月別アーカイブ: 2008年4月

言い訳

 中国の工場で仕事をしていると「言い訳」が多くてなかなか本質の改善ができない,という経験をもたれた方も多いのではないだろうか.
 以前指導していた中国工場で,梱包変更の情報がきちんと現場まで伝わらず変更前の仕様で製品を梱包してしまったことがある.
この工場は台湾にある設計部隊から設計変更指示(ECN)が出て設計変更が工場に伝達される仕組みになっている.
ここで生産された製品はお客様の中国工場に納入される.梱包仕様に関しては,お客様の中国工場から直接要求が来て工場の生産技術が設計することになっていた.
今回は営業がお客様の要求を受け,それをメールで各部署に配布したが梱包係は従来のまま梱包をしてしまった.
それを出荷検査(OQA)の検査員が見つけて騒ぎとなったわけである.
ここまでは,いきさつをヒアリングして分かった.これをそのまま放置しておけば又同様な問題が発生する.場合によっては出荷してしまい,顧客クレームになる.
しかし現場はもう一度梱包しなおせば大丈夫,という反応である.即関係者を集めて対策会議を開いた.
会議では言い訳合戦.
営業担当はメールで伝達したとメールをプリントアウトして,どうだとばかり見せる.自分は責任をきちんと果たしたというわけだ.メールを出すことと伝達をすることは違う.
製造部は確かにメールは受け取っているが,梱包係の班長までは一人一台PCを持っていない.図面を改訂してもらわなければ対応できないという.
もっともな意見だが,通常現場の梱包作業者は図面など見ずに作業をしている.
生産技術が梱包作業書を改訂しなければならないが,メールをCCで受け取ったから作業をしなかった.
余談だかメールのTOとCCの使い分け方を知らない人が多すぎる.
こういう生産性のない議論を聞いているといい加減腹が立ってくるが,じっと我慢.それぞれが言い訳を言い終わったところで,「じゃ同じ問題が又発生しないように対策を考えよう」と切り出す.
ここからが本来の議論である.
問題は梱包仕様の変更がきちんと正規のECNルールに乗っていないことである.
梱包といえども製品仕様の一部である.
営業はお客様の要求にしたがってECR(設計変更要求)を発行.
生産技術は改定図面を発行.
ドキュメント管理はECNの手続きに従って図面を配布,旧図と差し替え.
この作業が終わったところで営業の仕事は完結したことになる.
各部署の臨機応変な対応で,処理できれば問題はないかもしれない.しかし自分の責任範囲に境界線を引いて仕事をしている人たちには,うまく行かない.
きちんとシステムで対応しないといずれボロが出てしまう.
こんな言い訳もあります:「誰のせい?」

【華南マンスリーコラム】ルーペで改善を拡大?

 筆者は世界の工場・中国珠江デルタエリアで,製造業を中心に品質改善・経営革新のお手伝いをしている.私は工場に出かけるときにいつも身に着けている小道具がある.少々大げさだが「魂の小道具」と名付けた.
今月から12回「魂の小道具」で品質改善・生産性改善の秘訣をお話しする.
第一回目はルーペ.
#1
現場に入るときはルーペが欠かせない.携帯用のルーペを首からぶら下げている.
現場で現物を見る.これがモノ造りの基本の基本.モノが事実を語る.モノから事実が見えてくるまでじっと見る.
不良品を見る.良品を見る.ごみを見る.
不良品からは,その不良を作りこんだ原因が見えてくるはずだ.原因に対してすぐに対策を立てる.
不良品というのは結果だ.結果を見つめることにより原因を知る.そしてその場で改善する.
不良のデータをオフィスで見ていただけではこうは行かない.今日のデータを明日の朝見たのでは,今日の改善のチャンスはすでに失われている.
良品を見ることにより生産の品質を保証する.初物(ハツモノ:その日初めて作る物)初品(ハツシナ:新製品,改良品など初めて作る物)をきちんと見て生産開始時に生産の品質を保証する.製品の検査をするという意味ではない.良品がどう加工されたか,モノに語らせる.切断加工品の破断面を見れば,刃の磨耗や設備の状態などが見えるはずだ.
ごみを見ることにより工程の品質を保証する.例えば切削屑.切削屑がいつもと違えば,切削設備に何か異状があるはずだ.加工不良が発生する前に設備・工具のメンテナンスができる.
ゴミ箱の中には改善のヒントがいっぱい詰まっている.
良品とごみは過程.過程を見つめることにより結果を保証する.
これはいわば「予防保全」である.まだ発生していない不具合の発生を予防する.
管理者が自ら見ることが重要だ.管理者の行動は現場の人間が良く見ている.しかし管理者は自分でモノを見ているだけではだめ.現場がモノをちゃんと見ていることを見る.現場がモノを見られるように指導をする.これが管理者の仕事だ.
第二回は「ハンカチで文化の違いを知る!」

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.