「ありがとう」の効果


 先日朝早く東莞の市内バスに乗った.まだ通学時間には早かったが,女子高校生が乗っていた.彼女は学校のあるバス停で降りたが,前方の入り口から降りていった.乗り込んでくる乗客はなかったが,どうして決まりを守れないのだろうか?と眉をひそめかけた.

しかし彼女は運転手に小さな声で,「謝謝」と言って降りていったのだ.

日本では子供達がバスを下車する際に「ありがとうございます」と運転手に声をかける光景はよく目にする.しかし中国では,初めての経験だった.大げさかもしれないが,私にとっては小さな感動だった.この日は一日爽やかな気持ちが継続した.

中国に来た当初,買い物をしておつりを貰った時にいつもの習慣で「謝謝」と言うといぶかしげな顔で見られる.知人にちょっと親切にしてもらった時に,「謝謝」と言うと水臭いと叱られる.
そんなことを繰り返している内に,「ありがとう」と言う言葉を忘れかけていた.

当然「ありがとう」と言う言葉は,自分が嬉しいから発する.そしてその嬉しさは「ありがとう」と言う言葉を発することによりより確かになる.「ありがとう」と言われた人も嬉しくなる.

件の運転手は,「謝謝」と言われて優しい気持ちになったのだろう.その後の運転は明らかに優しくなっていた.彼女の一言は,そのバスに乗り合わせた乗客全員にも,ありがたいことだったわけだ.

ただ横で見ていた私も,一日気持ちが晴れやかだった.ありがたいことだ.
「ありがとう」は伝染するのだ.

「ありがとう」を漢字で書けば「有難う」となる.「難が有る」という意味だ.困難や難しいことに直面した時は,まず「ありがとう」と言う.なぜなら成長のチャンスが来たからだ.

これを聞いた仲間は,困難に負けない貴方の強い精神に感動する.
困難な時にリーダが暗い顔をすれば,メンバーも暗くなる.明るい顔で「ありがとう」と言えば,部下の気持ちも明るくなる.その明るさが,困難な道を進むための灯りになるのだ.

今日から貴方の会社では「ありがとう」を公用語にしてはどうだろうか.


このコラムは、2010年11月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第180号に掲載した記事です。

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