月別アーカイブ: 2021年1月

現場力

 読者様から「現場力」に関する記事を紹介していただいた。

 問題を解析し、知恵やアイデアを出し、粘り強く改善するのは、あくまで人間である。この現場力こそが、日本の競争力の源泉である。
日本企業の競争力は、現場をたんなる「コスト」として見てこなかったことから生まれている。

困れば知恵が出る。そして、それが現場力強化につながる。その際に、現場だけを困らせるのではなく、経営トップも一緒になって困ることが肝心だと大野(耐一)氏は指摘する。

「変動費化」という甘い言葉が、現場の品質を毀損させているという現実を、経営者は直視しなければならない。経営の目的は、変動比率を高めることではなく、現場の競争力を高め、そこから生み出される付加価値を高めることなのである。

○○と他のスーパーの最大の違いは、仕入れにある。大手スーパーが集中購買を指向する中で、○○は鮮魚、精肉、青果といった生鮮食品の仕入れ担当者は、各店舗に配備されている。

「競争戦略」と「オペレーション」の両輪が揃ってはじめて卓越した競争力は生み出される。

競争戦略が合理的であることの最も重要な要素のひとつは、自社の「身の丈」に合っているかどうかである。ビジネスとしての可能性があるからといって、あれもこれも漫然と手を出していたのでは、資源配分が分散してしまい、優位性構築に結びつかない。

人づくりのための投資とは、お金をかけることではなく、経営幹部がどれだけ自らの時間をかけたかである。

ボトムアップという現場力のエネルギーは、じつはトップダウンからしか生まれない。

企業活動における「よい行動」とは、「しつけ」と「くせ」の2つで成り立っている。

「見える化――伝わる化――つなぐ化――粘る化」

サービス業や流通業においては、過度な分業・分散化は、顧客満足の低下をもたらす。

いま、後輩たちに遺さなければならないのは、たんなる機械の使い方や作業手順ではない。「なぜこの機械が生まれたのか」「なぜこの作業手順が必要だったのか」そんな根源的な経験則こそが、継承されなければならない。それこそが「スピリット」である。

90年代、バブル崩壊で日本的経営に自信をなくした経営者達が、こぞって米国流経営手法を真似をした。

株主重視主義により短期経営数字を追いかけ現場を変動経費化した。このため現場の力が代々伝承していく仕組みが失われた。
成果主義に偏りすぎたため従業員にOUTPUTばかりを求め、人財育成が不十分となった。

このような問題を抱えた組織が、バブル崩壊以降未だにテイクオフできていないのではなかろうか。

ところで90年代に力を取り戻していた米国は、実は70年代から日本に追い上げられジリ貧状態であった。80年代になり更にそれが顕著になり、日本式経営の強さの秘密が研究された。

そこで注目を浴びたのがデミング博士である。
デミング博士が戦後の日本に品質管理を教え、そこからモノ造りの日本が急成長したのを突き止めたのだ。デミング博士は全米で再評価され多くの経営者がデミング経営哲学を取り入れた。フォードもGMもデミング博士の直接指導を受けて当時復活している。

バブル崩壊時に日本式経営を真似をした米国の強い企業は実はこうして蘇ったのである。
シックスシグマ、TQM、マルコムボルドリッジ品質賞など日本式経営を研究した結果米国に取り入れられたものである。

現場の力を大切にしてきた日本式経営をもう一度取り戻す必要がある。


このコラムは、2009年2月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第84号に掲載した記事に一部加筆修正しました。

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良い工場は退屈である

 先週開催した今年最後の東莞和僑会定例会で、東莞にある日系工場・経理から、どのように組織文化を作ってきたか講演をしていただいた。

今年はコロナ禍のため東莞和僑会の活動は全てZOOM開催となった。例年ならば、工場を訪問し工場を見学して講演を聞く。何度も訪問しているが、その度に新たな気づきが得られ、素晴らしい工場に退屈することがない。

今週のタイトル「良い工場は退屈である」はドラッカーの言葉だ。
良い工場は退屈である言うドラッカーの主張は間違っているわけではい。
良い工場を訪問した者は退屈しない。しかし良い工場に勤務している者は退屈であると言う意味だ。

並の工場は適度に問題が発生し、その対応が必要であり退屈ではない。しかし並以下の工場は問題が発生し、その対応のために退屈などしている暇はない。
さらにレベルの低い工場は問題が頻発し、毎日のように問題対処が発生し激務となる。

では退屈な工場(良い工場)とはどう言う工場か、あらかじめ問題を予測して、対策がしてある。したがって問題は発生しない。まれに未知の問題が発生しても、それに対する対応がルーチン化されている。粛々と新たな対策が実施される。

退屈しない工場は、毎回問題の尻拭いでお祭り騒ぎとなる。
退屈しない工場と退屈な工場の違いは「尻拭い」と「未然防止」の違いだ。


このコラムは、2020年12月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1076号に掲載した記事です。

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営業力

 営業力というと営業部門の力と考えがちだが、全ての部門で営業力、営業センスが必要だと考えている。

営業力を「物を売る力」と単純化し、更にこの「物を売る力」を要素分解してゆくと、PR力、顧客とのコミュニケーション力など基本要素に分解できるだろう。

こう考えると会社の中のどの部門も営業力が必要だといえないだろうか。例えば各部門の長は自部門の仕事を簡単にPRできるだろうか?
もちろんこのPRは他部門に対しても必要であろうが、自部門のメンバーに対して正しくPRできるということが、メンバーの結束力を高める基本となるだろう。

私は以前お付き合いのあったS社のプロキュアメント品質保証部の統括課長Tさんから「営業力」を教わった。昔S社向けの製品で一台だけ不良が見つかった。台湾で生産している部品の不良であった。即台湾の生産工場に飛び、原因究明と対策をして報告にうかがった。

Tさんからはまだ詰めが甘いとお叱りを受け、Tさんと一緒に再度台湾に出張することとなった。3日間朝から晩までご一緒し、仕事のことから趣味、家族のことまで色々語り合った。

Tさんの自部署の運営はこんな感じである。
自部署のパートさんにPC教育をして「商品価値」をあげる。
よその事業部へ出かけて行き新製品の立ち上げのため部材ベンダーの指導をする。この時の予算はきちんと当該事業部にお支払いいただく。

Tさんの自部門運営が営業センスがあると大変感心した。
それ以来私なりに自部門の運営に営業センスを入れてきたつもりだ。例えば品質目標として損失コスト(直接・間接を含め)を売り上げの0.2%以下とした。
協力工場、部材ベンダーに品質指導に行くときは「お金を払ってでもまた指導に来てほしい」といわれるレベルになるよう部下の育成努力をした。

品質保証部だけではなく全ての部署でも同様に、営業力を磨く必要があると考えている。特に間接部門は目標設定に営業センスが有るか無いかで、営業力が見えてくる。


このコラムは、2008年5月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第32号に掲載した記事です。

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治にありて乱を忘れず

 先日ある経営者とお話をしていた時に「利益が出ている時の方が心配だ」とおっしゃった。

利益が出ていないときは、必死に受注の拡大をする、収益体制の改善をする、そんな時は心配などしている暇はない。しかしひとたび利益が出だすと、その利益の源泉がなくなってしまったらどうしよう、と不安になるというわけだ。

まさに「治にありて乱を忘れず」だ。

利益が出ているときに次の収益の柱を次々と考え、それを大きくしていく。利益が出ていれば投資も出来る。乱を忘れずに人や設備に投資をしておけば、ひとたび乱に入っても動揺しなくて済む。

為替の変動についても手を打っておく。
その会社は日本円で取引をしているので、円が強くなれば香港ドルに変えれば為替差益が出る。反対に振れても良い様にちゃんと先に手を打っておく。為替の変動などはこちらでコントロールすることは出来ないので、あらかじめヘッジをしておく。

経営を外部環境要因のせいにしない、全てを自責と捉えあらかじめ手を打っておく。そんな経営理念がにじみ出ているコトバだ。

99%安全でも1%を心配する。
1%でも可能性があれば果敢に挑戦する。

あたかも相反する行動原理のように見えるが、この相反する行動がバランスよく取れる事が重要だ。


このコラムは、2008年11月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第63号に掲載した記事です。

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努力とは

 「努力」と言う言葉について考えた事はおありだろうか?
「努力します!」と決意を表明したり、「努力しています」と現状報告を受けたり、したりすることがあると思う。この時の努力ってなんだろうと考えた。
言葉を曖昧なまま使っていると、部下にもっと努力をする様に要求しても、期待通りの行動をひき出せない事が有る。「努力」と言う言葉の重さや深さをきちんと認識し、共有する事が必要だろう。

木下晴弘さんは「涙の数だけ大きくなれる」の中でこう言っている。
“努力とは、当たり前の事を、当たり前とは思えない情熱を傾けて行う事。”

「涙の数だけ大きくなれる」木下晴弘著

つまりちょっと残業したくらいでは「努力」とは認められない。
狂気を感じる程の情熱が伴わなければ駄目だ。
「寝食を忘れて」とか「時間を忘れる」と言う境地に到達するのが努力だ。

しかし「成果主義」は成果に着目するあまり、「努力」と言うプロセスを軽視しがちだ。努力が必ず成果につながれば良いが、往々にして「努力と成果には時差が有る」by野崎美夫

励ま詩」野崎美夫著

部下の「努力」に対するモチベーションを上げてやらなければならない。
成果によりモチベーションを上げるのは簡単だ。しかし「成果」は必ずしも本人がコントロール出来ない。まだ成果が出ていなくても「成長」をキーワードとし成長に承認を与える。成長の先には成果が有るはずだ。「成果」一辺倒のマネジメントよりは容易に部下のモチベーションをマネジメント出来る。

しかし、仕事の中には成長とは無関係でも努力してもらわなければならない事もある。「その仕事僕のキャリアパスの中でどういう位置付けになりますか?」などと言う質問にいちいち答えなければならなくなる(笑)

ベストな方法は、本人が「努力を楽しむ」様に仕向ける事だ。
フロー理論実践指導者・辻秀一先生は「一生懸命を楽しむ」と言っておられる。

「禅脳思考」辻秀一著

スポーツ選手がストイックに練習に取り組み努力をするのは、その先にある結果に対する期待が有るからだろう。しかし、結果などそう簡単には手に入らない。結果が出せる様な選手は、努力そのものを楽しむことができるのだ。

子供だった頃、近所の空き地でただひたすら走る事が楽しかった。
学生だった頃、同級生や先輩と議論する事がただ楽しかった。
古女房が恋人だった頃、ただ一緒にいるだけで楽しかった。
そんな「一生懸命」は誰にでも経験が有るだろう。

「努力を楽しむ」はハードルが高くても「一生懸命を楽しむ」事は可能だろう。


このコラムは、2015年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第423号に掲載した記事です。

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君子に三つの顔あり

xiàyuē:“jūnyǒusānbiànwàngzhīyǎnránzhīwēntīngyán。”

《论语》子张第十九-9

素読文:
子夏しかいわく、くん三変さんぺんり。これのぞめば儼然げんぜんたり。これくやおんなり。そのげんくやはげし。

解釈:
子夏曰く:“君子は三つの顔がある。遠くから眺めれば厳然とし、近づいて会えば温かい、その言葉は厳しい。

《論語》述而第十七-38には“子温而厉,威而不猛,恭而安。”とあります。当然ながら孔子もまた君子である、ということです。

免震装置不正 徹底的な解明を急げ

 安全を守るための装置の品質に、長年にわたる不正があった。衝撃は大きい。

 油圧機器大手のKYBが免震・制振装置の検査データを改ざんしていたと公表した。免震装置では大臣認定の基準を満たさない製品が499本、顧客に約束した基準を外れたものが1914本、調査中のものが5137本あり、合わせれば出荷総数の7割を超えるという。

 不正もしくは疑いのある製品を使っている建物は1千カ所近い。病院、役所、大規模な商業施設など、不特定多数の人が日頃出入りする建物も多い。なかには「地域の減災・防災機能の拠点」とされる施設もある。

 会社の説明によれば、記録に残っているもので2003年から不正があり、少なくとも8人の検査員が口頭で引き継いできたという。本来は、基準から外れた製品は分解・調整し、再度検査するのが適正な対応だが、それには約5時間かかるため、検査データを書き換えていたとされる。

(以下略)全文

(朝日新聞社説より)

以前メールマガジンで東洋ゴムの免震データ改竄問題を取り上げた。
免震データ改ざん問題↓

免震データ改ざん問題

担当者は製造部からの納期の催促にプレッシャーを感じて改ざんに関わってしまったと言っている。

KYBの事例も同様に、生産を優先させるため検査データを書き換えた。

今回の事例を考えると、製造部門や検査部門の責任ではない様な気がする。
新聞記事によると、出荷総数の70%以上が検査不適合だ。製品設計、工程設計が未完成のまま生産を続けていた、と考えるのが妥当だ。

量産に移行すべきではない製品を販売開始してしまったKYBの品質保証システムに問題がある。そして現場の状況(直行率30%未満という驚くべき状況)を放置したまま、生産を継続させた経営判断に問題がある。

最近色々な業種で同様な不正が噴出している。
中には測定方法に問題がある、基準が厳しすぎる、などの理由があるのかも知れないが、それならそれで正々堂々製品規格を変更すべきだろう。

朝日新聞の社説は、かつて日本の品質は「過剰品質」と言われていたが、実態は「架空品質」だったのではないかと結ばれている。この言葉は我々製造業にとって重い警句と受け取るべきだろう。


このコラムは、2016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事です。

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幸せな企業はどれも同じように見える?

 シリコンバレーで注目される投資家ピーター・ティールと糸井重里の対談記事にこんなフレーズが出ていた。

『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)の冒頭に、「幸せな家族はどれも同じように見えるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」と書かれています。

ビジネスにおいては、その反対が真実だと考えています。
幸せな企業は、それぞれの形があるのです。それぞれ、独自のことを行っているからです。
一方、不幸せな企業はどれも似通っています。つまり、他社との類似性から逃れられていないのです。だからこそ、不幸せなのです。

記事全文

つまり同じような事業ドメインで、同じような商品・サービスを、同じような戦略でビジネスをしていれば、必然的に競争となる。競争は企業にとって不幸。独自ドメインで、独自の商品・サービスを独自戦略でビジネスをすれば競争ではなく、独占となる。独占は企業にとって幸せである。という理屈だ。

もちろんこの意見に全面的に賛成だ。
しかし視点を変えると幸せな企業はどれも同じように見えるのではなかろうか?
幸せな企業に属している従業員は、仕事を楽しみ、仕事を通して成長している。自分の仕事に生きがいを感じ、誇りを持っている。

一方不幸な企業に属している従業員は、仕事に対しそれぞれ異なる不満を抱え、仕事以外にそれぞれ異なる生きがいを求めている。

企業の幸福を追求すれば従業員が幸せになるのか、従業員の幸福を追求すれば企業が幸せになるのか?一般的な経営論では、企業が業績をあげるから従業員が幸福になる、と考える。
確かに業績の良い企業の従業員は幸福であるという相関関係はあるだろう。しかし因果関係を考えた時に、従業員を幸せにするから企業の業績が上がる、と考えた方が正しいのではなかろうか?


■■ 編集後記 ■■

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ピーター・ティールは、こうも言っています。
「競争は利益を失う。競争は敗者のもの。他社と差別化ができていないから競争が発生する」
改めて言いますが、彼の意見に賛成です。

では、また来週。


このコラムは、2018年10月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第734号に掲載した記事です。

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データ改竄

 素材企業のデータ改竄問題が次々と明るみに出て来た。自動車業界の完成車検査問題が発端の様に思うが、こちらは別問題だ。法規に違反する事は問題だが、問題の本質は無意味な検査を継続させている監督官庁の既得権保護に有る様に思える。

データ改竄問題は素材メーカの「おごり」と言ってしまうと言い過ぎかも知れないが、顧客企業に対する欺瞞・不遜と言うそしりは免れないだろう。

顧客設計者は、材料メーカから提示された仕様に基づき一定の余裕度を加味し、設計する。それが顧客要求仕様として購入契約が成立する。メーカの都合で顧客要求仕様を満足出来ない場合「特採願い」を提出し、顧客設計者の検証を経て、合意の上で出荷するのが常道であるべきだ。
通常「特採」は一度だけ許される。「特採」出来るのであれば設計変更せよ、と言う考え方が一般的だと思う。

データ改竄が恒常化していたのは、材料メーカ側の質的生産能力が不足していたためと考えられる。その場合は特採ではなく「仕様変更願い」を提出し、顧客設計者の設計再検証を経て、仕様変更を合意するのが手順だ。

川中産業である加工メーカは、材料メーカの一方的な値上げ、仕様変更要求に対して唯々諾々と従うしかない。そのような力関係を利用して、データ改竄が横行している様に思えてならない。

日本の素材メーカの力は、世界的に一定の地位を得ていると考えている。それは新素材の開発、素材の高品質に支えられている。日本のモノ造りが労務費の高騰で競争力を失っている中で、設備集約型の素材産業が日本のモノ造りを支えて行かなければならない。大手の日本素材メーカが世界市場から信頼を失う事になると、日本の製造業全体の問題になりかねない。

仕様逸脱を誤摩化すのではなく、仕様に適合する様生産能力を改善する事が本来の姿だ。


このコラムは、2017年12月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第598号に掲載した記事です。

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羽田滑走路、データ改ざん 東亜建設工業液状化対策で施工不良か

 国土交通省は6日、大地震時の液状化を防ぐ羽田空港の滑走路の工事で施工不良の疑いがあることが分かり、施工データも改ざんされていたと発表した。
同省関東地方整備局は、施工した東亜建設工業(東京都新宿区)に調査を指示した。

全文はこちら

(朝日新聞電子版より)

 この手の事件が頻繁に再発している。
マンションの杭打ちデータ捏造車の排ガス規制逃れ車の燃費データ捏造
すぐさまこの3件くらいは思い出せる。なぜこの様な不祥事が再発するのか?再発防止は不可能なのか?ちょっと考えてみたい。

当然だが、不正を働く側はばれないとタカを括っているからこういう事案が無くならない。しかしほとんどの場合は内部告発でばれる。情報を内部にも漏らさなければ告発は不可能だ。しかし現場で作業をする人間に秘密に出来るはずは無い。では口止め料を握らせる?多分逆効果だろう。

内部告発を止める方法は無いと考えた方が良いだろう。

しかし内部告発が起きない方法は有る。顧客、従業員、取引先、社会に対して誠実に仕事をする事だ。これを守れば、告発すべき内容が無くなる。
期限切れ食材使用の問題、データ改竄、リコール隠しなど幾多の過去事例から学べる唯一の方法だ。

工場の品質保証をしていると、普段はデータを捏造する必要はない。
しかし出荷品の不良や、顧客監査時の指摘事項などでウソの報告をしたくなる事は有るだろう。しかし一度ウソをついてしまうと、その後整合性を保つため更にウソを重ねる事になる。

絶対にウソはつかない。それが現役時代品質保証部の仕事をしていた時の鉄則だった。しかし顧客に心配をかけるのは本意ではない。ウソはつかないが、言う必要がない事は言わない、と言うポリシーだった(笑)

前職の会社では、第一出荷ロットで「出荷判定会議」をするのが決まりだった。
ある製品で、最初の生産で直行率が99.3%だった。出荷判定の条件は満たしていたが、0.7%の不良が全て同じ部品の不良であり、部品メーカからの不良解析報告はまだ入手していなかった。
この不良モードが波及性を持っているとすると、検査合格の製品にも何らかの問題が有るはずだ。出荷を止める事を決断し、翌日顧客に報告に行った。
当然叱られると思っていたが、逆に褒められた(笑)

その後部品メーカから報告書が届き、部品製造時に設備に不調が有り、ロット全体に波及する不良と分かった。

黙って出荷してしまっていれば、この報告書が届いた時点で製品回収をお願いする事になったはずだ。既にエンドユーザに出荷が済んでいれば、市場回収だ。そうなった場合、品質保証部門長として、事業部長に市場回収を説得出来ない可能性だってありうる。

被害が拡大する前に正直に言ってしまえば、何でも無い事の方が多いはずだ。


このコラムは、2016年5月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第475号に掲載した記事です。

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