警官が勤務改ざん、不正受給の疑い「雑用ばかりで不満」
勤務実績を改ざんし、超過勤務などの手当を不正受給したとして、警視庁は20日、同庁サイバー犯罪対策課の男性巡査部長(40)を電子計算機使用詐欺や公電磁的記録不正作出・同供用などの疑いで書類送検し、同日付で懲戒免職処分とした、と発表した。容疑を認め「雑用を自分ばかりが頼まれる不満を発散させるためだった」と説明しているという。
人事1課によると、巡査部長は、課員の勤務実績のシステム入力担当だった2018年5月~今年6月、自身の超過勤務などを406時間分水増しして入力し、125万7513円の手当を不正に受給した疑いがある。同庁は監督責任で、男性警視ら当時の上司4人についても訓戒や所属長注意とした。(朝日新聞ディジタル 2019年12月20日)
40歳で巡査部長ということはノンキャリアの警察官だろう。工場の職位でいえば、現場作業員の班長、組長クラスだと思う。この問題を不正を働いた警察官の問題ではなく、警察官に不正を働かせてしまった組織の問題として考えみよう。
「雑用を自分ばかりが頼まれる不満を発散させるため」不正を働いたと被疑者は供述している。警視庁サイバー犯罪対策課にどんな雑用があるのかは分からないが、例えば、上司や同僚のためにお茶汲みなどの仕事をさせられていたとすれば、同情の余地はあるかもしれない。
課員の業務実績のシステム入力を「雑用」と感じていたのだとすると、明らかに仕事を割り振った上司の責任だ。きちんとその仕事の重要性を説明する必要がある。実際に課員の収入に関わる重要業務のはずだ。
業務実績のシステム入力作業内容が、課員ごとのタイムカードからキーボードを使って入力するような仕事であれば「雑用」と感じるのも無理はないだろう。改善する必要がある。
そのような「雑用」を改善するために改善提案を出したが、提案賞の500円をもらっただけで、何の変化もフィードバックもなければより不満をつのらせる結果になる。
工場の班長・組長が被疑者と同様の気持ちになり不正を働く、作業員へ負の影響を与える、離職する、などは容易に想像がつく。
その結果の影響は、班長・組長個人より組織側の方が深刻だ。
まずは、公平公正に互いに助け合う組織文化を持たねばダメだろう。上位職の指示命令が絶対で、下からの提案がないような組織文化では「不正」「欺瞞」が唯一の不満解決手段になりうる。
そして「雑用」や「つまらない仕事」などないこと、それらの仕事の意義を理解してもらう。「雑用」「つまらない仕事」と感じるのであれば、それを改善する。
「改善提案」と「不満」は表裏の関係であることもある。改善提案制度は報奨金を与えるのが目的ではない。職場の問題に気付き、それを改善することが目的のはずだ。
提案が採用される・されないの判断をきちんとフィードバックしなければ、だれも提案しなくなるか、最悪不満か拡大することもありうる。
このコラムは、2019年12月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第919号に掲載した記事です。
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