月別アーカイブ: 2022年7月

季康子治世を問う

kāng(1)wèn:“使shǐmínjìngzhōngquànzhī(2)?”
yuē:“línzhīzhuāngjìngxiàozhōngshànérjiáonéngquàn。”

《论语》为政第二-20

(1)季康子:魯の国の大夫
(2)如之何:どうしたらよいか

素読文:

こうう:“たみをして敬忠けいちゅうにしてもっすすましむるには、これ如何いかんせん。”
いわく:“これのぞむにそうもってすればすなわけいす。こうなればすなわちゅうなり。ぜんあげのうおしうれば、すなわすすむ。”

解釈:
大夫・季康子が孔子に尋ねる:“民をして敬意と忠誠の心を抱かせ、自発的に励む様にするにはどの様にしたらよいか”
孔子曰く:“民に対して尊重な態度で臨めば、民は敬意を払う。年上の者に孝行し、目下の者に慈愛の心を持てば、民は忠心を持つ。善行の者を登用し、能力の足りない者を教え導けば、民は励む”

残念ながら2500年前の教えを理解できない者が現代社会で指導的立場にある様です。

航空機事故

 このメルマガでしばしば航空機事故をとりあげている。数えてみると10件ほどあった。

過去記事「航空機事故」

航空機事故はほとんどの場合死亡事故につながる。一度の事故で多数の死亡者がでる。印象としては、航空機は危険な乗り物という印象がある。しかし自動車と比較しみると、航空機の方が桁違いに安全だ。

日本国内の交通事故死亡者数と全世界の航空機事故死亡者数を比較してみる。
比較できるデータ(平成26年~28年)を対比してみると

  • 日本国内、自動車事故死亡者数:12,134人
  • 全世界、航空機事故死亡者数:58人

なんと200倍以上の差がある。
航空機事故による死亡者数は全世界、自動車事故死亡者数は日本国内だけであることを考えると、その差はさらに大きくなるだろう。

自動車は簡単に運転免許が取れる。しかも運転免許は特別な訓練を受けずとも終身継続可能だ。しかし旅客機のパイロットは定期的に訓練がある。
最も大きいのは、航空機事故が発生すると専門家の徹底的な調査と、調査結果を共有されることだろう。

我々の製造現場でも日々いろいろな「事故」が起きている。死亡にいたる事故はあまりないと思う。しかし安全、品質に関わる事故は発生するだろう。

「ヒヤリハット」段階で徹底的に再発防止対策をする。
そのためにはきちんと「ヒヤリハット」が上がる仕組みと風土を確立し、徹底的に改善対策をしなければならない。自社事例のみならず、他社事例も積極的に自社展開する。


このコラムは、2022年2月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1252号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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東方航空公司MU5735墜落事故

昆明から広州に向かった東方航空公司MU5735航班の波音737機が広西省梧州市の山中に墜落する事故が発生しました。

捜索隊が墜落現場に入りましたが、生存者は発見できていません。
乗客123人、乗組員9人は全員死亡した様です。

事故原因は今のところ不明です。地上を走行していた車のドライブレコーダの映像と思われる動画が公開されていますが、ほぼ垂直に落下しています。
フライトレーダには約2万フィートを2分15秒で墜落。

普通では考えられない墜落です。操縦士が故意に墜落させた可能性もあると思えます。黒匣子(ブラックボックス)が回収できた様なので、原因調査結果が公表されることを期待したいと思います。

(メルマガ・【技術者のための中国語講座】より)

事故の一報は『南方時報』で読んだ。

ブラックボックスの解析により中国で3月、132人が乗った旅客機が墜落した事故で、米紙ウォールストリート・ジャーナルは17日、「コックピット内の誰かが意図的に墜落させた」可能性があると報じた。事故に関連して、米側の調査に詳しい関係者への取材でわかったという。

 同紙によると、関係者はブラックボックスのデータなどから、「飛行機はコックピットにいた誰かに指示された通りに動いた」と指摘。操縦システムへの操作によって、機体が急降下したとの見解を示したという。米国の当局はパイロットの行動に注目しているが、機内にいた別の人がコックピットに侵入し、墜落させた可能性もある、としている。

 米ABCテレビによると、当局はパイロットの1人の私生活についても調べており、事故の直前に問題を抱えて苦しんでいた可能性があるとみている。
 事故は3月21日、中国広西チワン族自治区梧州市で起きた。中国東方航空の米ボーイング737―800型旅客機が雲南省昆明市から広東省広州市に向かっていたが、高度約9千メートルから2分余りで8千メートル近く急降下して墜落した。事故の調査は、中国民用航空局に加え、米当局やボーイングなども加わっている。

(朝日新聞の記事より)

 「コックピットの誰か」というのが謎であるが、B737の場合、通常であればコックピットには機長と副操縦士の二人しかいないはずだ。また飛行中はコックピットに部外者は入れないはずだ。

記事には「パイロットの1人の私生活についても調べている」とあるので、機長もしくは副操縦士が精神的に異常をきたし故意に墜落させた、という事故の様だ。メルマガ第1274号の推測は当たってしまった様だ。

1982年に羽田沖で着陸滑走路に入る手前で逆噴射をして、墜落させた事故があった。機長の精神分裂病を原因とする異常行動による事故と判断された。その後、操縦士の精神状態を確認することが航空会社に義務付けられたと記憶している。今回事故を起こした東方航空では精神状態胃の確認は実施されていなかったのだろうか?

羽田沖事故では機長のパイロット資格は取り消されたはずだ。
今回の事故では、機長の健康状態検査を怠った航空会社が営業免許を取り消されるのだろうか?


このコラムは、2022年5月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1297号に掲載した記事です。

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シカゴ条約

 3月21日午後、昆明から広州に向かった東方航空のB737機が広西省梧州市の山中に墜落する事故が発生した。墜落現場は広西省梧州市の山中であり救援隊は徒歩で現場に出かけた。機首からほぼ垂直に墜落しており、全員死亡したと見られている。

航空機事故に関して何度かこのメルマガに書いた。航空機事故が発生するとほぼ間違いなく大勢の死者が出る。そのため世界の国々が再発防止のため、事故の原因調査を徹底的に実施している。

その元になったのが1944年に締結された国際民間航空条約(通称シカゴ条約)だ。事故原因解析のため航空機の運行状況を記録するブラックボックス、操縦席の録音装置の搭載が義務付けられている。これらを回収することにより、事故発生時の機体の状態、操縦席での会話が再現できる。

東方航空の事故現場からブラックボックスが回収できている。
ジェット旅客機のエンジンが停止しても垂直に墜落したりはしない。
操縦士の精神状態に何かあったのかもしれない。

・日本航空350便墜落事故の機長の錯乱。
・副操縦士の精神失調で山に激突したルフトハンザ機
をこのメルマガでも紹介している。


このコラムは、2022年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1274号に掲載した記事です。

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続・旅客機滑走路逸脱事故

 2019年6月5日配信のメールマガジン832号で、山形空港で発生した旅客機が滑走路を逸脱する事故をご紹介した。

「旅客機滑走路逸脱事故」

当時のメルマガで、事故原因を推察してみた。
運輸安全委員会の正式調査結果が既に出ているのを発見し、答え合わせ(笑)をしてみた。

運輸安全委員会の事故調査結果↓
「エンブラエル式ERJ170-200STD型JA11FJ滑走路からの逸脱」

調査報告書をざっくりまとめると、地上走行時の操舵方式には二種類ある。
左操縦席の左側のハンドルを手で操作する「ハンドルモード」
左右のラダーペダルを足で操舵する「ペダルモード」

「ハンドルモード」はハンドルを押し込むことにより、左右に回すことで操舵が可能となる。低速でタクシングするときに使う。
「ペダルモード」は離陸時など高速で真っ直ぐ走行するときに使用する。
ハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチが働き、ペダルモードに切り替わる。

今回の事故原因はハンドルモードからペダルモードに切り替わらずラダー操作ができなかったことによる。その原因はハンドルを引き上げたときに内蔵のマイクロスイッチがONにならず、ペダルモードに切り替わらなかった。(マイクロスイッチの不良原因は不明)

現在の操舵が、ハンドルモードかペダルモードかを表示されていれば事故は避けられたと思われる。

製造現場の設備も現在の「モード」を表示する機能を追加すると同様の問題を回避する事ができる。

例えば製品検査でX線を使用する装置はX線が外部に漏れない様になっている。
しかし装置内のメンテナンス中はX線が出ない様にしたい。同時に点検時は装置内のX線強度を測定したい。これらの相反する目的のために暫定的にX線をON/OFFする必要が発生する。これを作業後元に戻すのを忘れるとX線に被曝することになったり、検査ができていなかったりする。点検・運用のモードを表示すれば、事故は防げるだろう。


このコラムは、2022年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1264号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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何処からより何処へ

 普通の人は初対面の自己紹介で、出身地や勤務先などを話すだろう。
つまり「何処から来たか」を紹介する。自分が何者であるかを紹介する。
すでに実績を上げている人ならば「何処から来たか」「何をしてきたか」を紹介すれば良いだろう。実績はその人の価値だ。

ではまだ実績のない若者はどうするか?
精一杯背伸びをして「実績」を語っても、年長者の心には残らない。
実績より、何を目指しているか。つまり「何処から」より「何処へ」の方が聞き手の興味を惹き、共感してもらえるだろう。

すでに高齢者と呼ばれる年齢に達している自分も「何処へ」という話を聞けば、途端に何歳か若返り応援したくなる(笑)

【閑話休題】
 WHOの定義によると私は前期高齢者だそうです。特に『前期』に力を込めて申し上げる(笑)


このコラムは、2022年3月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1263号に掲載した記事です。

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哀公治世を問う

āigōngwènyuē:“wéi(1)mín(2)? ”
kǒngduìyuē(3):“(4)zhí(5)cuò(6)zhū(7)wǎng(8)mínwǎngcuòzhūzhímín。”

《论语》为政篇第二-19

(1)何为:どうすれば
(2)服:服従
(3)对曰:答えて曰く(目上の人に用いる)
(4)举:抜擢する
(5)直:正直者
(6)错:上に置く
(7)诸:これを〜に
(8)枉:曲がった者。不正直、邪な人

素読文:
哀公あいこううていわく、なにさばすなわたみふくせん。こうこたえていわく、なおきをげてこれまがれるにけば、すなわたみふくせん。まがれるをげてこれなおきにけば、すなわたみふくせず。

解釈:
哀公が孔子に尋ねた「どうすれば民を治めることができるだろうか」
孔子曰く「正しい人を採用して曲がった人々の上におけば、民は服するでしょう。逆に曲がった人を正しい人の上におけば、民は服しません」

哀公は孔子の出身地魯国の君主です。孔子が魯に戻ったのちに哀公に仕えた様です。哀公は若くして没した君主のおくりなです。

流行語

 ニュースサイトを流していたら「ユーキャン新語・流行語大賞」発表の記事を発見した。記事には流行語大賞の候補が紹介されていた。

 中国に住んでいても、日本の新聞は毎日チェックしている。日本のニュースサイトも見ることもある。毎朝ポッドキャストでニュースを聞いている。

しかし流行語大賞にノミネートされた言葉はほとんど知らない。
常識的に何の意味かわかる言葉もあるが、意味すらわからない言葉、なぜその言葉が流行語になったのかわからない言葉がほとんどだ。

日本のTV放送を見ないためだろう。流行語の解説には、オリ・パラの影響でスポーツ関係の言葉が多かったとあるが、どれがそのスポーツ関係かさえ分からない(苦笑)

流石に「SDGs」は分かった(笑)
「NFT」も「みんなのメンタールーム」というPodCast番組を聴いていたおかげで分かった。あとはほぼ全滅だ。

まぁ、日本にいても「イカゲーム」「ウマ娘」は分からなかっただろう。

中国に住んでいるための「情報格差」と言うよりは加齢による「興味減退」と考えるべきだろう。これは由々しき問題だ。本ばかり読んでいては馬鹿になるのかもしれない(笑)


このコラムは、2021年11月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1214号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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チェックリストの使い方

 何らかの不具合(特に人為ミスに起因する不具合)の対策として「チェックリストを作成しました」という事例を多く見ると思う。

人為ミスの対策として「ポカ避け」「チェックリスト」「ダブルチェック」が三種の神器の様に信奉されている。

私自身この考え方に異論はない。
しかしよく考えると「ポカ避け」はミスの原因が起きない様にする発生原因対策だ。一方「チェックリスト」「ダブルチェック」はミスが流出しない様に検査をする、という流出対策だ。「ダブルチェック」に至っては付加価値を産まないチェックを二度もする。

それでも過去の失敗事例を集め、その集大成としてチェックリストを作成することを推奨している。それはチェックリストには、仕事が終わってから問題がないことを検査するという役割の他に、使い方があるからだ。

本来ミスが起きない作業方法(ポカ避け)を採用すれば、チェックという付加価値を生まない作業をする必要はないはずだ。しかし設計作業でポカ避けを組み込める場面は限られる。コンピュータ支援の設計作業には比較的簡単にポカ避けを組み込める(例えばPWB設計のCADでは、部品の間隔、位置などのルールを自動的にチェックできる)が、その手前の基本設計などではポカ避け機能を導入することはそうは簡単ではないだろう。

チェックリストは設計が終わってから確認するのではなく、設計開始時に何を確認して設計を進めるか考えるために使う。

設計完了後にチェクリストをリーダとともに確認をする。この時のリーダの役割は、設計者がチェックリストの意味を正しく理解していることを確認することだ。


このコラムは、2018年9月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第724号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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ダブルチェック

 読者様からこんなメッセージをいただいた。

さて、本日のメルマガ『ポカミス』についてですが、ポカよけ
うんうんとうなずきながら拝読させていただきました。
でも、一番の問題は何を持ってダブルチェックかをわかっていない管理職がいるということです(笑)
林さんのご指摘通り、ただ2回見ただけではダブルチェックではありません。
それを指導する側が認識していないで、ダブルチェックのミスを指摘してはいけませんよね。
そりゃあ、ミスする人に全くの責任がないとは言いませんが、ベストな方法を指示・指導できないことにもっと重きをおかないといけないと常々感じています

H様、メッセージありがとうございます。

ダブルチェックを何の工夫もせずにやってしまうと、工数が増えるだけだ。作業そのものがダブルチェックになるような工夫が必要だ。

先週の記事で例として上げたネジ締めは、昔指導していた工場の組長さんが考えた。その工場に生産委託していた製品は設計の出来が悪く(笑)やたらネジ締めが多くあった。
ネジの締め忘れとか製品への混入があるとやばいので、組長さんにネジを見せて「このネジが一本なくなったらどうする?」と聞いてみた。

彼女はその一言を聞いただけで、小皿を持ってきて作業者に必要なだけ先に小皿にネジを入れてから作業をするように教えた。

彼女は日本語は全然分からないが、私が言いたいことをすぐに理解する能力があった。こういう人と仕事をするのは楽しいものだ。


このコラムは、2009年7月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第106号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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