カテゴリー別アーカイブ: 生産改善

単機能人材

 中国で生活していると色々な場面で,仕事が細分化され,それぞれの仕事に人が割り当てられているのを見る.

レストランに行くと,入り口にいるチャイナドレスの女性が客を席に案内する.それで彼女の仕事は終わりだ.次にテーブルの食器を準備する服務員が来る.この服務員に料理をオーダすることは出来ない.担当が違うのだ.メニューを持って来てくれれば,運がいい方だ.
その後黒服を着たオーダ受付係が来る.
料理を運んで来る者も,運んで来るのが仕事だ.テーブルの上に料理を並べたりはしない.別の服務員がテーブルに並べる.
皿を下げに来た服務員にお勘定を頼んでも,別の人が勘定書を持って来る.
全ての作業が役割分担されており,お互いにその分担線を越えたりはしない.
キャッシャー担当は,他がどんなに忙しくとも持ち場を離れることはない.
このような組織は,相互の連携が重要となるが,運が悪いと延々と待たされることになる.

オフィスの近所には,靴を生産する零細工場がいくつかあるが,採用募集の貼り紙を見ると,ミシン工,裁断工,手縫い工,雑用をこなす普工と細分化されているようだ.

品質保証部の中も細分化されている,受け入れ検査,工程内品質管理,出荷検査,品質エンジニア,顧客クレーム担当,ISO担当,それぞれに管理者がおり,作業者がいる.

このような組織は往々にして,部分最適となりがちだ.自部署のエゴで仕事をしがちなので,更にこれらを束ねる管理者が必要となる.

製造現場も同様であり,班長は自工程で決められた量だけ決められた時間内に仕上げることだけが仕事だと思っている.改善は別の人がやるモノ.へたをすると,品質は検査係の仕事だと思っている.

作業員やスタッフの流動性が高いために,この様なスタイルとなったのだろう.各自の作業責任範囲を狭くして,短期間で熟練出来る様になっている.しかしこの方法は,流動性が高いという問題を解決する対策にはなっていない.毎日同じ仕事をしていれば,成長感を感じられず転職して行くことになる.悪いことに,意欲の高い者から辞めて行く.

ある工場では,加工の前処理作業を一人のベテラン作業員が担当していた.彼女が辞めてしまうと,別の作業者が熟練するまでの間,生産が停滞する.他の作業員の育成をする必要があるが,経営者は彼女は病弱な夫と子供を抱えており,辞めたりしないと言い切っていた.従業員一人一人の家庭の事情まで把握できており,立派な経営者と感じたが,それが本当の従業員のためになっているとは思えない.

その工場では彼女一人しか出来ない作業だが,作業そのものは単純な研磨作業だ.他の工場に転職しても,同じ様に高い給与がもらえるとは思えない.更に悪いことに,そのベテラン作業員は自分の職位を守るために,他の作業員に作業のやり方を教えたりはしない.

従業員思いの経営者ならば,彼女が辞職した後も生活できる様にするだろう.
単機能人材に,高い給与を払ってやることが思いやりではない.それでは飼い殺しだ.

多機能人材を育成すれば,どこの工場に転職しても良い給料が得られる.これが本当の意味での「雇用の保証」だと思う.

多機能人材がどんどん育つ仕組みを作れば,自社の経営効率も上がる.
製造現場では,セル生産方式などを導入するためには多能工を育成しなければならない.作業員ばかりではなく,スタッフも多能工化を進めることが必要だ.
まずは,現場の班長たちに改善も自分の仕事だと理解させてはいかがだろう.

こちらもご参考に
単機能人材
続・単機能人材


このコラムは、2012年7月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第268号に掲載した記事に加筆しました。

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PK活動

 PK活動というのは「ピカピカ・カイゼン活動」のことである.まずは職場の掃除を徹底し,職場や生産設備をピカピカにする.

効果は職場がピカピカになって気持ちが良いだけではない.
職場や設備をいつもピカピカにしておくとちょっとした異変にすぐ気がつくようになる.

いつも油で汚れた床だと,機械から油が漏れていても気が付かない.
設備を毎日拭き掃除をしていると,設備のガタや緩みにすぐに気が付く.

ピカピカにすると言うことは単なる清掃ではなく,予防保全活動である.
小さな異変にいち早く気がつき,問題が発生する前に対策が打てる.

そして職場の整理・整頓を徹底する.
整理・整頓の対象は物だけではない.工程も整理・整頓する.
こうすることにより,工程の流れや作業のムダが良く見えてくる.

工程の流れが良く見えると,不必要な運搬や,流れのつなぎ目で無駄な作業をしているのに気が付く.
作業者の動きをじっと見ると無駄な手の動き,作業のムラ,無理な姿勢が見えてくる.
これらを徹底的に減らしてやれば,生産改善ができる.

いわば整理・整頓・清掃を徹底的にやり生産性を上げるという活動である.

生産改善のために自動機を導入する.すばらしいことだが,まずはPK活動,5S活動のように身近な改善をすることだ.こういう現場の活動を飛ばして自動設備を導入しても,ムダも一緒に自動化してしまうことになる.


このコラムは、2008年7月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第43号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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まとめ造りの無駄

 日系、中華系を問わず多くの生産現場でまとめ造りをしておられるのを、見かける。
一つの工程で複数の作業がある場合、一つの作業を全てのワークに施してから次の作業も同様に全てのワークに施す、このような作業方法を「まとめ造り」と呼んでいる。
それに対して、一つのワークに全ての作業を施し工程の作業を完成させ、順にワークを完成させて行く作業方法を「一個流し」と呼んでいる。ベルトコンベア作業は必然的に「一個流し」作業となる。

先週訪問した工場でも「まとめ造り」をされていた。
各工程で、加工ロット分のワークをまず作業台に並べる。まとめ造りで全てのワークに1作業ずつ作業し、工程作業を完成させる。その後机の上に並んだ作業済みワークをコンテナに入れて、次工程に送る。こんな作業方法を採用しておられた。
コンテナからワークを取り出し作業台に並べる、作業台に並んだワークをコンテナに戻すと言う作業が無駄だ。ベルトコンベアはなくても、一個流しは可能だ。未加工ワークをコンテナから取り出し、全ての作業を完了させた後、加工済みコンテナにワークを入れる。一個流しで作業をすれば、取り置き動作を省ける。従って一度に加工する個数が多ければ多いほどまとめ造りの無駄は多くなる。

一緒に現場を案内してくださった日本人指導者は即座にこの理屈を理解された。
しかし現場のリーダ達は、なかなか納得してくれない(笑)「絶対にまとめ造りをした方が速い」と譲らない。習慣による思い込みだろう。

こういう場合は、いくら理論的に教えても効果はない。体験で腑に落ちる様にしなければならない。教えても、今までの経験や学習によって積み上げた知識がそれを否定すれば、新たな学びは発生しない。体験する事により、今までの経験や学習を通して、新たな知識を作り出す事が出来れば学びが発生する。
つまり「学び」とは、上から与えられて発生するモノではなく、体験を通して自分の中で作り上げるモノだ。

「一個流し」の優位性は、以前このメルマガでご紹介した「封筒貼り」実験で体験できる。

「まとめ造りvs一個流し」↓

まとめ造りvs一個流し

批量制造vs一个流

10枚分の封筒貼り実験で、一個流しの方がまとめ造りより1/3近く速かった。


このコラムは、2015年11月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第450号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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まとめ生産

 先週はある工場の訪問指導をした.

典型的なまとめ生産をしていた.
まとめ生産をすると効率が悪く,品質も改善できないと指摘をした.しかし経営者様は,ウチはまとめ生産をしていない.受注に合わせて生産していると反論される.

この経営者様に誤解をさせてしまったが,工程ごとにまとめて生産するという意味でまとめ生産という言葉を使っている.受注生産に対応するのは,計画生産だ.

この工場では,製品投入から組み立て完了までを工程ごとにまとめて生産.生産が完了したら,まとめて検査・梱包をする.
こういう生産方式をまとめ生産といっている.まとめ生産に対応するのは,一気通貫生産だ.

この工場の例では,部品投入から組み立て,検査・梱包までの各工程をドミノ倒しのように一工程ごと次々に生産するのを,一気通貫生産といっている.

まとめて作ると,取り置のムダが発生する.
工程間で一度製品をコンテナなどに入れて溜めておく,そしてそれをまたコンテナから出して,次の工程に投入することになる.この出し入れの手間と,モノを置いておく場所が取り置きのムダだ.

また半完成品を溜めて次工程に流すため,次工程で不良が発見された場合,大量に同じ不良が混入していることになる.一気通貫生産ならば,不良が見つかった時点で前工程の改善ができる.

以前別の工場で指導した事例では,電子部品のリードフォーミングを,翌日生産分をまとめて作業していた.このため翌日の組み立てで,この部品が基板に挿入できない不良が発生すると,昨日作った部品はほとんど手直しをしなければ基板に挿入できないことになる.このため大きな時間ロスばかりではなく,品質リスクも発生する事になる.

この時は組み立てライン横で,組み立てに合わせて電子部品の前加工をすることにした.当初現場リーダの強い反対にあった.前加工と組み立てラインのスピードが違うのでロスが大きいというのだ.

彼が言っていることは当然である.しかしそれは今までのやり方をしていたら,という前提がある.新しいやり方に合わせた改善をすればよいだけだ.

その他にも,10日以上かかっていた工程を,一気通貫生産で1.5日にしたことがある.また別の事例では,乾燥のためのまとめ生産していたのを,インライン乾燥を導入し24時間かかっていたリードタイムを4時間にしたこともある.

工程リードタイムが短くなれば,不良を発見した時に,原因工程がまだ生産中である.すぐに改善ができる.まとめ生産をしていると,不良を見つけても既に原因工程は作業が終わっており,その場で改善ができない.

まとめ生産を止めて,一気通貫生産をすればQCD全てにわたって改善することができるはずだ.
従来どおりのやり方に慣れてしまっていると,なかなか気が付かないものだ.更に生産方式を変える勇気を持たなければならない.勇気を持つためには,うまく行っている事例を見たり,聞いたりするのが一番だろう.


このコラムは、2011年7月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第213号に掲載した記事です。

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改善の火をともす

 クライアントの工場で改善活動をして成果を上げる.これが私の仕事だがこれだけでは不十分だと考えている.このまま仕事を終わってしまうと,いつしか改善の効果は元の木阿弥となってしまう.

工場のリーダや作業員が継続して改善するモチベーションを植えつけておかなければならない.

まず改善活動を始めるときに改善モチベーションを高めなければならない.
今まで現場で上司の指示どおりに仕事をしてきたリーダたちに,自分で考えて行動を起こさせるためには,それなりの初期エネルギーを与えないとだめだ.

まず小さな改善で成功体験をしてもらう.
しかしここですでに変えることに抵抗を示す.「変更する前に上司に話を通してほしい」といってくる.

無理もない.今まで改善の訓練を受けていない上に,よそ者のコンサルに「ここを変えよう」と言われているのだ.うまく行かなかったときの責任が自分に降りかかってくるのを恐れてしまう.

こういうリーダたちはほとんど死んだ目をしている.

私はこういうメンバーたちにまずミーティングをしている.
私「何のために仕事をしているの?」
 「??」
 「……」
今まで当たり前すぎて考えたこともないのだろう.誰も答えない.
しばらく待って
 「家族のため」
 「会社のため」
などと言う答えが返ってくることもある.

私「仕事をするのは自分のため.
  仕事を通して自分の能力を高めるのが目的.
  能力が高まれば,給料が上がり家族が幸せになる.
  会社も利益が上がる.
  そして自分自身が幸福になる」
そんな話をすると「!!」と目が輝きだすリーダが出てくる.

私「会社のためじゃなくて自分のために仕事をしなさい.
  知識ではなく能力を高めなさい.
  会社は給料をくれてそういう機会を与えてくれる場所だ」

こんな話をして目が輝きだす人が一人でもいれば,その人に改善の方法を教え成果を見せる.成功体験が自信となる.
次々と課題を与え自分で考えさせる.
最後には課題を自分で見つけさせる.

ここまでできるとそのリーダの背中はピカピカと輝きだす.
それを見ている周りのリーダの目が輝きだせば大成功だ.
急速に職場には背中がピカピカ輝いた人間が増えてくる.

言われたことをきちんとこなすリーダよりも,問題を見つけてくるリーダを重用する.そしてそういうリーダが評価される仕組みをきちんと作っておく.

こういうことができて「改善文化」が出来上がってくる.


このコラムは、2009年11月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第124号に掲載した記事に修正・加筆しました。

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業務のマニュアル化と業務改革

 今週のメルマガ「ホワイトカラーを「多能工化」 ノリタケが働き方改革」で、ノリタケの仕事改革・間接業務のマニュアル化による業務改革についてコラムを書いた。本日は、業務のマニュアル化と業務改革について考えてみたい。これは間接業務、直接業務を問わず共通の課題だ。

業務マニュアルを作るためには、まず標準作業を決める。その上で作業者に理解しやすい様に作業手順を文章化する。文章化には写真、イラスト、図表等が含まれる。

ちょっと余談だが、業務マニュアルで標準作業を決めても、作業は標準化されない。なぜならば教え方が標準化してないからだ。この点にフォーカスをするのが、TWI-JI(企業内訓練・仕事の教え方)だ。
TWI-JIでは、標準作業を分解し教え方のシナリオを作る方法で教え方を標準化している。

業務マニュアルの作成にしても、TWIの作業分解にしても、ただ標準作業を記述するだけではない。標準作業を記述する際に、本当にこの作業は必要なのか?より効率の良い方法はないか?と言う視点で作業を見直しながら作るべきだ。つまり業務マニュアル作成の過程で、業務改善をするつもりで取り組むのだ。

もう一つ重要な事がある。標準やマニュアルは作ったその日から改訂を考える。標準やマニュアルは、今日ベストな方法を決めただけだ。明日もそれがベストとは限らない。標準やマニュアルを放置すれば、作ったその日から陳腐化が始まる。

無印良品の業務マニュアル「ムジグラム」は現在13分冊2,000ページある。
ムジグラムは、現場からの要求で毎月20ページ程改訂されている。毎月1%は改善が進んでいると言う事だ。

つまり業務マニュアルを決めるだけではなく、業務改善を継続する。

まずは標準作業を決める。作業の「形」を作ると言う事だ。業務マニュアルが「形」を表現する。これが無いのを「形無し」という。形があるから、改善すべき所が見える。そして業務マニュアルが改訂される。この螺旋上昇循環を作る事が業務改革だ。


このコラムは、2017年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第554号に掲載した記事です。

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ホワイトカラーを「多能工化」 ノリタケが働き方改革

 ノリタケカンパニーリミテドは営業、管理部門などで担当ごとの業務を
マニュアル化する。家族の急病や子どもの行事で特定の社員が休んでも、いつ
でも他の社員が交代できる体制を整える。今後、育児だけでなく、高齢化を
背景に家族の介護が必要になる社員も増える見込みだ。ホワイトカラーの
「多能工化」を進めることで働き方改革を加速する。

記事全文

(日本経済新聞電子版より)

 このメルマガで、何度も「働き方改革」が「残業時間の上限規制」問題にすり替えられている、と苦言を呈して来た。日経の記事に有るノリタケの取り組みが本来の意味の「働き方改革」に向かう取り組みだと思っている。

記事にはノリタケの取り組みを次の様に紹介している。

  • 複数の社員で対応可能にする。
  • 営業・管理部門の職員が休みやすくする。
  • 社員の働きやすさを推進する。

その結果残業時間が短縮する事になる。残業時間の上限規制や残業時間短縮は働き方改革の目的でも目標でもない。本来の目的は、仕事の質と効率を上げ業績に貢献する事であり、目標はその目的に沿った指標となるべきだ。働き方改革の結果として残業時間短縮が実現するのだ。

ホワイトカラーの仕事は、能力が必要でありブルーカラーの様に簡単に多能工化する事は出来ない、と考えるのはホワイトカラーの思い上がりだ。製造現場で働く職人の仕事を習い覚える方がよほど難しいはずだ。

「事務処理仕事をマニュアル化し誰でも出来る様にする」と言うテーマでQCC活動をしたサークルが昔有った。これは子供が熱を出しても休めない、という切実な問題を解決したかった女性事務員が一人で取り組んだQCC活動だ。「サークル活動」と言う名前の通り、複数のメンバーで取り組む活動が本来のQCC活動である。それにもかかわらず、たった一人の活動が認められてQCサークル誌に取り上げられていた。
彼女は、課題を解決する過程で、参照しなければならない資料を減らすなどの改善を実施し、業務の効率化も同時に達成している。この活動の結果、彼女は子供の誕生日に休暇が取れる様になった。

こういう事が「働き方改革」だと思っている。

以前メルマガで無印良品の業務マニュアル「ムジグラム」をご紹介した。
第383号「無印良品のムジグラム」

この様なマニュアルがあれば、人財の流動化は怖くはない。新人でもすぐに作業に習熟出来る。必要な人財を必要な部署に回す事が出来る様になる。

従業員に取っても、職場で「余人を持って換えられない存在」と言う評価は嬉しいかも知れない。しかしそれは該当職場に「飼い殺し」にされていると言う事に他ならない。「余人も持って換えられない」と言う理由で、人生に訪れる何度かのチャンスをつかみ損ねているのだ。

本当に部下の事を考えるのであれば、「余人も持って換えられない」と言う耳触りの良い言葉ではなく、ジョブローテーションに出して成長を促すべきだ。

これが本当の意味の「働き方改革」であり、その結果人財は活性化し、企業の業績は良くなる。「残業時間の短縮」はその結果現れる現象に過ぎない。


このコラムは、2017年8月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第553号に掲載した記事です。

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品質記録

 先週と今週は、中国民営企業で現場改善を指導している。

現場で以下の様な状況を発見した。完成品の最終検査で不具合が見つかり、不良内容をテープに書いて不良現品に貼付けてある。大きな製品なので、不良品を入れる箱に入れる事は不可能だ。不良品置き場に隔離する事も、現実的ではない。不良を示すテープを貼る事は合理的だと思う。不具合内容も書いてあるので、後の修理処置も明確になる。

しかし驚く事に、この不良は記録されていない。

検査では検査数量,不良数量を記録している。不良の責任工程も記録してある。しかし不良内容が記録されていない。検査記録の目的が、我々の常識とは違っている様だ。彼らの検査記録は、出来高制の給与計算が目的なのだろう、と勘ぐってしまう。

彼らは、生産工程ごとに品質検査をしており、正しく加工出来た事を、1台毎に添付された検査記録表に記録している。ISOの要求だから記録している、と言う事なのだろう。

品質記録は自分たちの改善に活用すべきだ。各工程で発生した不良を記録する様に指導をした。品質管理担当の副総経理が、私の話を聞きながら熱心にメモしているのを見て、少し驚いた。このレベルから指導をしなければならない、と言うのは彼らの伸び代が大きいと言う事であり、私の貢献意欲が大いに刺激される(笑)

何かのコマーシャルで「物より記憶」と言うキャッチコピーが有った様に記憶している。社会が豊かになると、物への欲求より「思い出」の様な精神的な欲求が強くなるのだろう。

生産現場では記憶より記録が重要だ。

この工場の生産記録には、投入台数と完成台数だけしかなかった。更にかかった工数、正規工数よりよけいにかかった時間とその原因などの項目を追加した。

その結果色々な事がデータとして分かる。
生産現場のリーダや管理職は、部材が計画通りに揃わない事が、生産ロスの最大の原因だと主張している。しかしデータから判断出来る事は、生産機種の変更に最も時間がかかっていると言う事だ。

彼らの主張通り,部材調達問題の改善に取り組んでもそれほど大きな効果は見込めないだろう。機種変更段取り時間をいかに短縮するかが、優先課題だ。

この記録から、ある工程では、5月上旬を境に生産性が平均70%向上している事が一目瞭然となった。生産性が急増した境目は、前回指導時に与えた宿題が実施された日だ。

実はこの工程に与えた宿題は2S(整理・整頓)だけだ。
不要不急の部材を整理し、今生産する為の部材を適切な場所に整頓する。たったこれだけの事で生産性が70%向上した。


このコラムは、2016年5月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第146号に掲載した記事に加筆しました。

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記憶より記録

 2010年4月5日配信のメルマガで「記憶より記録」と言うタイトルでコラムを書いた。行動主義で部下を評価する、そのためには記憶より記録が重要だ、と言う論旨だった。

今回は別の切り口で「記憶より記録」について考えてみたい。

QCC活動などで問題解決のテーマに取り組む場合、正しく課題を設定する事、原因分析により真の原因を発見する事が重要となる。

原因分析には色々な手法があるが、QC七つ道具の「特性要因図(魚骨図)」を描いて安心してしまうサークルが多い様に思う。確かに特性要因図は、問題の原因となる要因を沢山挙げるための有効なツールだ。その要因が真の原因である事を確かめる。今回の原因ではないが、潜在的不具合要因に対策を検討しておく、などの様に活用する事が出来る。

QCC活動の指導をしている企業で、金属表面処理の不良改善に取り組んでいるサークルがある。何時間もかけて表面処理をした結果、不良となる。その間のコストだけではなく、再処理のために金属表面を化学処理で元の状態に戻す時間とコストが必要になる。彼らの目標は数%の改善だが、その年間費用改善効果は数100万元を越えている。(計算は直接損失コストしか含んでいないが、不良ロットの修復にかかるコストや、納期遅延による顧客信頼ロスを含めるともっと改善効果は高そうだ)

初めてQCC活動をする彼らも、特性要因図を描いた所で安心している(笑)
その結果、表面処理設備の真空ポンプと蒸着の陽極電源の故障が主原因と分析した。彼らは今までの経験(記憶)に従って,不具合発生の要因を挙げ、その中から主原因を選択している。やり方が間違っている訳ではないが、証拠を揃えながら原因分析をしなければならない。

彼らは、金属表面処理の専門家ではあるが、設備(真空ポンプや高圧電源)の専門家ではない。彼らが取るべきアプローチは、過去に発生した設備故障の原因と製品不良の因果関係を記録によって調べる事が最初だろう。その結果、何が主要因であるか絞り込む事が出来、更に真の原因を分析する事が出来るはずだ。真空ポンプや高圧電源は彼らに取って専門外の固有技術であっても、管理技術で分析した結果を元に、設備メーカと協力して原因分析、対策検討が出来るはずだ。

管理技術だけで問題解決をする事は出来ない。しかし「記憶」と言う不確かな状況証拠だけではなく、「記録」と言う客観的な証拠を元に管理技術を駆使し固有技術を持っている人の協力を求める。こういうアプローチで改善が出来るはずだ。


このコラムは、2017年6月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第534号に掲載した記事に加筆しました。

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作業に計画性を与える

 先週は以前指導をしていた工場に呼ばれ,訪問指導に出かけた.
3年近く経っているが,中国人幹部,現場のリーダ等当時指導したメンバーがたくさん残っており,楽しい仕事だった.

以前の指導で,生産に使用した部材ロットをトレースする仕組みを導入した.それがうまく機能していることを確認するために,部材倉庫を見に行った.三年経ってもきちんと運用が維持されていた.

部材倉庫で,出庫のためにキッティング作業をしている作業員を見かけた.キッティングとは,出庫部材を部品払い出し伝票に従い,倉庫の棚から集めて回る仕事である.
作業員が部材を集めて回っている台車に積まれた部品梱包箱の積み方が気になった.小さな箱の上に,大きな箱が積まれ不安定だったのだ.

こういう状況を見ると,即その場にいた作業員やリーダを集めて指導が始まる.

払い出し伝票を受け取った時に,すぐに部品を集めに回らない.
まず伝票を見てどう回れば,効率よく部品が集められるか考える.
この時台車に載せた部材の箱を並べなおすようでは,まだ事前の考える力が足りない.
毎日の仕事を通して,自分の頭を訓練しなさい.と指導をした.

まず彼らには,部材を不安定な積み方をして運搬した時のリスクに気がつく感受性を持ってもらわなければいけない.その上で,台車には下から順に大きなものから乗せなさい,と指導をするのは簡単だ.しかしそれでは不十分だ.
彼らは部品をピックアップするたびに台車の箱を積み替えしなければならない.こういう指導では1週間守れればよいほうだろう.

自分の頭を鍛えるためと教えれば,自ら進んでやるだろう.

指示された作業をするだけでは成長は無い.出庫伝票を吐き出してくるコンピュータの奴隷と同じだ.作業を自ら計画することにより,作業は仕事となる.主人は自分だ.

作業に計画性を与え仕事とする.仕事によって自分の能力を磨く.この様に,仕事を通して日々成長することを教えれば,自ら進んで仕事をするようになるはずだ.


このコラムは、2010年3月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第145号に掲載した記事に加筆しました。

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