月別アーカイブ: 2018年6月

答えを教えない教え方

 「教えない教え方」とは矛盾をはらんだタイトルだ(笑)

以前「答えを教えない指導法」というコラムを配信した。

このコラムでは「教える→覚える」という伝統的な教育方法とは違う「自分で考える・調べる」という行動促進型の教育といっていいだろう。
今回のテーマは「答えを教えないで教える」という矛盾をいかに止揚するかに挑戦する。大風呂敷を広げたが大した話ではない、と先にお詫びしておく(笑)

今QCC活動を指導している企業で、生産管理部門のサークルが初めてQCC活動に参加することになった。経営者も、初めて事務部門(間接部門)をQCC活動に参加させることになり、大いに期待している。しかし彼女たちは、何をしたらいいのか見当もつかなかったようだ。

30年以上QCC活動に関わってきている。「こういうことをやるといいよ」というのは簡単だ。そこをぐっとこらえて、「お客様はどんなことに困っているか聞いて見たら?」と質問した。
生産管理部門が服務を提供する直接のお客様は社内の製造部門、検査部門、仕入先だ。お客様のお客様(製品を購入する顧客)の要求は「納期通りに製品を納入する」ことだろう。これは100%達成しているという。

しかし社内の下流工程は、仕入先や前工程の遅延により顧客納期を守るために残業で対応しなければならない。

ではこれを解決しよう!と彼女たちはQCC活動のテーマに選んだ。
大変志の高いサークルだ。直接部門をサポートするのが間接部門なので、理にかなったテーマの決め方だと感心した。

じゃ具体的に何をする?というところで迷路に入り込んだ。
彼女たちは「生産計画の精度を上げれば解決する」というイメージを持っていたようだ。しかし仕入先や、社内工程の遅延は生産計画の精度が悪くて発生しているわけではない。部材の手配遅れや、歩留まりの悪化などの不測の事態で遅延が発生している。

部材メーカの納期遅れや工程の生産歩留まりを、生産計画部門が改善するのは難しい。彼女たちはここでつまずいていた。

製造の生産歩留まりを改善するのは、生産技術や製造部門だ。
歩留まりを見越して余分に生産計画立てることは、生産計画部門にも可能だ。しかしこれは本質的改善ではなく邪道だ。部材の発注を前倒しにするのも経営的に考えれば邪道だ。

では彼女たちに出来ることは何か、答えは喉元まで出てきている。
そこを「寸止め」でこらえている(笑)

教えてしまえば、理解出来るだろうし改善もできるだろう。
しかし考える力は身につかない。自分で考える習慣を身につけ、考える力を鍛錬しなければ、同じ問題は解けても、応用問題は解けない。

これ重要なことだと考えてる。
しかしどうも世間では、答えのない問題を解くことで思考力を鍛錬しない様だ。
高学歴で高成績の優秀な役人たちが「財政赤字は悪だ。消費税を上げて財政の健全化を図らねばならない」と大合唱している。彼らは、試験勉強で「過去の正解」はたくさん記憶しているけど、これから起きることに対する洞察力に欠けているのではなかろうか?

政府は国債をたくさん発行し、日銀はどんどんお札を刷って国債を買えば良い。
これに対し役人は、
過去の事例では、お金をたくさん刷ればハイパーインフレになる。
ギリシャやイタリアの様に、国債をどんどん出せば償還できなくなる。
と考える。

しかし現実を見れば、2%のインフレターゲットすら達成できていない。
ギリシャやイタリアと違い日本の国債はほとんど全て国内で消費されている。
ということを考えれば「過去問」と同じ答えを出しても正解にはならない。

ちょっとこのメルマガのテーマから外れてしまった。
素人の浅知恵とご勘弁いただきたい。

しかし、部下の育成に関しては答えを教えずに思考力を鍛える、というのは間違いではないと信じている。


このコラムは、2018年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第677号に掲載した記事に加筆したものです。

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答えを教えない指導法

 以前「答えのない質問」というタイトルの雑感を書いた。

答えがない質問の例として「フェルミ推定」と「父母未生のお前は何処にいた」という禅問答をご紹介した。

今回は小学校の教室で行われた設問をご紹介したい。
「虹はなぜ七色か?」

この質問には答えがある。
虹は太陽光が大気中の水滴に反射して発生する。
太陽光には全ての波長の光が含まれている(全ての色が含まれている)。
波長の異なる光は屈折率が異なる。
という原理を理解していれば、虹が七色である事を説明可能だ。

しかし、小学低学年の子供達はこの原理を理解していない。その子供達になぜ虹は七色か問い、クラスで議論させるそうだ。

同様に「桜の花は咲く前にどこにあったか?」という設問を与え議論させる。

この授業では、教師は何も教えず議論を聞いているだけ。

この教師の狙いは分からないが、「教える→覚える」という伝統的な教育方法にない効果がある事は容易に想像がつく。

この授業で物理現象や植物に関して興味を持った子供は、図書館に行き調べるかも知れない。自分で答えを求めて調べた事は、容易には忘れない。
自分で調べなかった子供も、後に物理の授業を受けた際に小学校の時の授業を思い出し膝を打って納得するだろう。「腑に落ちた」状態となれば、記憶に定着する。

この様な指導法は学校教育だけではなく、社会人に対する教育にも有効だと思う。企業内で行われる研修や、部下の指導で答えを教えない指導をする。
全てを、答えを教えない方法で指導にする事は、不可能かも知れない。教えてしまった方が手っ取り早い。

しかし、
教えずに考えさせる。考える過程で学ぶ。
教えずに失敗させる。その失敗から学ぶ。
こういう指導法の効果は高そうだ。

命取りにならない失敗をたくさん部下に経験させる事が出来るのが、優秀なリーダの条件かも知れない。


このコラムは、2016年10月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第496号に掲載した記事です。

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福知山線脱線事故

時事通信社

 JR西日本・福知山線脱線事故が発生したのは2007年4月25日。丸11年の先週いくつかの報道を目にした。

4月11日に配信したメルマガ第652号「組織事故」で福知山線脱線事故は組織事故の一つだったとご紹介した。

運輸安全委員会は、福知山線脱線事故の調査報告書を発行している。
全261ページ+別添資料の膨大な報告書だ。

簡単にまとめると以下のようになる。

原因:
 本件運転士のブレーキ使用が遅れたため、本件列車が半径304mの右曲線に制限速度70km/hを大幅に超える約116km/hで進入し、1両目が左へ転倒する様に脱線し、続いて2両目から5両目が脱線したことによるものと推定される。

以上の原因は、脱線に至る物理的原因だ。運転士のブレーキ操作が遅れた誘引があるはずだ。

誘引:
 事故発生前に伊丹駅で停止位置を通過してしまい、車掌が非常ブレーキをかけ停止位置に後退して停車している。運転士はこのミスを内緒にしておいて欲しいと車掌に車内電話で頼んでいる。
本件運転士は2004年6月に片町線下狛駅で所定停止位置行き過ぎ事故で13日間の「日勤教育」を受けている。日勤教育とは、重大インシデント、規約違反、ヒヤリハット事象を起こした者が受ける教育で数日から一月以上続くケースもある。懲罰的な要素が強い教育指導だ。本件運転士は日勤教育を避ける事に気をとらわれブレーキをかけるのが遅れている。
日勤教育には、事故またはヒヤリハットが発生した原因を分析する事が含まれているというが、本件運転士の日勤教育の記録を見ると指導官との指導問答、感想文のような本人レポートしか残っていない。

この脱線事故を組織事故としたのはここにある。
日勤教育を受けている間は、同僚運転士の目にさらされる事になる。
教育指導というより、数日間も説教を聞かされているだけ。
これではヒヤリハットや失敗を隠蔽する風習が組織にはびこり、ヒヤリハット事例で問題の未然防止どころか再発防止さえおぼつかなくなる。

ヒヤリハットや失敗を責任追及すれば、問題は隠蔽され必ず再発する。
ヒヤリハットや失敗を共有すれば、発生原因を分析し再発対策が可能となる。

失敗を称賛する必要はないが、失敗を学びに変え、再発対策、未然対策を称賛する組織文化を持つべきだと思う。

永田町の役人、旧国鉄、旧財閥系企業など古い因習があり、変わる事が難しいとは思うが、変わらねば恐竜やマンモスの様に死滅してしまうだろう。


このコラムは、2018年5月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第661号に掲載した記事です。

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韓非子

 韓非子は性悪説という先入観念があり,今までまったく興味を持たなかった.
しかし日本で,何も考えずに韓非子に関する文庫本を買った.長らく放って置いたが,最近ぺらぺらと眺めている.

韓非子の言葉にこんな説があった.

下君は己の能を尽くし
中君は人の力を尽くし
上君は人の智を尽くす.

自分の能力に頼るのは,下級のリーダ
人の力を活用するのは,中級のリーダ
人の智恵を活用するのが,上級のリーダ
ということだろう.

自分で何でもやってしまえば,部下が育たない.いくら高い能力を持っていたとしても,部下10人分の力を発揮できるリーダはいないだろう.従っていくら能力が高くても,それに頼っているうちは本当のリーダとは言えない.

部下の力を活用して,成果を挙げて初めてリーダと言えるだろう.しかし韓非子はこのレベルでは中級のリーダだと言っている.
つまり部下にいくら力があっても,リーダの指示に従わせるだけでは,たいした働きはしない.命令・指示に従う部下のモチベーションは高くはない.
部下の能力を,いかにしたら100%引き出せるかと,悩むことになる.

上級のリーダは,部下に自ら考えさせる.
自ら考えることにより,部下は成長する.そして命令・指示で動くよりは,自らの考えで動いた方がモチベーションは高くなる.
この場合は,いかにすれば100%以上の能力を部下が発揮するかを,考えることになる.

この話をクライアントの中国人幹部たちに話してみた.
一人がこの話に異を唱えた.彼曰く;
100しか仕事が出来ない人に150の仕事を与えたら,仕事の質が落ちる,本人は疲弊する.
良いことはない,と言う主張だ.

もっともに聞こえる主張だが,仕事に対する能力は仕事を与えることによってしか成長しない,と言うことを忘れているようだ.

100の能力の者に200も300も仕事を与えたらば,彼の指摘のようになるだろう.しかし少しがんばれば達成出来そうな目標を与える,そしてそれを達成することにより,部下は成長するはずだ.
その時に150の仕事をこなすための方法をこと細かく教えてしまうと,中級リーダと同じことをしていることになる.


このコラムは、2010年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第168号に掲載した記事です。

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工場の匠を引き出す設計

 Tech-On!に連載されたGT-Rの開発ストーリィが最終回を迎えた.

無から新たにモノを作り出す.その過程にはいくつも感動がある.
この連載にも,私の心にぐっとくるところがたくさんあった.

連載コラムの中にあった「工場の匠を引き出す設計」という考え方を紹介したい.

GT-Rは以前のスカイライン派生車種としての位置づけを離れ,独自の車として開発された.
トランスアクスルレイアウト,デュアルクラッチ搭載のトランスミッション等,走ることに特化した車としてデザインされている.

通常量産車は,工場での生産性を考慮して設計される.
つまり工場での造りやすさに配慮し,公差を大きくしたロバスト設計をする.しかし走行性能に妥協を許さず,組み立て精度±0.5mmを要求したのだ.

顧客が感じる価値「走る楽しさ」を実現するためには,コストをかける.従来の同一規格大量生産の考え方とは方向性が異なる.

そこには工場への信頼があった.
GT-Rを従来にない突出した車とするために,工場の「匠」的要素を盛り込む設計をした.工場の潜在能力を引き出す.工場で働く人々の能力を信じ,それを極限まで生かすことが,設計者の使命であり,本来のモノ造りの姿だ.

コモディティ化した車を量産することは,売り上げの確保に貢献するだろう.売り上げが確保できれば,雇用も守れる.しかし価格競争から自由ではいられない.常にコストダウンの努力が強いられる.
モノを造れば造るほど貧乏になる.

しかし顧客の価値観に基準をおいた製品は,高額であっても顧客が喜んで購入する.ランボルギーニと言う会社は年間1,600台の車しか販売していないが,売り上げは348億円だ.高品質高付加価値の製品を少量だけ造る.

薄利大量生産のモノ造りは,設備投資に大きな資本が必要となり,損益分岐点が高くなる.景気の変動によりあっという間に赤字転落することになる.

GT-Rは量産車スカイラインのラインで混合生産されている.従って,2分のタクトタイムで生産しなければならない.この要求にきっちり応えたのが,工場の匠の力だ.


このコラムは、2012年6月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第260号に掲載した記事です。

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犬から学ぶ

 私は食べ物に関しては,好き嫌いが全くない.唯一食べられないのは犬の肉だ.美味しくないから食べない訳ではない.騙されれば食べてしまうだろう.しかし犬の肉を食べた事を一生後悔することになると思う.私にとって,犬の肉を食べるという事は,人の肉を食べる事と同じだ.許されない行為なのだ.

生まれる前から犬と一緒だった.記憶にはないが,犬と一緒に縁側に座っている赤ん坊の頃に撮影した写真がある.それ以来私たち家族は,ずっと犬と一緒に生活してきた.

犬死,犬のように働く,○○のイヌなどなど,犬は不名誉な例え方をされる事が多いが,昔「犬に学ぶ仕事術」という本を読んで,得心したことがある.犬は何事にも興味を持ち,楽しんでいる,という著者の見解はすごく納得出来る.つまり犬のように働くというのは,楽しんで働くという事だ.

単身赴任の身では,犬を飼う事は出来ない.よその犬を見て楽しんでいる.オフスから見える中庭には,いろんな犬が散歩に来る.
その中の一頭の小型犬は,外に出してもらうと,一目散に走る.ただただ走る事が楽しくてしょうがないという風情で,爽快に走る.その走る姿を見ている私まで楽しくなる.

こんな風に仕事ができたらと思う.部下の誰かが,こんな風に仕事ができたら最高だが,まずは自分が楽しむ事だろう.自分が仕事を楽しんでいる姿を見て部下が楽しそうだと思ってくれたら,部下も変わるはずだ.眉間にしわを寄せて仕事をしていたのでは,誰も真似したいとは思わない.

最近昼休みに食事に出ると,散歩中のゴールデンレトリーバとよく出会う.彼女は,飼い主の言葉がわかるようだ.飼い主が歩道橋の階段を上がれ,と言うと一目散に駆け上がり,飼い主を歩道橋の上から見下ろしている.降りてこい,というとまた一目散に駆け下りて来る.
信頼関係があるから,言葉を越えたコミュニケーションでお互いの気持ちを理解し合っているのだろう.

犬と人間の間にも信頼関係が出来る.同じ人間同士ならば,話す言語が違っても信頼し合えるはずだ.

この一人と一頭の散歩には,もう一頭連れがいる.まだ生まれて2,3ヶ月の子犬だ.この子は,車の通行が激しい商店街をちょろちょろと歩き回る.ハラハラして立ち止まって見ていると,ゴールデンレトリーバが,さっと寄って来て子犬を歩道の方に導く.子犬をあやしながら,帰り道の方向に導いて行く.飼い主はその二頭を見ながら後ろからゆっくり付いて行く.

ゴールデンレトリーバと子犬は母子ではない.しかし彼女には,子犬を守るという意識がしっかりあるようだ.

しばし立ち止まって,犬たちを見ているだけで,いろんな事を教えられる.


このコラムは、2012年9月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第276号に掲載した記事に修正・加筆したものです。

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常識の壁を越える

 工程を改善するためには,「ダラリ」をなくせば良い.
「ダラリ」というの「ムダ・ムラ・ムリ」のことだ.「ダラリ」をなくせば,生産性だけではなく,品質も良くなるはずだ.

最近訪問した工場で,現場リーダが熱融着剥れ不具合の撲滅に手を焼いている工程を見せていただいた.

1本の材料を冶具にセットし,その端面を熱融着し輪にすると言う工程だ.

冶具は上開きになっており,1本の材料の両端をセット,端面を突き合わせて過熱する構造になっている.
驚いたことに,作業者は冶具の上蓋を開かずに横のスリットから差し込んでセットしている.上蓋は正しくセットされているか確認するために開かれるだけだ.

どう考えてもこの作業にはムリがある.
材料の断面と同じ形をした冶具のスリットから材料を差し込むという作業は簡単には行かず,時間がかかっている.また上蓋を開けて確認しても材料の両端面が正しく突き当たっていないので,何度もやり直しが発生する.
端面が正しく突き当たっていない状態で熱融着作業をすれば,融着部が容易に剥れてしまうだろう.

冶具の上蓋を開けて材料をセットすれば,簡単なはずだ.ナゼ,冶具の上蓋を開けてセットしないのか?と聞いても合理的な回答はない.とにかくだめと言われている様だ.

たぶん元々上蓋を開き材料をセットする手順だったのだが,何らかの不良対策か何かで,横から差し込んだら偶然改善された.その手順の効果を検証しないまま,対策として採用されてしまったのだろう.

論理的な整合性がない「常識」が存在すると,とにかくだめ,としかならない.これが不具合発生の主要因であったりすると,改善は不可能となる.原理に合わない「常識」は疑ってかかるべきだ.
自分たちで造ってしまった「常識」を超えることは,実は意外に難しい.

我々のような外部の人間から見ると,ナゼそんな「非常識」なことをしているのだろうかと思うことでも,気が付かなくなってしまう.

この「常識」を超えるコツは,現象とメカニズムを切り口に不具合の原因を分析する.その分析過程が原理に照らして正しいかどうかを,ステップごとに検証しながら進めることだ.

このような方法で,大元の物理法則(原理)に照らし合わせて考えるようにすれば,馴染みのない技術分野であっても,的を射た分析が出来るものである.

まずはだめな理由をはっきりさせ,その理由を取り除いてゆくことが改善だ.


このコラムは、2010年8月30日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第168号に掲載した記事に加筆したものです。

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亢竜の悔い

 「亢竜(こうりょう)の悔い」とは、天に昇りつめた竜は後は下がるだけなので悔いを感じる、という意味だ。栄える者は必ず衰える、盛者必衰の理だ。

では悔いを持たぬ様に天に昇りつめる努力を放棄すれば良いのだろうか?
あるがままの今を受け入れる。そんな禅的な世界観を持てば悔いはないだろう。
しかし現代の企業経営とは相容れないモノがある。
年度目標を毎年達成し続ける。毎年増収・増益を継続する。
変化する経営環境の中で、達成し続けるのは困難だ。達成出来る目標にすり替えれば、悔いの代わりに後ろめたさを感じるだろう。

目標だけを追求する限りこのようなジレンマを感じるだろう。
目標の手前にあるべき目的を明確にすることが解決策だと思っている。
目的とは何か。自社の存在意義と言い換えると分かりやすいかも知れない。

例えば企業経営の目的が「従業員の物心両面の幸せを追求する」であるとする。
この場合「給与」「福利厚生」「労働時間」などに具体的な目標が発生するかも知れない。しかしこの目標を達成しても、「従業員の物心両面の幸せを追求する」という目的は存在可能だ。こう考えれば、亢竜の悔いはない。

違う例を考えよう。
改善活動は不具合が存在する事により成り立つ、というパラドックスを内在している。つまり改善活動を継続すれば亢竜の悔いが発生することになる。
不具合がないのだから、皆で楽しく暮らせば良いではないか、このような考えが、盛者必衰の理を招く(笑)

QCC活動でも、あらかた問題点を解決してしまうと、亢竜の悔いが発生する。
それでも活動を継続しようとすると、どんどんつまらないテーマを考え、活動が形骸化する。QCC推進事務局から年間活動件数のノルマなどが課せられると、この傾向は加速する。

QCC活動の本来の目的「メンバーの成長を通して業績に貢献する」にフォーカスすれば、問題点の解決だけでは無くなる。新しい業務への挑戦、飛躍的な品質レベルの達成など、ありたい姿の実現がテーマになりうる。企業が成長する限りテーマは無くならない。
従来の問題解決型の活動とは違い、ありたい姿を実現すると言う課題達成型の活動となる。

また市場や顧客の要求が変化すれば、製品・サービスも変化せねばならない。
何を、どのように変化するかが活動のテーマとなる。

改善活動には「亢竜の悔い」はない。


このコラムは、2017年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第519号に掲載した記事です。

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ある経営者の急逝

 このメルマガにたびたび登場する原田則夫氏が12月12日に急逝された.
12月いっぱいで引退し日本に帰る予定であった.さぞかし無念であったろうと思うが,穏やかな死に顔で旅立たれた.

一晩原田師の棺に付き添い考えてみた.
きっと彼はすべてのことを成し遂げ満足感のうちに逝かれたのだと思う.倒産寸前のSOLID社を超優良工場に再生されたのも大きな業績だが,本当の成果は「原田式経営哲学」を通して育てた人財だ.

中国に来られて16年,「原田式経営哲学」により育成,啓蒙された中国人,日本人は4万人に達する.

SOLIDの職員や,以前の会社の部下たちを見ていて,これらの人財を残す仕掛けと仕組みが「原田式経営哲学」の本質だと実感する.

これらの原田チルドレンたちは,これからそれぞれの場で活躍し中国の発展を担う優秀な人財を輩出し続けるだろう.

下の経営者は金を残す.
並の経営者は金儲けの仕組みを残す.
上の経営者は人財を残す.

多くの経営者が「下」と「並」の間をウロウロしているのではないだろうか.

原田師の経営理念は

「素質の高い人を集め仕事を通して人を育て高効率・高品質・高報酬を目標に明るく自由闊達な環境下でお互いが感謝の心を持ち夢と自主性に満ちた理想工場を作る」

である.

私も「原田経営哲学」を受け継ぐ者として「理想工場」の実現を目指してゆこうと決意している.


このコラムは、2009年12月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第131号に掲載した記事に加筆したものです。

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