月別アーカイブ: 2017年6月

一道万芸に通ず

今から400年ほど前に、宮本武蔵と言う名の剣豪が日本にいた。
宮本武蔵は武道の道を究めた剣術家、兵法家だが、書画においてもその才能を発揮したと言う。「一通百通」、一つの道を極めれば、その他の分野でも一流になれると言う事だ。

晩年武蔵が書き残した「五輪書」は中国語にも翻訳されている。

何事においても、その道を極めれば「物の理(もののことわり)」に行き着く。
「物理」は全ての道に通じている。

例えば、物理を極めれば、数学、国語、英語にも秀でる事が出来るはずだ。
高校時代の級友で、物理学が大好きな男がいた。彼は物理学のテストは毎回満点を取るが、その他の教科は興味がないので全く勉強しない。担任の教師が見かねて「物理の問題を解くには数学の力が必要なんだが」と本人につぶやいた所、数学も満点を取る様になった。
「物理を説明するためには、国語の力が必要だ」とか「先進的な物理学論文は皆英語で書かれている」ともう一言、二言つぶやいたら、彼は本物の秀才になったはずだ(笑)

「一通百通」とは、一つの道を極めれば百の道につながる、と言う意味だ。

道を極めた所にある「悟り」と、道を極めるための「修練」が表裏一体となり、「一道万芸に通ず」の状態に到達するのだろう。

大学時代にテニスの選手だった後輩がいた。何度か一緒にスキーに行った事がある。運動神経は良いのだが、スキーはお世辞にもうまいとは言えなかった。しかし何度か一緒にスキーをしている内に、彼は膝の使い方がテニスと同じだと気が付いた。テニスをしない私には、彼の説明はさっぱり分からなかったが、そこからは上達が早かった。彼は、テニスで得た「悟り」をスキーにも応用することができた。

ちなみに私はスキーで悟りを拓く所までは行かなかったが、スキーを鍛錬する感覚を持っていた。
スキーを遊びと考えれば、リフトに乗ってただ滑り降りて来るだけとなる。毎回テーマを設定して滑る。納得がゆかない時は、その場で停まり、納得が行かない滑りをした所まで登ってやり直す。そんなストイックな滑り方をしていた。

先輩や同僚はリュックにワインを入れてゲレンデに出る。多分私と一緒に滑るのは楽しくなかっただろう(笑)

中国の若者を見ていて感じるのは、自分の専門分野を狭く尖らせることにより、キャリアアップの効率を図ろうとしている様に思える。

例えば品質保証と言う分野でキャリアを積むためには、品質管理、品質改善、統計数学など色々な分野の知識、社内各部署の仕事内容に精通する事が必要だ。こういう意欲を持った若者を余り見た事がない。
自分自身をISOの専門家として、その範囲だけで成長しようとする。こういう人に経験を積ませるため、受け入れ検査の仕事を担当させようとすると、辞めてしまう事が良く有る。

以前指導していた会社で、ISO担当のリーダに社内各部署で実地の経験を積ませるために、製造や間接部門を短期間研修させようと、経営者に提案した。経営者がどう説明したのか分からないが、彼はすぐ辞職してしまった(苦笑)
10年前の苦い経験だが、今なら直接本人に「一道万芸に通ず」を説明してから経営者に進言するだろう。

あなたの周りには「一通百通」の達人にしたい部下がいますか?


このコラムは、2014年7月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第371号に掲載した記事に加筆したものです。

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百年の計

 先週のコラムで、「チーム型コミュニティ」について書かせていただいた。

「チーム型コミュニティ」

弊社のサポート企業様を中心にコミュニティを作り、コミュニティで切磋琢磨することにより、更なる成長を目指すことが目的だ。

私が理想としているサポートは、お客様での改善活動などを通して、お客様のリーダを育成する。契約期間が終わった後も、育成したリーだが中心となり、改善が継続するのが理想状態だ。

そしてこの理想状態を、コミュニティでの交流を通じてさらに強化する。
それがチーム型コミュニティの目的だ。

こうすることで、私がいなくても、お客様での改善が継続するという状況を作り出せると思っている。「百年の計」とは少し大げさかもしれないが、このようなコミュニティを作ることができれば、私が引退した後も継続可能になるはずだと考えている。

実はこのような考えに至ったのは、現役会社員時代の反省からだ。
当時は「プレーイングマネジャ」として、自分自身も業務に関わりながら組織のマネジメントをしていた。もちろん業務もマネジメントも両方全力で取り組んだ。
しかし「業務能力」を磨くことに意識が集中し、部下の育成が不十分だった。
部下の育成のために、年間教育計画も作り実施していたし、自分のノウハウを部下に伝えるために、チェックリストを作ったりもした。しかし正直に言えば心の底で、チェックリストでは自分のノウハウを伝えきれない、と思っていた。

圧倒的な業務能力を持ち、品証の仕事は「林をおいて余人に替えられない」と評価されていた。当時はこの評価が賞賛だと勘違いしていた。
今思い返せば、この評価のために役員になるチャンスを2度失った。

自分がいなくても、部下が立派にやり遂げる状況を作り出せていなかった。
さらに言えば、自分がいなくても部下が成長し成果があがる仕組みを作ることが出来なかった。

経営者は、自分が引退した後も会社が発展することを念頭に経営をしているはずだ。中堅幹部、経営層幹部も同様に、自分がいなくなっても(別の部門に異動する、昇格する)組織が成果を出し続けることを目指すべきだろう。


このコラムは、2015年9月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第443号に掲載した記事に加筆したものです。

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グッド・イナフ

 グッド・イナフとは“Good enough”のことだ。英和辞書で直訳すれば“十分良い”となるが、“まぁまぁ良いか”“こんなもんか”と言うニュアンスが有る。つまり改善した方が良いが、まぁまぁ許容できるレベル、と言う訳だ。

工場や会社の中に、グッド・イナフがいくつかあるのではないだろうか?
電子部品業界では、出荷不良が20ppm未満ならばグッド・イナフと評価してもらえる。しかしグッド・イナフだからそのまま放置をしておけば、出荷不良ゼロが常識の自動車業界には参入できない。

工程内で発生する偶発的不良をグッド・イナフと考えて放置すれば、いつまでたってもモグラ叩きの様に類似不良が顔を出すことになる。

顧客アンケート結果がグッド・イナフであっても、それを放置しておけば、顧客要求レベルが上がっていることに気がつかず、同業者に顧客を奪われる事になる。

このようなグッド・イナフ問題が蔓延するのは、OR理論の間違った適用が原因だと考えている。
たとえば、検査コストをたくさんかければ、出荷不良は少なくなる。コストと不良の関係をグラフに描き、二つの曲線が交差する点(サドル点)がベストなとなる。こういう理論がグッド・イナフ問題を解決できない原因だと思う。

検査以外にも不良を減らすことは出来る。
自分勝手に限界を作ることが、グッド・イナフ問題を根絶できない原因だろう。


このコラムは、2016年2月22日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第464号に掲載した記事に加筆したものです。

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不良原因分析

 顧客クレームや工程内不良に対する原因分析、再発防止対策検討は日常的に行われていると思う。顧客クレームは無い方が良いが、工程内不良が無いと改善のチャンスが無くなる。工程内不良の処置(修復、やり直し、在庫の全数再検査)に追いまくられ、改善のチャンスを逃してしまってはもったいない。
本当の原因を特定する事により、有効な再発防止が可能になる。原因分析で手を抜くと、有効な再発防止が出来ずに「慢性不具合」となる。

原因分析のコツについて書いてみたい。

我々の様な凡人が天才と同水準の仕事をするためには、一人ではなく複数で智慧を出し合う。そのための手法がQC手法に代表される管理技術だ。
魚骨図が原因分析手法としてよく活用される。
しかし魚骨図は、原因分析手法というより原因となりうる要因を沢山列挙する手法と言った方が良い。何も無い所から要因を列挙するより、中骨として、例えば人、物、設備、方法の4Mで分類すると、要因を発想しやすくなる。
他人の発想を図にまとめて可視化する事により、更に新しい発想が出る。
このようにして列挙した要因が、真の原因かどうか検証する。それが原因分析のプロセスだ。

問題の要因を発生原因と流出原因に分けて、再発防止対策を考えるとよい。
発生原因が根本的な原因であり、流出原因は根本問題を見逃してしまう原因だ。

例えば、製品内に金属異物があり絶縁不良発生、という問題を考えてみよう。
金属異物が発生する、というのが根本問題だ。絶縁検査で不良を発見しているので流出問題は無い、と考えてはいけない。
発生した金属異物を自工程で発見出来ない、除去出来ない、というのが流出だ。

根本原因、流出原因に対してそれぞれ再発防止対策を考える。
この時に重要な事は、根本原因を根絶させる事が出来れば、流出対策は不要だという事だ。流出対策に重きを置いている再発防止対策をしばしば見かける。

流出防止対策は製品に付加価値を与えない。前出の例で言えば、加工時に発生した金属異物を除去するという作業や、耐圧検査は付加価値を生んでいない。品質を保証するための付帯作業だ。可能であれば削除、出来る限り短縮したい作業だ。しかし全数検査を2度やる等という対策をしばしば見る。
根本原因対策に重きを置けば、従来行っていた付加価値を生まない検査作業を削減出来る事すらある。


このコラムは、2016年12月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第507号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩・認識

 先週のコラムでは、問題解決の第一歩は問題を正しく定義する事だ、と書かせていただいた。

完成品倉庫が狭いのが問題ではない。問題を正しく定義すれば、出荷量より多く生産する事である。

完成品倉庫が狭いという「現象」は簡単に認識出来る。
従って、完成品倉庫が狭いという解決課題を定義しがちだ。解決課題が間違っていれば、問題は解決しない。

しかし実際の生産現場では、問題を認識出来ていない事が多い。
認識は出来ていても、「こんなモノだ」という現実受け入れ型の「諦め」が改善のチャンスをつぶすことになる。

例えば、エンジンのクランクシャフトを鍛造加工して、要求精度に仕上げる。
この方法では歩留まりは70%ほどだそうだ。従って後工程で切削加工をする。これが「諦め」だ。

歩留まり70%を受け入れてしまうと、削り代(けずりしろ)をみこんで鍛造加工し切削加工を追加することになる。材料も追加加工もムダだ。

歩留まり70%を諦めなければ、方法を考えることになる。
鍛造加工前に、たたいてあらかた形を作る。これだけで歩留まりは90%になったそうだ。

ダイキャスト成形をする時は、金型を交換して数ショットはきちんとした製品が出来ない。これを「試し打ち」として諦めてしまえば、改善はない。
試し打ちがムダであるという認識を持つことにより、改善が出来る。

試し打ちがムダだという認識を持てば、なぜ金型交換後のショットがうまく行かないか考える。金型の温度が上がっていないから、材料が金型の隅まで回らない。では金型の温度を上げれば良いだけだ。
金型の温度を上げる方法はいくらでも思いつくはずだ。


このコラムは、2012年8月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第270号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩

 問題解決の手法は沢山ある。
問題解決の一番重要なステップは、まず始めに課題を正しく定義する事だ。

例えば、
「受注が多くて出荷が間に合わない」というのは課題ではなく、現象だ。
正しい課題は「生産能力がなりない」ということだ。

同様な例を挙げると、
「製品倉庫が狭い」というのは課題ではなく「出荷より沢山生産してしまう」
ことが課題だ。

出荷不良を「検査をしているのに不良が顧客に流出する」と課題定義してしまうと「検査を強化する」という不毛な解決案が出て来る。
正しい課題は「工程内で不良が発生する」という事であり、これに対策をすれば「工程内不良をなくす」という本質解決を目指すことになる。
もちろん一足飛びに、工程内不良をなくす事はなかなか難しい。暫定的に検査強化をする事もあるだろう。しかしあくまでも「暫定対策」であることを明確にしておかなければならない。

問題の表層を見入るのではなく、本質を見て課題を定義しなければならない。

もう一つ重要なのは、課題を「自責」で定義する事だ。

上述の「出荷が間に合わない」を、顧客の注文が多い(他責)とすれば自分たちでは解決が出来ない。生産能力不足(自責)と課題を定義するから改善が出来る。

極端な例を挙げたが、意外とこの落とし穴にはまっている例を良く見る。

従業員の能力が足りないから、単純作業だけさせる。というのは、課題を従業員の問題(他責)として定義しているから、効果的な問題解決が出来ない。
従業員の育成が不足している(自責)と課題を定義すれば、いくつも解決案が出て来るはずだ。

「他責」は愚痴やあきらめしか生まない。
「自責」が工夫と改善を生む。


このコラムは、2012年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第269号に掲載した記事に加筆したものです。

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遠きを見て計る

200年程前の日本に二宮尊徳と言う農業指導者がいた。
子供の頃から働きながら勉学に励み、指導者となった人だ。日本の小学校には、薪を背負って歩きながら本を読んでいる二宮尊徳少年の銅像が必ず有った。

今回は、二宮尊徳の
「遠きをはかる者は富み、近くをはかる者は貧す」
と言う言葉を紹介したい。

目先の利益を追う者は困窮し、将来を見据える者は富む、と言う意味だ。
秋の収穫を見据えて、春に種を蒔くのと同じ様に、数年先を見据えて品種改良に取り組む。100年先を見据えて植林をする。と言うのが二宮尊徳が説いた考え方だ。

私の年長の友人は、永らく中国で金属加工の仕事をされて来た。
多くの日系企業と同じ様に、安価な労務費と豊富な出稼ぎ労働者を活用するために中国に進出された。しかし彼は、中国の発展とともに経営環境が変化するはずだと考え、十数年前に経営幹部を集め新規ビジネスの検討を始めた。
当時始めた飲料水の製造販売が、今大きなビジネスに育っている。

労働者の最低賃金が400元台の頃だ。最低賃金が当時の4倍以上になっている。当時と同じ経営をしている人達は、撤退、もしくはより労務費の安い国に転出せざるを得なくなっている。

中国は、マーケットとしての魅力がある国となった。上述の飲料水ビジネスを任されている友人は、更に次のステップを見据えて仕込みをしている。

別の角度で説明しよう。
車の運転が上手い人と、たびたび事故を起こす人の違いは、どこにあるだろう。
運動神経の良い人が運転が上手いと言う訳ではない。前方を走っている車を見て運転している人と、2台先、3台先を走っている車を見て運転している人の差が、運転の上手い下手を分けていると、私は考えている。より前方の車の動きを見ていれば、その先にある危険を予知出来るはずだ。

そう考えると、乗用車より座席の高いワンボックス、更に高いバスやトラックの運転手がより有利となる。つまり視線が高い者が有利となる。

時流に乗ったビジネスをしている人は、運が良かった訳ではない。高い視線を持ち遠くを見ていた人が、準備をすることができる。チャンスは平等に来ている。準備ができていない人はそのチャンスを活かせない。準備ができている人だけが、チャンスを運に変えられる、と言う事だ。

高い視線を持ち、遠きを見て計る、経営者として大事な姿勢だ。


このコラムは、2014年8月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第374号に掲載した記事に加筆したものです。

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作業者は先生です

 もう10年近く前になるが、当時改善のお手伝いをしている工場でこんな話を伺た。
ある作業者が決められた作業標準に従っていなかった。現場監督者が注意しても、作業者はこの方が効率がよいと主張して言うことを聞かない。現場監督者は彼女に残業を与えないことにし、辞職させてしまった。

この一件を辞職願いにサインをする際に経営者が気がついた。辞職願いに書かれている文章も文字もきちんとしたものだったので事情を聞いてみて分かったそうだ。

この時の訪問指導では改善チームのメンバーに、作業者は先生なんだからその作業動作をよく見なければいけない、という話をもう一度した

作業標準を守らせることは重要だが、守らない作業者の動作をよく観察すべきである。毎日何千回と同じ作業を繰り返しているのだから、体でもっとよい作業方法を体得している可能性もある。それをいきなり叱ってしまっては改善のチャンスを失ってしまう。つまり、作業者は改善のヒントを教えてくれる先生なのだ。

作業を標準化するということは作業のばらつきを押さえるために必要である。
しかしその標準は、標準を作った時点で最良の作業方法かもしれないが、明日も最良であるという保証はない。標準化というのは進歩を止めてしまうことだ。標準をそのままにしておくということは世間の進歩に対して相対的に「退歩」することになる。

標準を決めたその日から改訂(改善)することを考えなければならない。

ミスをなくす作業方法

 人為ミスが発生すると、ミスの原因を十分に調べないで「作業者に再教育」「作業者に注意するよう指導」などという再発防止対策を、報告書に書いていないだろうか?
もちろん教育・訓練や指導は重要であるが、これでは効果を期待できない。

人為ミスが発生した原因を、行動まで分解して、どこに問題が有るのか突き止めれば、有効な再発防止をすることができるはずだ。

日本にはすばらしい工場がある。「日本で一番大切にしたい会社」で紹介されている日本理化学工業だ。

この工場は、知的障害者を積極的に雇用している。全従業員の70%は知的障害者だ。

知的障害を持った作業員たちが、工場で製品を作っているのだ。
当然ミスは頻発する。それをミスが起きないようにどんどん作業方法を改善してきたのだ。

例えば原材料の投入は、正確に材料配分を計量しなければならない。
量り間違えれば、全部不良だ。こういう工程も、障害者が担当している。

材料ごとに、材料の棚、コンテナ、投入用のバケツが同じ色にしてある。
そして計量用の分銅も同じ色だ。
このような作業方法の工夫によって、ミスが起きないようにしている。

こういうのがホンキの再発防止対策だ。
人為ミスが発生したときに、安易に「作業員の再教育」と言ってしまうのが、恥ずかしくさえ思える。


このコラムは、2011年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第228号に掲載した記事です。

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朝礼

 指導先工場の幹部職員は、作業員がちゃんと働かない、と嘆いている。
作業時間中にぶらぶらしている。休憩時間の前になると、早々と手仕舞いをする。逆に作業が途中でも休憩時間になると、即作業場を離れてしまう。

幹部職員は、作業者の素質が低いから『没方法』だという。

5Sを指導しても、作業者がやらないと幹部職員は言う。
しかし我々が、休み時間に通路区画を示すテープを床に貼っていると、次々と作業者が集まってきて手伝ってくれる。
作業者を動かすのは『没方法』なのではなく、方法を知らないだけなのだ。

作業者のパフォーマンスを上げるのは、「ムチやアメ」ではない。
その方法の一例として、現場リーダに朝礼のやり方を教えた。

朝礼の目的は、
・仕事の目的目標を共有すること
・モチベーションを高めること
・コミュニケーションを高めること
・能力を高めること

元々彼らの朝礼は、当日の業務連絡、昨日の不具合フィードバックが目的であり、前述の目的のほとんどは実施できていなかった。むしろ朝一番にネガティブな不具合の話を聞かされ、意気消沈して仕事をスタートすることになっていた。

朝礼で、ラジオ体操をやったり、社是の唱和をする会社も多いと思う。
体を動かしたり、声を出すことにより、人のテンションが上がる作用がある。
テンションが上がるだけではあまり意味はないが、テンションが高い状態では容易にモチベーションを上げることができる。

スポーツでは、試合前に円陣を組んだり、ハイタッチをしたり、体をぶつけ合ったりする。
これもテンションを上げることにより、試合に対するモチベーションを上げる効果がある。

こういう話をして、実際に朝礼のシュミレーションをしてもらった。
このシュミレーションは大いにテンションが上がり、全員で盛り上がった。
現場リーダが自部署の朝礼を改革し、朝礼の成果を実感すると、朝礼に対するモチベーションが上がるだろう。


このコラムは、2013年4月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第307号に掲載した記事に加筆したものです。

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