月別アーカイブ: 2011年7月

#02:トイレを捨てた男の話

5Sの騎士ドン・キホーテの如く
整理とは,必要なモノと不要なモノを区別し,不要なモノを捨てること.
5Sのスタートは捨てることだ.

私の友人は中国で会社を経営している.彼は,中国人従業員がオフィスのトイレを清潔に保てないのに業を煮やしていた.そしてついに,オフィスのトイレを捨てると言う快挙(暴挙?)に出た.オフィスのトイレを撤去し,廊下の先にある共用トイレを使うことにしたのだ.
是非はあるが,究極の「整理」と言ってもよいだろう.必要なモノ,不要なモノを区別する際に「聖域」を作らない.トイレといえど整理の対象になりうる.
顧客資産の金型でさえ,整理の対象だ.何年も使わない金型が,倉庫に鎮座しており,作業安全性までも脅かしかねない状況となっている.顧客の資産だから捨てられないと言う「理由」は理解できる.しかし捨てる「方法」を考えてこそ,改善があるというものだ.

書架の扉は捨てる
新しいオフィスに引っ越す際に,書架を新調した.ガラスの引き戸付きの書架を購入した.しかしガラス引き戸は,使い始めて3日目に捨てた.書類ファイルを取り出すたびに引き戸を開け閉めしなければならない.左右の引き戸が重なる棚の中央にあるファイルが取り出しにくい.引き戸が邪魔をしている.引き戸を捨てることによって,ファイルのアクセスは効率が良くなった.
要らない物を捨てれば,空間が捻出できる.不要物を保管するという,付加価値を生まない空間を,付加価値を生む生産空間に変えられる.
活用しない記録用紙を捨てることで,無駄な記録作業も捨てることが出来る.
要らない物を捨ててすっきりするだけではなく,効率向上,安全確保,品質確保など,整理には多くの効能がある.

在庫は問題を隠す悪
倉庫に在庫があれば,お客様の需要に即納できる.お客様にとっては都合が良いが,生産者にとって良いことはひとつもない.在庫金額の金利負担が増える.更に悪いことは,生産リードタイムに問題があることが表に出なくなる.問題として認識されなければ,改善はありえない.
中間在庫も同様だ.工程に問題が発生していても,中間在庫により生産は継続できる.現場は残業をして,つじつまを合わせる.しかし残業代の分だけコストアップしているはずだ.最悪なのは,工程で発生した問題を改善するチャンスを失うことだ.
製品在庫,中間在庫は不要な物とは言い切れない.しかし,今必要な物ではない.今不要な物も,整理の対象だ.
ある工場で,完成品在庫の30%削減を目標に改善活動をした.元々の活動内容は,余分な生産投入をしないように業務担当に教育をし,生産投入の基準を作る,ERPの導入,となっていた.問題の本質を解析していないので,この様な対策になる.本質対策により在庫は,1/3に低減できるだろう.本質的改善をしないままERPを導入しても効果はない.

【今月の一言】
捨てるカミあれば,拾う改善あり.

こちらもご参考に。
5S実践研修

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2011年8月号に寄稿したコラムです.

モチベーション

子供のココロのコーチング
書籍名:子どもの心のコーチング
著者:菅原 裕子 (著)
出版社:PHP研究所



 機械のパフォーマンスは変動することはない.もしも変動しているとしたら,その機械を含む工程の工程能力が不足している,メンテナンスが不十分ということだ.

しかし人間のパフォーマンスは,簡単に倍半分に変動する.身体的理由によるモノは,機械のメンテナンスと同じことだ.それよりも大きな要因は,心の問題.モチベーションだ.
モチベーションの高い低いで,人間のパフォーマンスは簡単に変動する.

子育てと部下の育成には多くの共通点がある.

福利厚生や賃金は,仕事に対するモチベーションとなるだろうか?

子供にお手伝いをしたら,お小遣いをあげる.宿題が終わったらゲームをしてもよい.
福利厚生や賃金は,こういうモチベーションの与え方と同じだ.
その効果は否定しないが,限定的だ.

こんな事例がある.
ある行動科学者が幼稚園児に次の実験を行った.

園児達は「絵を描くのがとっても好き」であり,毎日絵を描いても飽きることはない.

その園児を3つのグループに分ける.

1つ目のグループは「素晴らしい,素敵な絵を描いたらご褒美をあげるよ」と動機付けた.絵を描く前に,ご褒美が貰えることが分かっている.

2つ目のグループは「自由に絵を書いてね」と動機付けた.ご褒美の事は知らないし,ご褒美を貰えるわけではない.

3つ目のグループは「自由に絵を描いてね」と言って,書いたあとにご褒美を上げた.ご褒美の事は知らないが,絵を描けば貰える.

この実験をして,2週間も経たないうちに1つ目のグループは絵を描かなくなってしまった.

それは,楽しいお絵描きが,ご褒美をもらうために絵を描くという,仕事になってしまったからだ.

絵を描くのが楽しいはずが,楽しくなくなった.
楽しい絵を描く事に,ご褒美という動機付けは,モチベーションになんら良い影響を及ぼさなかったのだ.

逆に,ヤル気を失わせてしまった.現在多くの経営者が信じている「アメ(報酬)とムチ(罰則)」では,全く想像もつかない真逆の結果となったのだ.

では子供のモチベーションを高めるにはどうしたらよいのだろうか?
それは褒められること.ただ褒めるだけではない.
人の役に立ったと実感出来る褒め方がモチベーションをあげる.
褒めるのと同時に感謝を伝えることが重要だ.

金銭によるモチベーションは,徐々に要求金額が上がってゆく.同じ金額ではモチベーションがあがらなくなる.
「人の役に立つ」をモチベーションとしても,同様に要求はあがる.
「人の役に立ちたい」から「もっと人の役に立ちたい」になる.
つまり動機付けが自己再生産されることになる.

これは部下育成に応用できるはずだ.
「子供の心のコーチング」の著者・菅原裕子氏は,子供へのコーチング「ハートフルコミュニケーション」を主に活動しておられる.
ちなみに菅原氏は部下のコーチングに関する著書も書いておられる.

「決定版 部下を育てるコーチング」

「コーチングの技術-上司と部下の人間学」

「子どもの心のコーチング」

思いを伝える力

上杉鷹山
書籍名:小説 上杉鷹山〈上〉
著者:童門 冬二
出版社:学陽書房


NHK大河ドラマ「龍馬伝」を,一気に見た.元々NHK大河ドラマにはあまり興味が無く,記憶にあるのは「赤穂浪士」「太閤記」くらいだ.
龍馬伝により,改めて坂本龍馬という人物像を知ることが出来た.

坂本龍馬は,日本の大きな変化点で偉業を成し遂げた.
それは犬猿の仲であった薩摩と長州の同盟を実現させた.
徳川家に大恩を感じている土佐藩主に,大政奉還の建白書を書かせた.

この偉業を成し遂げた力は,龍馬の「思いを伝える力」だった.

脱藩浪士で構成された組織・亀山社中,海援隊を統率したリーダーシップも「思いを伝える力」が源になっていたのだろう.

経営者も組織のリーダーとして,従業員に思いを伝えなければならない.
それが,経営理念であり,経営ビジョンである.経営理念が組織のコアとなり,従業員の求心力を得る.経営ビジョンが中期経営計画,年度経営計画へとブレークダウンされる.

組織のメンバーが皆経営理念の下に,経営ビジョンの実現に向けて努力する.そのための経営ツールが方針管理であり,目標管理である.

経営理念は,創業者が考えるモノ,社長が考えるモノ,などという遠慮は要らない.あなたも自分の組織のリーダとして,メンバーに思いを伝えよう.

ところで,今まで歴史小説にはあまり興味は無かったが,龍馬伝を見てから興味が沸いてきた.
友人に薦められた「小説・上杉鷹山」を,読んだ.
歴史小説ではあるが,ビジネス書として読んでも多くの啓発を得られる書だ.
特に経営トップ,組織のリーダに読んでいただきたい.

小説 上杉鷹山