収をお願いする事になったはずだ。既にエンドユーザに出荷が済んでいれば、市場回収だ。そうなった場合、品質保証部門長として、事業部長に市場回収を説得出来ない可能性だってありうる。

被害が拡大する前に正直に言ってしまえば、何でも無い事の方が多いはずだ。


このコラムは、2016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事です。

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スズキ、社内監査働かず 燃費の違法測定、26車種

 スズキの燃費試験データの不正問題で同社は31日、違法な測定の対象が2010年以降に発売された軽自動車と普通車の26車種、約214万台に上ると発表した。現場の不正をチェックする部門が機能せず、違法性を認識する社員がいたことも判明した。

全文はこちら

(朝日新聞電子版より)

 フォルクスワーゲン、三菱、スズキと自動車メーカのデータ不正が立て続けに出て来た。

担当社員の遵法意識とか、関連部門のチェック機能に関して振れている記事が多いが、私には開発業務そのものに重大な欠陥が有った様に思う。

私が開発のエンジニアだった頃、レポートの書き方を厳しく指導された。
例えば、評価実験の結果を報告するレポートでは、結果の再現性を保証するため実験方法を明確にする事、と教わった。

スズキの排ガス測定は、実測データではなく理論値を積み上げて計算していた訳だから、レポートには根拠となるデータと計算式が書いてあるべきだ。レポートにこの情報がなく、ただ燃費データだけが有ったとしたら、上司や関連部門はレポートの書き方について担当者を指導せねばならない。

理論データと計算式が書いてあれば、燃費測定方法が間違ってる事に気がつくはずだ。

「現場の不正をチェックする部門」と記事に書かれているが、燃費データを国に提出する法規承認部に現場の不正をチェックするミッションを与えていたのか疑問だ。申請手続きだけがミッションであれば、申請書類が過不足ない事を確認するしか出来ないだろう。

こういう確認を担当部門だけではなく、設計審査など関連部門が集まる中で確認するのが良いと考えている。

以前品証部門を担当していたときは、設計審査の前に関連する開発レポートや評価レポートに目を通していた。そこに書かれている事、書かれていない事をきちっと読み取れば、設計の現場で何が起こっているのか理解出来る。

うるさい品証部長を演じる事で、若手設計者の育成も出来たと考えている(笑)

群馬県南牧村バス転落

 10日午後2時50分ごろ、群馬県南牧(なんもく)村大仁田の大仁田ダム近くで、マイクロバスが転落したと119番通報があった。富岡甘楽広域消防本部や群馬県警によると、6人を救急搬送したが、命に別条はないという。ほかに13人が村の車で病院に搬送された。

全文

(朝日新聞電子版 より)

 記事によると以下の事実が浮かび上がる。

  • 消防本部への通報によると、登山を終えた登山客がバスに乗り込んでいたところ、バスが突然走り出し、山林の中の崖を10メートルほど落下。
  • バスが動き出した時、運転手は車外で作業中で「サイドブレーキはかけたが甘かったかもしれない」と供述している。
  • 県警は、当時エンジンはかかっていて、ギアはニュートラルに入っていたとみており、事故原因を詳しく調べている。

怪我をされた方だけではなく、過失を問われるだろう運転手も気の毒な事だ。
このような事故が発生しない仕組みはないものだろうかと考えてみた。

運転手は、下山してきた乗客の乗車を手伝うために車外に出ていたのだろう。
停車した位置は、サイドブレーキが甘くてもバスがずり落ちるほどの勾配ではなかった。
乗客がバスに乗り込む時の振動などで、車輪を辛うじて止めていた小石などを乗り越えてしまったのではなかろうか?

  • サイドブレーキをかけ忘れて車外に出る。
  • サイドブレーキの効きが悪くなっている。

このような状態を防ぐ事ができれば、同様の事故は防げそうだ。

サイドブレーキがかかっていないと乗降口が開閉しないようにインターロックをかける。
始業点検時にサイドブレーキ点検を入れる。ただサイドブレーキを引いてみるだけでは点検は不十分だ。後輪をスロープに乗り上げて点検すれば良さそうだ。

現場も現物も見ないで、このような解決案を考えることには意味がないだろう。しかし我々が日々仕事をしている製造現場に置き換えて考える思考訓練をする意味はある。

この事故から学ぶべきキーワードを「安全機能の確認」とする。
例えば、

  • 設備の非常停止ボタンが機能するか。
  • 温度制御装置の上限リミッターは機能するか。
  • X線検査装置の検査品投入口を開けた時にX線の放射が止まるか。

当然設備は安全側に機能するように設計されているはずだ。しかし故障・劣化が発生した状態でも、保護機能が働くかを始業点検で確認する必要がある。


このコラムは、2019年5月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第823号に掲載した記事です。

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続・人為ミスの再発防止

 先週取り上げ「ぴーかんテレビ」の不適切テロップ問題に関する検証番組「検証 ぴーかんテレビ不適切放送~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」を東海テレビのホームページで見ることが出来た。

番組では、ミス発生の経緯が明らかにされていた。

直接原因は、タイムキーパがテロップ送出機の操作ミスをし、オンエア画面に不適切テロップを送出してしまったことだ。これは人為ミスの内の「行動ミス」に分類される。

流出原因は、仮テロップの不適切さに気が付いたアシスタントプロデューサの指示がテロップ製作者に対する修正指示が適切に伝わっていなかった。これは人為ミスの内の「認識ミス」に分類される。

また副調整室の誰もが、他の作業に気を取られ、オンエア画面に気が付いていなかったこと。最後の砦の主調整室では、次に送出するCMの確認作業に気を取られ、オンエア画面から目を離したことであろう。

そして問題を発生させてしまった遠因には、職員の放送倫理観、職業人意識の欠落を挙げていた。その誘因として、番組制作のコストダウンによる職員への負担の大さ、現場と経営層の乖離、利益優先の経営方針にも言及していた。

再発防止に関して、緊急対策と共に「再生委員会」を設け恒久対策を実施する、という内容となっていた。

今回の番組では、具体的な内容には触れていないが、今後再生委員会の活動により具体的な是正対策が明らかになってゆくことを期待する。

例えば倫理問題に関しては、社員、製作外注の職員全員に放送倫理研修を毎年実施している。放送倫理ハンドブックを配布してた。それでも不十分だったということだ。何が不十分だったかをきちんと分析し、具体的に研修の内容、やり方を変えなければならない。

放送倫理というものは、毎年変わるものではない。同じ内容を毎年聞かされるだけでは、効果はないだろう。受講者は何かと理由をつけ研修をサボる。会社側もそれを容認する体質が出来上がっていたのではなかろうか?知識を与える研修ではなく、放送倫理に沿った行動が取れるように、行動変容を起こす研修でなくてはならない。

今回の番組では、人為ミスに対する再発防止は全く語られていなかった。
今回の問題は、報道人としてあるまじき行為がまず問われており、人為ミスはさほど重要な問題ではないのかもしれない。

しかしモノ造りをしている我々にとって、人為ミス防止は重要な課題だ。
このコラムでは、ここを少し掘り下げてみたい。

タイムキーパの行動ミスについては、なぜ行動ミスをしたのか更に分析をする。テロップ送出機は2台あり、1台はオンエア画面、1台はスタジオモニターに送出するようになっている。左がオンエア、右がスタジオモニターとなっているだけで、一目見て区別がつかない。オンエアテロップであることが一目で分かるようにすべきだ。

テロップ制作担当者が、APの指示を認識ミスをしたのは、指示が不確かであったからだ。日本のように「あうん」の呼吸で仕事が成立してしまう組織では、軽視されがちだ。特に我々のように中国で仕事をしている者にとっては、軽視してはならない問題だ。

指示は具体的に何時までに、どう直す、ということと、直したら報告をすることを含めておかねばならない。

直したら報告、というのはアシスタントプロデューサの指示すれば、直してくれるだろうという「判断ミス」を補うものとなる。これは同時に、アシスタントプロデューサの報告を受けながら、最終確認をしなかったプロデューサにも当てはまる。

副調整室の誰もが気が付かずに、オンエアが流出した原因を慣れによる油断と片つけてしまうと、対策が難しくなる。
オンエア画面は副調整室の中央に一回り大きなモニターに出ている。これだけではなく、音声担当、スイッチャー、ディレクター、タイムキーパなど全員の手元に小型モニターを準備し、どんな姿勢をとっても目に入っているようにする。
専任の人間を置いて常時監視する、というのは良い方法ではない。

主調整室の業務は、オンエア画面の監視とCM送出の確認だ。
オンエア画面の監視は、人間が張り付く仕事だ。従ってこの作業に別の仕事を入れることが間違っている。CM内容の確認を機械化もしくは外段取り化する必要がある。

コストダウンにより、職員への負荷が多くかかっているというのは言い訳に過ぎない。本番中にやらねばならないこと(内段取り)、本番時間以外でもできること(外段取り)にきちんと分けて、本番時間に余裕のある仕事が出来るようにしなければならない。

コストダウンのために頑張れ、というのは本当のコストダウンではない。

私の推測と違い、当選者テロップは番組開始前に準備できなかったようだ。(たぶん番組中にプレゼント告知をし、番組中に応募を受け付ける形式だろう)しかしその他に、番組開始前にできることはいくらでもあるはずだ。例えば、収録済みビデオをオンエア中に、その後のスタジオ放送のリハーサルをしていたようだが、番組開始前に済ませることができるはずだ。

更に職場を、番組単位の大部屋制とする。
部門毎に別の部屋で仕事をするのではなく、番組スタッフが大部屋に集まって仕事をする。テロップ製作者も自分のデスクではなく、番組の大部屋で仕事をする。こうすることにより、部門間のコミュニケーション不足を解消することができるはずだ。

製造現場で言えば、機能別ショップフロア配置を止めて、ラインフローに合わせた配置にするのと同じだ。


このコラムは、2011年9月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第221号に掲載した記事です。

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人為ミスの再発防止

 東海テレビ「ぴーかんテレビ」で岩手産米プレゼント当選者を知らせるテロップに「怪しいお米・セシュウムさん」「汚染されたお米・セシウムさん」などというテロップを放送してしまう事故が発生した。

東北地方の放射能汚染被害に世間の注目が高まっている中で、この様な不謹慎なテロップを電波に乗せてしまったことは重大な問題だ。社長のお詫び放送くらいでは納まらず、スポンサー企業が続々と番組広告を下りている。

東海テレビでは、事件発生直後の約束どおり、「検証 ぴーかんテレビ不適切放送~なぜ私たちは間違いを犯したのか~」という検証番組を30日午前9時55分から約60分間放送するそうだ。

この放送の中で、今回のミスの再発防止対策も説明する。
残念ながらこの放送を見ることが出来ないが、人為ミスの再発防止をどの様にやるつもりなのか大変興味がある。

私なりに、今回の事故の経緯を推定し、再発防止を考えてみた。

事故発生の経緯はこういうことだろう。

番組のリハーサルまでに、プレゼント当選者のテロップが出来上がっておらず、アシスタントディレクターもしくは放送技術員が、その場で仮のテロップを作成。本番前に正式テロップと差し替えて放送するはずであったが、・差し替えを忘れ、仮テロップをそのまま放送。
・差し替えたが、正式テロップと仮テロップを間違えて放送。
 →仮テロップを消去しなかった。
という人為ミスが発生したのであろう。

こういう分析をすると、「なぜ差し替えを忘れたか」「なぜ消去しなかったか」という問題に再発防止を打つことになる。
人はミスをするものだという前提を考えると、本当に有効な対策を立てるのは困難になる。職員の報道倫理を高める、などという曖昧な対策となる。そのためダブルチェックなどの「流出防止対策」になる事が多い。流出防止対策は、付加価値を生まない仕事を増やすだけだ。
(視聴者やスポンサーの信頼を失うというリスクを考えれば、当然コストが
かかっても流出防止はしなければならないが)

あなたの工場でも、このような場面があるのではないだろうか?

この場合、考えなければならないのは、「仮テロップを作らなければならなかった」という誘因が発生していることだ。仮テロップさえなければこのような事故は発生しない。更に仮テロップを作成するというムダな作業も発生することはなかったはずだ。

プレゼントの当選者が本番直前まで明らかになっていないということは考えにくい。仮テロップを作らねばならなかった原因に対策を打つべきである。

放送という仕事は、色々な工程を経て出来上がる。
例えば当選者は、営業が顧客から当選者リストを受ける。それを報道部に渡し、制作部の技術スタッフに渡りテロップが制作される。というプロセスがあるはずだ。

これは工場の、材料入庫、前加工、組み立て、検査、梱包という工程と同じだ。
どこかでモノの流れが止まっていたから、仮テロップを作ることになったはずだ。そこを見つけ再発防止をしなければならない。

しかしここまでやってもまだ不十分である。
たとえ当選者リストの入稿がリハーサルに間に合わなくても、職員が報道倫理、もっといえば人としてのあるべき姿をきちんと理解していれば、不謹慎なテロップなど書くはずはない。

たとえ誰かが下種な仲間受けを狙って書いたとしても、現場の全員がその様な行動を阻止するような組織でなければならない。

そのためには「報道倫理を向上します」という曖昧な対策ではなく、今までの社員教育に何が欠けていたのか、それを是正するために何をすべきかを提示しなければ、再発が防止されたと実感することは出来ない。

更に与えた知識が、行動になるように仕掛けを作っておく。知識があっても行動が伴わなければ、教育をした意味はない。

地方都市で放送局に務めているということは、光の当たる場所に居て、誇りもあるはずだ。その誇りが驕りになってはならない。放送局の社会に対する使命をきちっと理解していれば、生活バラエティ番組の担当といえど、正しい誇りを持って仕事ができるはずだ。

名古屋出身の私としては、東海テレビがどのように再発防止を考えているのか大変興味がある。


このコラムは、2011年8月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第220号に掲載した記事です。

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続・リスクを見抜く

 先週のテーマで、シリアル番号シールを貼る作業でリスクを見抜き、そのリスクを未然に防止する工程を検討しよう、という提案をさせていただいた。

【別のお客様の製品は、梱包箱、取扱説明書にもシリアル番号をつけてあり、製品と同じ番号の取り説を梱包しなければならなかった。従って製品、取り説、梱包箱のシリアル番号が全部一致していないと不良品となってしまう。
さてあなたならどう工程で保証するだろうか。
梱包箱、取り説。製品に間違いなく同じシリアル番号シールを貼り付けるにはどう工程設計をすればよいか考えてみてください。】

ここで想定しなければならないリスクは
・不良によるラインアウトなどの異常時
・シリアル番号シールの貼りそこない
などによるシリアル番号シールと本体の泣き別れだ。

従って、梱包時に本体、取り説、梱包箱に同時にシリアル番号シールを貼ってしまうのがよさそうである。
それに対する制約条件は

  • せっかくシリアル番号があるので、検査データはシリアル番号ごとに保管したい。
  • シリアル番号をオンデマンドで印刷するのに若干時間がかかる。
  • タクトタイム以下で済ませたい

※私のアイディア

  1. 検査ステーションでシリアル番号シールを3枚印刷する。
  2. 検査合格後本体にシリアル番号シールを貼り、残り2枚は本体にテープで仮止めしておく。
  3. 梱包工程にて、取り説と梱包箱にシリアル番号を貼り付け梱包。

検査ステーションでシリアル番号を印刷することにしたのは、検査時間のため比較的タクトタイムが長い、これ以降にシリアル番号を貼り付けると検査データとシリアル番号の関連付けができないため。

これが正解というわけではないので念のため(笑)

以下ご投稿いただいたアイディアを紹介する。

※T様のアイディア

検査完了した製品を梱包する際に

  • 製品のSNをスキャンして工程履歴をチェック
  • 製品SNを元に取り説用と梱包箱用のシリアルラベルをその場で印刷
  • シリアル貼付け及び梱包

とすればよいのではないでしょうか?

前もってプリントしておくとどうしてもヒューマンエラーが発生します。

■製品に初めからシリアル番号を貼っておけば、工程内の履歴もわかりますね。
 貼る場所などを考えるとケース組み立て以降の工程になり、すべての工程内履歴はトレースできませんが、良い考え方だと思います。
 シリアル番号にバーコードが付いていれば、梱包時にスキャンしてすぐにラベル印刷をすれば間違いはなさそうです。
 ラベルプリンターが2台要りそうだということ、梱包作業時にラベル印刷時間が手待ちにならない様に作業を工夫する必要がある。という点に留意すればよいと思います。

※K様のアイディア

取り説がビニール袋に収納されていないことを期待して、かつ工数バランスが不明ですが、それもある程度無視して、3種類のシリアルを1つのシート(台紙)にきりす。  
それを梱包時に1枚ずつ貼らせます。 
貼り終わった台紙は空き箱に台紙面を上にして(皆に見えるように)入れます。
(貼り忘れのポカよけ)
というのはいかがでしょうか。

■ポカ除けまで付いていて感心してしまいました。
集合梱包をする人が、台紙にシールが残っていないのと、自分が梱包した製品台数のダブルチェックができますね。
 この方法だと、シリアル番号と検査データの関連付けができないのが唯一の弱点ですね。工程バランスを考慮する必要があると認識しておられる点など完璧だと思います。

 

※S様のアイディア

私だったたら、シールを貼付する工程を、梱包直前にもっていきます。
工程品質を見る必要があれば、仮NOで運用し、最後にラベルを貼るとかします。
また、部品のキット段階で全て揃えてしまうことでも、運用可能かと思いますが、不良が発生した場合は、キット単位で処理することになりますね。

■最後のほうでシリアル番号を貼り付けるというのは皆さん同じでしたね。キットで準備するというのは、製品トレーなどがあり工程投入時からずっとそのトレーに入れて工程内を流動する場合は使えますね。

工程内を仮番号で管理しておき、最後にシリアル番号と仮番号を関連付ける事ができると良いですね。たいていの場合はケース組み立て以前はプリント基板にしかシリアル番号を貼り付けられない。ケースをつけてしまうと中のシリアル番号がスキャンできない。ということでなかなか実現が難しいです。


このコラムは、2008年10月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第58号に掲載した記事です。

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中国製品の市場回収

 2007年は中国製品の市場回収が多くニュースとなった.記憶にあるものを並べてみると,

  • 「圧力なべ」:取っ手が高温になってやけどの危険性
  • 「IH電磁調理器」:部品不良による発煙の可能性
  • 「たこ焼き器」:電源コード接続部のネジ止め不良による発煙・発火の可能性
  • 「練り歯磨き」:ジエチレングリコールが検出
  • 「土なべ」:鉛の溶出
  • 「おもちゃ」:塗料から鉛が検出
  • 「塩ビのおもちゃ:フタル酸ジエチルヘキシルが検出
  • 「ポータブルDVDプレーヤ」:高熱により変形や発煙・発火の危険性

市場回収が発生すると莫大な費用損失が発生する.そればかりではなく,生産委託したメーカ,輸入商社の信用も大きく損なわれる.回収事故一件で倒産してしまう会社もあるだろう.

市場回収となる安全性の欠陥については,商品企画,開発,試作,量産の各段階で事前にリスクをきちんと評価・対策しておかねばならない.予防的品質保証活動が重要である.

他社の事例から自社製品にも同じ問題が発生しないか検討し予防処置をとっておくことが必要だ.
上記の事故事例は過去の問題が形を変えて発生しているだけだ.
日本から製造現場が少なくなってくると,リスクを見抜く力が落ちてくる可能性がある.安易なリストラで設計の検証,協力工場の選定,協力工場の生産管理などの能力をなくしてはならない.

地雷を踏まないように祈りながら歩くのではなく,地雷を取り除いたところに道をつけて走るべきだ.


■今週の雑感

 職業柄市場回収の報道があると,原因を調べずにはいられなくなる.以前最大手の電源メーカがPC用アダプタ電源の回収事故を出したことがある.
その時は回収対象品を中古品市場やジャンクマーケットで探し回った.見つけてきた回収対象品を分解して,回収になるような事故の原因を探った.

そのものずばりの原因は見つけられなかったが,設計的なリスク,製造的なリスクがいくつも見つかった.そういうリスクに対する対策を自社製品に盛り込んでおくわけである.

こういう話を業界の人にすると,そっと本当の原因を教えてくれたりするものである(笑)


このコラムは、2007年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第11号に掲載した記事です。

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