生産改善」カテゴリーアーカイブ

工芸連

家具の設計製造販売をしている中国企業の工場を訪問した。
中国の家具工場は何社か訪問したことがある。こちらの工場も、だいたい同じようなレベルだ。

経営者の一番の悩みは、『工芸連』の管理が上手く出来ない事だと言う。工芸連(工艺连)とは、サプライチェーンの生産技術的な側面に焦点を当てて考える言葉の様だ。
つまり、品質、納期に関する顧客要求に応えようとしても、仕入れ先が対応しきれない。しばしば仕入れ先の品質問題や納期問題により、顧客に対し納期問題が発生するそうだ。

自社製品が少量多品種なので、仕入れ先が自社製品の加工をやりたがらない。しかし仕入れ先に加工してもらっている工程を、自社に取り込むと経営は重くなる。

このような問題を解決する『工芸連管理系統』を教えて欲しいと依頼された。
中国人経営者・経営幹部から、しばしば『○○管理系統』を教えて欲しいと、リクエストされることがある。彼らがどういう思いで『管理系統』と言う言葉を使っているのか良く分からないが、ちょっとピントがずれているのではないかと感じる。

この経営者様には、仕入れ先の経営者とメシでも食べて仲良くなりなさいと、アドバイスした(笑)

当然仲良くなっただけでは解決しない。仲良くなって「目的」を共有する。
現状は、こちらは自社製品に必要な加工を対価を払って提供してもらう、仕入れ先は仕事を受注することにより売り上げと利益を確保する。それぞれに別々の目的を持ち、商売上の関係があるだけだ。

自社製品を市場に販売することにより、どのような貢献をしたいのか、仕事を通して、自社、従業員、仕入れ先がどのように成長したいのか、この様な経営目的を共有する。

この様な腹の足しにもならない目的を共有しても無意味だ、とお考えになる方もおありだろう。しかし目的の共有をしないから、金銭の論理だけで動く事になる。少量多品種で利益が少ないから生産を請け負わない、利益の大きい仕事の後回しにされる、と言う事が発生する。

しかし全くメリットがなければ、目的の共有など出来ない。
相手が十分満足する金銭的メリットを与える事は難しい。ならば「成長」と言うメリットを互いに分け合えば良い。

仕入れ先が、少量多品種生産に対応出来れば、今より利益を上げられるはずだ。
お互いの生産改善メンバーが交流し、生産改善を一緒にやる。お互いの工程に参考になる事も有るだろうし、相手の工程を知れば、設計レベルに立ち返った改善も可能になる。

自社の生産改善が出来、仕入れ先も生産改善すれば一石二鳥だ。

こういう活動により、自社と仕入れ先、仕入れ先同士の関係が良くなるはずだ。仕入れ先の中に同業者が有れば、業種ごとに最も意欲の高い仕入れ先を選定すれば良い。
私は前職時代に、自社の子会社2社、生産委託先4社と一緒に年に一回グローバルQA会議を開催していた。全員電源を生産する工場だ。ガチンコの同業者だが、お互いに生産ラインを見せ合ったりしていた。意外と簡単に出来たりする。難しかったのは、実は社内調整の方だった(笑)


このコラムは、2014年9月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第380号に掲載した記事です。

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改善思考

 先週末は東莞和僑会・改善交流会を開催した。改善交流会は参加企業の中国人幹部の改善力を鍛えることを目的としている。毎回参加企業の生産現場に集まり、その企業の改善事例を紹介。現場を観察。改善課題やさらなる改善を参加企業混合のメンバーでチームを作り議論、最後に発表する。という活動をしている。

今回は石碣鎮にある会員企業が会場。

3件の改善事例を紹介。
そのうちの1件の事例をご紹介したい。

接着テープ付きゴムマグネット素材の小片を生産する工程だ。
生産は帯状のゴムマグネットロール、両面接着テープ、保護紙を貼り合わせ、カットする。この作業は設備で行われる。この工程での改善事例は、段取り替えの短縮だ。
段取り作業の一部を外段取り化、作業開始前の調整作業の時間短縮などの改善をしたが、まだ改善目標を達成していない。

帯状のゴムマグネットロール、両面接着テープ、保護紙ロールを設備にセットする際に、重量物のマグネットロールをセットする場所が人の肩より上にあることに着目したチームが提案した方法が、目から鱗だった。

普通に考えると、アーム状の重量物ハンドリングの設備を使うことを考えるだろう。しかし彼らが提案した改善案は、軽量の接着テープロールを上にし、ゴムマグネットロールを下にセットするというアイディアだった。単純明快、目からウロコの改善案だった。

しかしこの方法では、小片に切り分ける時に接着テープが上部に来ることになり、接着テープの保護紙をカットしてしまい小片がバラバラになってしまう。従来方法ならば、接着テープが下側となるため、保護紙をカットしないよう調整可能だ。

重要なことは、ここで諦めないことだ。さらに方法を考えれば良いのだ。

改善の極意:「できない理由を考えるのではなく、できる方法を考える」


このコラムは、2019年9月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第879号に掲載した記事に加筆しました。

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中華機の速度計、異常原因は虫? 会社が国交省に報告

 佐賀空港(佐賀市)の滑走路を越えて離陸し、速度計の異常で引き返した中華航空チャーター便(ボーイング737―800型機)について、同社は9日、「速度を計る装置に虫が詰まり、計器が正常に働かなかったとみられる」と国土交通省に報告した。

 同省によると、この装置は「ピトー管」と呼ばれ、機首についている。飛行機が進むときの風圧を測定し、これをもとに速度を算出する仕組み。装置の吸い込み口に虫が詰まっていたが、種類や数は不明という。

(asahi.comより)

現場・現物を見ていないのでいい加減なことはいえないが,一回のフライトでピトー管に虫が詰まってしまうと言うことは,ありえないだろう.そうであればこの手の障害がしょっちゅう世界中で発生しているはずだ.

日常メンテナンスが十分行われていなかったのではなかろうかと想像している.日常点検,メンテナンスと言うのは予防保全活動として重要な役割を担っている.

工場で仕事をしていても,似たような場面に良く出会う.
生産現場を見ていて半田槽のスプレーフラクサーのノズルの動きが遅くなっているのを見つけた.

スプレーフラクサーというのは,半田付け前にプリント基板の半田面にフラックスを吹き付ける機械である.空気圧を利用してノズルを左右に振りながら,コンベア上を流れてくるプリント基板の下からフラックスを吹き付ける仕組みになっている.

早速半田槽のメンテナンスを担当しているエンジニアを呼び,現象を見せた.エンジニアは装置を見るなり「分かりました」と答えノズルを左右に振るための空気圧をちょっと上げた.これで確かにノズルの動きはスムースになった.しかしノズルの動きが遅くなっていた原因に対しては何も対策が打たれていない.

ノズルの摺動部に粘度の高いフラックスがこびりついて,ノズルの動きを阻害している.これに対しては何も改善がされていないのである.これをそのままにして,問題が顕在化するたびに空気圧をあげてゆくと最後には大きな問題となるはずである.

日々の点検,メンテナンスをきちんとやっておくことによりこういう不具合は未然に防ぐ事が出来るわけだ.また上述の例のように,問題が顕在化した時点できちんと対応しておかないと,更に大きな問題となって再現するはずである.


このコラムは、2007年10月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第3号に掲載した記事です。

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続・抵抗勢力

 先週の記事「抵抗勢力」に広東省・仏山にお住まいのN様からメッセージをいただいた.

抵抗勢力”を読ませていただきました。
現在広東省仏山市に駐在して仕事をしています。
今年の4月末から仕事をしていますが、最初の2ヶ月は”抵抗勢力”に 悩まされました。現在はその抵抗も無く、徐々にに改革改善改新が遂行され ています。しかし、そのスピードは日本に比べて非常に遅いです。
まあ、会社、あるいは従業員に価値有ることを伝えられれば幸いと思ってます。ここに、貴社の益々のご繁栄を、祈念いたします。

N様は工場長として仕事をしておられるが,着任して2ヶ月で抵抗勢力を改革に向かわせたと言うことは,素晴らしいことだと思う.今は改善の速度が遅くとも,どこかでブレークするはずだ.

倒産の危機にあるような会社では,自ずと改革に向けるエネルギーが高まる.
例えば,血を流し瀕死の状態で病院に運ばれた患者は,医師や看護師の言うことは何でも聞くだろう.しかしじわじわと病状が悪化している患者は,健康に対する関心が高くなければ,医師や看護師の言うことに実感を持たない.

人間は,今までの習慣を変えることに恐れを持つものだ.
その恐れに打ち勝って改革エネルギーを高めるには,二つの方法がある.

一つは,先週お話したように,未来に対する夢を持つことだ.
変化に対する恐れよりも,夢に対する希望が大きければ,改革エネルギーとなる.

もう一つは,現状に対する危機感を持つことだ.
変化しないことの危機を正しく理解すれば,変化に対する恐れより,変わらないことの恐怖が大きくなる.

外の環境は常に変化している.
経済環境.社会環境.顧客の市場環境.同業他社との競合環境.仕入先の業界環境.などなど常に変化している.そのような外部変化環境下で,自分自身が変わらなければ,相対的に退歩の道をまっしぐらに進んでいるのと等しい.

徐々に温度が上がるぬるま湯に使っている蛙は,そのうち茹で死んでしまう.しかしいきなり蛙を熱湯に入れれば,飛び出る.

組織を変化に対してぬるま湯にしないこと.清流のように常に清らかな水が循環している組織は,変化に対して敏感になるはずだ.

外界の変化に対し感度が低い者を,井の中の蛙という.井戸の中ならば,温度は一定,外界の天敵もいない.しかし本当は井の中の蛙ではなく,釜の中の蛙だ.
私たちは,常に変化に直面する,清流に住む蛙でありたい.


このコラムは、2011年1月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第186号に掲載した記事です。

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抵抗勢力

 改革には抵抗勢力がつきものだ.
本当に切羽詰った状態に追い込まれないと,改革に対する不安が,期待より大きくなってしまう.

先週ご紹介した鄭社長は,改革に付いて来れない幹部を退職させている.長年自分を支えた,副総経理クラスの幹部も例外はなかったそうだ.改革に伴う最大の痛みだったと言っておられた.痛みを伴っても改革をしなければならないという強い信念があったからだろう.
我々のような,外部コンサルには出来ないことだ.

私はまず改善チームのメンバーを集め,改革後の夢を決めてもらっている.
「華南地区で日系顧客から検品免除をもらった家具メーカになる」とか「中国で一番生産効率の高い自動車部品工場になる」といった具合に,大きな目標を自分たちで決めてもらう.

人から与えられた目標ではなく,自分たちで決めた目標の方が達成に対するコミットメントが強くなるはずだ.

しかしここまでしても,実際の現場改善で「出来ない理由」をたくさん並べて腰が重くなってしまうことがままある.従来と違うことを始めようとすると,関連部署が各々に自分たちへの影響を恐れ出来ない理由が山ほど出てくる.当然変化をさせれば,色々な所で歪が発生する.歪が出ることは想定内だ.出てくる歪をその都度改善してゆくことにより,全体が改善される.

まずは初めの一歩を踏み出すことだ.

まずはやってみる.どうしてもだめなら元に戻す.元に戻しても改善を諦めなければ,必ず改善は出来る.

あのトヨタでさえ,「一個流し.不良が出たらラインを止める」という当事効率が悪いと思われていたモノ造りに挑戦し,何度か元に戻している.それでも諦めなかったから今のトヨタ生産方式が出来上がったのだ.

まずは現場のリーダに改善の勇気を持たせることが重要だ.


このコラムは、2010年12月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第185号に掲載した記事です。

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心理学実験

「心理学実験、再現できず信頼揺らぐ 学界に見直す動き」

「つまみ食いを我慢できる子は将来成功する」「目を描いた看板を立てると犯罪が減る」――。有名な心理学の実験を検証してみると、再現できない事態が相次いでいる。望む結果が出るまで実験を繰り返したり、結果が出た後に仮説を作り替えたりする操作が容認されていた背景があるようだ。信頼を失う恐れがあり、改めようとする動きが出ている。

(中略)

 最も典型的な例とされるのは米スタンフォード大学で60~70年代にまとめられた「マシュマロ実験」だ。研究者は幼い子どもの前にマシュマロを置いてしばらく席を離れる。その間にマシュマロのつまみ食いを我慢できた子は「その後、高い学力などを身につけ社会的に成功する」という内容だ。

 全文はこちら

(日本経済新聞 電子版より)

 マシュマロ実験

マシュマロ実験とはタンフォード大学の心理学者・ウォルター・ミシェルが1970年に行った実験だ。
実験の対象は、大学職員の子どもたちが通う、学内の付属幼稚園の4歳の子供186人。子供たちを机と椅子だけの部屋に入れ、椅子に座らせる。机の上には皿があり、マシュマロが一個載っている。
実験者は「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」と言い部屋を出ていく。

この実験でマシュマロ(目の前の欲望)を我慢しもう一つのマシュマロ(将来の価値)を手に入れたのは1/3ほどだった。

実験当初は、どういう行動をする子供が食べるのを我慢できるのかを観察するのが目的だったようだ。しかしその後、ウォルター・ミシェルは実験結果と子供の成長後の社会的成功に相関があるのではないかと気がつき、追跡調査をする。

1988年に実施した追跡調査では、22歳に成長した被験者を目の前のマシュマロを我慢出来たグループと我慢出来なかったグループに分けると、大学進学適性試験(SAT)の点数には、トータル・スコアで平均210ポイントの相違が認められ、我慢出来たグループの方が成績が優秀だったと結論づけた。

この実験結果により、「我慢強い子どもは成績も良くなる」というもっともな定説が出来上がった。

しかし2018年に別の研究者たち(ニューヨーク大学のテイラー・ワッツ、カリフォルニア大学のグレッグ・ダンカンとホアナン・カーン)の再実験によりこの定説が覆る。こちらの実験では対象者を900人以上とし、いろいろな階層の子供を調べた。

その結果分かったことは、「二個目のマシュマロを食べるのは家庭の経済的な背景に影響を受けている」ということだった。ウォルター・ミシェルらの実験は対象が大学職員の子供であり、経済的背景はほぼ同等だったと推測される。

現代の成功する若者が「我慢強い」という性格を武器としているとは思えない。
むしろ目の前にある「マシュマロ」に対して旺盛な好奇心を持っており、まずは手をだし、触り、匂いを嗅ぎ、食べてしまうだろう(笑)その上で色々な事を思いつき、全く新しいビジネスをローンチするのではなかろうか?

製造現場でも、この事例から学べることは大きいと思う。
現象から推定した因果を間違わないようにするにはどうすべきか、という命題が与えられたということだ。

結果の統計的な解釈も必要だろう。
SATテスト(当時は2400点満点)62人と124人の平均点の差が210点というのが統計的に有意であると言えるだろうか。


例えば「完成品倉庫が狭い」という課題は、本当に倉庫が狭いのではなく、「注文よりたくさん作るから」が原因である。というのがマシュマロ問題からの教訓だ。これを間違えると、「倉庫を増築する」という間違った課題解決に向かう。


このコラムは、2019年12月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第916号に掲載した記事です。

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データの活用

 先週はダイキャスト製品を生産する中国民営企業を訪問した。
金型の設計から、成形、表面研磨、表面処理、塗装までワンストップで生産できる工場だ。創業以来優良な顧客があり、受注・売り上げを順調に伸ばしているが、利益が出ないと相談を受けた。

生産現場を一回りして、利益が出ない理由が想像できた。工程内不良が多いため利益が出ていないようだ。

総経理の話を聞くと、生産の歩留まりや直行率などのデータを活用していないようだ。ダイキャスト製品は、工程内不良が発生しても不良品を鋳潰して再度成形することができる。直行率が低くても材料コストは増えない。しかしやり直しのための労務費をはじめとする様々なコストが発生しているはずだ。

まずはこれらの損失コストを機種ごとに把握しなければならない。
そして工程内で手直し(例えば反りなどの変形の手直し)の損失コストを機種ごとに把握する。そして機種ごとに損失コストを集計し、損失コストの大きい機種から改善をしていけば良いはずだ。

作業による不良要因が少ないので、金型の設計を改善すれば損失コストは低減できるはずだ。

そして次のステップは、設計完了後試作段階で設計の完成度をデータで評価し、一定以上の直行率が確保できていることを確認したのちに量産を開始する。データを活用して製品実現プロセスに関門を作る。こうしておけば、私の手を離れた後も安定した品質が得られ、利益が出るはずだ。


このコラムは、2019年12月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第921号に掲載した記事です。

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タイミングイズマネー

 通常は、タイムイズマネー(時は金なり)という。
製造業の立場から言えば、従来の半分の時間で生産できるようになれば、売り上げは倍になる。しかしこの方程式は成り立つだろうか?

市場の需要が大きく、生産能力が足りていなければ、上記の方程式は成立するだろう。しかし自社に需要>供給という関係が成り立つ製品があるだろうか?
市場での評判がすこぶる良く、しかも他社には生産できない製品。このような理想的な製品があれば、経営は左うちわになる。

しかしそんな幸運な企業はそうはないだろう。
需要がない製品を一生懸命生産する企業はない。しかし需要があっても他社も生産することが出来る製品であれば、価格競争により利益は少なくなる。
「忙しくても利益は上がらない」「作れば作るほど貧乏になる」という不幸な状態となる。

こういう状況で生き残るためには、顧客のメリットとなる「強み」が必要となる。このような強みがあれば、顧客にとってオンリーワンの企業となるはずだ。

先日、お手伝いしている工場の幹部からご相談を受けた。顧客から在庫を持つよう要求を受けているという。日本向けに40ftコンテナで出荷する製品を工場側で在庫を持てと言われたそうだ。倉庫代は当然上乗せしていただけない。
発注者・供給者のパワーバランスを背景にした不公平な申し入れだ。(私は工場サイドの人間なので、こう感じてしまう)

しかし「倉庫を借りれば賃料が必要になる」という常識にチャレンジすれば顧客にとってオンリーワンの工場になる。

生産リードタイムを短くできれば、顧客からの出荷指示で生産を開始。通関手続きが終わり通関検査が始まるまでに出荷することができれば、倉庫は必要なくなる。
製品仕様が工程の後ろの方で決定される同類の製品であれば、共通中間在庫を持つことにより、見かけ上のリードタイムを短縮できるだろう。

残念ながらご相談を受けた工場の製品は、一番最初の工程で製品仕様が決定してしまう。中間在庫方式では対処できない。しかしここで諦めてはいけない。知恵を絞ってリードタイム短縮にチャレンジしたい。
これからの時代は「タイムイズマネー」を越えて「タイミングイズマネー」になるだろう。


このコラムは、2020年1月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第930号に掲載した記事です。

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失敗を恐れない勇気

軽装の女性客、行き先は冬山 決意したタクシー運転手

 奈良県宇陀市の近鉄榛原(はいばら)駅前で1月中旬、タクシー運転手の森田義彦さん(68)はひとりの中年の女性を乗せた。女性が告げた行き先は東吉野村の高見山の登山口。標高1248メートル、冬場は登山客に人気の山だ。

(以下略)

(朝日新聞デジタルより)

 女性乗客の様子がおかしい。タクシー運転手は気がつき女性に話しかけるが、女性は上の空。運転手・森田さんは意を決して車を止め「命を絶とうとしてるんと違う?」と問いかけ、榛原駅まで戻り交番に女性を預けた。

初めて会った人に「自殺しようとしてないか?」と問いかけるには相当の勇気が必要だっただろう。その勇気が一人の命を救った。

我々の生産現場でも同様なことはある。
改善のアイディアを思いついたが上手くいかなかったらどうしようと、躊躇する事があるだろう。ここで勇気を出して行動しなければ、進歩はない。

「駄目元改善」という言葉がある。
「ダメでもともと」上手くいかなくても、命まで取られるわけではない。
「ダメなら元に戻すだけ」今まで問題はあっても生産できていたので、改善できなくても、元に戻せばいいだけ。
「駄目元改善」はこの二つの意味を持っている。

駄目元改善の極意は「金をかけない」だ。
改善のために立派な生産設備を導入してしまうと、元に戻せなくなってしまう。極力LCA(ローコストオートメーション)を目指す。設備を作る前に効果を検証する。

以前リードタイム短縮のためにインライン乾燥炉を検討した。半田付け部分に絶縁材料を塗布し、まとめてラインアウトし自然乾燥後に次工程に投入していた。この工程だけで2時間停滞時間が必要だった。生産スペースの都合上インライン乾燥炉は1m以下にする必要がある。ここでいきなり乾燥炉を作ってしまうと乾燥が不完全となる可能性がある。
ここでエイやっと設備発注するのは「勇気」ではなく「蛮勇」だ。

小型のコンベアを段ボールで覆い布団乾燥機を使って温風を吹き込んで実験。コンベアのスピード、温風の温度設定を確認してからインライン乾燥炉を発注した。
この改善だけでリードタイムが2時間短縮できた。

失敗を恐れない勇気に必要なのは、とりあえずやってみる、駄目元の組織文化だと思う。試しにやって見てダメならば、別のアイディアを考えれば良いだけだ。


このコラムは、2020年2月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第940号に掲載した記事です。

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原因と言い訳

 発生してしまった失敗の原因を探求し、再発を防止する。類似の失敗が発生しないように水平展開をする。さらに失敗を抽象化しまだ発生しない問題を未然防止する。

ここで重要なことは、正しく不良原因を見極めることだ。

例えば、100台生産ロットの部材発注時に1台2個使いの部品を100個しか発注しなかった、という問題を考えよう。業務システムを使っていれば、この様な問題は発生しないだろう。例題と思ってお付き合い願いたい。
発注担当者はExcelの部品表を確かめながら、発注伝票を作成。その際にミスが発生した。発注伝票はリーダが確認するが、見逃してしまった。

ここでその発生原因(間違った伝票を作成した原因)と流失原因(間違った伝票を見逃した原因)を分析し対策をすることになる。

発注担当者は「風邪気味でぼんやりしていた」
リーダは「仕事が忙しく焦っておりチェックが不十分だった」
発生原因、流出原因に、体調や心理状況などの人為的要素を入れてしまうと、「体調が悪くならない様に健康管理を徹底する」「体調が悪い時は休む」「忙しくても焦らない様に精神強化する」「リーダを増員する」などという、実現不可能または困難な対策しか考えつかない。

「ぼんやりしていた」「忙しかった」というのは原因ではなく「言い訳」だ。
言い訳に対して対策を考えても現実的な効果のある対策は出てこない。
ぼんやりしていると間違ってしまう、ということは「難しい」「複雑」「煩雑」などの原因があるはずだ。したがって、ぼんやりしていても問題が発生しない様にするのが本当の対策だ。
忙しいとチェックの時間がなくなる、という言い訳は作業改善で時間確保する方向に改善しなければならない。

例題は、業務システムの活用や、Excelのマクロなどで自動チェックができる様になるはずだ。
より複雑な問題でも、原因分析の結果が「言い訳」になっていないかどうか見極める。言い訳は、「ぼんやりしていた」「忙しくて焦っていた」の様に個人的な体調、心理的状況に依存している場合が多い。


このコラムは、2020年2月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第937号に掲載した記事です。

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