月別アーカイブ: 2020年8月

米国人とマスク

 安倍首相がアベノマスクをしている姿は、スリラーバーク住人・ペローナの忠実なペット・クマシーを想起させる。失礼ながらTVで姿を見るたびに笑いを堪えている。

しかし米国・トランプ大統領がマスクをしている姿はほとんど見かけない。
米国は、「個人の自由」が何よりも優先する社会だということらしい。つまり他人に感染させるリスクより、個人の快適さが優先するのだろう。

日本には、個人よりその所属集団を優先する風習が今でも残っている。つまり個人より家族、家族より地域、地域より国家。人によって所属集団をどこまで広げるか個人差はあるだろう。戦時中は国家第一に極端に振れた。不幸な経験を持つ日本人が今だに組織依存の風習を捨てきれない。長い歴史で培われた風習は簡単には変えられないのだろう。
米国はほんの200年の風習が変えられない。黒人差別はいまだに残っている。

米国内でトランプ大統領がマスクを着用していないことを非難するつもりはない。しかし日本を訪問する際はマスク着用をお願いしたい。まぁ彼が大統領任期中に日本を訪問することはなかろうが。私人としての来日ならば、友人との交流だろう。どちらも私人であれば、誰も咎めないだろう。


■■ 編集後記 ■■

最後まで読んでいただきありがとうございます。

「スリラーバーク」「ペローナ」「クマシー」などの固有名詞を説明なしで使ってしまいましたが、尾田栄一郎「ワンピース」に登場する地名、人名です。


このコラムは、2020年6月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第999号に掲載した記事です。

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言の行いにすぐるを恥ず

yuējūnchǐyánérguòxíng

《论语》宪问第十四-27

素読文:
いわく:“げんおこないにぐるをず。”

解釈:
子曰く:“君子は口ばかりで行動しないのを恥ず。”
孔子は為政-13xiānxíngyánérhòucóngzhī行動が先で言葉は後だ、と言ってます。行動が言葉以下であれば、何をか言わんやです。

失敗する人が成功する

 以前何度か、成功の反対は失敗ではない、という趣旨のコラムをメルマガに書いた。

成功の反対語は何?
続・成功の反対語

成功の反対語は失敗ではなく、むしろ失敗は成功の秘訣だと思う。
優秀な経営者の失敗例を見てみよう。

  • スティーブ・ジョブズ(Apple)
    LisaやNewtonの開発などの失敗例は多くあるが、ジョブズの最大の失敗は自ら招聘したジョン・スカリーにApple社を追い出されたことだろう。
  • ビル・ゲイツ(Microsoft)
    マイクロソフトの最大の失敗はモバイルOSの覇権争いに敗れたことだろう。
  • マーク・ザッカーバーグ(Facebook)
    彼は「長年にわたり、私は皆さんが想像できる限りほぼすべての失敗を経験してきた。多くの技術的なミスや割に合わない取り引きをした。信用すべきでない人たちを信用し、才能ある人たちをふさわしくないポストに就けた。重要なトレンドを見落としたり、乗り遅れたりすることもあった。相次いで製品を送り出しては、失敗を重ねた」と言っている。
  • ジェフ・ベゾス(Amazon)
    彼はイーベイのオークションビジネスを真似しようとして見事に失敗。Amazonのプラットホームを他社に貸し出すサービスを始めて失敗している。

 優秀な経営者ほどたくさん失敗しているのではなかろうか。失敗経験がカンを育てる。それが成功につながる。

スティーブ・ジョブズはAppleを追い出されたおかげで、ピクサーを起業し、Appleに復帰後iPhoneを世に送り出している。
ビル・ゲイツはモバイルOSは取れなかったが、マイクロソフト帝国は健在だ。
マーク・ザッカーバーグのFacebookはアクティブユーザが20億人、売り上げ1兆円規模。Facebookは世界一の人口を有し、FacebookよりGDPが小さい国はいくらでもある。
ジェフ・ベゾスの失敗は、アマゾンマーケットプレイスとしてリベンジした。

失敗をしない経営者は成長しない。失敗しないように消極策ばかり選ぶので成長しない。


このコラムは、2020年7月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1009号の編集後記に掲載した記事です。

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モノ造りからコト造り

 何度か「コト造り」に関してメールマガジンに書いた。

「モノは売らない,コトを売る」
「コトづくり」

今回もコト造りについて考えてみたい。
バルミューダの寺尾玄社長の話をラジオ放送で聞いた。
寺尾玄社長は、高校を中退。スペイン、イタリア、モロッコなど、地中海沿いを放浪。帰国後音楽活動をしていた。バンド活動を辞めたのちバルミューダを起業しておられる。モノ造りの経験はない。
彼は創業の思いをこう言っている。
「アップル、パタゴニア、バージンは自分たちがやりたいことをビジネスにしている。それは顧客を感動させ、それを共有することだ。」と言っている。

アップルは説明するまでもないだろう。アップルが提供するのはコンピュータやスマホではない。それらを使うことによって得られる感動体験だ。そのため彼らの社名から「コンピュータ」がなくなった。

パタゴニアはアウトドア用品を製造・販売している。
彼らの企業理念は「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」である。

バージンは、航空産業、音楽産業、携帯キャリア、映画館、鉄道、金融、宇宙産業、F1など多角企業グループだ。全二社とは全く違う業種の会社だが、彼らに共通しているのはモノやサービスを提供するだけではなく、提供したモノやサービスを通して顧客に感動を提供することだ。

バルミューダの最初の製品は扇風機だ。彼らが提供しようとしたのは扇風機ではなく「夏の午後を吹き抜ける心地よい風」という感動体験だ。空気清浄機、調理家電、照明器具どれも感動体験を商品コンセプトにしている。

最近スピーカをリリースしている。
寺尾社長は、自身が音楽活動をしていたので、音響製品は造る気はなかったと言っている。
音響製品のメーカは、いい音を作りたいと考えている。しかしミュージシャンはいい曲を作りたいと考える。「モノを作る」と「感動体験を提供する」の違いはここにあるようだ。


このコラムは、2020年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第978号の編集後記に掲載した雑感です。

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生産と消費

 生産と消費はセットだと考えていた。つまり生産者があるから消費が発生し、消費者があるから生産活動が行われる。この相互関係が春節休暇前までは私の中で常識だった。
しかしコロナウィルス禍以降、生産≪消費の生活となった。日々家に籠って本ばかり読んでいる。読書は知的生産活動のように見えるが、読書によって得たモノを活用して初めて生産活動といえる。読書そのものは消費活動だ。

昨日は開高健の「フィッシュ・オン」を読んだ。

子供の頃、釣りのことばかり考えていた時期がある。
釣られた魚が可哀想に思え、釣った魚はちゃんと食べることにした。魚を消費することにより「釣り」という遊び(消費活動)が生産活動になるような気がする。開高健は「キャッチ・アンド・リリース」を釣り師の美徳と考えている。この考え方は、捕えた魚を再生産のサイクルに戻すことであり、消費活動をわずかでも生産活動側に戻そうという姿勢かと思う。

生産者があるから消費者がある、消費者があるから生産者がある、という考えは間違いではない。しかし生産者は消費者でもあり、消費者は生産者でもあると気が付いた。

失業状態中の私はこの気付きで少し気が楽になった。閾値を超えるまで消費を極めれば、生産になる。
「コロナ後」を見据えて消費を極めようと覚悟を決めた。


このコラムは、2020年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第978号の編集後記に掲載した雑感です。

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新型コロナウィルス感染対策

 埼玉県では、パチンコ店の休業は予定通り5月6日で終了したようだ。自宅近隣のパチンコ店駐車場にはたくさんの車が停まっていた。

一方公共図書館は、休館を決めたがネットで予約した書籍を、図書館入り口で手渡すサービスをしばらく継続した。飲食店がテイクアウトに限定して営業を継続するのと同じ発想だ。自宅幽閉中の私はこのサービスに即飛びついた(笑)しかしネット予約貸し出しのサービスは程なく停止。5月6日の休館終了後にネット予約貸し出しが再開するものと期待していた。しかしネット予約は再開されることはなく、休館が6月30日まで延長された。

行政の要求にかかわらず営業を継続したパチンコ店があった。そこに遠方より客がやってくる。そんな残念なニュースを忸怩たる思いで見ていた。一方で零細企業や飲食店が営業を継続できずに倒産しているニュースもある。

医療関係者は、感染の危険を冒して仕事をしてくれている。
ドラッグストアでは、心ない客の罵詈雑言に耐えて仕事をしてくれている。
ゴミ回収車の運転手にも、感染の危険があるはずだ。

公務員には倒産の心配はない。業務停止で自宅待機になっても給与は保証されているだろう。
図書館員が新型コロナ禍に貢献できるとしたら、本を貸し出すことにより人々を家に閉じ込めておくことではないだろうか。


このコラムは、2020年5月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第980号に掲載した記事です。

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緊急避難

 2月19日、東莞から日本に戻りました。
移動の制限、濃厚接触の回避策、感染の疑いがある者の早期発見対策などなど、広東省の感染拡大防止対策は有効に機能しているように思えます。アパートの窓から見下ろす大きな商業施設の周辺は人影はほとんど見えません。間引き運転の地下鉄にも、乗客はまばらです。被感染の危険性はあまり感じられませんが、アパートに篭っているだけで仕事がありません。お客様はそれぞれ少ない従業員で生産を立ち上げるのに精一杯です。私の出番はありません。そんなわけで一旦撤退を決断し、日本に戻ってきました。

地下鉄、バスを乗り継いで広州白雲空港に行きました。東莞南城発の空港バスは平時1時間に2便ほどあったはずですが、1日9便に減っています。地下鉄も大幅減便。それでも地下鉄、空港バスともガラガラです。「濃厚接触」にならないよう距離を置いて乗車できます。その上にマスク二重、ゴーグルで完全武装。

国外に脱出する中国人で空港は混雑していると予想してましたが、ほとんど人はいません。ラウンジも職員はほとんどおらず、飲み物、食事のサービスも最小限となっていました。

JALはいつもより小さな機体を使っていましたが、ガラガラ。平時と違い他の乗客との距離を置くため、後方の座席を予約しました。最後方の中央4座席が埋まっていたので、一つ前方の席を予約していました。しかし搭乗して見ると、最後列4座席は乗客はいません。急にキャンセル?空港での健康チェックで搭乗できなかった?色々疑念が湧きましたが、とりあえず安全サイドです(笑)

羽田空港着陸時に東京湾の中程に大型クルーズ船が見えましたが、問題の客船かどうかはわかりません。

二重マスクとゴーグルでモノレール、JRと乗り継ぎ新宿に出ました。

新宿で私の前方を歩く一団はビックカメラの大きな袋を提げていました。会話から中国人旅行客とわかりましたが、一人もマスクをしていません。日本は安全と信じ込んでいるのでしょうか?しかし自分が感染しているリスクを考えれば、最低でもマスクをすべきです。
やはり中国の方が安全かもしれないと嘆息しました。

新宿からは濃厚接触のリスクを減らすため、奮発して特急列車で帰りました。自宅では自主的に宅内隔離生活をしています。たくさん読書ができそうです。


このコラムは、2020年2月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第945号の編集後記に掲載した雑感です。

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文猶質、質猶文

chéng(1)yuē:“jūnzhìérwénwéi?”
gòngyuē:“(2)zhīshuōjūnshé(3)wényóuzhìzhìyóuwénbàozhīkuò(4)yóuquǎnyángzhīkuò。”

《论语》颜渊第十二-8

(1)棘子成:衛国の大夫
(2) 夫子:大夫以上の人に対する尊称
(3)驷不及舌:一度口に出したことは取り返しがつかない。舌から出た言葉は驷(四頭立ての馬車)でも追いつかない。
(4)鞟:鞣し革

素読文:
きょくせいいわく、くんしつのみ。なんぶんもっさんと。こういわく、しいかな、ふうくんくや。したおよばず。ぶんしつのごとく、しつぶんのごときなり。ひょうかく犬羊けんようかくのごとし。

解釈:
衛国の大夫・棘子成曰く「君子として重要なのは内面的な質である。外面的な見かけや作法は重要ではない」
これを聞いた子貢は「残念ながら、あなたの意見には同意しかねる。内面は外見に表われ、外見は内面に影響する。虎や豹の毛皮も鞣してしまえば犬や羊の毛皮と同じになってしまう」と諫めた。
礼儀作法の「型」を極めれば、その人の内面が磨かれる。武道の「型」を極めれば何事も恐れぬ胆力を得る。
逆も然り。

不立文字

 不立文字(ふりゅうもんじ)とは禅宗の教義を表す言葉で、文字や言葉による教義の伝達のほかに、体験によって伝えるものこそ真髄であるという意味。

通常私たちは,文字や言葉を使って他人とコミュニケーションをしている。
しかし相手に伝わる情報は言葉よりも、表情、仕草などの言葉以外の要素によるところが多いと言われている。口角を上げる、ウィンクをする、親指を立てる。こういった仕草が言葉以上の情報を相手に伝えることもある。

しかし不立文字で得る情報は,相手の感情ではなく禅宗の教義だ。単純な事柄ではない。言葉を使わずに禅宗の教義を理解することができるのだろうか?

禅宗には「只管打坐」という言葉がある。真理を会得するためには教えを請うのではなくひたすら坐禅をせよ、という意味だ。

真理とは何かを百言を費やしても理解できないであろう。だからこそ不立文字であり只管打坐なのではなかろうか?

百言を費やして説き教えるよりは、自ら体験することで理解させる。

このように簡単に言葉にしてしまうと、ありがたみがなくなるが(笑)「教える」とは、体験を通して自ら理解させることではないだろうか。


このコラムは、2019年9月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第870号に掲載した記事です。

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AIは製造現場を救うか?

製鉄所、AIの導入進む 設備の老朽化・団塊世代の退職 トラブル防ぐ熟練者のノウハウ、継承

 鉄鋼大手が、製鉄所での操業トラブルに悩んでいる。「鉄は国家なり」と称された高度経済成長期につくった設備の老朽化に加え、団塊世代のベテラン技術者の退職が相次いでいるためだ。現場でのトラブルを未然に防ぐノウハウをどう継承していくか。解決策として期待されるのがAI(人工知能)の導入だ。

全文

(朝日新聞ディジタルより)

 中国の製鉄業が国策の後押しで勢いづいているらしい。

一方日本の製鉄業界は操業トラブルに悩んでいるという。
国内最大手の日本製鉄は18年度、大分や和歌山の製鉄所でトラブルが相次ぎ、想定より約100万トン(約2%)の減産を強いられた。
国内2位のJFEスチールは18年度、国内3地区の製鉄所にある高炉の操業トラブルで当初の想定より約180万トン(約6%)の減産となり、追加の対策費として約100億円をあてた。

このような状況を打破するために、鉄鋼各社はAIの導入を進めていると朝日新聞は報道している。

日本製鉄は、効率的な生産計画づくりにAIの活用を検討している。顧客ごとの出荷形状に合わせ、かつ母材の無駄なく生産計画を立てられるようにする。
JFEは工場内のセンサーで検知した鉄鋼の温度や成分などをAIが分析し、製造中の鉄鋼製品に異常がないかを分析し品質を保証する。

これらの作業は現場の生産計画担当者や保守担当者の技能できちんとこなせていたはずだ。そうでなければAIに彼らの技能を落とし込めないはずだ。

社内に蓄積された技能や知見をAIに落とし込むことになんら異議はない。
しかしそれでよいのか?という気持ちを拭い去れない。

社内に蓄積された技能は暗黙知として代々伝わってきたはずだ。それは先輩が築き上げた暗黙知の上に、自分たちの知恵を代々積み上げてきたもののはずだ。AIに教えられて作業する職員はAIに言われた通りに作業をする。彼らに
先輩がやってきたように、先輩の暗黙知の上にさらに工夫や改善を積み上げることができるのだろうか?

機械に指示された通りに働く人間はいかにして創造力を磨くのだろうか。AIは好ましくない事例を発見すれば、ディープラーニングでアルゴリズムを修正することができるはずだ。しかしAIは「無」からは創造できない。

人間が創造力を放棄したら、進化はそこで停止するのではなかろうか。


このコラムは、2019年9月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第873号に掲載した記事です。

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