カテゴリー別アーカイブ: 生産改善

工程を止める

 生産中に同一不良が大量に発生する。または顧客に不良が流出した。
原因や改善方法がまだ判明しない。しかし客先への納入が必要。この様な状況を経験された方は多いだろう。(経験したことがないという方は、ラッキーな方か、まだ経験が浅い方だろう)

タクトタイムで次々と製品が上がってくる工程で、同一不良が発生すれば、あっという間に大量の不良の山が積み上がる。
こういう状況になった時に生産を止められるかどうかで、その工程の監督者の力量が判断できる。当然顧客の要求納期に答えなければならない。生産を止めれば、納期遅延が発生する。このプレッシャーに打ち勝って生産を止めることは難しいだろう。

しかし冷静に考えれば、不良が発生したまま生産しても納期が間に合うとは言えないだろう。滞留する不良の山をあちこちに移動したり、修理要員を確保するなどが必要となり、生産効率も生産量も落ちる。
最悪の場合、工程内で発生した不良が顧客に流出する。

工程の監督者は、納期通りに「生産」をするのが使命と思っており、生産を止める勇気を持つことができない。しかし本来の使命は納期通りに「出荷」することである。したがって、納期通りに良品を生産しなければならない。

監督職が不良品の「処置」に奔走していれば、いつまでも不良は発生し続ける。勇気を持って工程を止め、不良原因を解析し対策を実施する事が必要な処置だ。


このコラムは、2017年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第579号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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海自機墜落「人的ミス」

海自ヘリ墜落は人為的ミス 青森沖3人不明

海上自衛隊のヘリコプターSH60Jが8月26日夜に青森県の竜飛崎沖に墜落、乗組員4人のうち3人の行方が分からなくなった事故について、海自は7日、人為的ミスが原因との調査結果を公表した。方位指示器の誤差を復旧する作業中、バランスを崩して墜落、水没したという。フライトレコーダーや機内の音声データ、救助された乗組員の証言から判断した。

海自は機体に問題がなかったとして、操作手順の徹底など再発防止策を実施し、事故後に自粛していた同型機の飛行を8日以降に再開する。

海自によると、護衛艦「せとぎり」搭載のヘリは夜間の発着艦訓練のため、午後10時33分に艦上を飛び立った。直後に機長席と副操縦士席の方位指示器の値に大きな誤差があることを示すランプが点灯した。

同48分ごろ、復旧作業で機体の姿勢や方位を表示する装置の電源を落とすと、飛行が不安定になり、機首が上がり速力が低下。機長が高さ90~120メートルで速力を上げようと機首を急激に下げ、そのまま墜落した。バランスを崩してから十数秒で落ちたとみられる。

やや強い風が吹いていたが、視界は良好だった。作業に集中するあまり水平線の見張りが不十分になり、乗組員が機体の姿勢が変わったのに気付くのが遅れたという。〔共同〕

日本経済新聞より

その他の新聞記事も合わせて要約すると、
防衛省が墜落したヘリコプターのフライトレコーダを解析した結果、事故原因は「機長が機体の姿勢をしっかり把握しておらず、搭乗員間の連携も不十分だったことが重なって墜落」と言う事で「人的ミス」と結論づけている。

その経緯は、

  • 磁気で方位を確認する方位指示器に誤差が発生とアラーム表示。
  • 機長は誤差を修正するため、操作マニュアルに基づき、方位指示器と連動し、機体の姿勢を確認する装置の電源をいったん切って再起動
  • 電源を切ったことで、この装置と連動している機体の姿勢を維持する機能も低下。
  • その操作で、結果機首が上がって速度も落ちるなど機体姿勢のバランスが崩れた。
  • その結果、機体は降下し続けて墜落した。

この間に「人為ミス」があったとは思えない。唯一人為ミスがあったとすれば以下の記述部分だけだ。

  • 副操縦士や機体後部の2人の航空士も機体の姿勢や周囲の状況を確認しておく必要があったが、これを怠っていたという。

これは墜落の直接原因ではなく、我々製造業で言えば「流出原因」に相当する。

この記事が正しいとすれば、発端となったのは「方位指示装置の誤差」だ。機長は操作マニュアルに従って、機体の姿勢を確認する装置をオフ・オンしてリセットしている。その結果、姿勢確認装置と連動している機体の姿勢を維持する機能も低下、墜落となっている。

機体の姿勢を確認する装置を初期化してしまえば、実際の姿勢とずれが生じ、機体の姿勢維持をする事は出来なくなる。

機長はこの操作をマニュアルに従ってやっている。これは人為ミスではなく、操作マニュアルの不備だ。
こういう状況で、副操縦士らが機体の姿勢や周囲の状況を確認した所で墜落を防ぐ事は出来なかっただろう。流出原因防止を強化しても、発生原因を除去しなければ事故再発は根絶出来ない。

根本原因対策は、
飛行中に方向指示の誤差が発生した時の対応の仕方を変える(マニュアル変更)
又は、飛行中に機体姿勢確認装置のリセットをした場合に、姿勢制御維持装置の処理方法を変える(飛行システムのソフトウェア変更)事になるはずだ。

命をかけて国を守ってくれている自衛官3名が行方不明となっている。
「人為ミス」と安易な答えを出すのではなく、きちんと再発防止につながる原因分析をすべきだ。


このコラムは、2017年9月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第562号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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改善と改革

 先週のメルマガで、ワインバーグの言葉を紹介した。
今週ももう一つ別の言葉を紹介したい。

「複雑なシステムは選択的に改造するより、破壊する方が楽だ」

参考:「ワインバーグの文章読本」

ワインバーグはシステムエンジニアなので、彼のこの言葉はシステム開発・メンテナンスに当てはめて考えるとすんなり理解できる。

膨大なシステムソフトを小改造することは困難だ。その改造が全体にどのように影響を与えるか、全て洗い出し、悪影響を与えないように改造しなければならない。ならばいっそ捨ててしまえ。というのが本日紹介した言葉の真意だろう(笑)

さすがに破壊したり、捨ててしまうことはできないだろうが、この思いは素人の私にも理解できる。サーバ・クライアント型やアプレト型のシステムが基幹ソフトにも入り込んできたのは、システムソフト業界のジレンマから来るのだろう。

同じことが生産現場の改善にも言えるだろうか?
選択的に改善がうまくゆかないから破壊する、というのは同様に無理だろう。
「選択的改善」がうまくゆかないのは、ソフトウェアの世界と比較すれば、単純だ。全体を見ずに部分を選択的に改善するからうまくいかない。
例えば10人で1時間に100台のサブユニットを生産しているラインの生産能力を10人で1時間120台に改善する。これが改善かどうかは、後工程の生産能力と需要に依存する。

後工程が1時間に100台しか生産できないのならば、10人で1時間に120個生産するのは改善ではない。8人で1時間に100個生産できるようにした方が良い。

改善はどこまで行っても改善であり、改革には至らない。生産改善でよく耳にする言葉だ。改善で20%、30%の効率を上げるより、どんと設備投資をして20倍、30倍の改革を目指したい。そんな要求は理解できるが、需要がないのに生産量を上げても意味はない。

コストを下げるためにたくさん造る。
大量生産により貧乏も大量に生産してしまった。20世紀に犯した我々の蹉跌はここにあるのではなかろうか?

いきなり設備投資で改革を目指すのではなく。金をかけずに改善を繰り返す。
改善をすることにより、見える世界が変わるはずだ。改善を繰り返し成長した視点で設備を検討すれば、より効率の良い設備が設計できるはずだ。


このコラムは、2018年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第675号に掲載した記事に加筆しました。

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改善とカイゼン

 改善のことを「カイゼン」とカタカナ表示する文章を見て違和感を覚えた。この文章は、現場が自分たちの都合のいいように勝手に作業方法を変更する事を「カイゼン」とカタカナ表記をしていた。
本日は改善とカイゼンの境目について考えて見たい。

辞書で改善を引いてみると以下のように出ている。

悪いところを改めてよくすること。「生活を改善する」⇔改悪。
[補説]トヨタの生産方式を象徴する言葉として世界で知られる。

(コトバンクより)

「改善」とは悪いところを改めてよくすること。
では「カイゼン」とはなんだろうか?[補説]に有るようにトヨタ生産方式を象徴する「KAIZEN」を示すものと考えるのが妥当のように思える。

上述の現場の都合に合わせて勝手に作業方法を変えるようなことは、どの様な表記をしようとも改善とは言い難い。例えば東海村JCO臨界事故の様に、燃料加工工程で正規作業手順を逸脱した「裏マニュアル作業」はどんな表記をしても改善とはいえない。

では「カイゼン」と「改善」の違いはどこにあるのか?
「改善」は辞書にある様に悪いところを改めて良くすること。
「カイゼン」は悪くなくても更に良くすること。
この様に定義してはどうだろう?

以下の様な例で理解していただきたい。
不良が発生する工程を不良が発生しない様にすることは「改善」。
作業効率を〇〇%向上させることは「カイゼン」。

作業効率を上げなければ出荷が間に合わない、または利益が確保できないなどのネガティブな状況を改めることは「改善」と表記する。一方、作業効率を上げ、短納期出荷で顧客満足を得る、または利益率を上げる事は「カイゼン」と区別して表記することになる。

日本のモノ造りの凄いところは、悪くなくても「カイゼン」を継続するところにある。

英語で言うならば我々が目指すのは“Improve”ではなく“KAIZEN”だ。


このコラムは、2018年4月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第657号に掲載した記事に加筆しました。

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生産改善

 もう10年近く前の話になる。従業員9,000人ほどの大工場の指導をしていた。人手による生産から脱却し、自動化生産をしたいという経営者の要求を受けた。自動化設備の設計製造をしている友人からの要請でプロジェクトに参加した。現状のラインをどのように自動化するかアイディアを出すのが私の役割だった。友人はアイディアを設備として実現する才能を持っている。

当時すごい勢いで上昇し始めた労務費の削減が狙いだが、経営者と話をすると従業員マネジメントの苦労から逃れたいようだった。

現場を見ると、なるほどと思える。
従業員の躾が全くできていない。製品の持ち出しを懸念して作業現場の出入りには保安係の身体検査がつく。従業員を信じていないから、現場も経営幹部を信頼しない。

現場の改善は日本人幹部がやる。
作業改善のために治具を製作し現場に投入するが、班長が治具の使用を拒否。信じられない状況だ。日本人幹部がトップダウンで生産改善をしても、それを現場が運用しなければ効果は発生しない。

この様な状況下で、全自動化したいという経営者の要求が生まれたのだろう。

ここまで極端な事例はあまりないと思う。
しかし現場の中国人幹部に改善の積極性が低い、という日本人経営者の不満はよく聞く。自ら改善提案ができない、改善活動に消極的な中国人幹部が多い。そのため日本人赴任者主導で改善を進める。そして中国人幹部の能力も積極性も養われない、という悪循環になっている様に思う。

生産現場の監督職までも積極的に改善活動に参加する「改善文化」を作る。そのためには、現場の管理職、監督職の能力と意欲を磨く必要がある。
全自動生産設備を導入すれば生産性は上がるだろう。しかし改善は一度だけだ。改善文化を磨けば改善は継続する。


このコラムは、2018年3月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第647号に掲載した記事に加筆しました。

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トップダウン改善

 色々な工場でQCC活動の指導をしている。QCC活動の場合は、職場の問題点や課題を自ら発掘し改善するボトムアップの活動だ。一方経営者から課題を与えられ改善活動をする事も有る。こちらはトップダウンの改善活動となる。

同じ改善活動であるが、少し様相が変わる。
両者の活動にテーマ名をつけると、トップダウン改善とボトムアップ改善の違いが際立つ事が有る。

トップダウン改善の場合
「自動化により○○工程の生産性を2倍にする」
「セル生産方式により多品種少量生産に対応する」

これらのテーマは、トップダウンで自動化の投資をする、セル生産方式を導入すると言う事が決まっている。つまり改善方法(「自動化」「セル生産方式」)がトップダウンで与えられている。

ボトムアップの場合は生産性を2倍にすると言う課題解決にどんな方法が有るかと言う所から考える。結果的に自動機を導入する事になるかも知れないが、課題を解決する方法から考えるので改善の方法はテーマ名に入らない。

「生産性を2倍にする」と言う課題に対し、同じ条件で倍作る、半分の人で作る、半分の時間で作る、又はそれらの組み合わせなどを考える事が出来る。自動化はその解決方法の一選択肢となる。

どちらが良い悪いではない。既にやる事が見えている場合はQCC活動をするよりトップダウンで改善プロジェクトにした方が手っ取り早い。

課題解決方法から考えなければならない活動はQCC活動の方が良いだろう。QCC活動の場合、メンバーの問題発見能力、課題解決能力を高める効果がある。与えられた仕事ではなく、自ら作り出した仕事なので活動意欲、達成感などが強く感じられる、と言うメリットも有る。

改善リーダ

 生産性、品質不良の改善などをお手伝いするのが私の仕事だ。当然未知の技術分野の生産現場、未体験の生産現場もある。過去に行った改善事例の応用で大抵の問題は解決可能だ。しかしお客様が直面している問題に解決策を100%提供できる訳ではない。

私ができることは、課題を定義する、その課題を解決するアイディアが出易い様に課題を構造化する。そして行動を起こす様に背中を押すことだ。このアプローチで顧客の改善リーダが改善を実践することにより、他の問題も同じアプローチで改善できる様にする事が狙いだ。

改善リーダの過去の経験や今後の経験によりネタは増える。あとは成功率5分ならば行動して見るように、改善リーダに勇気を持たせることだ。

ある日系企業で指導した時の中国人改善リーダは、中国人リーダには珍しく自分の能力を過大評価しない人だった。よく言えば「奥ゆかしい」若者だが、悪くいうと自分に自信がない様に見えてしまう。例えば「自分など能力がないから、ろくな改善ができない」などとよくいう。しかし彼は自分なりの発想で改善ができる。「君がやった改善だから、ちゃんと総経理に報告しなさい」と言っても「いやいや、恐れ多い」などと言っている。

こういうタイプの若者を初めて見る(笑)
どうして彼がこういう態度をとるのか、非常に興味がある。

上司の指導が影響しているのかもしれない。
彼の様に非定常作業で創造的な成果を出してもらいたい人材は、飴と鞭式の管理ではモチベーションは上がらない。失敗は成長の糧になるが、強い叱責は積極性を奪う。金銭的な報酬よりも、自己成長の機会を与える方がモチベーションが上がる。


このコラムは、2017年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第594号に掲載した記事に加筆しました。

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人的要因に対する改善

 5月から隔週で開催しているQCC道場が佳境に入っている。対策実施、効果確認のフェーズに入っている。目標を達成すると年間効果額が100万元、200万元と言うチームがある。大変楽しみだ。

今回は人的要因に対する改善対策のノウハウをメルマガ読者様にもお伝えしたい。例えば人為ミスで発生する不具合、技能の熟練不足で発生する不具合、を改善し不良削減や効率改善の対策を考える場合の考え方だ。

原因分析を「人為ミス」「技能不足」で終わってしまうと、往々にして「教育訓練の強化」「作業指導書に厳格に従わせる」などの抽象的かつ効果を実感出来ない対策となる。多分これでも効果は出るだろう。それは効果を測定する際に、サークルメンバーの思いがバイアスとなり作業員が頑張るからに他ならない(笑)この様な効果は長続きしない。

原因分析を「人為ミス」「技能不足」から更に一歩二歩深める事が、より良い対策を見いだすコツだ。

「人為ミス」がなぜ発生するのか?更に掘り下げると、作業方法が不適切とわかる。どのように不適切か?やりづらい、手間がかかる、と更に問題点を掘り下げる。そうすれば、作業方法を変える、治具を作る、自動化するなどのより具体的かつ効果が実感出来る対策を考えつく事が出来るはずだ。

「技能不足」も同様にどの作業のどういう技能が不足しているか、まで分析を深めれば、どんな作業訓練をすれば良いか、又は新人でも作業出来る様にするためにはどうすれば良いか、と言う具体的な課題を見つける事が出来る。


このコラムは、2017年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第535号に掲載した記事に加筆しました。

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一番確実な改善方法

今のやり方を変えて改善をする.
これは勇気が要ることだ.

改善できなかったらどうしよう.
前より悪くならないだろうか.
作業員は受け入れてくれるだろうか.
効率が良くなっても,不良が増えないだろうか.

等等不確実なことが山ほどあり,不安になる.この不安が自らの行動にリミットをかけてしまうことになる.

しかしたった一つだけ,確実なことがある.
それは,
「何もしなければ,改善は出来ない」と言うことだ.
これは,絶対に確実だ.

ネガティブな結果となる絶対確実な方法が分かっているのだ.
ならば,その反対をやればよいのだ.

ダメモトで,まずやってみる.これが改善の第一歩だ.
ダメモトとは,「駄目でも元々」,「駄目ならすぐ元に戻す」と言う意味だ.

やってみて駄目でも,へこむことは無い.
駄目な方法が一つわかったのだから,改善への道は一歩近づいたはずだ.二回やって駄目ならば,改善への道は二歩近づいたはずだ.
100通りの方法を試しても駄目だったらどうしよう.
心配する必要は無い.100通りやる前にうまく行ってしまうからだ.

人生の中で,貴方に解決できない問題は何一つ発生しない.解決できなかったと思っている問題は,ただ解決する前に諦めただけだ.


このコラムは、2010年11月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第179号に掲載した記事に加筆しました。

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データについて

 科学的なアプローチを取ろうと思えば,データが重要であることは皆さんよくご理解しておられると思う.

しかし何のためにデータを取っているのかが明確になっているだろうか?

班長さんが,本日の生産日報を書く.生産日報には生産投入数,生産完了数,不良数などが記入されており保管される.一ヶ月経つと一月分にまとめてファイルに閉じられる.一年経つとファイルから取り出し,紐で閉じ保管用の段ボール箱にしまわれる.

班長さんが毎日残業して日報を書くのは,段ボール箱に保管するためなのか?

活用されないデータはムダである.こんな極端な例はまれかもしれないが,ほとんど同じと言える例を何度も見てきた.なぜそのようなデータを取っているのかと聞くと「ISOのためです」という答えが返ってくるのが通常だ.

ISO9001には生産日報を記録しろと言う要求事項はない.

データを取る目的を明確にし,最適の方法でデータを残し,分析・活用をする必要がある.

例えば,半田槽の溶融半田の温度を測定するのは,設備が正しく運用されていることを確認する意味がある.しかしそれをエックスバー・アール管理図に書き込むのは全く意味がない.

同じくエックスバー・アール管理図を,部品の受け入れ検査に応用している例を見たことがある.具体的にはコンデンサの容量値を受け入れロットごとに抜き取り測定をし,エックスバー・アール管理図に書き込んでいた.一見統計的手法を活用して,データを管理しているように見える.しかし普通は部品工場での生産ライン・生産設備が毎回同じと特定出来ないので,エックスバー・アール管理図で問題を見つけるのはほとんど不可能だ.

不良手直し件数はあるが,不良内容の記録がない.これではデータは改善の役には立たない.

タッチアップ工程に,修正記録用紙があるがタクトタイムから考えて記録をしている暇がない.この様な工程から出てきたデータを分析に使えば,正しい判断は出来ない.

データを記録するのは,管理や改善のためである.
しかしデータだけを眺めているだけでは何も分からない.
データを採取している現場をよく観察しなければならない.


このコラムは、2010年6月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第157号に掲載した記事に加筆しました。

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