月別アーカイブ: 2019年11月

続・働かせ方と働き方

 先週の雑感で取り上げた「働かせ方と働き方」に読者様からメッセージをいただいた。

※Z様のコメント

本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。
そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

まさにおっしゃられる通りだと思います。
経営側に近い与党の発想だと、こうなっちゃうんでしょうが、
その視点の誤りに対して、何も言わない野党も野党ですね。
ハイスペック人材の時間外労働時間制限の撤廃といった類の話じゃないですね。
今後とも宜しくお願い致します。

コメントありがとうございます。
確かに与党の政治姿勢は経営者よりかもしれない。しかしそれは景気をよくし国民の生活をよくするための手段として、企業が利益を上げるように政策の舵を取っているからだろう。
最近は経営者vs労働者というステロタイプな対立関係で情勢を理解できなくなっていると認識している。例えば私の世代は学生が最も急進的な左翼だったが、今では求人率の高まりを歓迎して、自民党支持の学生が増えていると聞く。

「働き方改革」の迷走は政府・与党ばかりの責任ではないと思う。非本質的議論ばかり繰り返す野党にも責任はある。最大のガンは、デタラメなデータを上げてくる役所ではなかろうか?

残業時間等に関するいい加減なデータを上げて役人がどういうメリットがあるのか不明だが、ひょっとして役所も「働き方改革」を阻止しようと考えているのだろうか(苦笑)

財務省などは「財政健全化」「国の赤字を子孫に回すのな!」などのお題目で消費税アップを狙っている。

確かに我々の家計で借金があれば問題だ。
しかし銀行融資ゼロという企業は、真面目に発展を考えているのだろうか?
ゼロ金利の時代に銀行から金を借りて将来のために投資をしようと考えるのがまともな経営者だ。バブル期に土地やゴルフ会員権を買いあさって失敗した経営者も多くいたが、これは投資ではなく投機だ。

国の借金が「悪」であると考えるのはおかしい。誰に借りているのかを考えれば自明だ。
例えば生活費が足りなくて借金をする。高利の街金融から借りるのなら問題だ。
奥さんが旦那に生活費を借りる。しかも旦那はお金を稼げる。これならなんら問題にはならない。

今の財政赤字は、政府(妻)が日銀(旦那)に生活費を借りているだけだ。日銀(旦那)は余分にお金を刷って国債を(妻から)買えばいいだけだ。

ちょっと本論から外れてしまった(苦笑)が、役人が政治を歪めているように思える。

ところで役人の「働き方改革」を阻害しているのが国会である、というのも笑えない事実だ。国会答弁の質問は、本来前々日までに提出する約束になっているそうだ。それは関連省庁から事実関係のレクチャーを受け国会で答弁するための準備時間を見込んでいる。しかし与党からの質問は、前日の夕方にしか出てこないそうだ。当然役人は徹夜で答弁原稿を作成することになる。


このコラムは、2018年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第695号に掲載した記事に加筆しました。

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働かせ方と働き方

 先週の編集後記で、製造現場の監督職を平日の研修に参加させるのに消極的な中国人経営幹部をご紹介した。

班長の能力を上げ、生産品質を安定させたい、生産効率を上げたい、という欲求は当然だ。先週ご紹介した経営幹部もそれを理解しているから、私の話を聴きに来たのだろう。しかし目の前の納期に間に合わせ得るため、生産は止められない。班長不在のまま生産するのは不安だ。

そんな気持ちは理解できるが、目前の短期課題を満足させるために長期課題に目をつむる状態になっている。

班長の代理が出来る人材を育成しておく必要があるはずだ。
班長が研修を受けている間は、班長代理が現場を取り仕切る。そして実力がつけば班長は昇格。代理経験を積んだ班長代理はすんなり昇格出来る。
そして、次の班長代理候補が作業者から選ばれる。このようなキャリアパスが出来ていれば、意欲のある作業者はさらに意欲を上げるだろう。
このように予備軍が順次育つ環境を作っておかねば、突然班長が離職すると大混乱になるはずだ。

経営幹部もこれを自分のことに当てはめて考えれば理解できるはずだ。
課長の仕事をいつまでも自分がやっていれば部長にはなれない。部下が課長の仕事ができるようになって初めて自分が部長になれるのだ。

日本で議論が迷走している「働き方改革」は、如何に長時間労働を減らすかという「働かせ改革」にすり替わっているような気がする。本来の「働き方改革」は労働の成果を如何に上げるか、という働く本人の課題と考えるべきだ。そのために政治や企業が支援できることを考えるのが本筋だ。

くだんの経営幹部も班長の「働かせ方」ではなく自分自身の「働き方」に着目すれば、班長の育成にもっと積極的になるのではなかろうか?


このコラムは、2018年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第692号に掲載した記事に加筆しました。

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学ばざるもの食うべからず

 以前このメルマガで、二宮尊徳の言葉をご紹介した。

「遠きを見て計る」

本日ご紹介するのは二宮尊徳翁の遺訓だ。

人、生まれて学ばざれば、生まれざると同じ。
学んで道を知らざれば、学ばざると同じ。
知って行うことを能はざれば、知らざると同じ。
故に、人たるもの、必ず学ばざるべからず。
学をなすもの、必ず道を知らざるべからず。
道を知るもの、必ず行はざわるべからず。

僭越ながら解釈すると、
人として生まれたからには、学ばねばならない。
学んだからには、道理を知らねばならない。
道理を知り行うことができねば、知らぬと同じ。
ゆえに、人として生まれたからには学ばざるべからず。
学を志す者、道理を知らざるべからず。
道理を知る者、道理を実践せざるべからず。

「道」は老子が説いた「道(タオ)」のことだと思う。道理と訳すのは安直かも知れないが、「宇宙の理り」とでも解釈したらいいだろう。無限の広がりと過去から未来の無限の時間における「絶対真理」と私は解釈している。

「学ぶ」とは学校での勉強はほんの入門であり、学校では学ぶ方法を教わるだけだ。ほとんどのことは社会に出てから学ぶことになる。

「働かざる者食うべからず」とともに「学ばざる者食うべからず」だ。

そして私たちは学習者であるとともに教育者でもある。道を知り行うことの一部は、部下や後進の育成だ。


このコラムは、2018年5月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第668号に掲載した記事に加筆しました。

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孔子

学びて思わざれば則ち罔し

yuē:“xuéérwǎngérxuédài。”
子曰く:“学びて思わざれば則ちくらし。思いて学ばざれば即ちあやううし。”

論語《為政二ー十五》にある一節だ。
書を読み学んでも、自ら考えなければはっきり理解できない。
考えるだけで先人の知恵を学ばなければ、その知恵は危うい。
と言う意味だ。つまり書物や他人から学ぶ、自分の経験に照らして考える、この両面を通して初めて役立つ生きた知恵になる、と理解したらよかろう。

『学』書籍や他人から理論を学ぶこと。
『思』自ら考えること。
と解釈するのが普通だろう。

しかし私はここで珍説を唱えたい(笑)

書を読み学んでも、自ら実践しなければはっきり理解できない。
実践するばかりで、先人の知恵を学ばなければ得られる成果は危うい。

『思』を実践と解釈してみた。
知識を蓄えることができても実践しなければ、成果を生む知恵とはならない。
理論や先人の知恵を無視して手当たり次第に実践しても、うまくはゆかない。

生産現場の改善活動を見ていてこのように感じる。

理屈ばかりこねていて行動しない。
できない理由ばかり並べる。
聡明で理論肌だが行動しない。こう言う人が『学而不思』だ。

闇雲にやってみる。
失敗した時に失敗原因を究明せずにトライアンドエラーを繰り返す。
行動力はあるが論理立てて考えるのが苦手。こう言う人が『思而不学』だ。

学而不思派の人は指導するのが骨が折れる。
自分は頭がいいと言う自覚がある。しかもチャレンジをしないので失敗しない(苦笑)
従って自分の足りていないところになかなか気がつかない。

逆に思而不学派はちょっとしたきっかけで成長する。
闇雲に挑戦するので失敗が多い。
従って失敗の原因を考えさせる、成功事例を教えることができる。こう言う人には、ちょっと立ち止まらせてヒントを与えることで伸びる。


このコラムは、2018年5月14日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第666号に掲載した記事に加筆しました。

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ペットを飼う理由

 メールマガジンを斜め読みしていて「なぜ、人間はペットを飼うのか? その理由が納得すぎて笑った!」という気になるタイトルを見つけた。

「まんしょんオタクのマンションこぼれ話」

NHKのバラエティ番組で、人がペットを飼う理由を解説していたという。
多くの人はペットに対して「癒し」を求めているという。東日本震災でペットと離れ離れになっている人々も、涙ながらに再会を喜び、災害の苦難をペットにより支えられているという。

ではなぜペットに対して癒しを感じ、苦難の支えになっているのか?
それは、人が原始時代から群れで生活をして来たDNAの記憶によるという。天候や天災などの自然や、外敵から身を守るために人は群れを作って暮らしていた。群れの生活で「弱いものを守る」という本能が深く刷り込まれている。個を守ることにより、群れが滅びることなく繁栄した。

弱いものに餌を分け与え、世話をする。それによって群れを守る。ヒトという種が滅亡せずに繁栄できたのは、弱いものに心から愛情を与えることがDNAに刷り込まれているからだろう。

犬や猫も元はと言えば、群れで暮らした動物だ。彼らもまた命を守るため群れの中で庇護を得る代償として、癒しを与えることがDNAに刷り込まれているのだろう。

企業も同じではなかろうか?
経営者と従業員、上司と部下。報酬を与える見返りに労働を提供するという利害関係だけではなく、同じ群に属するものとして、互いに与え、与えられるものがあるような気がする。

経営者や上司は、部下に成長のチャンスを与えることにより、業績を上げる。
従業員や部下は、与えられたチャンスに応え自己成長により、業績に貢献する。
このようなギブアンドテイクの関係と考えたらよかろう。


このコラムは、2018年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第665号に掲載した記事に加筆しました。

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四川省大地震

 日本でも報道されているが,5月12日14時28分に発生した四川省汶川のマグニチュード7.8の大地震は救助活動が進むにつれ死者の数が増加している.ほぼ3万人の死者が出ているようだ.山間部などまだ救助が進んでいない被害地での状況が判明してくると更にたくさんの方が犠牲になっている事がわかってくるだろう.

連日TVで報道されている被災地の救助活動を見ていると,大変悲惨なモノであり,心が痛む.

中国指導部の対応は大変すばやかった.
温家宝首相は12日夕方には現地に入って陣頭指揮をしていた.被害に遭った人たちの間に入って,語りかけ勇気付けている.多分家族を全て失ってしまい泣きじゃくっている女の子の手をとり,「泣かないで.君の生活は中国政府が保証するから」と慰めているのが印象的であった.

それにも増して感動的なのは,被災者を助けようとする動きが中国全土に瞬く間に広がったことだ.

12日当日は成都の市民が夜遅くまで献血の列を作っていた.
被災地の近所の住民は炊き出しをして被災者に食事を運んでいる.
企業からの義捐金だけではなく,個人で100元札を何枚も献金しているのがTVで報道されていた.街中の市民も募金箱に長蛇の列を作って募金をしている.

今まで中国人は個人主義的な人が多く,他人のことよりも自分の利益を優先する人が多いと感じていた.今回の地震で中国人も条件さえそろえば我々日本人と同じように他人を思いやり,他人に尽くす事が出来る心を持っていると再認識できた.


このコラムは、2008年5月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第34号に掲載した記事に加筆しました。

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ダメモト改善

 私は改善の目標を置くときにいきなり2倍,3倍向上という目標を置いている.例えば不良の減少であれば,目標を1/2とか1/3に置いてしまう.データを眺めて積み上げていると,どうしても2割,3割アップという数字になってしまう.データの積み上げではなく,「ありたい姿」から目標を設定するようにしている.

もちろん既に長い時間をかけて改善活動をしている工場では,いきなり2倍といってもなかなか難しいが,中国の工場では達成できてしまう事が多い.

一緒に活動をする人は「え~?」という顔をしているが,2ヶ月とか3ヶ月くらいで2割,3割アップを達成してしまうと,メンバーの顔が「ひょっとしたら」に変わってくる.こうなるとしめたモノである.まずはメンバーから信頼を得て,ひょっとしたらと思ってもらう事が大切だ.

ある工場で半年で不良を1/2に,一年で1/3にしましょう,と経営者と約束をして活動をした事がある.正直に言うと自分でも半信半疑であった(笑)
しかし本当に半年で不良は1/2になった.一年後には1/3には届かなかったがかなり良いセンまでいった.
目標は達成できなかったが,一年前と比べたらすごく改善した.しかもメンバーのやる気が上がったのが一番の収穫であろう.

「ダメモト」(ダメで元々)と思えるような目標を立てて活動する.そしてスピードを大切にする.ここを改善しようと決めたらその日のうちに改善するくらいのスピードでやる.来週までとか来月までとはいわない.

拙速でもいいと考えている.完璧を期して考えていても,考えている間は何も改善されていない.60点でも良いからすぐにやってみる.改善の効果は時間の積分で効いて来るはずだ.やってみればその次の問題点が見えてくる.考えていただけでは見えてこない問題点だ.

やってみてダメなら,すぐに元に戻せば良いだけだ.金をかけずにすぐにやってみる.これならば元に戻すのは怖くない.ものすごく高価な設備を導入してしまうと時間もかかるし,元に戻すに戻せなくなってしまうものだ.

ダメなら元に戻す.これが「ダメモト改善」のもう一つの意味だ.

失敗を糧に 疲れたときにこそ技術は身につく

 中国で仕事をする様になってプロ野球を見る事は無くなってしまった。もうじきWBCが始まるらしい、という程度であり野球ファンとは言えない状態だ。本日のタイトルは、日経新聞に出ていたキャンプ中のバッファローズ二軍監督田口壮さんの記事だ。

失敗を糧に 疲れたときにこそ技術は身につく

グランドで実践練習中にミスをすると、反復練習をすると言う。例えば、送りバントを失敗すると、屋内練習場に移動しバントだけを練習する。その練習が5時間に及ぶと言う。さすがに職業野球選手の世界だ。手を抜けば収入が無くなる。そう言う覚悟が出来ている人だけが生き残れるのだろう。

実は若い頃職場のメンバーと草野球チームを作り、地域のリーグ戦に参加していた。普段練習などしない。いきなり集合して試合をする。そんなチームだ。
多分私が一番練習量が多かっただろう。土日に近所のバッティングセンターで練習をしていた。外角の球を右方向に流し打ちをする、などとテーマを決めてバッティング練習をしていた。他の人たちは、バットを長く持ち思いっきりスイングをして長打を狙う。流し打ちばかりしている人は異様に見えたかも知れない。テニスの練習マシンで守備練習もした(笑)
しかし練習量はせいぜい30分。5時間もバント練習だけをやるというのは想像すら出来ない。そのくらい練習をしなければ、プロとして満足のゆくプレーは出来ないのだろう。

さて、我々製造業の職場での仕事の練習はどうだろう。
作業ミスをしたら、5時間作業訓練をさせる。こんな事をしたら作業員は一人もいなくなるだろう(笑)第一それでは生産効率が悪くて会社がつぶれる。そんな練習をしなくても、仕事ができる様に生産方法や製造工程を設計する。効率よく作業訓練が出来る様に、作業指導方法を考える。

我々の場合は、選手一人ひとりが激しい訓練をするのではなく、経営者や幹部が従業員一人ひとりが成果を上げられる様に考え抜く、という事になるだろう。会社にいる8時間だけではない。四六時中考えていなければならない。夢の中で改善のアイディアがひらめく様になれば、一人前だ(笑)


このコラムは、2017年3月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第518号に掲載した記事に加筆しました。

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続・B737MAX機墜落事故

 ボーイング737max8機の墜落事故に関して、メールマガジンで検討してみた。

WEBサイトengadgetの記事によるとボーイング社はMCAS(失速回避システム)を大幅に変更。変更の検証評価・妥当性評価が不十分であったとNew York Timesが報じている。その変更はパイロットにも周知されていなかったという。

engadgetの記事

ボーイング社の自動操縦システムの基本設計思想は、システムと操縦士の操作に食い違いがあった場合、人の操作を優先するようになっている。

1994年名古屋空港で発生したエアバスの着陸失敗事故は、システムと人の操作の矛盾をシステムを優先させて失速・墜落した。当時既にボーイングの基本設計は、人の判断を優先していた。

航空機事故から

B737max8のMCASの修正はバグ修正にとどまらず、基本設計の変更に関わるモノとなってしまった。当然制御システム全体と整合性が取れない場合が発生するはずだ。それにもかかわらず検証・妥当性評価が不十分であった。

航空機の航行システムがどの程度の規模のソフトウェアなのか想像もつかないが、相当な規模であろう。そのような制御プログラムで基本設計に反する改造をして簡単な検証で済むはずがない。

物事には、変えていいところと変えてはいけないところがある。


このコラムは、2019年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第844号に掲載した記事に加筆しました。

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中国製ベビーベッドを米国で回収 乳幼児2人死亡

 【ニューヨーク=中前博之】米国のベビー用品メーカーのデルタ・エンタープライズ社は21日までに、中国などで製造されたベビーベッドを使用して乳幼児2人が死亡する事故があったとして、約160万台のベビーベッドをリコール(回収・無償修理)すると発表した。日本で流通しているかどうかは不明。

 同社は死亡例の詳細は言及していないが、ベビーベッドの両側の柵を支える留め具に不備がある可能性があるという。同社はウェブサイト上で、2006年以前に中国で製造されたベッドは「直ちに使用を中止」するよう呼び掛けている。

 ロイター通信によると、ベビーベッドは中国のほかに台湾、インドネシアでも製造されている。

(NIKKEI.NETより)

また中国製だ,という論調の記事である.
タイトルには「中国製ベビーベット」と書いてあるが,記事の最後に申し訳程度に「中国の他に台湾,インドネシアでも製造されている」とある.

詳細を米国の消費者製品安全委員会のホームページで確認してみると,これは工場の製造問題ではなく,設計上の問題のように見える.

ベビーベットの柵を固定しているピンが外れるかなくなっているのに気が付かず,柵が落ちて幼児が挟まれたようだ.

デルタ・エンタープライズ社も回収はしていない.
交換用の固定ピンもしくは改造用の固定ピンを製品にあわせて送ってくれるだけである.
この製品を特定するために「中国製」「台湾製」「インドネシア製」という言葉が出ているだけである.

昨今,中国製食品問題や,中国製玩具問題などが多発しており,またもや中国の工場の問題と決め付けて記事を書いたのではなかろうか.少なくとも同社のホームページを見れば,リコールしているという記事はかけないはずである.

この調査の過程で,以下の工夫が参考になった.

交換用の固定ピンは,従来の物と色が変えてある.
これは固定ピンの付け忘れ,脱落などを看える化するためだ.
意匠デザイン的には違和感があるかもしれないが,初めからそのようにデザインすれば違和感なくデザインできるはずだ.

このベビーベッドのように利用者が組み立てをする製品については,このような工夫がリスク回避につながるだろう.

また生産工程内でも,工程飛ばしを防ぐためのアイディアに応用できそうだ.


このコラムは、2008年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第57号に掲載した記事に加筆しました。

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