月別アーカイブ: 2018年2月

続・未然防止

 先週は御巣鷹山のJAL機墜落事故から、自社の未然防止対策に活かす事例を考えてみた。今週も公開されている失敗事例から未然防止を考えてみたい。

2004年3月26日六本木ヒルズの回転ドアに6才の男児が挟まれ死亡する事故が発生している。

失敗知識データベース

この事故にはいくつかの背景が有る。
見栄え重視:回転ドアの重量が2.7t有りオリジナル設計の3倍程度あった。
効率優先:訪問者の出入り効率を優先させるため回転速度を上げてあった。
効率優先:天井センサーの距離を1.6mからさらに40cm短くしていた。

これらの要因が重なり、身長が低い子供が死角となり挟まれた後も惰性で停止まで時間がかかった事が重大事故の原因となった。

それよりも重大な問題は六本木ヒルズ開業以来この故発生までの1年弱で大小の回転ドアで22件の事故が発生している事だ。事故が発生した大型回転ドアでは8才以下の子供が挟まれる事故が7件発生している。
このヒヤリハット(怪我をしていなくても重大インシデントと位置づけるべきだ)に対して、駆け込みを防止するための簡易ポールを立てるなどの簡便な対応しかしていない。

この対応を我々製造業の立場で考えると、不良発生の根本原因に対策をせずに流出防止対策のみを実施したと言う事になるだろう。工程内で発生する不良を徹底的に原因解析し、根本原因対策をしなければ必ず重大事故が発生する。

安全に優先すべき効率はあり得ない。


このコラムは、2018年2月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第631号に掲載した記事です。

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未然防止

 失敗に対して再発しない様に対策を考えるのは当たり前だ。さらにその上を考え、まだ発生していない失敗を未然に対策する。「失敗から学ぶ」というコラムはそんな思いで書いている。

ところで、品質改善や生産性改善の活動は成果を計測できる。しかし未然防止は、まだ損失が発生していない段階での活動だ。当然成果を計測することが出来ない。

しかし安全事故が発生した場合の損失、不良が顧客や市場に流出した場合の損失は莫大なものになる。不良が市場に流出し安全事故につながれば、回収、賠償など莫大な損失が発生する。即倒産の危機に瀕することになる。

ハインリッヒの法則によれば重大事故一件の陰にヒヤリハットが300件ある。
重大事故の損失コストは、ヒヤリハットの300倍では足りないだろう。効果を計測できないからといって軽視するわけにはゆかない。効果を考えるより未然防止を「文化」として全社に定着させることが重要だ。

ヒヤリハットから未然に事故防止を考える。
工程内不良を徹底的に再発防止する。
この様な活動が、安全事故、不良流出を防止すると考えている。

自社事例ばかりではない。
例えば御巣鷹山のJAL機墜落事故は、安全隔壁の修理方法が不適切だったことが原因だとわかっている。
この事例から、製造工程で発生した不良品のリワークがどの様な作業手順になっているか確認する。リワーク作業者の判断やスキルに依存している作業があれば標準化する。この様な活動が未然防止活動だと思う。地味ではあるが、おろそかには出来ない。この様な活動を称賛することで未然防止文化が醸成されると思うが如何だろうか。


このコラムは、2018年2月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第628号に掲載した記事です。

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続・因果関係と相関関係

 先週のメルマガ「因果関係と相関関係」では、相関関係を因果関係と間違えてしまうと問題は解決しない、と書いた。当たり前のことだが、ではそうならないためにどうするか、という肝心な部分が抜けていた。

もう一度先週の事例で検証してみよう。

“アイスクリームの売り上げ高と森林火災はどちらも夏に増えるので相関関係 がある。しかしそれは因果関係ではない。”

森林火災が発生する(結果)→アイスクリームの売り上げが高いから(原因)これはどう考えても成立はしない。因果関係を逆から読んでみると分かり易い。“アイスクリームがたくさん売れると森林火災が発生する。”これは論理的に成り立たない。

アイスクリームの売り上げが高い時に森林火災が多い。
森林火災が多い時にアイスクリームの売り上げが高い。
因果関係を逆にしても両者ともに成り立つ。
つまり相関関係はあるが、因果関係はないということだ。

不良発生(結果)→新人が作業したから(原因)
因果関係を逆から読むと、新人が作業をすると不良が発生する。一見因果関係のように見える。しかし新人が作業しても不良が発生しない場合もある。原因と結果を逆から読んだ時に原因→結果として成り立たない。

新人作業と不良発生の因果関係の間に、作業がやりにくい、作業に熟練か必要などの要因が隠れているから、相関関係はあるが直接の因果関係はない。

相関関係と因果関係を見分けるのは、相関関係は逆にしても成り立つ。因果関係は逆にすると矛盾する。と覚えておくと良いだろう。

しかし相関関係があるということは、因果関係が潜んでいる可能性がある。

森林火災とアイスクリームの例で言えば、
夏になると高温になる→アイスクリームが売れる。
夏になると高温低湿度になる→森林火災が起きやすくなる。
気候は制御できないかもしれないが、夏に火災予防活動をすることはできる。

新人作業と不良発生の例で言えば、
作業しにくい→作業不良が発生し易い→不良が発生する
新人→作業に不慣れ→作業不良が発生し易い→不良が発生する
つまり「作業しにくい」「作業に不慣れ」を解決すれば不良を減らせる。


このコラムは、2018年1月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第614号に掲載した記事です。

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因果関係と相関関係

 問題解決のための必須条件は正しい原因分析だ。一時的に問題が解決した様に見えても、正しい原因に対策出来ていなければ、問題は必ず再発する。

例えば「作業ミス発生」という問題の原因を調査した時に、作業ミスをした作業員の勤続年数を調査して見た。明らかに勤続年数と作業ミス件数に負の相関が見られる。特に1年未満の作業員の作業ミス件数が多いことがわかった。
従って作業ミスの原因は新人が作業をしたことにある。
ちゃんとデータにより確認をして、正しい分析をした様に見える。しかしこの調査で明らかになったことは、因果関係ではなく相関関係だ。

原因は「〇〇作業がやりにくい」「〇〇作業に習熟度が必要」となるはずだ。
そして対策は〇〇作業の改善となる。新人作業が原因となれば、新人には作業させない、とか教育訓練という非現実的または効果の期待できない対策となる。「〇〇作業がやりにくい」と原因が特定できれば、作業改善ができなくとも具体的な教育訓練方法を改善案とできるはずだ。

今「ジョブ理論」という書籍を読んでいるが、この書籍にもわかりやすい例で因果関係と相関関係の取り違いが紹介してあった。

アイスクリームの売り上げ高と森林火災はどちらも夏に増えるので相関関係がある。しかしそれは因果関係ではない。「ハーゲンダッツを買ったからといって誰もモンタナ州の森に火をつけたりはしない」

参考:「ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム」クレイトン・クリステンセン著


このコラムは、2018年1月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第611号に掲載した記事です。

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