答えを教えない教え方


 「教えない教え方」とは矛盾をはらんだタイトルだ(笑)

以前「答えを教えない指導法」というコラムを配信した。

このコラムでは「教える→覚える」という伝統的な教育方法とは違う「自分で考える・調べる」という行動促進型の教育といっていいだろう。
今回のテーマは「答えを教えないで教える」という矛盾をいかに止揚するかに挑戦する。大風呂敷を広げたが大した話ではない、と先にお詫びしておく(笑)

今QCC活動を指導している企業で、生産管理部門のサークルが初めてQCC活動に参加することになった。経営者も、初めて事務部門(間接部門)をQCC活動に参加させることになり、大いに期待している。しかし彼女たちは、何をしたらいいのか見当もつかなかったようだ。

30年以上QCC活動に関わってきている。「こういうことをやるといいよ」というのは簡単だ。そこをぐっとこらえて、「お客様はどんなことに困っているか聞いて見たら?」と質問した。
生産管理部門が服務を提供する直接のお客様は社内の製造部門、検査部門、仕入先だ。お客様のお客様(製品を購入する顧客)の要求は「納期通りに製品を納入する」ことだろう。これは100%達成しているという。

しかし社内の下流工程は、仕入先や前工程の遅延により顧客納期を守るために残業で対応しなければならない。

ではこれを解決しよう!と彼女たちはQCC活動のテーマに選んだ。
大変志の高いサークルだ。直接部門をサポートするのが間接部門なので、理にかなったテーマの決め方だと感心した。

じゃ具体的に何をする?というところで迷路に入り込んだ。
彼女たちは「生産計画の精度を上げれば解決する」というイメージを持っていたようだ。しかし仕入先や、社内工程の遅延は生産計画の精度が悪くて発生しているわけではない。部材の手配遅れや、歩留まりの悪化などの不測の事態で遅延が発生している。

部材メーカの納期遅れや工程の生産歩留まりを、生産計画部門が改善するのは難しい。彼女たちはここでつまずいていた。

製造の生産歩留まりを改善するのは、生産技術や製造部門だ。
歩留まりを見越して余分に生産計画立てることは、生産計画部門にも可能だ。しかしこれは本質的改善ではなく邪道だ。部材の発注を前倒しにするのも経営的に考えれば邪道だ。

では彼女たちに出来ることは何か、答えは喉元まで出てきている。
そこを「寸止め」でこらえている(笑)

教えてしまえば、理解出来るだろうし改善もできるだろう。
しかし考える力は身につかない。自分で考える習慣を身につけ、考える力を鍛錬しなければ、同じ問題は解けても、応用問題は解けない。

これ重要なことだと考えてる。
しかしどうも世間では、答えのない問題を解くことで思考力を鍛錬しない様だ。
高学歴で高成績の優秀な役人たちが「財政赤字は悪だ。消費税を上げて財政の健全化を図らねばならない」と大合唱している。彼らは、試験勉強で「過去の正解」はたくさん記憶しているけど、これから起きることに対する洞察力に欠けているのではなかろうか?

政府は国債をたくさん発行し、日銀はどんどんお札を刷って国債を買えば良い。
これに対し役人は、
過去の事例では、お金をたくさん刷ればハイパーインフレになる。
ギリシャやイタリアの様に、国債をどんどん出せば償還できなくなる。
と考える。

しかし現実を見れば、2%のインフレターゲットすら達成できていない。
ギリシャやイタリアと違い日本の国債はほとんど全て国内で消費されている。
ということを考えれば「過去問」と同じ答えを出しても正解にはならない。

ちょっとこのメルマガのテーマから外れてしまった。
素人の浅知恵とご勘弁いただきたい。

しかし、部下の育成に関しては答えを教えずに思考力を鍛える、というのは間違いではないと信じている。


このコラムは、2018年6月8日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第677号に掲載した記事に加筆したものです。

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