月別アーカイブ: 2021年9月

空気を作る

 「KY」は我々の業界では「危険(K)予知(Y)」という意味で使われる。「KYT」は危険予知訓練だ。
しかしいつの頃からか「KY」が空気(K)読めない人(Y)という意味で使われ始めた。昨今では「KY」を危険予知と解釈する人は少数派に陥っているだろう。

残念なことではあるが、組織人である以上「空気を読む」能力は必要だろう。
特に日本の組織は「KY」では仕事にならない面もある。「阿吽の呼吸」「打てば響く」が尊重される。しかし組織のリーダはメンバーに空気を読む能力を期待してはダメだろう。きちんと説明責任を果たすべきだ。

リーダーに必要な能力は「空気を読む能力」ではなく「空気を作る能力」だ。組織の存在意義、課題、目標を明確にし、それを実現するために、組織の空気を作る。
今時「男は黙って××」とか「良きに計らえ」なとというリーダもないだろうが、メンバーが自ら動くように空気を作る。当然黙っていてはダメだが、いちいち指示しなくてもメンバーが動けるようにしておくということだ。


このコラムは、2021年7月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1166号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

失敗事例の活用

 失敗を失敗に終わらせない。他人の失敗をも経験値として共有し、失敗を未然防止する。そのために失敗原因を特定し、その対策を考え設計や製造法を改善する。

 自己の失敗を教訓として対策を考え・実施するというのは当たり前のことだ。
市場で発生してしまった不良の原因を調査し、再発しないように製品設計や生産方式を改善する。

これだけではまだ不十分だ。
この失敗体験を組織に蓄積しなければならない。これが不十分だと、組織メンバーの世代が交代するたびに同じ不具合が発生することになる(こういう事例は少なくない)。

過去の失敗事例の当事者だった設計者は、役職がつき設計に直接タッチしなくなっているだろう。上司の検図で設計の不備を発見するのも容易ではない。

私が前職で品質保証を担当していた時、失敗事例を網羅したチェックリストを作成した。設計者は設計完了時にこのチェックリストに従って確認をする。
そしてそのチェックリストを上司とともにレビューする。この時の上司の役割は、設計者がチェック項目の意味を理解できているか確認すること。理解が足りないと判断した時は指導する。

このチェックリストは、過去の失敗事例(暗黙智)を形式智に変換する仕組みとした。従ってチェック項目の意味を伝えなければ形式的な確認しかできないだろう。そのため設計者と上司の対面によるダブルチェックとした。


このコラムは、2021年8月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1171号に掲載した記事です。このメールマガジンでは、市場不良などの事例から再発防止対策のヒントをお伝えしています。

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新規・珍奇技術

 以前ご紹介したプラスチック製インペラの燃料ポンプのリコールが拡大している。

「デンソーの燃料ポンプ」

通常はプラスチック材料をグリースなどの油脂が付着する環境では使用しない。
ガソリンもプラスチック材料を侵し、膨潤、破断などの不具合を発生させる。今回の回収は耐油脂製プラスチック材料の強化・ポリフェニレンスルフィド(PPS)を使用している。ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有しガソリンが付着しても問題はないはずだ。だが、成形時の温度が低いと、樹脂密度が低くなりガソリンにより膨潤する。

市場不良発生により、初めてこの現象に気がついたというのではお粗末だ。
当然新規材料なので分からなかったということはありうるだろう。

燃料ポンプに使用することを決定した時点で、使用環境で変形などの変化が発生しないことを確認すべきだ。なぜなら燃料ポンプのインペラに関して過去から、燃料ポンプの寸法制度、ゴミの巻き込みなどで回収騒ぎを起こしている。このことに着目すれば、「プラスチック・インペラの寸法精度」というキーワードが出てくるはずだ。もちろん加工精度には問題はない無かろう。しかし使用中の変動も考えるのが設計者の役割だ。

新規・珍奇技術を採用する時は十分な検討が必要だ。
新規技術を採用すれば、同業者の一歩前に出られる。この誘惑に勝つのは困難だろう。
珍奇技術を採用してしまうと業界標準とはならず、供給性や価格で不利になる。

しかしナーバスになるだけでは、競争力のある製品は作れない。
事前に想定できる事態を列挙し、事前に対策することで問題を回避したい。


このコラムは、2021年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1172号に掲載した記事です。

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ユーザ・エクスペリエンス

 「おもてなしの経営学 アップルがソニーを越えた理由」という本を読んだ。

著者の中島聡氏は、初期の月間アスキーに高校生アルバイトとしてプログラムを書いたりしていた伝説の人である。またマイクロソフトでウインドウズのユーザインタフェイスを設計した人としても有名だ。

「ユーザ・エクスペリエンス」という言葉はソフトウェア・ユーザビリティを越えた「使いごごち」のような概念の言葉である。中島氏はこの言葉に「おもてなし」という日本語を当てている。

ギーク(エンジニア)オタクっぽい本であるが、製品やサービスをどう設計しなければならないか、という観点で読むとモノ造りへのこだわりが見えてくる。

造る側(サービスを提供する側)のこだわりは「床屋の美学」(自己満足)である。ユーザのためのこだわりを持たなければならない。

ビルゲイツのこだわりは市場を取ること、相手に勝つこと。
一方アップルのスティーブジョブスのこだわりはユーザに感動を与えること。
このこだわりがあるからアップルはコンピュータメーカから脱皮できた。

これが「おもてなしの経営学」である。


このコラムは、2008年10月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第55号に掲載した記事です。

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老彭に比す

yuē:“shùérzuòxìnérhàoqièlǎopéng(1)。”

《论语》述而第七-1

(1)老彭:彭祖。中国の神話の中で長寿の仙人。孔子は彼を大変尊敬している。

素読文:
いわく:“べてつくらず。しんじていにしえこのむ。ひそかに老彭ろうほうす。”

解釈:
孔子曰く:“私は古代の教えを伝えるだけで、自分の説を説いているわけではない。それでも老彭と肩を並べる所まで来たと思う”

我々から見ると、孔子のこの言葉は極端な謙遜にしか思えません。

無料工場診断

 先週の無料工場診断は、いつもと違い工場からの依頼ではなく、販社さんからの依頼であった。
納期、不良などで困っておられる販社さんから自社工場の改革をしたいというご要望である。

工場を訪問してみると、作業員をドンと並べて生産する前時代的な生産方式であった。品質を保証するための仕組みも不十分と見た。

生産性はあまり考慮していないようだ。
例えば、完成品は梱包箱に入れられラインエンドに積み上げられている。この一山が、QCチェックを受けると2名の作業員が箱をベルトコンベアに載せ製品倉庫担当の作業者が待つエリアに送り込まれる。倉庫担当者2名はコンベアで送られてきた箱をパレットに並べ倉庫に搬入作業をしている。

皆さんはこの作業のムダが見えるだろうか?

コンベアに乗せて、下ろす。この作業は何も付加価値を生んでいない。
コンベアに製品を載せている作業員2名は全く無駄な作業をし、倉庫担当者にコンベアから製品を下ろしもう一度積み上げるという無駄な作業を発生させている。

ラインエンドにパレットを置き梱包作業者、またはミズスマシが梱包完了品をパレットに積む。
QCチェックが終わったら倉庫担当者が各ラインエンドに引き取りに来る。
こうするだけで2名の作業者は削減でき、箱を積み上げる無駄な作業も1回省略できる。

またこの工場は納期問題を多発させているにもかかわらず、膨大な完成品在庫を持っている。
多分生産計画のやり方に何か問題があるはずである。完成品在庫を半分にするだけで、莫大な利益が出るはずである。

いずれにせよ、たくさん宝の山を抱えたすばらしい工場である。
多分あっという間に30%は生産性が上げられるであろう。
QCDすべてにわたって大きな改善が出来そうである。


このコラムは、2008年10月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第56号に掲載した記事です。

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大阪市の電車型おもちゃに不具合 電池が60度まで過熱

 大阪市交通局は22日、市営交通案内所などで販売していた電車型玩具「スルッとKANSAI どこでも電車 大阪市交通局66系」に、電源を切った状態でもコントローラー内の電池が60度近くまで過熱する不具合が見つかったと発表した。被害の報告はないという。
発売元の「スルッとKANSAI」は同種玩具5種類の販売を中止し、発売済みの商品については不具合があれば点検済みの商品との交換か返金に応じる。

この記事には原因が書いてないが、製造不良により電池を過放電させるような短絡路ができていたのであろう。

では何故この不良が見つからなかったのか?
電池で動作するこの製品の機能検査は、電池ではなくDC電源を使ったのではないだろうか?
DC電源ならば1A軽く流せても、電池にとっては厳しい値となる。

また検査に電池を使っていても機能検査が短時間ですんでしまえば、気がつかないこともありうる。

検査項目に消費電力を入れておけばこのような不良は発見可能になるはずだ。単純にDC電源に電流制限をかけておくだけでも良いだろう。

このようなよその製品の事故記事から、自社製品の不良未然防止対策を考える事が出来る。
このような事例を集めて自社製品用のFMEA(故障モード影響解析)の項目を充実してゆく事が出来る。

今回の事故の教訓は
「ショート事故は0Ωショートとは限らない」ということだろう。


このコラムは、2008年8月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第48号に掲載した記事です。

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台湾・韓国企業の夜逃げ

香港日本商工会主催のセミナーで香港工業会のスタンレー・ラウさんのスピーチを聞きました。

短い時間であったので概要のみでしたが、台湾企業の「夜逃げ清算」はベストソリューションだと冗談をおっしゃっていました(笑)

私のセミナーでは「夜逃げ」は推奨しませんが、もっと事例を交えて具体的な戦略のお話をしました。

スタンレー・ラウさんのスピーチにご興味を持たれた読者様があったようなので、もう少し詳しく説明することにする。

毎年労働者の最低賃金が上昇し続けている。その上昇幅は十数%である。
今年の電機労連の賃上げが1000円だからその絶対額でも華南地区の賃金上昇のほうが大きい。

また中国政府の政策変更により、ローテク産業に対し「来料加工」の優遇政策が取り消されている。これにより今まで優遇を受けていた税金還付がなくなる。

追い討ちをかけるように元高、材料費の高騰である。

このような経営環境の悪化に経営を継続できなくなる工場が増えてきた。
工場をたたんで、もっと労務費の安い中国内陸やベトナムに転出しようにも今年から施行されている「新労働契約法」によりままならない。
会社をたたむ時に従業員を解雇することになり、従業員の勤務年数にあわせて「経済保証金」を支給しなければならないからだ。現有の設備を売り払ったところで、「経済保証金」がまかなえない。

そんな窮地に陥った企業が夜逃げをしているのである。
生産設備も、原材料、完成品もそのままにしてある日突然経営者が姿をくらませてしまう。

日系の企業では考えられないことだが、台湾、韓国系の企業で夜逃げをしてしまうところがでている。

これで一番戦々恐々としているのが、中国のローカル政府である。
「来料加工」という制度は、工場には法人格がなく、鎮などのローカル政府が建物と従業員を来料加工廠に貸していることになっている。従って夜逃げをされてしまうと、労働者に経済補償金を払わねばならないのは、ローカル政府なのだ。


このコラムは、2008年7月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第42号に掲載した記事です。

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勝てる戦略

谷、準決勝で敗れる 五輪3連覇ならず

 柔道女子48キロ級準決勝で、谷亮子(右)はドゥミトル(ルーマニア)に敗れる

北京五輪は2日目の9日、五輪3連覇を目指していた柔道女子48キロ級の谷亮子(トヨタ自動車)が準決勝で敗れ、3位決定戦に回った。

(asahi.comより)

  ジムで運動をしながら実況中継を見ていたが、明らかに格下の選手に負けてしまった。大変残念な結果になった。

ドゥミトル選手は「負けない作戦」で戦っていたように見える。自ら組まない。
相手に組ませない。こういう試合を見ているとフラストレーションがたまる。

一方われわれの戦いの場である世界の工場中国の戦況はどうだろうか。
「最低賃金の上昇」「新労働契約法の施行」「原材料高」「元高」不利な状況がそろっている。今までどおりの戦略で戦っていては必ず負ける。

雇用コストの上昇を上回る生産改善を狙う。
原材料・元高に負けない付加価値を生み出す。

「勝てる戦略」を持つ必要がある。


このコラムは、2008年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第第第46号に掲載した記事です。

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人に知られざるを憂えず

yuē:“huànrénzhīzhīhuànzhīrén

《论语》学而第一-16

素読文:
いわく:“ひとおのれらざるをうれえず、ひとらざるをうれうるなり。”

解釈:
世間に認められないことを憂えず、世の人々の能力を知らないことを憂う。

憲問第十四-35で孔子は自分の能力が治世に活かされないのを嘆いて「我を知るは天のみか」と言っています。さすがの孔子も晩年には少し愚痴っぽくなったのでしょうか。