月別アーカイブ: 2017年3月

競争優位の源泉

 企業にとって最大の競争優位の源泉は何だろう。
あなたは何だとお答えになるだろうか?
商品?
技術?
顧客?
生産設備?
サービス?

どれも正しい。しかしこれら全てが「人」によって生まれる。
競争優位を作り出す人が、本当の競争優位の源泉だ。
そう言う人を「人財(Human Capital)」という。資産だ。
「人材(Human Resource)」をいかに「人財」に育てるかが、企業発展の鍵と言ってよいだろう。つまり資源を資産に変える事だ。

余談だが、人には4段階ある。
「人財」企業活動の資産となる人。
「人材」企業活動の資源となる人。
「人在」いるだけの人。
「人罪」足を引っ張る人。

人材を人財に成長させる。
人罪や人在はせめて人材に成長させる。
企業活動を突き詰めれば、従業員を育て、従業員により、多くの社会的価値を創造する活動と言えるだろう。その結果企業にも従業員にも繁栄が得られる。

ではどうしたら従業員は育つのか?
人は「場」によって育つ。
「場」とは人が作り出す環境と言ってもいいだろう。「文化」と言い換えると分かりやすいかも知れない。人は人によってしか育てられない。人が育つ環境を企業文化にする事が、最大の競争優位となる。

QCC活動を指導している企業の総経理は、5Sにより従業員の心を変え生産効率を4倍にしている。5Sを企業文化とし、その文化の中で従業員を成長させて来た。更なる飛躍を目指し、従業員を「考える軍団」に成長させるためQCC活動を導入する事にした。毎年春節前に行われている経営計画発表会にて、QCC活動の成果発表会を実施している。先日第二回目のQCC成果発表会が行われた。今回は各チームともに、ダイレクトに業績に結びつくテーマを選定し活動が出来た。
「場」が出来ると企業の成長は加速される。


このコラムは、2017年1月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第521号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

出来ない理由が解決課題

 不良改善や生産改善活動をしている時に、出来ない理由を挙げる人を時々見かける。
「以前やってみたけど上手く行かなかった」
「その対策はコストがかかるからダメだ」
「会社のルール上それは出来ない」
等々「○○だからダメ」式の意見を言ってしまう人がいる。往々にしてリーダ格の人がこういう発言をする。するとチームの士気が一気に下がる。

「以前やってみたけど上手く行かなかった」という事は、違う方法でやれば上手くいくかも知れない。つまり上手く行かない方法が一つ分かったのだから、上手く行く方法を知るために一歩前進している。

ナットを締結する時に、何度もスパナをナットにセットし直す必要がある。ラッチ機構がついているスパナを使えば、一度セットしたスパナをそのまま往復すれば、締結する事が出来る。こういう話をすると、やってみたけどダメだったと言う。使った工具を見せてもらうと、ナットにセットする部分がナメてしまっている。これいくらだった?と聞くと30元だったと言う(笑)
ダメな理由は、工具が安物だったから。ちゃんとした工具を手に入れる、のが解決課題になる。

「コストがかかる」という問題は、改善コスト<改善効果という関係が成り立つのならば、「コストをかける」のが正解だ。改善コストの方が大きいのであれば、「改善コストを下げる」「改善効果を上げる」のどちらか、又は両方が解決課題になる。

「段取り替え後の初物検査に時間がかかる」という問題の原因を聞くと検査員が忙しくて検査待ちとなるためだと言う。では、製造部の自主検査にしようと考えると「品管が検査するのがルールだ」と反対する。
ではなぜ品管が初物検査をしなければならなのか?
作業員では正確に検査できない。
当事者が検査したのでは第三者チェックにならない。
等のダメな理由が出て来る。という事はこれを解決すれば、自主検査に出来るという事だ。


このコラムは、2016年12月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第508号に掲載した記事に加筆したものです。

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改善活動の役割分担

 QCCによる改善活動と、日常の改善活動には役割分担があってよいはずだ。
大掛かりな改善や、複数の部門の協力がなければ達成できないような改善はQCC活動に任せるのが良い。

QCC活動を指導している顧客で「顧客提供サンプルの合格率アップ」という活動をしているサークルがあった。事務機器業界の顧客には、サンプル提出後一発合格しているのに、
新規業界の顧客向けサンプルは、合格率が低いという。

この手の問題は、顧客の要求仕様を把握する営業、その要求仕様を図面に落とす設計、サンプルを製作する生産技・製造、品質を確認する品証の協力がなければならない。
したがってQCC活動に適したテーマと考えていた。

しかし活動内容の発表を聞いて考え直した。
今まで出荷した試作サンプルは、まだ3件しかないということだ。
ならば、QCC活動でまとめて対策を検討するまでもない。その都度サンプル不合格の原因
調査と再発防止対策を検討する方が効率が良い。それがきちんと回る仕組みを作ればよいのだ。

例えば、サンプルを出荷する前に、営業、設計、生産技、製造、品証でサンプル出荷判定会議をする。サンプルが不合格となったら、このメンバーで原因調査、再発防止をきちんと実施する。

QCC活動では「歯止め」を行う。不具合の再発防止、水平展開、未然防止などをさして「歯止め」といっている。

例えば仕様の確認不足でサンプル不合格となった場合、「仕様確認チェックシート」などを作り仕様確認作業を標準化することである。
しかし一番大きな歯止めは、前述したサンプル出荷判定会議である。

サンプル不合格の原因は、仕様の未確認だけではない。
製造の問題、治具の問題、測定方法などいろいろな問題があるはずである。
それらの問題が出てくるたびに、問題解決の行動を起こすのではない。
問題が発生したら自動的にアクションがとられる仕組みを準備しておくのだ。

こちらもご参考にQCC道場


このコラムは、2011年6月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第210号に掲載した記事に加筆したものです。

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品質意識

 品質意識という時の「品質」は物の質(良品・不良品)ではない。もっと広義の「品質」だ。作業の質、サービスの質、経営の質などが含まれる。
作業、サービス、経営は全て「人」が行う。従って「品質」は「人質」と言えるだろう。

そう考えれば、「品質+意識」の意味が理解出来るのではないだろうか。

以前このメルマガでご紹介した、5S改善に意欲を発揮する班長さん、仕事貫徹に燃える電気店の店員さんなどが,品質意識の高い人だ。

●5S改善に意欲を発揮する班長さん「整理整頓が継続しない理由」
●仕事貫徹に燃える電気店の店員さん「仕事貫徹の意欲」

では従業員の品質意識を高めるためにはどうしたら良いだろう。

金銭的な報酬も効果があるだろう。
昔香港の警察官は、地回りのやくざと変わらなかったそうだ。自分の管轄区域の商店から「みかじめ料」を徴収するなどの行為がはびこっていたと言う。これに業を煮やした政府が、思い切って警察官の給与を上げたそうだ。この改革により、警察官の意識が変わり自分の仕事に対する誇りが高まった。結果不正を働く警察官が激減したそうだ。

しかし製造業において、金銭的な報酬を上げて従業員の意識を高めることが出来る企業はそうは多くないだろう。そのコストが利益を圧迫することになる。
従業員の品質意識が高まっても、会社が倒産したのでは意味がない。

香港警察の事例は、仕事に対する誇りを持たせることに成功した、と考えれば金銭を使わずに仕事に対する誇りを持たせる方法を考えればよいはずだ。

こちらもご参考に
品質道場「品質意識向上」


このコラムは、2017年3月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第521号に掲載した記事です。

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仕事貫徹の意欲

 ついに丸7年間使ったMacBook Proを買い換える時期が来た。

昨年寿命となったバッテリーを交換した。同時に異音を発して回るファンと、ディスクを飲み込まなくなった内蔵光ディスクを交換し、主記憶を倍増、HDDをSDDに交換し延命を検討した。しかし正規修理部品による見積もりを見て思いとどまった(笑)

電池は復活したが、緩慢な動作はますます磨きがかかっている(笑)
しょっちゅう処理中を示す風車(Windowsの場合は砂時計?)が回る。
キーボードの操作に追いつかず、入力した文字を取りこぼす。
仕事中のイライラが募る。
ようやく重い腰を上げて、新しいコンピュータを買うことにした。

オフィス近くの量販店には、私の欲しい機種はなかった。東莞中の店舗在庫も調べて貰ったが在庫ゼロだ。

ダメ元でアパート近所の電気店に行ってみた。
店内に在庫があり即納。この店で購入することにした。
なんとインストール作業もしれくれるという。

MacOSのインストールは一瞬で終わるが、この世界では異端の我々Apple教徒に必要な、仮想WindowsマシンソフトとWindowsをインストールする必要がある。
以前はMacOS内蔵のBootCampとWindowsXP(日本語版)を使っていた。
さすがに今更WindowsXPをインストールする気になれず、Windows10とParallelsも購入した。Parallelsはともかく、Windows10のインストールはちょっと腰がひける(笑)中国語版なので、インストールのインストラクションはすべて中国語だ。

ありがたくインストール作業をお願いする事にした。

MacOSは起動後の設定を何項目か入力して終わりになった。
Parallelsのインストールも順調に完了したかのように見えた。
Windows10インストール後に、デスクトップ上に現れるParallelsのウィンドウのサイズを変更できない。再度インストールしても状況は同じ。
店員さんは、なんとネットで対処方法を検索しだした(笑)

午後7時に始まった作業はすでに9時を回っていた。
さすがに空腹に耐えられなくなってきた。インストール完了後に取りに来る事にし、後の作業を店員さんに任せた。

翌朝MacOSの設定を変更するためのパスワードを教えてくれと電話がかかってきた。そして昼過ぎにはインストール完了の電話がかかってきた。

彼は、私を見るなり3回も再インストールしちゃったよと苦笑いした。

彼はなぜここまでの熱意を持って仕事をしてくれたのだろう?という好奇が心に浮かんだ。

基本給与の他に売上高に応じた成果報酬がもらえる?
しかし良く考えれば、コンピュータ担当の彼はそれなりに成果報酬が貰えるが小物やサプライ品を担当している店員さんは、頑張っても成果報酬は少ないだろう。あまり給与差があれば辞めてしまうこともありうる。経営者としては、小物やサプライ品を担当する店員がいなくて困ることになる。

インストールサービスを完了させないと店から罰金を取られる?
中国的にはありうる。しかし彼は、Parallelsのウィンドウサイズを変えられないという点を除けば、インストールを完了していた。しかも顧客(私)はそれなりにコンピュータに詳しそうに見える、多分クレームにはならないとわかっていたと思う。

なぜ他の仕事を放り出してまで、私のコンピュータのインストール作業を貫徹したのだろうか。成果報酬があるのならば、他の顧客の接客をした方が報酬が上がるはずだ。

彼の仕事貫徹のモチベーションはどこにあるのか?
ヒントは、最後に製品梱包を手伝いに来た若い店員との会話にあった。

彼は若い店員に対し、今回の仕事は日本語環境のMacOS下にParallelsを通して中国語Windowsをインストールするという初めての経験をすることができたと、語っていた。

彼のモチベーションの源泉は報酬などではなく、未知の体験を通した自己成長欲求の充足なのだと理解した。

彼はiMac21.5″の箱を抱えて、ショッピングモールの出口まで見送ってくれた。
そのまま私のアパートまで送ってくれるつもりだったようだ。丁重にお断りした。日本の家電量販店でも受けたことがない接客サービスだった。


このコラムは、2016年8月15日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第489号に掲載した記事です。

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【中国生産現場から品質改善・経営革新】

整理整頓が継続しない理由

 中国民営企業で指導をしている。生産現場は、合理的なレイアウトを持っており、指導を大変楽しみにしている。しかしハードはよく出来ていてもそれを使うソフトに改善の余地が沢山残っている。

ソフトを鍛え直すために、まずは現場の5Sを指導している。
先週訪問時には、機械加工職場の班長が自分が使う刃具類を整頓する収納戸棚を自作していた。初回指導時に戸棚の整頓をすれば、作業効率が上がるよね、とヒントを出したら古い戸棚を整理整頓した。そして今回は新しい戸棚を自作し更に改善してあった。私が見ても「おぉ!」と感心する出来映えだ。

場所が狭い、購入部材が足りないなど不平不満を言う職長が多い中、彼は自主的に改善活動を継続している。
私の助手は彼に『工匠精神員工』と言う称号を与えている(笑)

我らの『工匠精神員工』は更に自分が使っている加工機の徹底清掃を開始している。徹底清掃とは、ただ設備の油汚れを清掃する事ではない。古い設備を復元する作業だ。先ずは剥げちょろになっている設備の塗装を剥がし、再塗装を始めた。私は何も教えていないが、結果的に彼はTPMの第一歩を踏み出した。彼は、他人の指示ではなく自分で改善を始めたと認識しているはずだ。これが改善意欲を高める。

しかしまだ大部分の現場で整理整頓が出来ていない。管理職の強引な指導で見かけは整理整頓が出来ている様に見える。しかしすぐに元に戻ってしまう。
これを繰り返していると、現場の作業員も管理職も疲弊してしまい、5Sが継続出来なくなる。

これは現場の監督職や作業員に『工匠精神』が足りないからではない。
整理整頓すべき物を減らす努力が足りていないからだ。

作業現場には今必要な物だけを置く。前工程は次工程が必要な物だけを次工程に送る。この基本が出来ていないから、現場に物があふれ整理整頓に工数を割く事になる。5Sで生産性を高めると言う本来の趣旨から逸脱してしまう。

前工程(この場合は機械加工工程や部材調達工程)で適時適量生産をすれば整理整頓が楽になる。段取り替えに時間がかかる、輸送費がよけいにかかると言う自己最適を優先させ、全体最適を考慮していない。

どうすれば、段取り替え時間を短縮出来るか、を工夫する事が必要だ。
一番手間がかかっているプレス機の段取り替え作業をビデオに録画し、機械加工工程の職長に見せた。職長は金型の段取り替えは10分以内に出来ている。と豪語していたが、ビデオを見てまだ改善の余地がある事に気がついた様だ。

実はこの職長は、暇になってしまうと職場の規律が落ちてしまうと考えていた様だ。確かに暇にしておくと、作業員は煙草を吸っていたり、携帯をいじっていたりしている。しかし彼は『工匠精神員工』の直属の上司だ。暇な時間に自主的に改善に取り組む事により、部下の能力や意欲が高まる事を理解出来たはずだ。

次回訪問も楽しみになっている。


このコラムは、2016年8月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第490号に掲載した記事です。

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疑似経験

 人に与えられた時間は有限だ。一生で経験する事柄も有限となる。私は60年あまり生きている。30歳の若者と比較すれば、倍の時間を生きて来た。
しかし経験の量と生きて来た時間は比例する訳ではない。

逆説的に言うと、真面目な人ほど経験量は少なくなる。
目の前の仕事に真面目に取り組んでいると、経験のチャンスが減る。
不真面目(?)な人間は、あちこちと興味が移り、経験のチャンスが増える。

私は「犬の様に仕事をしたい」と思っている。
「犬の様に働く」というと、人に与えられた仕事を盲目的にこなす、というネガディブなイメージがある。中国語には「狗命」「狗賊」「狗屁」など、犬には不当な評価が多いが、その様なネガティブな意味ではない。

犬を散歩に連れて行くと、あちこちに興味を持ち、鼻を近づける。真っすぐには歩かない。「犬の様に働く」とは何事にも興味を持って仕事をするという意味だ。

ただ興味を持つだけでは、経験とはならない。
興味を持ったことを、調べる、深く考えることで、疑似経験となる。

当然自分で体験した本物の経験と比較をすれば、疑似経験は質が落ちる。
しかし疑似経験をたくさん持っていれば、本物の経験の質が上がる。
本物の経験の質が上がれば、疑似経験の質も上がるはずだ。

普段から好奇心を持ち、その原因を考える習慣を持つと良い。
例えば、昼食を食べに入った食堂でなかなか料理が出てこない。なぜ遅いのか考える。一緒にいた弟子は、なぜそんなことを考えるのか、考えたところで料理が早く出てくる訳でもない。ムダなことだと考えたようだ。
「なぜなぜ5回の訓練だよ」と説明した(笑)

知識を教えることは簡単だが、習慣を教えるのは難しい。
Whyを教えて、何度も実践してみせるしかないだろう。


このコラムは、2012年5月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第259号に掲載した記事です。

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従業員の確保

 従業員がすぐに辞めてしまう。従業員の採用・教育訓練にかかるコストが馬鹿にならない。だから自動化をもっと進めて少ない人数で生産できるようにしたい。
自動化導入の動機をそう語る経営者は少なくない。

しかし若者の労働に対する考え方の変化を理解しなければ、自動化をしても結果は同じだろう。

2000年以前は、工場の入り口に求人の赤紙を掲示すれば、すぐに人は集まった。生産が落ち、過剰人員となっても作業員はより残業のある工場に流出する。
作業員確保に関しては、何も考えなくても良い時代だった。
ただ作業員が変わっても、同じように生産が継続できるように、作業を単純化し、熟練を必要としない工夫さえしておけば良かった。

当時の出稼ぎ労働者は、弟や妹の学費を稼ぐため、両親の生活を支えるため、という使命を持っていた。その使命感によって2、3年の苦役に堪えていた。

しかし今の若者にその使命感はない。沿岸部との格差はあるにせよ、農村部も以前に比べれば豊かになっている。仕送りをしていない出稼ぎ労働者が増えている。では彼らは、何のために働いているのだろうか?

ところで我々日本人は何のために働いているのか?
私の年代(1950年代生まれ)の人間は、子供の頃から「日本は資源のない国だから、原材料を輸入し加工して輸出をしなければ、生活が出来ない」と習ってきた。個よりは全体を優先する道徳観を刷り込まれてきた。
そのような職業観や道徳観により、戦争により焦土と化した日本が経済発展したのは確かだろう。
しかし本当に「国のため」「会社のため」に働いてきたのだろうか?
少なくとも私自身はそうではなかった。仕事が楽しかったから一生懸命働いた。

新卒で地方都市の零細企業に飛び込んだ私は、すごい発明をしてこの会社を一流にしようという、無謀な野望に燃えていた(笑)しかしくる日もくる日も「今日の飯の種」のために働く現実が待っていた。
たまたま東京の一部上場企業に転職し、1年後2年後のために、製品開発をすることになり、すごくうれしかった。

その後社内で異動を繰り返したが、そのたびに新たに「仕事の楽しみ」を見つけ、それが自己成長につながっていることを実感することが出来た。
回路設計者としては二流だった自分が、今仕事ができているのは品質保証部への異動があったからだ。前職でのキャリアが今の自分を作ったと感謝している。それが出来たのは、尊敬できる先輩がいて、会社や上司に対して信頼感を持つことが出来たからだと思う。

90后と呼ばれる中国の若者たちは、家族の生活を支えるという使命感を失っている。彼らに仕事に対する楽しさと、仕事の目的(使命)を持たせることが必要だと考えている。

すでに中国のモノ造りは、機械化による効率向上が必要になっている。必要な人財は、単機能の作業者ではなくなった。単機能作業者をつなぎ止める為に、給与や福利を上げたのでは経営は成り立たない。
素質(向上心)のある若者を育てて使うことが必要だ。


このコラムは、2012年5月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第257号に掲載した記事です。

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小売業界の顔、噴出した社内の不信

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長(61)が今月限りで辞任する。売り場や働き方の改革を推し進めてきたが、道半ばで突然の退場となった。大西氏は、なぜ会社を去ることになったのか。

(朝日新聞電子版より)記事全文

 流通業界のことは全く知らない。社長が退任することが「失敗」と言えるかと考えると定かではない。恐れ多くも(笑)今回はこの事例を考えてみたい。

記事から想像する大西社長は、百貨店業界では斬新なアイディアを発揮し業績を伸ばした。業界団体の会長も務めており、社外的には大いに評価されている。
しかし社内では、仕事への姿勢が厳しく、周囲にはイエスマンしか置かないと批判的な声もあった様だ。部下からは、意見を言えば飛ばされると恐れられていたという。

君主のあり方について、老子の教えを「道徳経」は以下の様に伝えている。
君主には4段階ある。一番ダメな君主は人民から侮られる。二番目は人民から畏れられる。三番目は人民から敬愛される。そして最も優れた君子は人民に存在を知られているだけだ。

参考文献:「世界最高の人生哲学 老子」守屋洋著

君主を指導者に置き換えて考えれば、能力も、人望もない指導者は部下から愚かだとバカにされる。
能力があっても、人望がない指導者は強権的に組織をまとめようとし、部下から恐れられる。
能力も人望もある指導者は、部下から敬愛される。
しかしこれではまだ足りないと老子は言う。
最も優れた指導者は部下に存在を知られているだけで、何をしているか知られないと言う。「透明な指導者」だ。

道徳経は、更に次の様に続けている。
「信足らざれば、すなわち信ざられざること有り。悠としてそれ言をおもくすれば、功なり事は遂げられて、百姓は皆我自ずからなりと謂う」

部下を信じることにより、部下からの信頼を得る。悠然として口を挟まず、部下に仕事を任せる。部下が皆の力で業績が良くなったと、自ら誇れる様にする。そんな指導者が最上の指導者だと言うことだ。

私の師匠である原田則夫師は、組織の経営を「犬の散歩」と言っていた。
若い子犬は好奇心いっぱいで、主人と散歩に出かけてもあちこちを嗅ぎ回り、主人の先を行く。主人はリードを持って自由に歩き回らせれば良い。ただし危険な時だけ後ろから引っ張ってやる。成犬はゆったりと主人の前を歩く。主人はリードをゆったり持ち後からついて行く。

オフィスの近所で見た犬は,リードを付けずに散歩していた。ゆったり歩きながら時々後ろを振り返る。振り返った先には、老夫婦が散歩している姿があった。犬は主人を心配する様に、時々足を止めては振り返っていたのだ。
この老夫婦こそ老子が言った最上の君子ではないだろうか。


このコラムは、2017年3月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第519号に掲載した記事です。

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継続のコツ

 何事も継続する事で価値が上がる。そう思っている。しかしなかなか継続出来ないのが世の常であると思う。
継続の秘訣は「根性」ではなく何かコツの様なものがあると漠然と考えていた。

例えば、運動する習慣は継続が困難なものの一つではないだろうか?
実は私は45歳頃からジョギングを始めた。中国に来てからも11年間ずっと継続している。飽きっぽい自分が、長期間にわたって継続できている訳を自己分析すると、ジムに会費を払っているからだ。今日は休もうかな?と言う気持ちより会費を払っているのでもったいないと言う気持ちの方が強い(笑)

与太話はこのくらいにして。会社の中で継続しにくいものの一つに「社内報」があるのではないかと考えている。社内報の効果は分かっているけれど、継続出来るか不安。社内報を始めてみたが、徐々に発行周期が伸び、なし崩し的に廃刊。なんて事があるのではないだろうか?

これらの問題を「根性」で乗り切るのは困難だろう。
実は年末に、社内報を作っておられる方々から継続のコツを教えていただいた。
メルマガ読者様とシェアしたい。

ほとんどの場合継続できない理由は、記事が集まらないからだと思う。それを解消する仕組みを作ってしまえば良いのだ。
・結婚・出産などの記事を、人事部の慶弔金支出記録から集める。
・従業員の故郷自慢。
・新入社員の自己紹介。
・社内報を田舎の家族に送る。
 田舎の両親に見せたいので、上記の記事が簡単に集まる。
・購買部門からベンダーさんに声をかけて、会社紹介を載せる。
・営業部門から顧客に声をかけて、顧客紹介を載せる。
・年間の特集内容をあらかじめ決めておく。

このメールマガジンも創刊以来9年目に入っている。
継続のモチベーションは、読者様からのメールだ。それだけをたよりに毎週頭をひねってキーボードに向かっている(笑)


このコラムは、2016年1月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第457号に掲載した記事です。

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