カテゴリー別アーカイブ: 生産改善

作業に計画性を与える

 先週は以前指導をしていた工場に呼ばれ,訪問指導に出かけた.
3年近く経っているが,中国人幹部,現場のリーダ等当時指導したメンバーがたくさん残っており,楽しい仕事だった.

以前の指導で,生産に使用した部材ロットをトレースする仕組みを導入した.それがうまく機能していることを確認するために,部材倉庫を見に行った.三年経ってもきちんと運用が維持されていた.

部材倉庫で,出庫のためにキッティング作業をしている作業員を見かけた.キッティングとは,出庫部材を部品払い出し伝票に従い,倉庫の棚から集めて回る仕事である.
作業員が部材を集めて回っている台車に積まれた部品梱包箱の積み方が気になった.小さな箱の上に,大きな箱が積まれ不安定だったのだ.

こういう状況を見ると,即その場にいた作業員やリーダを集めて指導が始まる.

払い出し伝票を受け取った時に,すぐに部品を集めに回らない.
まず伝票を見てどう回れば,効率よく部品が集められるか考える.
この時台車に載せた部材の箱を並べなおすようでは,まだ事前の考える力が足りない.
毎日の仕事を通して,自分の頭を訓練しなさい.と指導をした.

まず彼らには,部材を不安定な積み方をして運搬した時のリスクに気がつく感受性を持ってもらわなければいけない.その上で,台車には下から順に大きなものから乗せなさい,と指導をするのは簡単だ.しかしそれでは不十分だ.
彼らは部品をピックアップするたびに台車の箱を積み替えしなければならない.こういう指導では1週間守れればよいほうだろう.

自分の頭を鍛えるためと教えれば,自ら進んでやるだろう.

指示された作業をするだけでは成長は無い.出庫伝票を吐き出してくるコンピュータの奴隷と同じだ.作業を自ら計画することにより,作業は仕事となる.主人は自分だ.

作業に計画性を与え仕事とする.仕事によって自分の能力を磨く.この様に,仕事を通して日々成長することを教えれば,自ら進んで仕事をするようになるはずだ.


このコラムは、2010年3月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第145号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

言葉の定義

 中国企業で不良低減の指導をしている。製造各部門、技術、品質、購買リーダに集まってもらい、各部門の困っている事を列挙してもらった。

以前別の中国企業でも同じミーティングをした事がある。この時はテーマが大量に出て、収集がつかなくなった(笑)
今回はあらかじめ各部門に問題点を3つ考えてもらった。それでも4、5個問題点を出して来る部門がある。今までこのような機会がなかったのだろう。毎回このミーティングは熱くなる(笑)

今回の改善活動は塗装部門の課題となった。各部門のリーダが一緒に改善活動に取り組む。もちろん購買部門のリーダには塗装不良はあまり関連がない。
参加してもらうのは、各部門のリーダに改善手法を理解してもらい、同様な活動を自部門で展開してもらうためだ。

塗装部門で発生する『飛辺』『毛刺』不良の改善が課題となった。
塗装不良が発生すると、手直し作業をしなければならない。手直し作業にはベテランが投入される。そのため通常作業は新人やパートなど未熟練作業者が従事する。そしてまた不良が発生すると言う悪循環となっている。

まずは作業現場で行き、不良が発生する「点」を観察する。

この観察により『打磨』と言う作業がポイントだと分かった。この『打磨』と言う作業は、ナイロンたわしで塗装面をこする作業だ。
しかしこの作業は二つの役割を持っており、方法も少し変わる。一つは、マスキングテープを密着させるのが目的。もう一つは、重ね塗りをする塗装面を荒らして塗料のつきを良くするのが目的。

従って『打磨』作業は、目的によって作業対象となる部位、達成すべき状態が異なる。まずは、目的の違う作業に別の名前を付けるべきと感じた。
もちろん作業指示書には、二つの作業の目的も方法も書いてある。その作業が同じ名前だと言うだけだ。それだけの事で問題視する事はなかろう、と思う方もあるだろう。
しかし言葉の定義をおろそかにすべきではないと考えている。
人の思考は言葉で決まる。そして思考が行動を決める。
そのように考えると、目的の違う作業には違う名前を付けた方が良いだろう。


このコラムは、2016年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第484号に掲載した記事に加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

工程飛ばしの予防

 今週のメルマガ・第61号「中国華南地区の景気」で,人手による持ち回りバッチ処理の「工程順間違い」「工程飛ばし」を予防する方法を募集した.

例えば
ある製品はA工程→B工程→C工程の順に生産するが,
別の製品はA工程→D工程→C工程の順に生産する.

このような場合にどうすれば間違いなく工程順が守られ,工程を飛ばすことなく生産できるだろうか?

今回の制約は,

  • 工場の中は機械化が進んでおらずバッチ単位で人間が持ち回り生産する.
  • 設備は簡単には移動できない.

という条件にしよう.

意外にもこのような作業でミスをするのはベテランの方が多かったりする.作業に慣れてしまい,注意力が散漫になる事があるのだろう.新人の方がミスをしまいと工程ごとに確かめながら作業をするものだ.

※以下私のアイディア

  • まず各設備がどの工程かを一目で分かるようにしておく.
    天井から「A工程」「B工程」と書いた大きな看板をぶら下げておけばいいだろう.
  • 次にロットごとに生産流動カードを用意する.
    このカードには,その製品を生産する工程順,作業条件などを記入しておく.
    作業が終わるごとに作業者の確認のサインを入れる.
    更に設備の横にはんこをぶら下げておき,これもカードに押す.
    言ってみればスタンプラリーのようにするわけだ.
    生産流動カードがラリーの道順を示す地図であり,チェックポイント(工程)ごとにスタンプを集めるような形で作業をする.
  • またこの生産カードは製品ごとの標準作業手順(SOP)の役割を果たす.同時に生産記録にもなる.

このような形式の生産をしている現場では,設備ごとに操作方法を指示する文書(MOI)はきちんと完備しているが,製品がどのように流動していくかを作業手順書の形で準備しているところは少ない.
工程ごとに作業手順書を掲示すると,機種の数だけ手順書を掲示しなければならず,多くの手順書の中から該当する物を探さなければならなくなる.

殆どの現場ではQCフローチャートでこれを代用していると思うが,作業員はQCフローチャートを見ながら作業はしない.従ってこのような生産流動カードが作業手順書の役割を果たすことになる.

SOP:Standard Operation Procedure
MOI:Manufacuturing Operation Instruction

いただいたご意見をご紹介しよう.

※S様のアイディア

メッキ工程を色分けし、作業手順書で色を指定する。
ポカよけは、どうすればよいのか?
この部分は、作業者のスキルにならないように、チェックシートを記載させる。
・・・とか

色分けによる識別の徹底を考えられたアイディアだと思う.
色だけでは表現できない場合もあるので,番号を併用すると良いだろう.
例えば前処理槽は黄色,処理の内容ごとに1,2,…と番号をつける
メッキ処理層は,赤1,赤2,…という具合だ.


※O様のアイディア

門外漢ですが考えました。バッチを入れて運ぶケースと対応した設備双方に、共通した色を着けてわかり易くサイン化する方法です。それぞれの色が対応していなければそのバッチは工程間違いというわけです。
また人の目は自然と色を追っていくので工程飛ばしも発生しにくくなるのではないかと思います。ただ製品の種類が多くなっていくと当然設備に付いたサインの色数も多くなるわけですが。。。
どうでしょうか?それではまた。いつも楽しみにしています。

こちらも色による識別のアイディア.
トレーと設備の色を合わせるというのは分かりやすい.
難点は,機種が増えてしまうと,使える色が足りなくなってしまうことだろうか.



今回は出題の仕方が悪かったようだ.
例としてあげたのが3工程しかないため,一つの製品を完成させるときに10工程以上もあるような場合の考慮が抜けてしまったように思う.


このコラムは、2008年11月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第62号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

中国華南地区の景気

 今日家賃の集金に来た大家さんが部屋に入ってきて開口一番「景気が悪い」彼は海運業の会社に勤めており,華南地区の製造業が軒並み景気が悪く,彼の会社にも影響が出ているとのことだ.

最近このあたりで工場の倒産,台湾,韓国系工場の夜逃げの話を良く耳にする.

しかし一方で注文が増えている工場もある.競争相手がつぶれてしまい仕事が回ってくるというのである.

こういう時期にしっかり力を蓄えておけば,景気が回復した時に一気に波に乗る事が出来るはずである.ピンチをチャンスに変える.今のうちに贅肉のない筋肉質の体に鍛え上げておきたい.

ところで以前指導していた会社にいた中国人の若者は,独立してネジの工場を経営している.4年近く前に電話で独立した事を知らせてくれた.
一度工場を見に行ってやると言ってあったのだが,彼は遠慮してなかなか迎えには来なかった.ところが最近良く電話をしてくるようになった.

彼も電話のたびに景気が悪い,どこかネジを必要としている会社を紹介してくれというのだ.
しかし工場も見ていないのにうかつには紹介できない.たかがネジとは言え品質問題が出れば厄介なことになる.

随分昔になるが,北欧のメーカから周辺装置を購入していた事がある.
特に品質問題もなく安心していた.北欧のメーカにしばしば品質問題を出されてはたまったものではない.そのたびに工場に出かけて原因や対策の確認をするのでは,少ない出張予算があっという間になくなってしまう.

ところが突然メーカの品証から,今回納入したロットは使わないで返却してくれという連絡が入った.
報告によると製品に使用したネジの製造工程に問題があり,暫くするとネジの頭がポロリと取れてしまう事があるというのだ.

ネジを作った後にメッキをするが,メッキ後のアニール(熱処理)工程を飛ばしてしまったというのだ.
メッキ処理中に発生した水素原子が鉄ネジの中に入り込む.通常はアニール工程でこの水素をたたき出してしまうので問題がないが,水素が残留していると「水素脆性破壊」が発生する.応力がかかっている部分
が脆化してポロリと破断してしまうのだ.

メッキ工程は,水洗処理,薬剤による前処理・後処理,メッキ処理など幾つもの工程をバッチごとに持ちまわって処理をしている場合が多い.一種類のメッキ処理だけをやっていれば,工程順に処理槽を並べれば
間違いなく工程を進める事が出来る.何種類も同時生産をしていると,この製品にはこの処理は必要ないが
別の製品にはこの処理が必要という事が出てきてしまう.

メッキだけではなくこのような工程になっている製品はあるだろう.特に設備で加工する場合,バッチで設備間を持ちまわって生産するような製品は「工程飛ばし」「工程間違い」に対する予防策をとっておかないと必ずミスが発生する.

例えばある製品はA工程→B工程→C工程の順に生産するが,別の製品はA工程→D工程→C工程の順に生産する.

このような場合にどうすれば間違いなく工程順が守られ,工程を飛ばすことなく生産できるだろうか?
皆さんはどんな工夫があるだろうか?
またご一緒に検討してみたい.

今回の制約は,
・工場の中は機械化が進んでおらずバッチ単位で人間が持ち回り生産する.
・設備は簡単には移動できない.
という条件にしよう.

(次号に続く)


このコラムは、2008年11月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第61号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

東日本大地震の中国経済への影響

 昔はアメリカがくしゃみをすれば,日本が風邪を引くといわれたものだ.しかしその逆はあまり聞かなかった.当時は日本がくしゃみをした位では,アメリカはびくともしなかったのだろう.

しかし今回の地震(くしゃみどころではないが)で,世界中に流行性感冒をばら撒いてしまったようだ.世界中に流通する製品のキーコンポーネントに,日本製の部品が使用されているからだ.

当然その生産拠点の中国にも影響を与える.
被災してラインストップした日本企業からの部品供給が止まる.または,直接被災していなくても,被災地の工場から部品を仕入れていれば,遅からぬ時期に部品供給が止まる.

またメルマガ読者のC様からご指摘をいただいたが,日本からの出荷が放射性物質汚染の影響で,一律止まってしまう可能性もある.

その結果,中国でモノ造りをしている工場のラインが止まってしまう.日本から部品を購入していない工場でも,納入先の工場が止まってしまえば,連鎖的に操業停止となる.

しかし恐れることは無い.
このメルマガでは再三申し上げているが,ピンチはチャンスだ.
2008年末の世界金融危機の時も同じことを申し上げた.
景気低迷で生産が落ちている時こそ,生産革新のチャンスだ.フル生産している時には,思い切ったレイアウト変更や,将来に向けた生産方式革新には取り組みにくい.生産量が落ちている時に,そうした10年先を見込んだ生産改革をすべきだ.

今のまま生産を継続していては,早晩行き詰まるはずだ.最低賃金が毎年20%程度上昇している.このまま10年間同じ比率で上昇したとすれば,10年後の最低賃金は6倍以上になる.その時今と同じモノ造りをしていて,利益が出せるだろうか?

金融危機の時に,10年後のモノ造りを目指したクライアント様は,バッチ生産方式だったのを一気通貫生産に切り替えた.今では他の部品も同じ工場に集約している.

別のクライアント様は,大口ジョブの失注を機会に生産革新に着手した.創業以来続けてきた生産方式を変え,スペース半分・生産効率1.5倍を手に入れられた.

ピンチをチャンスに変えるのは,経営者の仕事だ.
最悪の災害に暗い顔をしていても始まらない.
世界最悪の災害を,最高のチャンスに換えよう!
我々が業績を伸ばして,日本の復興資金を稼ごう!


このコラムは、2011年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第198号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

相互学習支援

 私は、生産現場の改善を生業としている。前職時代から同様の仕事を永らくしている。独立後仕事のやり方が変わった。独立後暫くの間は、自分で改善案を考え、顧客のメンバーが現場に展開すると言う方法だった。

例えば、ベルトコンベアラインで作業している工員さんの座る向きを変えれば、ワークの取り置きは左手で出来る。従って右手に持った工具を取り置きする必要が無くなる。と言う具合に現場で顧客の改善リーダに教えていた。
このやり方でどんどん成果が出る。自分も充実感を感じていた。

しかし暫くして、このやり方ではダメだと気が付いた。このやり方で成長するリーダが限られている事に気がついたのだ。優秀なリーダは、教えられた事を水平展開する意欲を発揮し、自分で工夫し出す。私はリーダがこのレベルに到達する事を目指しているのだが、大半は次は何をしましょうか?と受け身のままだ。

そこで教え方を変えてみた。先ほどの事例で言えば、右手でコンベアのワークを取り置きするたびに、工具を一度置くのがムダだ。どうすれば改善出来る?と質問する事にした。

以前は、改善方法を教えて、その理由を説明していた。
それを、問題点を指摘して、改善方法を考える様に質問することにした。

このやり方で、自分なりに指導方法が改善出来たと考えていた。しかしまだまだだと、後に気がつく(笑)

きっかけは吉田新一郎氏の書籍を読んだ事だ。

「効果10倍の教える技術」

「『学び』で組織は成長する」

吉田氏は大人への教授法について、色々な手法を紹介してくれている。その後吉田氏の著作は翻訳も含めて何冊か読んでみた。

そして今キーワードになっているのが「相互学習支援」だ。「講師から学習者への1対1もしくは1対nの一方向の教授法」から「講師と学習者間の1対1もしくは1対nの双方向教授法」と自分なりに進化したが、更に「講師と学習者および学習者対学習者のn対n双方向学習支援」という考え方に至った。

例えば、研修中の演習成果発表を講師が評価するのではなく、学習者全員で評価する、こういうやり方が相互学習支援のひとつだ。

相互学習支援により、

  • 学習者間の信頼関係が深くなる。
  • 学んだ事をアウトプットする事により、より学習効果が高まる。

等の効果があると考えている。

私の様に期間限定で外部から改善指導をする様な場合、特にこの考え方が有効だと考えている。

例えばQCC活動の様に、指導者がいない場面でもサークルメンバーだけで活動を推進して行く場合に「相互学習支援」は普通に発生しているはずだ。


このコラムは、2017年7月31日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第543号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

異部品混入

自動車要部品は左右対称になった異部品が多数存在する。自動車のデザインが左右対称になっているのでそうならざるを得ないだろう。例えばドアミラー、ドアハンドル、ヘッドライト、方向指示灯など同じ形だが左右対象形になっている部品が多い。

この様な部品を生産する工場は、左右同数を同時期に生産し、同時に出荷する必要がある。形状が似ているため、左右製品の誤出荷や混入出荷の不適合が発生しやすいと思われる。

左右類似製品の誤出荷、混入原因をどのように防止しするかを検討してみたい。
検査で見つけるのは、上策ではない。製造方法で混入防止を保証する方がより良い。
全く別のラインで生産する、と言うアイディアもあるだろう。樹脂部品の場合一つの金型で左右を同時に成型してしまった方が効率が良さそうだ。その後の組み立て、検査工程も同時に進めてしまえば、無用の中間在庫を持たなくて済む。

つまり、左右の製品を同時にラインに流しても左右製品の混入や取り違いが無い様にするにはどうしたら良いか?と言う課題だ。

ちょっと頭の体操をしていただきたい。
私が考えたアイディアは編集後記でご紹介する。


【編集後記】



左右対称製品の、取り違い、混入防止対策を考えていただけたでしょうか?

私が考えたアイディアをご紹介します。
工程内の組み立て治具、検査治具を左右それぞれ専用にする。左側製品は左側治具にしかセット出来ない様にする。出荷トレーを左右それぞれ専用にする。これで左側製品に右側用の部品を組み付けたり、左右取り違えて出荷する事を防げるはずです。

ちょっと簡単すぎましたか?


このコラムは、2017年8月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第544号に掲載した記事に加筆修正しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

未知の災害

 「失敗から学ぶ」ということは失敗事例から学び、事故や災害の未然対策をすることを目的としている。したがって未知の事例・災害には対処の方法がない、ということになってしまう。例えば2011年に発生した福島原発事故は、1000年に一度の大津波が原因であり全く想定外、事前の対策は不可能だった。本当にそうだろうか?

福島原発事故は、想定外の津波により全ての電源が水没したため電源の使用が不可能となり、炉心が冷却出来ずメルトダウンに至った。

原因が未知の事故・失敗はない、業界を超えて考えればほとんどの事故・失敗は既知の原因によるものである、とこのメルマガで書いてきた

2001年9月11日ワールドトレードセンター同時多発テロ事件発生後に、米国は原子力発電所に対してテロが行われることを想定して、対策を実施している。

津波が想定外であっても、全電源が使用不可能になることはありうる。しかもその事例は10年前にあったのだ。「津波」を「テロ」に置き換えて未然防止を考えるのが「失敗から学ぶ」ということだ。

世の中には多くの失敗事例がある。それをいかに自社の問題として捉え直す事が出来るか、というのが失敗から学ぶための極意だと思う。


このコラムは、2018年4月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第655号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

工程を止める

 生産中に同一不良が大量に発生する。または顧客に不良が流出した。
原因や改善方法がまだ判明しない。しかし客先への納入が必要。この様な状況を経験された方は多いだろう。(経験したことがないという方は、ラッキーな方か、まだ経験が浅い方だろう)

タクトタイムで次々と製品が上がってくる工程で、同一不良が発生すれば、あっという間に大量の不良の山が積み上がる。
こういう状況になった時に生産を止められるかどうかで、その工程の監督者の力量が判断できる。当然顧客の要求納期に答えなければならない。生産を止めれば、納期遅延が発生する。このプレッシャーに打ち勝って生産を止めることは難しいだろう。

しかし冷静に考えれば、不良が発生したまま生産しても納期が間に合うとは言えないだろう。滞留する不良の山をあちこちに移動したり、修理要員を確保するなどが必要となり、生産効率も生産量も落ちる。
最悪の場合、工程内で発生した不良が顧客に流出する。

工程の監督者は、納期通りに「生産」をするのが使命と思っており、生産を止める勇気を持つことができない。しかし本来の使命は納期通りに「出荷」することである。したがって、納期通りに良品を生産しなければならない。

監督職が不良品の「処置」に奔走していれば、いつまでも不良は発生し続ける。勇気を持って工程を止め、不良原因を解析し対策を実施する事が必要な処置だ。


このコラムは、2017年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第579号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】

海自機墜落「人的ミス」

海自ヘリ墜落は人為的ミス 青森沖3人不明

海上自衛隊のヘリコプターSH60Jが8月26日夜に青森県の竜飛崎沖に墜落、乗組員4人のうち3人の行方が分からなくなった事故について、海自は7日、人為的ミスが原因との調査結果を公表した。方位指示器の誤差を復旧する作業中、バランスを崩して墜落、水没したという。フライトレコーダーや機内の音声データ、救助された乗組員の証言から判断した。

海自は機体に問題がなかったとして、操作手順の徹底など再発防止策を実施し、事故後に自粛していた同型機の飛行を8日以降に再開する。

海自によると、護衛艦「せとぎり」搭載のヘリは夜間の発着艦訓練のため、午後10時33分に艦上を飛び立った。直後に機長席と副操縦士席の方位指示器の値に大きな誤差があることを示すランプが点灯した。

同48分ごろ、復旧作業で機体の姿勢や方位を表示する装置の電源を落とすと、飛行が不安定になり、機首が上がり速力が低下。機長が高さ90~120メートルで速力を上げようと機首を急激に下げ、そのまま墜落した。バランスを崩してから十数秒で落ちたとみられる。

やや強い風が吹いていたが、視界は良好だった。作業に集中するあまり水平線の見張りが不十分になり、乗組員が機体の姿勢が変わったのに気付くのが遅れたという。〔共同〕

日本経済新聞より

その他の新聞記事も合わせて要約すると、
防衛省が墜落したヘリコプターのフライトレコーダを解析した結果、事故原因は「機長が機体の姿勢をしっかり把握しておらず、搭乗員間の連携も不十分だったことが重なって墜落」と言う事で「人的ミス」と結論づけている。

その経緯は、

  • 磁気で方位を確認する方位指示器に誤差が発生とアラーム表示。
  • 機長は誤差を修正するため、操作マニュアルに基づき、方位指示器と連動し、機体の姿勢を確認する装置の電源をいったん切って再起動
  • 電源を切ったことで、この装置と連動している機体の姿勢を維持する機能も低下。
  • その操作で、結果機首が上がって速度も落ちるなど機体姿勢のバランスが崩れた。
  • その結果、機体は降下し続けて墜落した。

この間に「人為ミス」があったとは思えない。唯一人為ミスがあったとすれば以下の記述部分だけだ。

  • 副操縦士や機体後部の2人の航空士も機体の姿勢や周囲の状況を確認しておく必要があったが、これを怠っていたという。

これは墜落の直接原因ではなく、我々製造業で言えば「流出原因」に相当する。

この記事が正しいとすれば、発端となったのは「方位指示装置の誤差」だ。機長は操作マニュアルに従って、機体の姿勢を確認する装置をオフ・オンしてリセットしている。その結果、姿勢確認装置と連動している機体の姿勢を維持する機能も低下、墜落となっている。

機体の姿勢を確認する装置を初期化してしまえば、実際の姿勢とずれが生じ、機体の姿勢維持をする事は出来なくなる。

機長はこの操作をマニュアルに従ってやっている。これは人為ミスではなく、操作マニュアルの不備だ。
こういう状況で、副操縦士らが機体の姿勢や周囲の状況を確認した所で墜落を防ぐ事は出来なかっただろう。流出原因防止を強化しても、発生原因を除去しなければ事故再発は根絶出来ない。

根本原因対策は、
飛行中に方向指示の誤差が発生した時の対応の仕方を変える(マニュアル変更)
又は、飛行中に機体姿勢確認装置のリセットをした場合に、姿勢制御維持装置の処理方法を変える(飛行システムのソフトウェア変更)事になるはずだ。

命をかけて国を守ってくれている自衛官3名が行方不明となっている。
「人為ミス」と安易な答えを出すのではなく、きちんと再発防止につながる原因分析をすべきだ。


このコラムは、2017年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第562号に掲載した記事を修正・加筆しました。

【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月・水・金曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】