月別アーカイブ: 2020年3月

警官が勤務改ざん

警官が勤務改ざん、不正受給の疑い「雑用ばかりで不満」

 勤務実績を改ざんし、超過勤務などの手当を不正受給したとして、警視庁は20日、同庁サイバー犯罪対策課の男性巡査部長(40)を電子計算機使用詐欺や公電磁的記録不正作出・同供用などの疑いで書類送検し、同日付で懲戒免職処分とした、と発表した。容疑を認め「雑用を自分ばかりが頼まれる不満を発散させるためだった」と説明しているという。
 人事1課によると、巡査部長は、課員の勤務実績のシステム入力担当だった2018年5月~今年6月、自身の超過勤務などを406時間分水増しして入力し、125万7513円の手当を不正に受給した疑いがある。同庁は監督責任で、男性警視ら当時の上司4人についても訓戒や所属長注意とした。

(朝日新聞ディジタル 2019年12月20日)

 40歳で巡査部長ということはノンキャリアの警察官だろう。工場の職位でいえば、現場作業員の班長、組長クラスだと思う。この問題を不正を働いた警察官の問題ではなく、警察官に不正を働かせてしまった組織の問題として考えみよう。

「雑用を自分ばかりが頼まれる不満を発散させるため」不正を働いたと被疑者は供述している。警視庁サイバー犯罪対策課にどんな雑用があるのかは分からないが、例えば、上司や同僚のためにお茶汲みなどの仕事をさせられていたとすれば、同情の余地はあるかもしれない。

課員の業務実績のシステム入力を「雑用」と感じていたのだとすると、明らかに仕事を割り振った上司の責任だ。きちんとその仕事の重要性を説明する必要がある。実際に課員の収入に関わる重要業務のはずだ。
業務実績のシステム入力作業内容が、課員ごとのタイムカードからキーボードを使って入力するような仕事であれば「雑用」と感じるのも無理はないだろう。改善する必要がある。

そのような「雑用」を改善するために改善提案を出したが、提案賞の500円をもらっただけで、何の変化もフィードバックもなければより不満をつのらせる結果になる。
工場の班長・組長が被疑者と同様の気持ちになり不正を働く、作業員へ負の影響を与える、離職する、などは容易に想像がつく。

その結果の影響は、班長・組長個人より組織側の方が深刻だ。

まずは、公平公正に互いに助け合う組織文化を持たねばダメだろう。上位職の指示命令が絶対で、下からの提案がないような組織文化では「不正」「欺瞞」が唯一の不満解決手段になりうる。

そして「雑用」や「つまらない仕事」などないこと、それらの仕事の意義を理解してもらう。「雑用」「つまらない仕事」と感じるのであれば、それを改善する。
「改善提案」と「不満」は表裏の関係であることもある。改善提案制度は報奨金を与えるのが目的ではない。職場の問題に気付き、それを改善することが目的のはずだ。

提案が採用される・されないの判断をきちんとフィードバックしなければ、だれも提案しなくなるか、最悪不満か拡大することもありうる。


このコラムは、2019年12月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第919号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

チャンスは貯金できない

 「チャンスは貯金できない」米国政治家ヘンリー・キッシンジャーの名言らしい。
ツーアウト満塁のチャンス、しかし残念ながら打順は下位打線。このチャンスを上位打線に回る次の回までとっておくわけにはいかない。

チャンスは貯金できないばかりではない。一瞬のタイミングを逃せばチャンスは去っていく。「チャンスの女神には後ろ髪がない」という言葉があるように、チャンスに気がつき振り返った時はすでに遅いということだ。

中村天風師は「チャンスに直面した際、無駄に迷いためらわない。颯爽たる行動力をもって、万難を排してチャンスをキャッチせよ」と言っておられる。

しかし我々のような凡人には、向こうからやってくるのがチャンスであるのか、ピンチであるのか簡単には見分けがつかない。チャンスは時としてピンチの仮面をかぶってやってくる。ピンチがチャンスを装って来ることもある。

バブル期にチャンス到来と考え、本業を忘れ土地や金融商品に手を出し失敗した経営者もあっただろう。

逆もある。食品メーカにとって致命的と思われる製品へのゴキブリ混入が発生、マスコミにも大きく取り上げられる、という大ピンチをチャンスに変えた事例もある。

品質クレーム

チャンスは貯金できないのであれば、颯爽たる行動力でチャンスをキャッチする。そしてピンチにはへこむことなく、どうすればチャンスに変えられるか考え抜くことだ。


このコラムは、2020年1月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第927号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

君子は争わず

yuējūnsuǒzhēng(1)shè(2)ràng(3)érshēngxiàéryǐnzhēngjūn

《论语》八佾第三-7

(1)无所争:人と争うようなことはしない
(2)必也射乎:争うのは弓の試合くらいだ
(3)揖让:拱手して譲り合う

素読文:
わく、くんあらそところし。かならずやしゃか。ゆうじょうしてしょうし、しこうしてましむ。あらそいくんなり。

解釈:
君子は争わない。争うとすれば弓の試合ぐらいなものだ。それもきょうしゅ(*)してゆずりあって弓道場にあがり、勝負がすむと弓道場を下って仲よく酒をのむ。こういう争いが君子の争いだ。

(*)拱手:右手で左手のこぶしを軽く包み、胸元で両手を組み合わせて頭を下げる礼。

作業員の離職率

 先週は明治大学で経営学部の学生さんに講義をした。バリバリ理系出身の私が社会科学を勉強している学生さんに講義などおこがましいが、我が師匠の故・原田則夫師の経営哲学を紹介させていただいた。

毎週日替わりで現役の著名経営者が講義をする。私から見ると、大変羨ましい授業だ。その特別講義のトップバッターとして登壇させていただいた。
私の場合は、私が著名経営者と言う訳ではなく、原田則夫師の経営哲学伝導者として、呼んでいただいている。

その講義の後に、中国人留学生からご相談を受けた。
彼女のお父様は、中国で300人規模の工場を経営されているが、従業員の離職率が高くて困っている。どうすれば作業員を定着させることができるか、と言うのがご相談の趣旨だ。

非常に問題意識の高い現実的なご質問だと感心した。
日本の学生も頑張れ!と思わず心の中で叫んでしまった。
自分が20代の頃は、経営的な問題意識は微塵もなかったので、えらそうな事は言えないが(笑)

「離職率が高い」と言う現象に対して、解決課題をどう定義するかを、まず考える。

「離職率を下げる」と言うのも解決課題になるが、他にも解決課題は設定可能だ。つまり離職率が高くて問題になるのは、作業員の熟練度が不足する、人員の確保が難しい、などの原因により、生産性、品質、納期などを、望む範囲にコントロール出来ない事だ。

従って「離職率を下げる」以外にも、「少人数で生産出来る様にする」という解決課題も出て来るはずだ。

今回はとりあえず、「離職率を下げる」と言う解決課題に関して、根源的なアドバイスをさし上げた。

まず従業員が辞める理由を理解しなければ、離職率を下げる事は出来ない。ここで多くの経営者や経営幹部が犯す間違いは、最近の若者は理解出来ない、と考える所に有る。

「違い」に着目すれば、当然理解出来ない。
たとえ「違い」を見つけることができたとしても、それがどうマネジメントの役に立つのか考えてみると良い。今の若者は、上からの指示に従うことに慣れていない。では指示をせずに仕事をしてもらうことができるだろうか?
多くの一人っ子は、両親祖父母に大事に育てられたから、叱るとすねる。では叱らずに仕事を教えることができるだろうか?

「違い」を理解してもマネジメントの役には立たない。
「違い」に着目すれば、このように矛盾する事ばかり列挙することになる。

「違い」ではなく「共通点」に着目すべきだ。
70后、80后、90后どの世代にも、経営者でも作業者でも、人間としての共通点があるはずだ。その共通点に着目すれば、年代の差、職位の差は無くなる。その共通点は、幸せになる事だ。幸せになる事は、人として共通の人生の目的と言って良いだろう。

仕事を通して成長することにより、幸せになる。これが実感出来れば、人は簡単には離職しなくなる。なぜなら、仕事と人生の目的が一致するからだ。逆に言えば「仕事を通して成長することにより、幸せになる」と言う理念に納得出来ない人は、辞めてもらった方が企業にとって好結果となるはずだ。


このコラムは、2014年10月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第382号に掲載した記事に加筆したものです。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

 ついている,ついてない,と感じることがままある.
売り上げ増加を見込んで,設備投資をしたら金融危機で受注がすっかり減った.
地震の代替え生産で大量に受注を得たが,洪水の影響でサプライヤーから部品が入ってこない.
逆に,
キャンセルで大量に部材が余ったが,別の顧客の増産要求に即応できた.
出荷抜き取り検査で不良が見つかり,顧客への流出が防げた.

こういう運,不運というモノがある.
ではその「運」とは何だろうか.

出典を忘れてしまったが,こういう定義がしてあった.
「準備の上に訪れるチャンスを運という」

運を制御できない偶然のモノと考えていては,運を生かすことは出来ない.経営を偶然に任せる訳には行かない.

万全の準備があって初めて運がある.

以前インドネシア・バタム島に工場を立ち上げたことがある.
不運なことに,工場立ち上げ直後に受注が減って,この工場にまわす生産を確保することが出来なかった.そのため立ち上げサポートに現地に入っていたメンバーはくる日もくる日も作業者の教育・訓練に明け暮れた.

そのおかげで,この工場はすばらしい工場になった.
米国の最大手通信機器メーカ向けに生産した製品は納入1号機から,客先工程,市場で1台も不良が発生しなかった.客先から絶大な信頼を得ることが出来た.

受注減は準備をするためのチャンスだった訳だ.その準備の上に客先受注というチャンスが訪れた.これが「運」というモノだろう.
こう考えれば,運はコントロールできないモノではなくなる.

経営上発生する全ての困難は,準備をするチャンスだ.正しく準備さえ出来れば,運はやってくる.

不景気で受注が減った時に,不運と考えて首をすくめ,ひたすら経費節減に取り組み耐える.これでは運はやって来ない.生産が減っている時こそ改善のチャンスだ.課題を間違えなければ,必ず運はやって来る.
生産量拡大の改善をしても,同じ不運が何度もやってくることになる.
高品質高付加価値を目指して生産性を改善する.こういう準備ができれば,今までにない運がやって来るだろう.


このコラムは、2012年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第260号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

濡れ雑巾でコンピュータを拭き掃除

 今週のテーマに登場した,濡れ雑巾でコンピュータを掃除する女子作業員は,本当に実在した.

このくらいで驚いてはいけない.

現場をきちんと観察し,想像力を高めれば,当然予測できる内容だ.作業員たちが終業後の掃除をどうやっているか観察していれば,分かるはずだ.

びしょ濡れのモップで床掃除をすれば,梱包箱が濡れる.ダンボールは一度濡れると,その強度が落ちてしまい,乾燥しても復活しない.また中の部材,製品にダメージを与える可能性もある.材料,半完成品や完成品が入った箱を床に直置きしてはならないと,何度も指導するのはそのためだ.

SARSが流行っていた時も,宿舎や工場の消毒をしたと報告を受けて,すぐにヤバイと感じた.塩素系の消毒液が,電子部品にかかれば信頼性上の深刻なダメージを受ける.

この様な感性を,現場リーダは持つ必要がある.

事故の影に「ヒヤリ・ハット」がある様に,物事にはすべて,正常・異常・事故の三つの状態がある.正常な状態からいきなり事故は発生しない.必ずなんらかの異常があり,それが直接原因,間接誘因となり事故は発生する.

リーダは,正常と異常の中間にある「正常ではない状態」を感知する感性を持たせなけらばならない.

つまり掃除をするのも,消毒液を散布するのも「正常ではない状態」だ.正常ではない状態が,安全,品質,生産性に与える影響を予測できるようにする.これは机上の一般論だけでは教えきれない.OJTで教え,それを水平展開する力を持たせなければならない.


このコラムは、2010年8月に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第165号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

問題を定義する能力

 就学中の若者や子供は問題を解くことを学んでいる。しかし我々実社会で仕事をしている人間にとって必要なことは、問題を「解く」ことではなく、問題を「解決」することだ。

我々の仕事は以下のステップになるはずだ。
・問題を発見する
・問題を定義する
・問題を解決する

「問題を発見する」なんて簡単なことだと思われるかもしれない。不良の発生、納期の遅延、採算の悪化など問題は簡単に見つかるはずだ。しかし過去からの因習、習慣により問題として認識してない問題、もしくは認識はしているが解決を諦めている問題があるのではなかろうか?「王様は裸だ」と言えない組織文化もあるだろう。
問題解決のために、まずは問題を発見・認識する能力が必要だ。

そしてその問題を定義する。
学校で学ぶ問題はすでに定義されており、学習者が定義する必要はない。1+1という問題はすでに定義されており、学習者はそれを解くだけで良い。

しかし現実社会の問題はそう簡単ではない。
問題は複雑であり、今まで経験したことがない(教わったことがない)問題が次々と出てくる。ここで「問題を定義する」ということが重要になってくる。つまり問題を解決できる課題に再定義するという意味だ。

例えば「倉庫が狭い」という問題に対してそのまま「倉庫を広くする」という解決方法を考えるのは小学生並みの思考能力しかないということになる。

倉庫が狭いという問題は、収納物の占める空間>倉庫の空間ということになる。
であれば倉庫の空間を増やすか収納物の占める空間を減らすという二つの選択肢が見えてくる。更に倉庫の空間を増やすためには収納効率を上げるというアイディアも出る。収納物の占める空間は、入庫物ー出庫物で増減する、と考えることができる。したがって、出荷計画に合わせて生産ができれば収納物は増えなくなる。

この中から、自社の都合や能力に合わせた解決方法を選択すれば良いはずだ。
この問題を定義する能力により、解決したことがない問題を解決可能な問題に変換することができる。

そして問題解決の体験は新たな問題解決の抽斗を自らの頭に蓄積する。

いつまでも九九を唱えていても成長はない。九九を使って2桁×2桁、3桁×3桁の計算が出来るようになって、初めて丸暗記の効果が発揮できる。


このコラムは、2019年10月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第891号に掲載した記事に修正加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

スノーブラインドネス

 改革・変革行動を起こすためにはエネルギーが必要だ。それは

現状に対する認識。
現状維持に対する危機意識。
そして行動するための能力・意欲。

になる。

これらが欠落していると「茹でガエル」状態となる。
ぬるま湯に浸かっていると、少しずつ温度が上がっていることが認識できず、このままでは茹で上がってしまうという危機感が持てない、最終的には、熱湯から飛び出す行動能力まで奪われる。

ジェームズ・オトゥールの変革を拒む33の臆見の中に「スノーブラインドネス」がある。スノーブラインドネスとは「雪目」と訳したらいいだろうか?

ジェームズ・オトゥールの変革を阻む33の臆見は以下の書籍を参照。
「組織変革のビジョン」金井壽宏著

晴天のゲレンデでゴーグルやサングラスで目を保護していないと、紫外線でやられてしまう。若い頃に何度か経験がある。涙が止まらず目を開けていられないほど痛い。ここまで酷い状態となると、目が開けられないので現状認識はできない。これほど酷い状態でなくとも、白一色の世界でわずかな変化を認識することは難しいだろう。

白一色の世界に赤色があれば一目でわかる。しかしビジネスの世界でそのような変化は、同業他社にも一目瞭然となり競争優位を導く要因とはならない。
実はこのように考えることそのものが「集団浅慮」を招くことになる。

集団浅慮とは、自分たちの能力を過信する、外部状況を過小評価する、集団内の画一性や同調圧力により、誤った判断を下してしまうことだ。

今自分たちはスノーブラインドになっていないか、自問することが必要だ。


このコラムは、2020年1月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第933号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

検査漏れミス

「下船23人、検査漏れ クルーズ船乗客 厚労相が陳謝 新型肺炎」

 大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号について厚生労働省は22日、必要なウイルス検査をしないまま下船した乗客が23人いたことを明らかにした。加藤勝信厚労相は「国民の健康につながることで、本来許されない。深く反省をしている」と陳謝した。対象者には自宅待機を依頼し、再検査をするという。

(朝日新聞より)

 本来下船前に、ウィルス検査を実施し陰性の乗客だけを自宅に戻って待機して貰うはずだった。しかし2月5日以前の検査で陰性だった人が23人間違って下船対象となってしまったと言うミスだ。

当然一人一人の検査記録は、きちんと管理されていただろう。だから今回のミスを発見することができた。では何が足りなかったのか。ずばり「識別管理」が足りなかった。識別管理とは誰が見ても一目瞭然、正しい判断ができる様にすることだ。

事例を紹介しよう。
新型コロナウィルス防疫対策として、大阪国際空港では入国審査時に色付きのカードを渡している。このカードを見れば、危険区域、注意区域、安全区域からの入境者が色で識別でき、健康チェック・問診の漏れを防ぐことができる。

製造業でも同様の識別管理をする。
例えば、出荷抜き取り検査で不良が見つかってしまい、全数検査をすることになった。この場合再検査漏れがあれば、顧客に不良流出のリスクが発生する。
検査済みの製品を再検査すれば、不必要な検査コストが発生する。
これらを防ぐため、未検査品置き場、検査済み品置き場を分離し、表示する。
または梱包箱に再検査済みのマークをつける。などの識別管理をするはずだ。

厚労省関係の職員は感染の恐怖の中、国民を守るために働いてくれている。
私には彼らのミスを責める気にはなれない。むしろ失敗をきちんと公表した「勇気」を賞賛したい。


このコラムは、2020年2月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第946号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

新型コロナウィルス

 失敗と言えるかどうか判断しにくいが、新型コロナウィルスに対する対応の日中の差を考えて見たい。

「屋形船の従業員ら2人の感染確認 10人が発熱など症状」(朝日新聞)によると、タクシー組合の新年会には約80人が参加し、このうち約10人に発熱などの症状があるとでていた。中国で起きていることを「対岸の火事」としか考えていないのだろう。

2月12日の羽田発広州白雲行きのJAL便で中国に来ている。搭乗機の機内には十数名の乗客しか乗っていなかった。そのほとんどが中国人旅客のようだった。広州白雲空港に到着して驚いた。いつも大勢の人が入国審査に並んでいるが、私の前には1人しかいなかった。いつも利用している空港バスもガラガラ。

羽田空港で体温測定を受けてから白雲空港で2回、バスに乗車する時に1回、高速道路を出たところで1回、地下鉄に乗車する時1回、マンションのゲートをくぐる時に1回、合計で6回体温測定をした。

入国審査の時に、問診票を提出する。これにより過去2週間の滞在場所、健康状態、中国での滞在先、電話番号、機内の座席番号がパスポート番号とともに記録される。空港バスでも同様の記録が取られる。同じ機内、同じバスに乗車した人が発病したら、同乗者は全員隔離できることになる。

食事のために街に出るが、飲食店は全て店内での営業を停止している。食事はウーバーイーツと同様の宅配バイクで届けられる。配達員はマンションの敷地内には入れず、ゲート前に置かれたテーブルまで届ける。
「新年会」など中国ではあり得ない。

食料を買い込むため近所のスーパーに出かけた。ここでも体温測定と、手の消毒をしてから店内に入る。買い物客は全員マスクをしている。(マスクを着用せず外出すると捕まる)その上防護メガネをし、ゴム手袋に透明な雨合羽まで着用している人も見かける。

日本より中国の方が安全ではないかとさえ思える。

さらにすごいのは、当局は人の動線を携帯しているスマホのGPS機能を使い補足しているようだ。知り合いの工場に突然係官が来て、帰省先から戻ったばかりの従業員2名を隔離施設に連行した。この従業員2名は湖北省に滞在していた訳ではない。湖北省内の高速道路を通過しただけだ。

別の工場では、従業員に支給するマスクが足りないと嘆いている。毎日係官がマスクの在庫をチェックしにくる。誤魔化すこともできない。

日本で同じことができるとは思えないが、中国政府の本気度が伺える。


このコラムは、2020年2月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第943号に掲載した記事です。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】