月別アーカイブ: 2020年11月

改善の成果

 お客様の改善をお手伝いする時に,改善の成果を保証して欲しいと経営者に言われることがある.日系企業でそういう要求を受けることは滅多にないが,中華系企業の経営者はそういう傾向が強い.安からぬ料金を払う訳だから,その費用対効果を考えることは当然だ.

通常私の方から,無料診断などで問題点を見つけ,段取り替えの時間を1/3にしましょう,外に借りている倉庫を半分にしましょう,工程内不良を1/3にしましょう,などと目標を設定して仕事を始めることが多い.

しかし,本当にそんな成果が出せるのか不安に思っているのか,もっと詳細に成果を定義して欲しいと言う要求をよくいただく.では現在の財務状態を調査させていただき,活動後の財務状態と比較し,効果があった分を成果報酬としていただきましょうか?と言うと,財務状態は教えられないと言われる(苦笑)

では中国系のコンサル会社はどうしているのか,時々一緒に仕事をする仲間に聞いてみた.彼らは,こういう研修を何時間しました,現場で何時間改善指導をしました,と「活動の記録」を膨大な資料にまとめて,報告している様だ.そこまでやっても,成果報酬を値切られるそうだ(笑)

それは当然だ.顧客は,何をしてくれたかよりは,いくら儲かったかが問題だ.いくら活動報告をしても,改善出来たと言う実感が無ければ,満足はしない.

例えば,まず5Sから始めなければ,どうにも駄目だ,と言う工場に5Sから始めましょう.と提案すると,では成果を保証して欲しいと言われる.当然5Sが定着すれば,色々な経営指標が改善されるはずだ.従業員の士気が上がる,と言うのは離職率の低下で測定出来るだろう.しかし離職率が高いのは従業員の士気以外にも要因がある.これを士気の要因と,その他の要因に分類することはほぼ不可能だ.

例えば,外部に倉庫を借りている工場に,倉庫を半分にしましょう,と言うと興味を持ってもらえる.問題意識のある経営者ならば,即座に毎月○万元経費が浮くと計算出来るからだ.

問題意識があっても,解決出来ないのは正しい解決課題が定義出来ないからだ.
倉庫が狭い問題に対し,収納効率を上げると言う課題にしてしまうと,在庫を半分にすると言う解は見つからない.または自動倉庫を導入すると言う,対策を考えれば,費用対効果の問題で実現出来なくなる.本当の問題は,必要以上に生産するから倉庫が狭くなるのだ.従って,まとめ生産をしないと言うのが課題となる.社内や業界の常識にとらわれていると,こういう解決課題が設定出来ない.

こういう工場が,しばしば倉庫管理系統(システム)を教えて欲しいと,要求して来る.
それではうまく行かないから,生産改善をしましょう,と提案するのだが,中々理解してもらえない.系統(システム)さえ勉強すれば,魔法の呪文の様に問題を解決出来る訳ではない.

我々が提供するサポートの効果は,目に見える改善効果だけではない.経営幹部から現場リーダに対し,改善能力を育成し,改善意欲を向上することだ.
成果だけを求めると,我々が自分で改善をしてしまえば済む.しかしそれでは改善が継続することにはならない.下手をすれば,改善した結果も維持することが出来なくなる.

我々の仕事の最大の効果は,組織の改善意欲を向上させ,改善文化を定着させることだと考えている.


このコラムは、2012年12月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第286号に掲載した記事に加筆修正しました。

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君子に侍する三愆

kǒngyuē:“shìjūnyǒusānqiān(1)yánwèizhīéryánwèizhīzàoyánzhīéryánwèizhīyǐnwèijiànyánéryánwèizhī(2)。”

《论语》季氏第十六章-6

(1)愆:過失、あやまち
(2)瞽:盲人

素読文:
孔子曰く:“君子にするに三愆さんけん有り。げんいまこれおよばずして言う、之をそうう。げん之に及びて言わず、之をいんと謂いう。未だがんしょくを見ずして言う、之をと謂いう。

解釈:
孔子曰く:“君子のそばに仕える時に犯してはいけない過ちが三つある。言うべきでない時にものを言う、せっかちと言う。言うべき時に言わない、隠匿だ。顔色を見て気持ちを察することなく言う、これは盲人と同じだ。

上司が言おうとしていることを先に言ってしまう。ボロを出すといけないので黙っている。場の空気を読まず発言する。現代でもこう言う人は、上司や仲間から疎まれるでしょうね。

今月のレジ係明星

 近所の外資系スーパーマーケットの売り場に,「今月のレジ係明星」という掲示板がある.明星というのは,スターという意味だ.優秀レジ係ベストスリーを,写真入りで掲示してある

優秀レジ係の判定基準は,レジに打ち込んだ(バーコードをスキャンするだけだが)点数,間違って打ち込んだ点数で計算する様になっていた.

早くレジ処理が出来れば,お客様がレジで待たされる時間も短くなり,顧客満足につながるだろう.(正確に言えば顧客不満足の解消であり,顧客満足ではない)
そしてレジ係明星に選ばれたいという意欲を,レジ職員が持つという効果も期待出来る.

レジに打ち込む点数を上げるためには,早く処理をする,またはレジに立つ時間を長くする事で達成出来る.
後者によって点数を上げようと考えている職員は,皆無の様だ(笑)食事時は,お客様が長蛇の列を作っていても,誰も空いているレジに立とうとはしない.

レジ処理を早くする方は,それなりに取り組んでいる.商品をスキャンし易い様に,商品を入れたかごを垂直に立てる.確かにこの方が早く商品を取り出せる.しかし中に卵などが入っていると,割れてしまわないかとこちらがハラハラすることになる.

レジの打ち間違いに関しては,自分で修正出来ないので,レジ主任を呼んで修正してもらうことになる.その間入力処理が出来ないので,ダブルで損失となる.従ってスキャンし終わった商品を,買うのを止めたなどと言うと,不機嫌な顔でサービスカウンターで返品処理をしろと言って来る.

残念ながら,この活動は顧客満足に直結しているとはいい難い.

スーパーマーケットでは,接客サービスが出来るのは唯一レジ係である.そういう意味では,顧客満足に直結した評価もすべきだろう.

私は,レジ係明星の作業が,他のレジ係の作業とどのような差異があるのか興味があり,レジ係明星の列に並んでみた.

作業方法に特段の差異は発見出来なかったが,意外な事にレジ係明星のおばさんは,お客に結構話しかけているのだ.作業の手を止めておしゃべりをしている訳ではないが,私が買ったペットボトル入りの飲料を見て,これは「当り」が出るともう一本貰えるから,キャップをよく見てね,と話しかけてきた.何でもない一言を言える人が,接客の仕事に向いているのだろう.以降,私はレジに並ぶ時にこのおばさんを探している(笑)

他の中国人たちも,私と同じ様な気持ちで,このおばさんの列に並んでいるのだろうか?
真相は定かではないが,経営者はただレジ係明星を決めるだけではなく,なぜ彼女の成績が良いのかを研究すべきだ.それを他の職員も出来る様にすれば,業績も上がるだろう.


このコラムは、2012年12月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第289号に掲載した記事です。

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鴻海も苦戦、集まらぬ中国の労働者 若者定着せず

 中国の製造現場で労働者の確保が一段と厳しさを増している。多くの工場が深刻な人手不足に直面し、人件費は右肩上がりで上昇を続ける。安価な労働力を強みに「世界の工場」と呼ばれた中国の変調。世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)会社、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業も直撃している。

 大型工場が集まる中国南部の深セン市(広東省)郊外にひときわ巨大な工場がある。米アップルから携帯電話や部品の製造を受託する鴻海の中国子会社、富士康科技集団(フォックスコン)本部だ。

■閑散とする募集窓口

 12月初旬、同工場の南門にある従業員募集窓口は閑散としていた。並んでいたのは若い男女30人。警備員は「2~3年前は300人以上いたのに」と首をひねる。

 中国国内の従業員は130万人。深セン工場だけで30万人が働く。中国全土の農村から従業員を集め、安価で豊富な労働力を売り物に急成長した。同社の輸出総額は中国全体の約6%を占める。だが、この成長方程式は暗礁に乗り上げている。

 「いつも人手不足だ」。鴻海幹部は打ち明ける。採用担当者は中国各地を行脚し、地方政府や専門学校で採用活動を連日続ける。2012年の基本給は2200元(約2万9000円)と5年前の4倍近いが、労働者は集まらない。トップの郭台銘氏が「100万台のロボットを導入して人間と置き換える」と語るほど深刻だ。

なぜ従業員が足りないのか。「農民工」と呼ばれる出稼ぎ労働者の数が不足しているのではない。11年の出稼ぎ総数は2億5300万人。08年より3000万人弱多い。変わったのは農民工の意識だ。

 清華大学の調査によると、1960~70年代生まれの農民工の1社での平均勤続期間は4.2年間だった。だが80年代生まれは1.5年間、90年代生まれは0.9年間だ。鴻海の人事担当者は「若い農民工ほどきつい労働に我慢できない」と分析する。

 同社の深セン工場、四川省成都の工場などで今年に入り、衝突が相次ぎ発生した。多くは警備員が従業員に注意したことがきっかけだ。若い労働者は豊かになりかけた時代に生まれ、甘やかされて育った。出稼ぎに出ても実家に仕送りはしない。短期間の仕事で稼いだ賃金で食いつなぎ、蓄えがなくなったら再び就職する若者が増えている。

 移り気な労働者をつなぎ留めるため給与は右肩上がりで上昇する。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、深セン市の基本給はベトナムの3倍近い。ミャンマーと比べると約5倍だ。

 ■アディダスなど工場閉鎖

 この30年あまりの中国の成長を支えた賃金の相対的な安さは薄れ、世界の製造業は中国での生産見直しに動き始めている。米ナイキは09年に中国の自社工場を閉鎖し、アディダスも今年10月に追随した。

 中国は所得向上やネットの普及で労働者の権利意識が高まる一方、所得格差は拡大した。中国共産党は労働者の不満緩和を狙って所得倍増を打ち出し、これが激しい賃上げ要求につながる。安い労働力に頼った成長モデルは限界が近づいている。

(日本経済新聞より)

 中国では,今ちょうど新卒大学生の就職活動が盛んな時期だ.TVの報道を見ると,大学生の就職先には金融業界が人気の様だ.インタビューを受けた学生は,金融業界志望の理由に「安定」を挙げていた.

出稼ぎ民工に,金融機関に就職の道が開かれているとは思えないが,製造業で働く若者は減っている.東莞市にある人材市場では,三次産業の求人が全体の半分を超えたと言う記事を昨年読んだ.

このメルマガでは何度も,中国は既にローコスト生産国ではないと申し上げて来た.人海戦術によるモノ造りをしようにも,作業員が集まらない.

中国全体が豊かになりつつある.沿岸部と内陸部の格差が問題になっているが,成長率と言う切り口で見れば,ここ数年は内陸部の方が豊かになったと言う実感が高いのではなかろうか?

既に出稼ぎ民工は,マズローの欲求5段階で言う所の,生存欲求と安定欲求をクリアしており,その上の欲求が顕在化していると思われる.「苦役」に耐え,自己を犠牲にしてでも,田舎の家族の生活を支えなければならない若者は激減してしまっただろう.

今の若者が「きつい労働に我慢出来ない」のではなく「きつい労働に我慢する必要がなくなった」と理解した方が良さそうだ.

日本では,「女工哀史」「集団就職」の世界から,徐々に発展し「新人類」と呼ばれる若者が登場した.中国では,この歴史をたった10年で到達してしまった.短期間に激変しているが,我々は日本で既に経験して来たことだ.

「きつい仕事」だから若者が永く働かないのではなく,仕事を通した自己成長を実感出来ないので,働きがいが湧かない.こう考えれば,まだ打つ手はあると考えている.

日本の若者には,清掃員と言う仕事は人気がないはずだ.
しかしディズニーランドに集まる学生アルバイトには,カストーディアル(清掃係)が一番人気の職種だと聞いた.カストーディアルと言う名前であっても,清掃員であることには変わりはない.ここに若者の労働意欲を引き出す秘訣がありそうだ.


このコラムは、2012年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第287号に掲載した記事に加筆修正しました。

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続・相違点より共通点に着目

 先週のコラムに読者様からメッセージをいただいた.

※L様のメッセージ
林先生
 先生のメルマガを購読して、既に3年も超えました。
いつも中国企業に関する経営管理の考え方と手法を日本人の目で斬新な視点を紹介していただき、大変勉強になっております。
今回のメルマガで、「相違点より共通点に着目」というテーマは、大変同感しております。相違点を強調しすぎる協和的に物事を進めていけなくなり、共通点を求めることで不可能なことでも可能になると考えております。中国は、協和社会作りにちからを入れておりますが、中日関係も協和関係を作れるように、両国の国民の共通点を探し、また、相違点を共通点に変化していく方法も研究することも願いたいです。

メルマガ創刊当時からご愛読いただいている読者様からのメッセージだ.
こういうメッセージをいただくと,毎週コツコツとメルマガを配信して来て良かったと痛感する.本当に嬉しい.

本当のことを白状すると,私も以前は「相違点派」だった(笑)
前職の頃,中国にある4社の協力工場を指導していた.当時は表面的なことしか目に見えず,日中の違いを考慮して,指導すべきだと考えていた.

日本的な考え方を指導しても,理解出来ないだろうと言う思いがあり,仕組みで間違いなく,効率よく生産出来る様にすることに力を入れていた.当時は,中国人と日本人の考え方の違いを解説した本を読みあさったモノだ.

独立した後,どうすれば人が働く意欲を持つか,と言うことを考える様になった.日本の会社では,そういうことを考えなくても仕事はできた.会社には人事部門があり,彼らが制度や施策を下ろしてくれる.自分は,それを自部署にどう展開するかだけを考えれば良かった.
しかし一人になると,自分で全て考えなければならない.中国で工場を経営している人たちと,毎月勉強会をする様になった.

人が働く意欲を持てば,仕事が楽しくなるはずであり,仕事が楽しければ,幸せになるはずだ.幸せな従業員が集まった会社は,業績も良くなる,という単純な信念で,ずっと考えて来た.

今の所たどり着いたのは「共通点をマネジメントする」と言う方法論だ.

人の魂は,何人であろうと「幸せになりたい」と言う意欲を持っているはずだ.幸せになるためには成長しなければならない.成長のための努力は喜んで取り組むはずだ.努力した結果「幸福」と言う最高のインセンティブが得られる.この「成長意欲」を求心力として,組織をマネジメントすれば,意欲の高い組織になるだろう.

「報酬と罰」で動機付けられる組織は,人が生き生きと働く環境にはなり難いと考えている.


このコラムは、2012年11月26日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第285号に掲載した記事に加筆したものです。

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整理とは

 先週お客様の工場で,5Sの指導をしていて気が付いたことがある.
5Sの「整理」とは本来,要るモノと要らないモノを区別し,要らないモノを捨てることだ.その結果,要るモノだけがある職場となる.
要るモノだけがある職場を実現するのが整理の目的だと考えれば,必要なモノが無ければ,準備することも「整理」と言える.

先週訪問した工場は,現在生産を立ち上げようとしている段階であり,まだ不要なモノが散見される状態ではない.むしろ必要なモノが足りていない状況だった.

例えば,会議室にゴミ箱が無かった.
たかがゴミ箱だが,もう少し考えると,会議室に使用済みの会議資料を回収する箱を用意する,と言うアイディアが浮かぶ.これで回収箱に裏紙が自動的に集まる.更に考えれば,本当に会議資料を配付すべきかどうかにまで考えが至る.

こう考えることが「改善」であり.5Sの進化だ.


このコラムは、2012年12月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第287号に掲載した記事に加筆修正しました。

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君子三戒あり

kǒngyuē:“jūnyǒusānjièshàozhīshíxuèwèidìngjièzhīzài(1)zhuàng(2)xuèfāng(3)gāngjièzhīzàidòu(4)lǎoxuè shuāijièzhīzài(5)。”

《论语》季氏第十六-7

(1)色:色欲
(2)壮:壮年
(3)方:まさに。ちょうど〜の頃合い。
(4)斗:闘い
(5)得:欲得

素読文:

こういわく:“くん三戒さんかいり。わかときは、けっいまさだまらず。これいましむることいろり。そうなるにおよびてや、けっまさごうなり。これいましむることとうり。そのいるにおよびてや、けっすでおとろう。これいましむることるにり。”

解釈:

孔子曰く:“君子に三戒あり。若い時は血気が定まらず、色欲を戒むべし。壮年時には血気盛んであり、闘を戒むべし。老いては血気が衰え、欲を戒むべし。”

壮年と老年の境がどこなのかはわかりませんが、争いを好まず欲もない自分は何を戒むべきでしょうか。

イノベーション

 洗濯物を自動的にたたむ。しかも誰の洗濯物か見え分けて仕分けをする。夢の様な家電製品だ。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが開発した製品ランドロイドだ。ランドリィ+アンドロイド(スマホの事ではなく人造人間の意味)と言うネーミングも科学少年のまま大人になってしまった人間のココロを鷲掴みにする(笑)社名からして素敵だ。「七人の夢想家研究室」私の年代なら
TVドラマ「七人の侍」を想起するだろう。若い人ならばアニメ「ワンピース」を思い起こすかも知れない。

しかし、価格を聞いて一気に高揚は冷めた(笑)1台185万円から、上位機種は250万円ほどすると言う。既に予約が開始されているが、一般家庭に普及するためには、もう暫くかかるだろう。洗濯もたらいから、電気洗濯機、一槽式と進化し、乾燥まで自動化した。家事労働の軽減に大きく貢献している。ランドロイドも同じ様な(価格面での)進化を期待したい。

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの坂根社長は、商品開発に対してこう言っている。

「技術の先にイノベーションがあるのではなく、ニーズの先にイノベーションがある。だから手持ちの技術にこだわるのではなく、まずは適切なテーマ設定を行って、それを実現するための技術開発を行うことが重要だと考えた。」

CNET Japan」から引用

「洗濯物折りたたみ機「Landroid」が誕生するまで–社長が明かす紆余曲折の12年」

技術がなければ、イノベーションは起こせない。この事実が重すぎるために我々は、技術オリエントでイノベーションを考えてしまう。
「我々の加工技術で新製品を考えてみよう」
「この高機能素材の特性を応用した新製品を考えてみよう」
しばしばこのようなアプローチで新製品の開発を考えてしまう。

イノベーションが起きるのは、社会の要求(ニーズ)を満たす事が出来る技術(シーズ)を開発できた時だ。

ランドロイドは、家事労働軽減と言うニーズオリエントで開発された製品だ。
ランドロイドに使われている技術は、洗濯物を畳む「メカトロニクス」、洗濯物を認識する「画像処理技術」、どのようにたたむか判断する「AI技術」だ。

元々セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズのコア技術は「高機能複合素材」であり、それを活用した医療機器、ゴルフシャフトなどを開発している。技術オリエントで商品を考えれば、ランドロイドの開発はなかっただろう。

常識的なアプローチならば、現有顧客のニーズを深堀して、必要な技術を開発、製品を実現する、と言う手順になるだろう。このアプローチならば顧客ニーズの理解、販路構築のリスクを小さく出来る。

ゴルフシャフトは、既存技術を応用して、新規市場を開拓した。

今回のランドロイドは定石を破り、新規市場に新規技術で製品開発を行った。現有製品からの利益が十分にある。パナソニック、大和ハウス大和ハウスとの提携。これらが定石破りのリスクを軽減しているのだろう。「家庭用洗濯物自動折り畳み機」と言う新しい市場が出来上がるのか、期待して注視したい。

【編集後記】
残念ながらセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは2019年4月に倒産している。
夢の洗濯機ランドロイドの新規技術開発が予想以上に難航したようだ。いきなり新規市場・新規技術を目指すべきではないという定石は生きているようだ。


このコラムは、2017年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第532号に掲載した記事です。

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職業人としての誇り

 先週のニュースからに読者様からコメントをいただいた.

※Z様のコメント
こんばんわ、198号は読んでいて目頭が熱くなりました。

僕的な解釈であれば、無理をするのは「滅私奉公」「国のため」「会社のため」ではなく、職業人としての使命感だと思います。とても被災地、それも原発などの危険な場所へ乗り込みを、日本人であっても「国のため」・・・とは解釈できません。
そうすると林さんのおっしゃられる「活私奉公」は、中国人に限ったことではないと思います。

違うとすれば、日本人と中国人とで、潜在的な気持ちがどこまで顕在化されるかの違いかと思います。

実は先週のコラムは,私自身が目頭を押さえながら書いた.

定年前の電力会社社員が,静かに「未来の原子力発電のために行く」と語って福島原発に出かけるのは,「職業人としての誇り」を置いては説明できないと私も思っている.

疲労の極限を越えて,被災地で活動をしている自衛官,消防庁員,警察官,全ての人々が「職業人としての誇り」を賭けて,戦っている.

その「職業人としての誇り」とは,仕事を通して成長し自己実現を果たそうとしている人だけが持てるモノだ.
仕事を通して成長する.仕事を通して自己実現することが「活私」だ.自分を活かす事で,会社や社会に貢献することを「活私奉公」と名付けた.

幕末から戦後まで,日本は「滅私奉公」の人々に支えられてきた.しかし今の日本で「滅私奉公」と言って納得する人は少ないだろう.

ボランティアとして被災地に向かう人々も「滅私奉公」ではないと思う.彼らを動かすのは,職業人としての誇りではないかもしれない.しかし,止むに止まれぬ情熱を突き動かすのは「日本人としての誇り」であり,日本人として自己実現を果たそうという「活私」だ.

「他人の役に立ちたい」と渇望すること自体が人間としての「活私」であり,その行動が結果として「活私奉公」になっていると考えている.

では,中国人の他人を思いやる力は,潜在的なものなのだろうか?

私の観察によると,彼らの「他人の役に立ちたい」という思いが我々よそ者に向けられないだけだ.しかしそれは,我々が「よそ者」であり続けるところに問題が有るのだ.
中国人を変えようと思っても変わらない.我々が変わらなければならない.

Z様はご自身のメールマガジンで仙台に一人娘を留学させている父親からの手紙を紹介しておられる.
父親は一人娘を心配していたが,彼女は周りの被災者から一人ぼっちでは心細いだろうと,特別の配慮を受けている.彼ら父娘にとって,被災地の人々は「よそ者」ではなくなったはずだ.

「中国人従業員がどうしたら一生懸命働いてくれるか」と考えるのではなく,「どうしたら中国人従業員が幸せになれるのか」を経営者は考えなくてはならない.

「リストラなしの『年輪経営』」塚越寛著


このコラムは、2011年4月4日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第199号に掲載した記事です。

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フェアネス

 企業のデータ捏造、役人の受託収賄など最近の日本では不祥事が相次いでいる。日本の社会が堕落し始めているように思えてならない。

「君子徳を思い、小人土を思う。
 君子刑を思い、小人恵を思う。」
《論語 里仁第四・11》

君子は徳を磨く、小人は財産にこだわる。
君子は法規に従い、小人は恩恵を求める。
2500年前に孔子が言った言葉だ。

企業や社会がまず守らねばならないのはフェアネスだ。
野心を捨てるべきだ、というつもりはない。しかし野心を超えたフェアネスが
あるべきだと思うが如何だろうか?

聖人君子の真似事をしていれば、競合に敗れてしまうという危惧もあるだろう。
しかし孔子はこうも言っている。

徳は孤ならず、必ず隣あり。
《論語 里仁第四・25》

企業のデータ捏造や役人の受託収賄が表沙汰になるのは、内部告発がるからだ
ろう。徳のある者がまだいるという証なのかもしれない。

野心を優先させる国や企業はひと時の繁栄はあるかもしれないが、フェアネス
を志す国や企業に淘汰されるはずだ。

「リストラなしの『年輪経営』」塚越寛著


このコラムは、2018年7月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第690号に掲載した記事です。

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