カテゴリー別アーカイブ: 品質保証

工程を止める

 生産中に同一不良が大量に発生する。または顧客に不良が流出した。
原因や改善方法がまだ判明しない。しかし客先への納入が必要。この様な状況を経験された方は多いだろう。(経験したことがないという方は、ラッキーな方か、まだ経験が浅い方だろう)

タクトタイムで次々と製品が上がってくる工程で、同一不良が発生すれば、あっという間に大量の不良の山が積み上がる。
こういう状況になった時に生産を止められるかどうかで、その工程の監督者の力量が判断できる。当然顧客の要求納期に答えなければならない。生産を止めれば、納期遅延が発生する。このプレッシャーに打ち勝って生産を止めることは難しいだろう。

しかし冷静に考えれば、不良が発生したまま生産しても納期が間に合うとは言えないだろう。滞留する不良の山をあちこちに移動したり、修理要員を確保するなどが必要となり、生産効率も生産量も落ちる。
最悪の場合、工程内で発生した不良が顧客に流出する。

工程の監督者は、納期通りに「生産」をするのが使命と思っており、生産を止める勇気を持つことができない。しかし本来の使命は納期通りに「出荷」することである。したがって、納期通りに良品を生産しなければならない。

監督職が不良品の「処置」に奔走していれば、いつまでも不良は発生し続ける。勇気を持って工程を止め、不良原因を解析し対策を実施する事が必要な処置だ。


このコラムは、2017年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第579号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

全日空便、パネル2度脱落 成田発着の同じ旅客機

7日から8日にかけ、成田空港を発着した全日空便の同じ旅客機から、脱出用シューターを収納する強化プラスチック製のパネル(縦60センチ、横135センチ、重さ約3キロ)が2度脱落していたことが9日、全日空への取材で分かった。

いずれも飛行中に落ちたとみられるが、見つかっていない。飛行に問題はなかった。全日空は同機を整備点検し、原因を調べている。

同社によると、脱落があった機体はボーイング767で、パネルは左主翼の付け根付近に取り付けてあった。7日夜、中国・アモイから到着後になくなっていることが判明。同じ大きさの新しいパネルを取り付けて運航したが、8日夕に中国・大連から戻った際にもなくなっていた。

アモイや大連の出発時にはパネルは脱落していなかったという。〔共同〕

日本経済新聞より

 最近旅客機による重大インシデントが続いている。ANA機のパネル落下事故を整理すると、以下の様になる。

7日、アモイ→成田便がパネル落下。
8日、大連→成田便の同機が再びパネルを落下。

パネルは強化プラスチック(FRP)製。左の主翼の付け根にある緊急脱出用スライドを収納するパネル。緊急脱出時に、高圧窒素を使ってパネルを開き格納された脱出シュータを出す様になっている。

旅客機に乗ると、離陸時に「扉をオートマティックモートにし、相互確認を行ってください」と言う乗務員向けの機内放送が毎回ある。駐機時には扉はマニュアルモードとなっており、扉を開けても脱出シュータは出ない様になっている。飛行中は、オートモードにし異常時に扉を開ければ、脱出シュータが出る様にしておく。今回の落下パネルは主翼後方のシュータ用なので、主翼上の非常口が開くとパネルを吹き飛ばす様になっているのだろう。

全日空は「非常時にパネルを外すための高圧窒素ボトルからわずかな窒素が漏れ、パネルのロックが外れた」と原因を説明している。

原因分析が正しければ、成田の整備工場での修理時に「わずかな窒素漏れ」は修理されているはずだ。翌日同じ事故が再発している。従って以下の問題があったと推測される。

  • 原因推定(又は漏れている場所の特定)が間違っていた。
  • 原因推定はあっていたが、修理が正しく出来なかった。
  • 修理後の点検も正しく行われなかった。

ところで脱出シュータの日常点検整備、修理後の点検はどう行われるのだろう。実際に脱出シュータを出す検査は「破壊検査」になるので出来ない。擬似的に検査をする事になるだろう。

航空機のメカニズムはよくわからないので、エレベータの事例で考えてみよう。
以前近隣のホテルでエレベータが最上階から地下2階まで落下し、乗客が怪我をする事故があった。新聞報道によると、21人!もエレベータに乗っており、緊急時ブレーキが機能しなかった様だ。エレベータは最大13人、1000kgの積載能力しかなく、オーバーすればブザーが鳴り扉が閉まらないはずだ。
従ってこの事故は、エレベータの牽引ワイヤの破断と積載オーバーの検出機能不全の二つが重なった事になる。
緊急ブレーキも機能しなかったが、こちらは設計仕様(定員13人、1000kg)をオーバーしており、緊急ブレーキが正常であっても事故は防げなかっただろう。

日常点検で牽引ワイヤの劣化は発見出来るはずだ。(中国における点検整備は壊れたら修理と解釈されている様だ・苦笑)
しかし積載オーバの検出機能はどの様に検査されているのだろうか?
しばしばエレベータの点検整備の現場を目撃するが、1000kgの錘りも、13人の点検作業員も見た事はない。重量センサーの出力端を操作し擬似的に検査しているのだろう。この場合重量センサーに故障があれば検出出来ない。

今回の全日空機事故も本質原因の他に、正しく検査が行われない流出原因がありそうだ。
あなたの工場で行われている設備点検に「落とし穴」がないか一度点検をしてはいかがだろう。


このコラムは、2017年10月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第571号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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原因調査・再発防止

 11月8日に群馬県でヘリコプター墜落事故が発生した。
乗務員4名全員が亡くなっている。
目撃者は、機体後部から部品が落下した、と証言している。機体に何らかの異変が発生し、機体の制御が出来なくなり墜落した様だ。

航空機事故が発生すると、運輸安全委員会が調査に入り原因の分析および再発防止対策の実施をしている。運輸安全委員会とは、国土交通省管轄の組織であり以下のミッションを持っている。

  • 航空、鉄道及び船舶の事故・重大インシデントが発生した原因や、事故による被害の原因を究明。
  • 事故等の調査の結果をもとに、事故・インシデントの再発防止や事故による被害の軽減のための施策・措置を勧告。
  • 事故等の調査、再発防止、被害軽減といった運輸安全委員会の施策推進に必要な調査・研究

運輸安全委員会のホームページ

今回のヘリコプター墜落事故に関する調査は始まったばかりであり、報告書はまだ出ていないが、過去の事故・重大インシデントの報告書は公開されている。調査報告書が公開されるまで2年程の期間を要している様だ。

例えば以前このメールマガジン(2015年6月8日配信・第427号)で取り上げた、那覇空港での航空自衛隊のヘリコプターと民間機2機が絡んだ離着陸トラブルの事故報告書は公開されている。

那覇空港での航空重大インシデント調査報告書

メルマガ過去記事「空自の復唱「気づかず」 重複の可能性も 那覇管制官」

60ページ以上の運輸安全委員会報告書の書き出しはこうなっている。
“本報告書の調査は、本件航空重大インシデントに関し、運輸安全委員会設置法及び国際民間航空条約第13附属書に従い、運輸安全委員会により、航空事故等の防止に寄与することを目的として行われたものであり、本事案の責任を問うために行われたものではない。”

私たち製造業においても、不良原因調査、安全事故調査を行う機会はしばしば有る。これらの調査の目的は、不良・事故の再発防止であり、問題発生の責任追求ではない。責任追及とすれば、責任逃れ、問題の隠蔽が発生し本来の目的で有る「再発防止」は達成出来ない。

社内や顧客に提出する報告書は、運輸安全委員会の報告書の様な「大作」で有る必要はないし、2年もかけて報告書を作成したのでは改善のチャンスを失する事になる。
(運輸安全委員会の名誉のために申し添えると、対策そのものは既に実施済みで有り、原因・対策とそれに至った調査記録をまとめた報告書となっている)

私たちも運輸安全委員会の基本ポリシーに従って不良・事故調査に当たるべきだ。そして不良・事故発生の再発防止・損失軽減に対する調査・研究を推進しなければならない。

再発防止・損失軽減に対する調査・研究とは

  • 設計基準、製造方法、作業要領などを改善改訂する。
  • それらが遵守される事を確かにする。
  • これら調査・研究対象を広く社外にも求める。

と言う事になるだろう。


このコラムは、2017年11月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第589号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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航空機事故から

 先週は米子空港の自衛隊輸送機のオーパーラン事故福岡空港の大韓航空機緊急着陸と立て続けに航空機事故が発生した。両事故ともに負傷者もなく重大事故とはならなかったが、ヒヤリハット事故として原因を究明の必要がある。
自衛隊機は減速、操舵の操作が出来なかった。大韓航空機は操縦席内で発煙を確認。とそれぞれの直接の事故原因は報道されているが、真因はまだ判明していないようだ。

現時点で再発防止や、水平展開を議論してもあまり意味がなかろう。
本日は1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空の着陸失敗事故を検討してみよう。

事故発生の経緯。

  • 着陸態勢に入った後副操縦士が、ゴーレバー(出力最大)を誤操作。
  • 機長が気がつきゴーレバーの解除を指示するが、解除されず。
  • 航空機(エアバス)は着陸やり直しモードに自動で切り替わり上昇を開始。
  • 副操縦士は自動着陸モードをオンにし機首下げ操作をする。
  • 着陸やり直しモードの自動操縦装置が反発し機首を上げようとする。
  • 機長が操作を変わり、着陸やり直しのためゴーレバー作動、機首上げ操作。
  • 機体が急激に機首上げし、失速墜落。
  • 乗客乗員264名死亡、7名重傷。

この事故の発端は副操縦士の誤操作であるが、操縦の矛盾(着陸やり直し時で機首下げ操作)時に自動操縦を優先する設計思想になっていた事で、失速してしまった。緊急時には、人よりコンピュータの方が冷静に判断出来る、と言うのがエアバス社の基本設計思想だった。一方ボーイング社は、人の操作を優先する設計思想になっていた。今回の事例で言えば、着陸やり直しモードで機首下げ操作をすると、着陸やり直しモードは解除される。

確かに人はミスをする。しかし自動制御が万全かと言うと、そうではない。プログラムにはバグがつきものである。更に制御プログラム設計時に想定できない事象が発生する事もあり得る。そう考えると、最後の砦は人の判断になる。

この問題は、機長の指示に対して副操縦士が従わず最大出力のまま着陸モードにした所が発端だ。普通に考えると、複数人で操作をする場合は、指示に対し復唱と確認は必須だ。コックピットの中で指示、復唱、確認の手順が遵守されていなかったのではなかろうか?

我々の仕事にも、指示、復唱、確認が必要な場面は多くありそうだ。
特に中国人スタッフに指示を出す場合、より復唱、確認が重要になる。


このコラムは、2017年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第532号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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航空機事故(人為ミス)

 先週は1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空の着陸失敗事故を検討した。着陸やり直しモードで自動操縦されている旅客機を手動で着陸させようとして発生した事故だ。
これも人為ミスと考えてよかろう。人為ミスに対して「パイロットの教育訓練」と言う対策では殆ど効果はないだろう。先週の記事では、機長と副機長間の認識の違いを埋めるため「指示」「復唱」「確認」を徹底すると言う対策を考えてみた。実は事故機のエアバス社は、自動操縦のプログラムを変更し、自動操縦時にパイロットが操縦操作をすると、自動操縦モードを解除する様にしていた。プログラム変更が事故機に適用されていれば、事故は発生しなかったであろう。
機長・副機長間のコミュニケーション改善(人に依存した対策)よりはプログラム改善(設計による対策)の方が効果は確実だ。

本日も人為ミスによる航空機事故を紹介する。

VORの誤入力により、自動操縦中の旅客機が山脈に激突墜落した事故だ。
VOR(無線信号灯)とはVHS周波数滞の電波により、航空機に方位を知らせる灯台の様な物だ。自動操縦ではVORを目指して飛んで行く。

機長が選んだ航路上のROZOのVORを自動操縦システムに入力する際に、誤ってROMEOのVORが選択されてしまった。平地を飛んでいるはずが、山脈に向かっており、警告が出た時には上昇が間に合わず山脈に激突墜落した。

警告が発生した時に機長が冷静に対処出来なかった事もあるだろうが、事故の発端はVORの入力ミスだ。

VORの入力は「R」を入力した時点で第一候補の「ROMEO」が表示されそのまま選択してしまった。そして間違った選択に気がつかなかった。と言うのが事故の根本原因だ。これを「人為ミス」で片付けてしまうと、有効な再発防止対策は得られない。

多分航空機会社の、システム設計者はユーザビリティを考えて、設定の簡便さを優先したのだろう。

例えばGoogleやYahooの検索も検索文字入力の途中で候補が表示される。そしてリターンが押されると即検索が始まる。検索の場合間違った文字列が入力され間違った検索が行われても、やり直せば問題はない。間違った検索結果が表示されても重大な事故につながる事はないだろう。

VOR設定ミスによる潜在問題を洗い出すと、XY軸(緯度・経度)に関しては燃料の浪費、時間の浪費に気がつく。Z軸(高度)に着目すれば、山に激突すると言う重大事故に気がつくはずだ。
航空機の航路設定の場合は、簡便さより安全性が優先されるべきだ。

航空機のコックピットの写真を見ると、スイッチ類がぎっしり並んでいる。多分「ROZO」と入力するだけで,何度もスイッチ操作を繰り返さねばならないのだろう(アルファベットが刻まれたロータリィSWを合わせ、一文字ごとにエンターSWを押すのではないだろうか?今ではこんなユーザインタフェイスは考えられないが、事故が起きたのは1995年だ。)最近の航空機は、操作性と確実性が両立していると考えたい。

しかし、出発準備が忙しく民間機と自衛隊機がニアミスした事故があった様に航空機の操作は、相変わらず煩雑さが改善されていないのかも知れない。

製造現場では、もっと容易に操作性と安全性を両立する事ができるだろう。
操作が複雑、分かりにくいなど改善のチャンスだ

今回の失敗事例は「失敗百選」中尾政之著を参考にさせていただいた。


このコラムは、2017年6月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第533号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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杭打ち工事、現場の言い分

杭打ち工事、現場の言い分。データ再調査は「パンドラの箱」となるか?=近藤駿介

 新たな不正が見つかり、日増しに批判の声が高まっているマンションデータ改ざん問題。この風潮に異を唱えるのが、30年前に元請会社の技術者として杭打ち工事を担当した経験を持つ、元ファンドマネジャーの近藤駿介さんです。
自然相手の工事における「必要悪」としてのデータ改ざんとは?

(以下略)
全文はこちら

(MONEY VOICE ニュースより)

 以前杭打ち工事のデータ偽造のニュースに関してコラムを書いた。

「旭化成建材、現場責任者の3割偽装 出向が大半、調査難航」

当初現場責任者の問題と言う論調だったが、予測通り業界全体の問題に発展して来ている。

本日取り上げたコラム著者・近藤駿介氏は杭打ち現場の経験があるようだ。現場人間の私には、彼の主張を理解できない訳ではない。

空調が効いたオフィスで仕事をしている実務経験のないボーヤが、偉そうに施工検査に来た所で何が分かる。と言う筆者の気持ちがコラムの端々から滲み出ている。

実務経験がない検査官は、施工データをどう読むか分からない。検査官は必要データが揃っている事をマニュアルに従って確認するだけになるだろう。コラム筆者はこのような「マニュアル検査」を続ける以上施工データの改ざん・流用は無くなる事はないと言っておられる。

この議論は納得ができない。

確かに現場には予期しないことが突発的に起きる。それによってデータが取れない事もあり得るだろう。だからといって、データの存在だけを問う施工検査をするから施工データを改ざん・流用してよいと言う事にはならない。データをきちんと取る様に努力を傾けるのが本物の現場人間だと思う。

コラム筆者は何度も「施工品質と施工データは別物だ」と主張しておられる。きちんと施工さえしていれば、施工データを改ざんしようが流用しようが施工品質は悪くはならない、と言う主張と理解した。
確かに、施工データは偽物でも、決められた材料を決められた工法で正しく施工すれば、施工品質は悪くはならないだろう。しかし正しい材料、正しい工法、正しく施工が行われた事をどのように保証するのだろう?

それを検証しようとすれば、破壊試験しかないだろう。

施工データは、合理的なコストで施工品質を保証する唯一の根拠だ。
施工データの改ざん・流用を施主の施工検査のせいにし、最終顧客には大丈夫だから信じろ、と言っているのと同じだと思うがいかがだろうか。


このコラムは、2015年12月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第453号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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工場のホコリ

 先週は「モノ造りのホコリ」について書いたが今週は「工場のホコリ」について考えてみたい。ホコリといっても先週のテーマは「誇り」だが今週は「埃」だ。

最近複数のお客様工場で「ホコリ」について取り組んでいる。印刷工程、組立工程などなど色々なところでホコリが悪さをする。たかがホコリされどホコリである。

随分昔になるがCRT(ブラウン管)ディスプレイの内部にある異物が原因で、「管内放電」という現象に悩まされた。CRT内部にある金属性異物とアノード電極(25kV)の間で放電が発生し、表示画面が一瞬ぱっとフラッシュアウトしてしまう。一瞬のことなのでめったに見る事はないが、工場の監視画面のようにユーザが四六時中画面を注視しているようなアプリケーションでは故障と勘違いされ、サービスコールが発生してしまう。

サービスマンが現場に行っても再現せず、原因不明となってしまう事が多い。最悪の場合CRT内部の放電電流が外部回路に流れ電子部品を破壊してしまう事もある。

ではこの異物はどこから来るかというと、CRT組み立て中のホコリ、CRT内部のシャドウマスクや電子銃のバリなどが原因となる。これをなくすためCRTの組立工程では叩いたりゆすったり洗浄したりということを繰り返していた。

CRTメーカの努力にもかかわらず僅かだが市場で発生してしまう事がある。我々セットメーカとしては最悪回路の破壊故障にならない様に放電電流が安全にリターンするように工夫・確認するしかない。

そこで故意に管内放電を起こさせ確認することになる。
YAGレーザのパルス光をCRT外部から電子銃に向かって照射し金属を溶かしてしまう。飛散した金属によりCRT内部の絶縁が一瞬劣化し管内放電が発生する。

システムに組み込んだ状態で、管内放電による破壊やそれによるノイズで誤動作をしないことを確認する。この実験の様子をサービスエンジニアにも公開し「管内放電」を理解してもらったりしていた。

このよう異物がどこから来ているかはっきりしているモノは比較的対策がたやすい。

しかし印刷工程に浮遊しているホコリが、素地表面や印刷表面に付着してしまうと厄介だ。静電気で吸着してしまう事が多く、なかなかホコリが除去できない。
ホコリによる不良は外観不良ばかりではなく機能不良となることも多い。例えばプリント基板ではホコリにより回路の断線やショートが発生しうる。

ホコリを除去するために洗ったり。拭いたり、エアブローをかけたりすることになるが、「拭く」「吹く」という作業は静電気を発生させやすい。エアブローをかけることにより帯電させかつ周りのホコリを巻き上げ吸着させることになる。

加工による付加価値という観点では、ホコリを除去する作業はなんら付加価値を生んでいない。従ってホコリを拭き取るよりは。ホコリを発生させない・付着させない努力が必要だ。

一般にホコリの発生源を特定できないと対策は困難となる。
また付着させないためには,材料を帯電させない工夫が必要だ。


このコラムは、2009年6月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第103号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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モノ造りのホコリ

 ある中国企業の生産現場で指導をしていて大変驚いた事がある。
製品がひっくり返らない様に組み込む金属製の「重石」が大変に汚れている。「泥だらけ」という表現はちょっと言い過ぎかも知れないが、土ぼこりや蜘蛛の巣で汚れている。素手で触るのがためらわれるほどだ。

きれいにしてから組み込んだほうが良いだろうと製造部門のリーダに指摘をすると、ユーザには見えないところにあるのでかまわないという。外観には気を使っているが目に付かないところには余分なコストをかけない、という考えかただ。

また金属シャーシに取り付けたタブが加工ミスで曲がってしまっている。ペンチでぐいと位置強制して使うという。これもまたユーザの目には触れない場所だ。さすがにこれは不良としてリジェクトさせた。

別のラインでは、量販店から製品の仕様変更依頼(内部部品の交換)で返却された商品の改造作業をしていた。驚くことに返却されたボロボロの化粧箱に再梱包をしている。量販店が化粧箱交換のコストアップを納得しなかったので、破損の激しいものだけ交換するように白箱を100個だけ用意してあるという。これは現場のリーダを責めてもかわいそうだが、こんなモノを店頭に陳列すれば売れないばかりではなく、自社のブランドにまで傷が付きそうだ。

コストを重要視する考え方を間違っているというつもりはない。
しかしこの工場は床や作業台にネジが散乱していても平気な工場だ。ブランドに関わるコストを敏感に削減しているのに、部品の遺失コストには無頓着だ。

こういうモノ造りをしていれば、仕事や自分達が生産した製品に対する現場のホコリはなくなってしまうだろう。モノ造りにホコリを持っていない現場に高品質・低コストのモノ造りができるはずがない。更にこういうモノ造りを続けていれば、最も重要な顧客の信用やブランド力がどんどん低下してゆくだろう。

知り合いの縫製工場の経営者は、安物の仕事は請けないと言い切っていた。安物なりの縫い方を作業員にさせてしまえば、本来の品質を維持できなくなる。高級なモノは目に見えないところにもコストをしっかりかけてあるものだ。

その考え方ををモノ造りのホコリとして作業員にきちんと伝える必要がある。これは一介のコンサルが現場で指導できる話ではない。
この工場に対しては現場指導よりも、経営者指導が必要だ。


このコラムは、2009年6月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第102号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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IPQCの検査データ捏造

 第337号のメールマガジンで、JR北海道のデータ改ざんニュースから、工場内の同様な事例を紹介した。

2週続けて、安全規定の非遵守受け入れ検査の偽造の事例と、それに対する対策をご紹介した。今週はIPQCの検査データ捏造の事例についてご紹介したい。

IPQCの問題点は以下の通りだった。

  • IPQC(工程内検査)の検査データ捏造
    IPQCは2時間ごとに、半田ごての温度、絶縁抵抗を測定することになっていた。
    しかし現場に巡回して来たIPQC検査員は、絶縁抵抗測定器を持っておらず、全て10MΩ以上と記入していた。検査員に理由を問いただすと、自分が使っている絶縁抵抗計が壊れ修理中だと言う。

本件に対して、皆さんはどのような再発防止対策をされるだろうか?
本件には、読者様から何も反応がなかった。実は当時私もどうすべきか困った(笑)

結論から先に言うと、絶縁抵抗をIPQCでチェックするのを止めた。
肩すかしの様な回答で申し訳ないが、検査をしたかの様に捏造をするよりは、やらないと決めた方が良いと判断した。
絶縁抵抗を測定しなくても良いと判断した理由は、工程内で使っている半田ごては、全て高絶縁のセラミックヒータを使用していたからだ。ヒーター線はセラミックの中に埋め込まれており、絶縁不良となる事はあり得ない。セラミックが破れて、内部のヒーター線が露出すると言う故障モードが発生したとしても、劣化でその様な故障が発生する訳ではない。落下などの事故により発生する。従ってIPQCのチェックでは事前に劣化を見つけられない。

小手先の温度測定も、同様にIPQCの温度測定機が故障中と言う事はあり得る。
温度測定機は、各工程が小手先温度の設定確認用に持っている。IPQCの役割は第三者チェックだ。
IPQCの小手先温度計が故障している時は、生産現場の測定器を使用する事とした。勿論第三者チェックなので測定器も別の物を使うのが原則だ。IPQCは1フロア20ラインを一人で見ており、2階、3階に一名ずついる。二人に一台予備機を準備すると言う方法でも良かったが、現実的な対応を選んだ。

現実的な対応で良いかどうか議論はあるかもしれないが、もっと大きな問題は別の所にある。

測定器が壊れているのだから検査出来ない。適当にチェックリストを埋めておけば良い、と言う風潮が一般化する方が大問題だ。

ではなぜその様な事が行われるのか?
この問題を作業者の素質が低い、とすれば「作業者に注意しました」「作業者に再教育しました」と言う再発防止対策になる。

どうして作業者が、測定もしないでデータをチェックシートに書き込んだか、その理由を考えなければ解決は出来ない。

検査用測定器が壊れている時に

  1. 測定器が壊れたら、どうすれば良いか分からなかった。
  2. 今まで不具合はなかったのだから、測定しなくても大丈夫と判断した。
  3. 測定しなければならないと思ったが、相談する相手がいなかった。

検査作業員は、半日に1回20ライン全ての半田ごてをチェックしなければならない。上記の様な状態で悩んでいたら、仕事は終わらなくなる。

最終的には、IPQCの作業手順書を書き換え、測定器が異常となった時の手順を加えた。測定器が故障した時の報告、現物への表示、台帳への記入、修理依頼、この様なやらねばならない手順が不明確だから、何とかごまかそうとする。

データを捏造した事は叱らねばならないかもしれないが、結局指導者の配慮が足りていない事が本当の原因だ。作業者の素質のせいにしておくと改善の方法は見つからない。指導方法に問題があると考えれば、改善が出来る。


このコラムは、2013年12月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第340号に掲載した記事に加筆しました。

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受け入れ検査の偽造

 第337号のメールマガジンで、JR北海道のデータ改ざんニュースから、工場内の同様な事例を紹介した。

先週は、顧客監査時の顧客指摘事項に対する改善対策として決めたルールが守られない、と言う事例をご紹介した。

今週は、受け入れ抜き取り検査で、規定通りに検査が行われていなかったと言う問題について、どう改善したかをお伝えしたい。

受け入れ検査部門の問題点は以下の通りだった。
板金部品の受け入れ検査記録を見てみると、いわゆるAQL検査による抜き取り検査をしているはずだが、各ロット2個分のデータしか記録されていない。
作業員に理由を聞いてみると、記録用紙に抜き取りサンプルのデータを書くスペースが無いので、代表値(最初のサンプルと最後のサンプル)だけを記録していると言う。
その説明を聞いて気が付いたが、作業員一人で検査出来る物量以上のサンプルを検査しなければならない様になっていた。作業員は、AQL基準には従わず、各ロット2個だけ検査して作業を間に合わせていた。

デスクトップPCに内蔵される電源ユニットの金属シャーシの受け入れ検査だ。物が大きいので、生産に合わせて一日に3回分割して納入される。しかも毎日10品種ほど納入される。従って、抜き取り検査は毎日30回ほど実施することになる。一ロットから80個とか120個を抜き取りサンプルして測定する。
各ロットのサンプル数を平均100個とすれば、3,000個のサンプルをそれぞれ、受け入れ検査手順書に指定された測定ポイントが平均10カ所とすれば、測定は全部で30,000ポイントとなる。一日10時間検査をしたとして、1ポイントを1.2秒で測定しなければならない。作業は測定だけではなく、外観目視検査、検査結果の記録、サンプルを取りに行くなどもあり、絶対に不可能だ。

シャーシの寸法が不良で、工程内で不良となる事は無かった。
工程内で問題になるのは、ほとんど変形による組み込み不良だ。
受け入れ検査でロットアウトになるのは、品番間違いなどの問題だけだ。

実際には、受け入れ検査を手抜きしていても何も問題は発生しない。しかし、組織の中に不問律のダブルスタンダードがある事を許してはならない。これを是としてしまえば、品質管理は無力となる。

この問題を改善するために、検査員を増やすと言うのは現実的ではない。
金属シャーシの受け入れ検査員だけで10人必要と言うのはナンセンスだ。

寸法を測定するのが仕事ではない。少ない人数でも、部品の品質を保証出来る様にすれば良いのだ。

・受け入れ検査の測定ポイントを見直す。
・AQL方式の検査方法を見直す。

シャーシは板金プレスで出来上がっている。ほとんどの寸法は、金型が正確に設備にセットされていれば、問題ないはずだ。正しく金型がセットされている事を確認するための測定ポイントととする。

AQL検査方式が万能である訳ではない。受け入れ検査のサンプル数を5,6個とし工程管理図方式で管理する様にした。

ベンダーの工程を確認し、最初のロットで工程能力指数を確認する。こういう事をやれば、受け入れ検査の抜き取り個数や、測定ポイントは減らす事が出来るはずだ。
こうして時間を節約する事が出来れば、しばしば工程内で問題が発生する別の部品の受け入れ検査を強化する事も可能になる。


このコラムは、2013年12月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第339号に掲載した記事に加筆しました。

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