エアーバックの回収問題、杭打ち作業のデータ偽造問題などが、社会的にも大きな問題になっている。過去にも品質クレームがきっかけで廃業した牛乳メーカがあった。
一方、1件の異物混入事故で全数市場回収・生産停止をした焼きそばメーカの事例も記憶に新しい。このメーカは事故発生後すぐに生産設備の刷新を決断している。その間市場からは自社製品が消えてしまう。通常ならば消費者から忘れられてしまい、生産を再開しても売り上げは激減してしまうだろう。
しかし事態は逆だった。生産停止期間中も、消費者から激励のメールや電話があったそうだ。生産再開後は以前よりも市場占有率を上げた。
品質クレームをきっかけとし社会的信頼を失ってしまい、倒産してしまう企業、品質クレームがあっても、顧客が離れない企業との違いは何だろうか。
もちろん熱狂的なファンがいる事も要因だろうが、品質クレームに対する処置・対応の差が重要要因と考えている。この違いで、一方は倒産、一方はシェアアップと雲泥の差が付く。
前職時代にこんな経験をしたことがある。
あるお客様向けの、内蔵電源を受注した。
第一ロットの生産が完了し、出荷判定会議を開催した。出荷判定合格の基準を全て満たしていたが、工程内不良0.7%が全て同一部品による不良であった。しかし不良原因は、部品メーカにて解析中でありまだ不明。このため出荷判定不合格とした。
しかし、出荷を止めれば顧客から納入遅延クレームをいただくことになる。
工場には、該当部品を全て(検査良品も)セカンドソース部品と交換、再検査、全検査データで工程能力の再計算をした上で出荷準備をしておく様に指示をし、翌日顧客に、事情説明とお詫びに訪問した。
当然叱られると思い、技術部長も帯同した(同じ叱られるなら2人の方が若干でも心強いと思った・笑)
しかし出荷停止の説明をした後、腕組みをしていたお客様から信じられないお言葉をいただいた。
「さすが横河さん。御社にお願いして正解でした」
実はこのお客様は、従来から電源は自社設計する事に決めており、外部に設計を含めて委託する事は初めてだったそうだ。しかし電子回路設計者が、ディジタル回路にシフトしてしまい、電源設計者が減少。従来の設計を伝承しながら製品化していたが、基本設計が古くコストダウンが思う様に出来ない。そのため同じ業界の競合他社にも電源を供給している前職の会社にオファーをいただいたようだ。
初めての製品で、第一ロットから納期遅延。当然信頼を失っても仕方がない場面だが、逆に信頼を得る事が出来た。
これは正しい処置と対応が出来たからだと考えている。
実は周辺装置のプロキュアメントエンジニアだった頃から品質保証を担当した期間、相当の修羅場を経験して来ました(笑)
第八回品質道場「顧客クレーム対応」では顧客クレームに対する処置・対応に関して私の経験をお伝えします。
このコラムは、2015年11月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第450号に掲載した記事に加筆したものです。
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