月別アーカイブ: 2010年10月

第五章:経営はアイディア

伝説の経営者・原田則夫の“声”を聴け!
工場再生指導バイブル

原田氏は生前,経営には独自性とアイディアが必要だと,よくおっしゃっていた.その原田氏自身も,天虎電子,ソニー恵州,SOLID社の経営で,過去に成功した同じ手法を使うことを封じていた.
企業再生のアイディア
企業を再生させる場合,自分のやり方に付いて来られる人と力を合わせる必要がある.自分のやり方に反対意見がある者や,旧経営者と一緒に再生改革をするのは大変困難だ.
特に倒産の危機に瀕している企業の経営幹部が,再生に居残っているというのは,自分に経営責任があったという自覚に欠けており,大きな抵抗勢力となる.
原田氏は,着任直後このようなオーナー親戚すじの旧経営幹部を一掃している.これが再生の第一歩であったのだが,ここではこんなアイディアを発揮した.
オーナー一族の経営幹部をまず一つの大部屋に集め,仕事をさせなかった.そのまま2,3ヶ月経った時に「あなたは,優秀な方だから,他の仕事を探してもっと能力を発揮してはどうか」と一人ひとり説得した.そしてその後に一言「万が一仕事が見つからないようなことがあれば,この会社はあなたのための机を用意しておくから,遠慮なく戻ってきてくれ」と付け加えた.この一言で誰一人戻ってくる者はいなかったそうだ.
人のプライドを理解したアイディアだ.
人材採用のアイディア
2004年原田氏は,会社案内のVCDを制作している.当時ソニー専門のOEM工場だったので,顧客拡大のために会社案内を作る必要はなかったはずだ.実はこのVCDは,従業員の両親に配布するために作ったのだ.
田舎の両親は,わが子が働く会社の案内を見て,すばらしい会社で働いているのを知り安心する.出稼ぎに出かけた子供が,ホームシックにかかり両親に電話すると,せっかく良い会社には入れたのだからもっとがんばれと励ます.更に隣近所にVCDを見せて自慢をする.隣近所の人たちも,そんなに良い会社ならば我が子も出稼ぎに出したいと思うだろう.
従って原田氏は作業員の採用には,まったく困っていなかった.ほとんどが従業員の紹介で足りていたのだ.
このアイディアはその後も,社内報を両親に届けるという形で継続していた.
新人教育のアイディア
ひところ台湾資本の大手EMSで,自殺騒動が連続発生し,話題となった.SOLID社ではそのような事件は発生したことがない.
なぜ就職して半年も経たない若者が,相次いで自殺をしてしまうのか?卒業して間もない若者が,いきなり都会に出てきて,孤独感と仕事に対する不安が,自殺の大きな要因となっていただろう.
原田氏は,進入従業員が,孤独や不安を持たないようにするアイディアを制度に落とし込んでいた.
新入社員は,一週間新人研修を受ける.この研修の講師は,去年入社の従業員だ.歳が近く新人は講師に親近感を持つ.講師は新人の気持ちを理解しており,新人の身になって教えることが出来る.
また入社後3ヶ月間は職場の班長・組長と毎日日記を交換する.この日記により班長・組長は新人が悩んでいることや心の動きを,察知しすぐにフォローする.
これらの仕組みが,職場の中でコミュニケーションを発生させる.
他にも「手拉手」「心連心」という,一人が皆を思いやり,皆が一人を思いやる仕組みがある.
経営者は,このような優れたアイディアをすぐに取り入れるフットワークと,それを自分の組織に合う様に進化させる独自性のあるアイディアを,持たなければならない.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2010年12月号に寄稿したコラムです.
原田式経営哲学勉強会を開催しています.
詳細は,ブログ:原田式経営哲学をご参照ください.

第四章:経営はレンズ遊び

伝説の経営者・原田則夫の“声”を聴け!
工場再生指導バイブル

組織を活性化し再生するには,全従業員の熱いココロが必要だ.原田式経営哲学では,これを「レンズ遊び」にたとえる.経営者が太陽,管理者がレンズの役割をし,従業員のココロに火を点けるのだ.
レンズ遊びと経営
あなたも,小学生のころレンズ遊びをしたことがあるだろう.太陽光線を虫眼鏡で収束させ,紙を燃やす遊びだ.
原田氏は,しばしば経営をレンズ遊びにたとえて話をされた.つまり社長が太陽.管理職がレンズ.レンズで太陽の光を集め,従業員のココロに火を点けるわけだ.
当然太陽の光は強いほうが良い.夕方の太陽よりは,正午の光の方が強い.レンズも大きい方がたくさんの太陽光線を集められる.白い紙より,黒い紙の方が,熱を吸収しやすく早く火が点く.更に重要なのは,正しく紙に焦点を当てることだ.
社長の光
社長の光とは,従業員のココロを照らし,未来を照らす光だ.希望のある未来を照らす強い光であるべきだ.
人は時に,晩秋の黄昏の光の中で物思いにふけることも,必要かもしれない.しかし社長の光は,常に明るく,力強い希望の光ではなくてはならない.
つまり社長の光とは,企業の経営理念であり,長中期の経営目標そのものだ.
業績が上がらない,経営の問題で悩んでいる時も,意気消沈光線を発してはならない.従業員の前では,常に笑顔で希望の光を発するべきだ.
社長は苦しい時でも明るい笑顔でいる.そのために他の従業員よりも多く給料を貰っているのだ.
管理職のレンズ
従業員が100人くらいまでならば,その隅々まで社長の光で照らせるだろう.例えば,忘年会で一人ずつ乾杯をしても酔いつぶれない人数が限度だろう.
組織の中には,社長の思いを増幅する中間管理職が必要だ.組織を劇団にたとえるならば,座長が,脚本,演出,主演俳優を兼ねることは出来る.しかしそれを続けていたのでは大きな劇団にはなれない.ナンバー2,ナンバー3を育て,脚本,演出が出来るようにする.主演も自分でやらなくても良くする.
社長の仕事は,業務を全部社員に任せ,5年後,10年後を考え,それを社員に示すことだ.
それを可能にするのは,管理職だ.彼らが一人ひとりの従業員に,正しくレンズの焦点を当てられるように鍛える.
従業員のココロに焦点を当てる
光はそのままでは熱にならない.物質が光を吸収し,光エネルギーを熱に変換して初めて火が点く.
笛吹けど踊らぬ従業員.そんな焦燥感,徒労感を持っている経営者も多いだろう.ましてや,日本から離れ異郷の地で,外国人を部下にしているのだ.
異文化の中で育った従業員に「一発点火のココロ」を持ってもらうためには,共通の価値観を軸にする必要がある.この価値観を求心力とする.
ひとつは金銭.これは万国共通で分かりやすい.しかし金銭以上に有効なのは「成長意欲」「達成感」だ.仕事の成果は「自己成長」と「達成感」であり,更に高度な仕事へのチャレンジ権を与えられることだと理解させる.それで「自己成長」と「達成感」は更にスパイラルアップする.その結果,金銭的報酬が与えられる.
これを,光の焦点を従業員のココロに正しく当てる仕組みとする.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2010年11月号に寄稿したコラムです.
原田式経営哲学勉強会を開催しています.
詳細は,ブログ:原田式経営哲学をご参照ください.