筆者は世界の工場・中国珠江デルタエリアで,製造業を中心に品質改善・経営革新のお手伝いをしている.私は工場に出かけるときにいつも身に着けている小道具がある.少々大げさだが「魂の小道具」と名付けた.
今月から12回「魂の小道具」で品質改善・生産性改善の秘訣をお話しする.
第一回目はルーペ.
現場に入るときはルーペが欠かせない.携帯用のルーペを首からぶら下げている.
現場で現物を見る.これがモノ造りの基本の基本.モノが事実を語る.モノから事実が見えてくるまでじっと見る.
不良品を見る.良品を見る.ごみを見る.
不良品からは,その不良を作りこんだ原因が見えてくるはずだ.原因に対してすぐに対策を立てる.
不良品というのは結果だ.結果を見つめることにより原因を知る.そしてその場で改善する.
不良のデータをオフィスで見ていただけではこうは行かない.今日のデータを明日の朝見たのでは,今日の改善のチャンスはすでに失われている.
良品を見ることにより生産の品質を保証する.初物(ハツモノ:その日初めて作る物)初品(ハツシナ:新製品,改良品など初めて作る物)をきちんと見て生産開始時に生産の品質を保証する.製品の検査をするという意味ではない.良品がどう加工されたか,モノに語らせる.切断加工品の破断面を見れば,刃の磨耗や設備の状態などが見えるはずだ.
ごみを見ることにより工程の品質を保証する.例えば切削屑.切削屑がいつもと違えば,切削設備に何か異状があるはずだ.加工不良が発生する前に設備・工具のメンテナンスができる.
ゴミ箱の中には改善のヒントがいっぱい詰まっている.
良品とごみは過程.過程を見つめることにより結果を保証する.
これはいわば「予防保全」である.まだ発生していない不具合の発生を予防する.
管理者が自ら見ることが重要だ.管理者の行動は現場の人間が良く見ている.しかし管理者は自分でモノを見ているだけではだめ.現場がモノをちゃんと見ていることを見る.現場がモノを見られるように指導をする.これが管理者の仕事だ.
第二回は「ハンカチで文化の違いを知る!」
このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.