デンソー燃料ポンプ


 低圧燃料ポンプのインペラ(樹脂製羽根車)において、成形条件が不適切なため、樹脂密度が低くなって、燃料により膨潤して変形することがあります。そのため、インペラがポンプケースと接触して燃料ポンプが作動不良となり、最悪の場合、走行中エンストに至るおそれがあります。

(トヨタホームページ・リコール情報より)

 トヨタ車に使われたデンソー製・燃料ポンプ内部のインペラに不具合があり、リコールとなっている。

ガソリンポンプ部品に樹脂が使われていると知り驚いた。プラスチック部品のソルベントクラックを引き起こす筆頭がガソリンだと思っていた。ガソリンタンクは金属製だと思っていたが、調べてみるとプラスチック製もある。

当然燃料ポンプのインペラの材料もガソリンに対する耐性を持っている。インペラには、ガラス繊維やタルク(ケイ酸マグネシウム)を含有した強化・ポリフェニレンスルフィド(PPS)だということだ。
成形時の金型の温度が低いと結晶化度が低くなり、樹脂(PPS)の密度が低下。PPSの内部に生じた隙間にガソリンが侵入してインペラが膨潤した。膨潤変形したためインペラが回転しなくなる。というメカニズムのようだ。

金属製インペラならば、プレス加工で簡単に作れるはずだ。それでも樹脂製にするメリットがあったのだろう。

リスクのある技術を製品に応用する際には、事前に十分な検討により未然防止を仕掛けておくべきだろう。

統計的ばらつき:材料のばらつき、設備のばらつき、作業のばらつきなど依存的事象:成型条件(温度、圧力、時間)作業方法など

これの検討によりリスク要因が常に管理範囲となるよう仕組み仕掛けを用意すべきだろう。
この事例は「成型温度の管理が不十分だった」という学びだ。


このコラムは、2020年11月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1054号に掲載した記事です。

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