日本経済新聞の電子版に「反日だけでない中国リスク 人手不足で品質低下が顕著」と言う解説記事がでていた。
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電子製品の組み立てをしておられる方には、この記事が参考になると思う。
記事の解説を要約すると、
「反日」という政治リスクによる、日本製品の買い控えが日本メーカに脅威をもたらしているが、もう一方で、生産委託先の中国工場の品質低下が深刻な影響を与えている。その主要因は、人手不足による熟練工の不足だ。
確かに、機械加工など技能工による作業が中心の生産は、作業員の熟練度が、直接製品品質を左右することがある。
しかし記事の事例として上がっていた電子製品の組み立ては、比較的単純作業が多く、かつ製品検査を機械化出来る割合が多いので、それほど作業員の熟練で出荷品質が左右されることはない。
確かに、電子製品の高機能・小型化に伴い、プリント基板の実装密度向上、微細化が半田付け作業を難しくしている。しかし半田付け作業は、正しい方法で訓練すれば、2、3日で作業が出来る様になる。
更に、工程内不良が後工程に流出してしまうのも問題だ。
例えば、半田手直し作業が完了した製品を、工程の何処に復帰させるか、をきちっと検討するだけで、流出が防げる。
プリント基板の割り代取り忘れなどは、簡単な治具を用意するだけで、次工程流出を防止出来る。
通常は、プリント基板アッセイ単体状態でICT(インサーキットテスタ)検査を実施する。上記の半田付け手直し作業による不良のほとんどは、ICTで見つかるはずだ。ICTで検出不可能な不良モードを見つけたら、検査方法を改善する。
ICTの変更では検出不可能と分かれば、代替え検査を検討する。この様な努力を継続しなくてはならない。(本来こういう作業は、量産開始前にFMEAを実施し、先に潜在する問題をつぶしておく)
2000年当初、中国の生産委託先工場(台湾系企業)に生産委託をした電源製品(部品点数200点弱の小型アダプター電源)は、生産開始翌月から工程内不良が100ppmを切った。検査がうまく出来ていなくて工程内不良率が低かった訳ではない。この製品は顧客、市場からの不良返却は数ppmだった。
この製品は自社工場で先に生産を立ち上げており、3ヶ月の初期流動期間に発生した工程内不良を、即フィードバックし設計変更、工程変更を繰り返した。その結果、生産委託先に移管した当月から工程内不良率が100ppm台、翌月から100ppm未満となった。
若年労働者の製造業離れ、仕事に対する忍耐力不足などにより、作業員が定着しないことが主要原因の様に捉えられているが、本当にそうだろうか?
2000年前後にも、作業員の流動性は高かった。
確かに当時の作業員の「忍耐力」は抜群に高かった。それは彼女たちに「家族の生活を支える」という大きな使命を持っていたからだろう。当時は工場経営者は特に彼女たちの労働意欲を高める努力をしなくても、労働者が自ら労働意欲を高めた。その結果、少しでも賃金の良い工場にすぐに転職して行った。しかし募集をすれば、すぐに出稼ぎ労働者を集めることができた。
非常に楽に労務管理が出来た訳だが、これが続くはずはない。
努力すべきことは努力する。工夫すべきことは工夫する。
これが本来の経営だろう。
このコラムは、2012年12月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】288号に掲載した記事に加筆修正したものです。
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