【中国生産現場から品質改善・経営革新】
先週のメルマガ第649号ではのぞみ34号の車両台車に亀裂が入るという重大インシデントについて考えた。
「運行停止判断、なぜ遅れた? 「のぞみ34号」トラブル」
このコラムにM様からコメントをいただいた。
※M様のコメント
毎回楽しみに拝見させていただいています。「のぞみ34号トラブル」の件、私が思うのは、直接的な関係者の「運航を止める」という事に対する心理的 ハードルを如何に下げられるか、という事が最も重要と感じています。
「結果的には運航を止めるほどではなかった」というときでも、上層部が「よく止めた」と褒め、外部から発生する非難に対し、上層部のみが受け止め、運航担当者に類が及ばないようにする、これがしっかりとできるか、でき続けるか、だと思います。
「順調な運航」も鉄道事業者の責任ですが、それ以上に「安全第一」。このような企業文化、企業体質にならないと、このような事故は決して無くならないと思います。
M様のご指摘はもっともだと思う。私も同意見だ。
今回の事故(重大インシデント)の発生は、個人のミス、違反が起こしたものではなく「組織事故」だ。
組織事故とは、組織内に長期にわたり潜在的に存在した欠陥が、知らず知らずのうちに拡大し、事故に至ったものを指す。これらの欠陥は、直接的に事故の発生原因となるものではない。しかし組織の風土や文化という形で組織に定着
し、いくつかの要因が積み重なることによって、大事故を引き起こす場合がある。
参考:ヒューマンファクター10の原則 吉田一雄編著
組織事故の事例は多い。上記参考図書は以下の事例を挙げている。
- 信楽高原鉄道列車衝突事故
- JOC臨界事故
- 横浜市大付属病院患者取り違え事故
- 雪印乳業中毒事故
- 関西電力美浜発電所3号機事故
- JR西日本福知山線脱線事故
各々について詳細は解説しないが、組織事故として共通の要因がある。
- 組織内で手順・規則が遵守されない風土がある。
- トラブル情報、失敗経験が共有されない。
- 潜在リスクに対する認識が弱い。
- 安全軽視の風潮がある。
- 責任の所在が不明確。
- 権威勾配が強く、批判・指摘がしにくい。
- 安全に対する教育・啓蒙が不十分。
このような組織的要因は、旧式の縦割り組織によく見られる。
このコラムは、2018年4月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第652号に掲載した記事に加筆したものです。
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