月別アーカイブ: 2019年9月

異業種交流活動

 先週は、東莞の日系時計メーカ様で第四期QCC道場の成果発表会を開催した。
仕入れ先のメーカを巻き込んでQCC活動を実践している。今回は自社サークル2チーム、仕入れ先3社から3チームが参加し、合同でQCC活動を行なった。

既に4回目となり私はほとんど教えることはない。各チームが互いにコメントしあいながら進めている。第一回期の活動で年間効果金額350万元を叩き出したチームがあった。活動が進むとその様な大きな改善テーマは残っていないが、各チーム安定して成果を出し続けている。

何より課題発見、活動手法、プレゼンテーションのレベルが格段に上がった。
メンバーの成長が最も大きな成果だと考えている。QC手法を使いこなす、課題を発見する能力ばかりではなく、積極的に取り組む行動力が上がっている。

今回の総評では、もっと統計的手法を使おう、と檄を飛ばした。
もう30年ほど前になるが、前職時代に関連会社のシックスシグマ発表会を参観する機会があった。製造部門の成果発表で「効果をχ自乗検定で確認」と発表しているのを聞いて、両腕に鳥肌が立った。以来QC手法だけではなく統計手法も積極的に使うべきだと考えている。

今回参加したチームは皆χ自乗検定を使うことはできる。しかし質問されると答えられない、などの理由で遠慮している様だ(笑)
なぜポアソン分布になるのかなど説明する必要はない。そういうもんだと理解していればいいのだ(笑)「使ったもの勝ち」の図々しさを発揮して良い(笑)計算そのものはExcelがやってくれる。間違わずに手法を適用すれば良いだけだ。

ホランティアで支援している東莞和僑会では、参加企業の中国人幹部の改善能力向上を目指して、改善交流会を開催している。こちらも異業種合同で学び合い教え合うことにより参加者の成長を狙っている。

東莞和僑会「改善交流会」

今後は現場改善だけではなく、工場経営者も異業種交流を進める必要があると考えている。市場の要求が大きく変わっている。業界内に閉じこもっていてはジリ貧を待つことになるだろう。


このコラムは、2019年8月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第861号に掲載した記事に加筆したものです。

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君子は義に喩る

yuē:“jūn(1)(2)xiǎorén(3)。”

《论语》里仁第四-16

(1)喻:理解する。敏感である。
(2)义:正義。道理。
(3)利:利益。損得。

素読文:
子曰わく:“君子はさとり、小人はさとる。”

解釈:
子曰く:“君子は物事を道理に照らして判断する、小人は物事を損得に照らして判断する。”

稲盛和夫氏がKDDIを創業する際に「動機善なりや、私心なかりしか」と自らに問うたそうです。孔子のいう「義」「利」と稲盛氏の「善」「私心」は相通じるものがあるように感じます。

経営チーム

 企業経営をするのは経営者である、というのが一般的な理解だろう。
・経営理念をつくる
・経営計画を作り経営目標を作る
・経営目標を達成するための施策を考える。
・定例の経営会議で経営目標の達成度をレビューし、対応を指示する。
こういう仕事を一人でこなさなければならない。激務であり、心理的負担が大きい。そういう中で目標を達成し、業績を上げる。これが経営者冥利ということだろう。

以前お手伝いした企業の中国工場総経理は、自分は雇われ社長なので経営理念を作るのは自分の役割ではない、と遠慮しておられた(笑)3年近く説得して中国工場の経営理念を作っていただいた。そのあと中堅幹部までに、経営理念を説明。幹部・中堅幹部一人一人が各自その理念を実現するためのコミットメントを発表した。
メンバーの一体感が向上し、積極性が上がった。当然それは業績として目に見える形となる。

経営者が孤独に経営するより、経営チームとして経営する方が達成感が大きい。
経営者が孤独に祝杯を上げるより、プロ野球の祝勝会でチーム全員でビールかけをした方が達成感は大きいはずだ。メンバーの成長をメンバーと共に実感する喜びがある。自分一人の成長より、メンバーの成長の方が翌年以降の業績への貢献は大きいはずだ。

昨年から準備してきたプロジェクトがそろそろ開始する。
今回のプロジェクトでは、今までバラバラだった経営幹部の気持ちを一つにし、チームとして経営が可能なレベルにする。経営チームで企業文化を作り、業績を上げる。そんなプロジェクトになる。


このコラムは、2019年7月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第846号に掲載した記事に加筆したものです。

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5Sを継続させる方法について

メールマガジンの読者様からご相談のメールをいただきました。

※N様のご相談
 中国工場の総経理として赴任して3年目になります。 日本で仕事をしていた時は、特に5Sと言わなくても、皆がきちんとやっていてくれました。しかし中国では、毎日「5S!」とうるさく言ってもなかなか、思う様に浸透しません。本社の役員が出張に来るたびに、叱られています(苦笑)
中国人に5Sをきちんとやらせる事は不可能なのでしょうか?
上手くやるコツなどがあればぜひご教授ください。

現場を拝見していないのでどの程度なのか分かりませんが、文脈から判断すると日本と比較して悪い、と言う事だろうと思います。

まず一番目のご質問、中国人に5Sをきちんとやらせるのは不可能なのか?

私はそうは思っていません。5SやTPMに力を入れておられる日系工場で、すばらしい工場があります。指導者は日本人ですが、実践しているのは中国人です。
中国人経営者の工場で5Sに取り組んでいる工場もあります。
後者の工場では、頻繁に工場を見学に来る人があるようで、現場の班長さんが自信を持って自分たちの5Sの取り組みを説明していたのが印象的でした。

きちんと指導すれば、中国人にも5Sは理解出来るし、実践出来るはずです。

5Sをきちんとやるコツをお話する前に,なぜ5Sが上手く浸透しないのかを考えてみましょう。

上手く行かない典型的な例は、以下の三つのパターンです。

  • 経営トップや経営幹部が、自ら5Sに取り組んでいない。
     従業員は経営トップや幹部の事をよく見ています。上層部が本気でないと感じると、従業員は真剣に取り組みません。経営トップが本気である事を示し、幹部が率先して5Sに取り組む姿勢を見せる事が大切です。
    例えば、5Sを導入宣言したその月に,倉庫にある不動在庫をごっそり捨てる、位の事をやらなければなりません。
    当然、不動在庫の廃棄はコッソリやるのではなく、従業員全員が見ている所で、セレモニーとしてやります。廃棄の痛みと、それでも廃棄する意義をしっかり教えて,それを見せるためです。
  • 5Sの意義をきちんと説明していない。
     よくある例ですが、「掃除なんかしている時間があったら、仕事をします」と言う従業員がいます。または「今は忙しいので5Sは後回し」と言う幹部がいます。これは5Sの意義を理解していないからです。だらだらと時間をかけて掃除をするのが5Sではありません。
    5Sの意義と、それが自分にどんなメリットになるのかを、きちんと理解してもらわねばなりません。
  • 5Sの基準を示していない。
     作業も仕事も,基準が示してあるはずです。何処までやれば合格なのかを示さずに仕事を依頼すれば、仕事を受けた方は勝手に判断するしかありません。掃除をしろ、と指示をしても合格レベルを示さなければ、何処までキレイにすれば良いか判断出来ません。「掃除をしたつもり」で終わってしまいます。

5Sが上手く行かないのは、この三つのパターンに当てはまる事が、あるのではないでしょうか?これを排除しておけば、良いのです。

そして最後にもう一つ重要なコツをお伝えします。
簡単な事ですが、ここを見落としている人が多くいる様に思います。
それは「楽しくやる」ことです。

なんだぁ、と思われるかもしれません。しかしすべての事は人のココロから始まっています。楽しくなければ継続出来ません。
5Sとは整理・整頓・清掃・清潔を通して躾をする事です。
躾とは、正しい行動が出来る様にココロを整える事です。そうすれば行動は習慣となり、習慣が文化を創ります。これが5Sの目指す所です。だから5Sをやっている人たちのココロを忘れてはいけません。強制だけでは躾は出来ません。楽しみがなければ上手く行きません。

これはすべての「組織運営」に共通の事だと考えています。


このコラムは、2013年9月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第328号に掲載した記事に加筆したものです。

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安全不良

 安全不良と言うのは、不良により顧客の生命・財産の危険が発生するリスクがあるモノを言う。自動車に関しては、外観不良以外全て安全不良であると、言えるかも知れない。

電気製品では、感電、火災のリスクが有る不良は、安全不良となる。
安全不良に関しては、製造現場だけではなく、顧客も神経質となる。

例えば、電源装置の耐圧不良は安全不良となる。以前指導していた電源工場は、耐圧試験機の検査NG信号を利用して、耐圧試験が出るとサイレンが鳴り、ラインが停止する。同時に品証、生産技術のオフィスのアラーム灯が点灯し、エンジニアが1分以内に現場に駆けつける、と言う仕組みを作っていた。そして耐圧不良の原因が波及性が無いと判断出来るまでラインは再開出来ない。

例えば、一次評価で耐圧不良の原因がトランスだと判明すると、更にトランスの不良原因を解析する。トランスを分解して原因を見つけるまで調べる事になる。トランスの場合は、全数仕入れ先工場で耐圧検査をしているはずなので、原因が分かったとしても、その仕入れ先のトランスの使用は凍結する。もし代替え品がなければ、仕入れ先に返却したトランスの再検査が終わるまで生産が止まることになる。

こんな事がしばしばあっては堪らない。
従ってトランスメーカの採用監査は厳重になり、問題が発生していなくても最低年に1回は定期監査に行くことになる。一種の予防保全だ。
ここまでやっておくと、現役時代から10年間9社の電源メーカを指導したが、トランスによる工程内耐圧不良は1度しか記憶にない。(この時は相当酷い目に有ったが・苦笑)


このコラムは、2014年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第403号に掲載した記事に加筆したものです。

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水野氏が台湾の自動車メーカーへ!その意図とは!?

 2014年12月12日、東京・品川のTKPガーデンシティ品川において「華創日本株式会社」の発足発表会が開かれた。

この華創日本(かそうにほん)株式会社の代表取締役・最高執行責任者(COO)に、あの“ミスターGT-R”と呼ばれGT-Rの開発責任者を務めた「水野和敏」氏が就任したというのだから驚きだ。

華創日本株式会社は、台湾の「HAITEC(ハイテック)」と呼ばれる自動車技術開発会社の日本部門「HAITEC JAPAN」の開発窓口として設立された。HAITECとは「ITと自動車の結合」を目的とした会社で設立は2005年。

「htc」や「ASUS」「acer」などの台湾のIT系企業と「裕隆グループ」など自動車系企業の両面から出資を受けている。なお、水野氏はHAITECの車両開発担当 副社長にも就いている。

なぜ、水野氏は台湾の会社の取締役へ就任したのか。それについて、水野氏は「“日本・台湾圏”という、車両開発における新たな『アジア圏』を構築したい」とする。

全文はこちら

(オートテックワンより)

 水野和敏氏は日産で数々の名車を作り出した開発エンジニアだ。日産での彼の仕事の集大成がGT-Rだったのではないだろうか。エンジニアが「やりたい放題」で楽しんで作った車だと思う。

その水野氏が日産を定年退職した後に台湾企業に、迎えられると言う。
日本の五大紙はこの大ニュースを全く報じていない様だ。(検索をしても全くヒットしない)半導体技術の流出と同じレベルで捉えているのではなかろうか?

水野氏が考えている事は、そんな小さな事ではない。

日本が世界の自動車産業をリードして行けるか?
トヨタが、販売台数世界一になっても、売上高世界一になっても、それが10年続くのか?と言う問題提起だ。
100万円台の車を新興国でたくさん売っても、それはすぐにでもキャッチアップされる。電気自動車の普及はそれを加速するだろう。電気自動車では従来の自動車企業が持っていた優位性は無くなる。
普及品をたくさん売っているだけでは、価格競争の波に飲み込まれ、未来への開発投資が確保出来なくなる。それは未来の収入が無くなる事と同じだ。

そのためには、300万~500万円の高級車ゾーンでシェアをとらねばならない。開発にかかる投資は、100万円の車でも500万円の車でも大差はない。この価格帯で成功しているのは、ドイツのメーカだ。彼らは自国で未来の開発
をするとともに、東欧で今日と明日の開発をしている。米国ではメキシコとの協業が進んでいる。

(余談だが、広西省のGMには、本社からクレイモデル作成や、試作評価のエンジニアが赴任して来ていた。彼らは中国で設計開発する事も視野に入れていると考えた方が良さそうだ)

では日本はどうするか、水野氏の答えは台湾企業との協業だ。

そのために、“クルマの造り方”と“開発の仕方”。つまり「クルマを作る思考」そのものを作る仕事、「思考作り」を第二の人生の仕事としたのだろう。

別の記事の中で、水野氏はこう言っている。

俺はこの話があったときに向こうの会社に行って、コアメンバーを、200人くらいいたかな。みんな集めてもらった。そして全員の前で、「みんなに聞きたいことがある。これからも日本車や韓国車と競合するようなクルマで満足するのなら、悪いけど俺はここへ入らないよ。みんなが本気になって、欧州のトップブランドと真っ正面から張り合う気があるのなら、俺はこの会社に来る」と言ったんだ。「今ここで決めてくれ。水野がここで仕事していいのか、それとも水野なんか要らなくて、今まで通り自分たちのやりかたで仕事をしていくのか!」、と。

水野氏の問いかけに対し、台湾のエンジニア達は、日本が自動車先進国であることは百も承知している。そしてヒュンダイあたりが安くてバリューのいい車で世界に打って出ていることも意識している。じゃあ、俺達台湾勢はいったい何を作ったらいいんだという迷いが吹っ切れ「一緒に世界を目指そうぜ」と言うことになったそうだ。

これは自動車産業だけの話ではなかろう。
最近低迷している日本の電気・電子産業にも同様の事が言える。

開発が停まれば、未来はない。今日明日の食い扶持を稼ぎながら、未来に投資する戦略を考えなければならない。


このコラムは、2014年12月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第403号に掲載した記事に加筆したものです。

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時間を味方にする

 人には、生まれて来てしまった国の差があり、貧富の差がある。
社会や家族に守られて育つのと、まずは生き延びる所で戦わなければならない生き方では、天地の差がある。

人にとって時間だけは、人種、貧富の差に関係なく平等だ、と良く言われる。しかし時間にも、富める者と貧しい者がある。富める者にも貧しい者にも、一日24時間という時間は公平にある。しかしこの時間の使い方で「時間長者」「時間貧者」の違いが発生する。

つまり時間を味方に付けた者が「時間長者」となり、時間に追われている者が「時間貧者」となる。

毎日コツコツと継続して来た者は、一年後には他者が追いつけない所にいる。
その努力を継続すれば、一年後に来た者は二倍の努力をしなければ、一年で追いつけない。

逆に言えば、時間を二倍の効率で使う工夫が出来る者は、継続により更に大きなアドバンテージを築く事が出来る。

例えば創業100年の企業が,毎日毎日積み上げて来た信用は、参入障壁となる。

時間を味方に付けるとは、継続する事と、時間を有効に使う事だ。人も企業も一瞬には育たない。毎日の継続が勝負だ。

ある地方都市の商店の三代目は、自分が経営者になった時に、街中の人から祝福された。それは祖父に当たる創業者が、災害時などに街の人々を救う徳を積んでいたからだ。人々は口々に、あなたのおじいさんには世話になった、困ったことがあればすぐに助けにくると言ってくれたそうだ。

今日明日の利益を追わない、10年後、20年後、100年後を考えて時間を使う。孫の代に、その結果が戻ってくる。
100年、200年の単位で事業を考えることができる人は、業界を変える事が出来る。


このコラムは、2013年9月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第328号に掲載した記事に加筆したものです。

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君子は徳を懐う

yuējūn怀huái(1)xiǎorén怀huái(2)jūn怀huáixíng(3)xiǎorén怀huáihuì(4)

《论语》里仁篇第四-11

(1)怀:思念する
(2)土:郷土
(3)刑:法的罰則
(4)惠:物質的利益

素読文:
わく:“くんとくおもえば、しょうじんおもい、くんけいおもえば、しょうじんけいおもう。”

解釈:
君子は徳を磨く、小人は土地に執着する。君子は規則を重んじる、小人は恩恵に執着する。
小人は居心地の良い土地で安楽に暮らすことを願う。
君子はどんな環境にいても徳を磨く。徳を磨くために故郷を出て修行することもあるだろう。
君子は規則を重んじるが、小人は規則をすり抜けるために『関係』を重んじる。

下村湖人の解釈は少し違っています。
「上に立つ者がつねに徳に心がけると、人民は安んじて土に親しみ、耕作にいそしむ。上に立つ者がつねに刑罰を思うと、人民はただ上からの恩恵だけに焦慮する」

つまり君子が徳を磨けばその民も栄えるが、君子が刑罰で統治しようとすると民は刑罰を逃れようとする。
外発的動機付け(罰則や報奨)を使った統治では民は幸せにはならない、ということになるでしょう。

遣り甲斐と働き甲斐

 毎月定例で「東莞和僑会」を開催している。東莞を中心とし、香港、深セン、広州からも参加者が有る。工場見学会や、講師を呼んで勉強会を開催して来た。
4月から、少し方向を変更し参加者の問題や課題を自分たちで話し合う交流会形式を取り入れている。居酒屋に集まったメンバーで侃々諤々やる訳だが、話題が「軟らかい」方向に片寄らないだろうか、と言う当初の懸念は全く外れた(笑)かなり本質的な問題や課題を、真面目に楽しく語り合っている。

5月の交流会では、従業員に「遣り甲斐」とか「働き甲斐」を感じてもらう為にはどうしたら良いだろうか?と言う議論をした。

従業員が遣り甲斐、働き甲斐を持って仕事に取り組めば、当然仕事の効率は上がり、成果も大きくなるはずだ。

個人的には「遣り甲斐」と「働き甲斐」の違いはどこに有るのか、其々中国語では何と言えば良いのか、に興味が有る。メンバーの問題意識は更に高く、修辞的な問題を越えて実践的な問題・課題に話が集中した。

そんな議論を通して自分なりに考えたことをシェアしたい。

辞書を引いてみると、
遣り甲斐:物事をなすに当たっての心の張り合い。しがい。
働き甲斐:働くことによって得られる結果、喜び。働くだけの価値。
と出ていた。

どちらも心の状態を指す言葉の様だ。仕事にフォーカスした遣り甲斐が働き甲斐と言っても良かろう。
行動に伴う心の充実状態を遣り甲斐、働き甲斐と言い、その集大成が生き甲斐と言う「あり方」に伴う心の充実状態になる。と、こんな定義を考えてみた。

では、働き甲斐はどこから来るか。

  1. 職場における信頼関係
    信用されている。相互に尊敬しあう関係に有り、尊重されている。
    コミュニケーションが活発。組織が公正である。
  2. 誇り
    自分の仕事が顧客、社会、会社、仲間に価値を与えてると実感出来る。
  3. 連帯感
    自分は組織に支えられており、自分も組織を支える存在であると言う
    一体感を実感出来る。
  4. 成長実感
    仕事を通して自己成長を実感出来る。
    1. もっと有りそうだが、基本的なことは上記の4つではなかろうか。
      この4つを実感出来る組織を作ることが、経営者や経営幹部の役割だ

        働き甲斐を感じていない人。

      • 自分は恵まれていない。上司や職場環境のせいでやる気が出ない。
      • 製造部門の品質意識が低いから、今日も顧客クレームが来た。
      • 「尻拭い」の仕事はうんざりだ。
        働き甲斐を感じている人。

      • 自分は恵まれている。上司からは信頼され、仕事を任されている。
      • 困っている顧客を助けている。
      • この仕事に意義を感じている。

      どちらの従業員のパフォーマンスが高いかは一目瞭然だ。
      あなたも働き甲斐が高い職場をどうすれば実現出来るか考えていただきたい。
      メルマガ上でも意見交換が出来ればと思っている。


      このコラムは、2015年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第427号に掲載した記事に加筆したものです。

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自己都合・顧客都合

 サービスや商品を顧客に提供しその対価を得る。簡単に言ってしまえば、これが企業活動の基本だ。
この基本活動を、供給者側の自己都合でやるか、顧客都合でやるかで業績は全く変わってしまうと言うのが、私の持論だ。しかし供給側の自己都合による企業活動が横行している様に思える。

例えばスーパーマーケット。「売り場」と言う概念は自己都合だ。「買い場」と言う概念を持てば、顧客都合に近づく。中国のスーパー(カルフールやウォールマートなどの外資系も含む)は、特設売り場を作るのは、営業時間中だ。通路の中央に特設した売り場の商品を入れ替える、こういう作業を混雑している時間帯に平気でやる。回収する商品、新しくディスプレイする商品を通路に並べ作業をする。当然買い物に来られたお客様は通路を迂回することになる。

10年間観察した経験によると、中秋節の夕刻7時頃が一番すごいことになる。
展示してあった月餅の売れ残りを一気に撤去し、別の商品を陳列する作業が始まる。月餅の販売は中国の重要な季節行事である為、どのスーパーも大量の月餅を展示販売する。これを一気に撤去し別の商品に入れ替えるのだから、混乱の極みとなる。
なぜそんなに急がねばならないのか理解に苦しむ。中秋節の夜にスーパーに行くと月餅はキレイに無くなっている。全て売りつくされたのではなく、夕刻に撤去され「何処かへ」搬送される。

こういうのを「自己都合」によるサービスと言う。
「顧客都合」で販売出来る様になれば、売り上げは増加するはずだ。

工場でも同じだ。
お客様の注文量よりたくさん生産して在庫しておく、と言うのは「顧客のため」に見えるが、様々な「自己都合」が隠れている。例えば、段取り替えに時間がかかり生産効率が悪いのでまとめ造りをする、などの自己都合だ。顧客都合で生産が出来る様になれば、生産性は相当上がるはずだ。


このコラムは、2015年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第433号に掲載した記事に加筆したものです。

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